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鬼平犯科帳より

「父上。今日は道場で、恐るべき剣法を見ましてございます」と、辰蔵が平蔵に語ってきかせた剣客の、その技、その容姿は、平蔵にひとりの男のことを思い起こさせた。「鉄さん。そりゃあ、まさに松岡重兵衛さんだよ」旧くからの剣友・左馬之助も同意した。「重兵衛さんをさがせ、というのだな」「やってくれるか？」「む……気はすすまぬが……」二人の思いは二十年以上も昔に飛んだ。　（時代小説）監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

高木軍兵衛は『用心棒』の一件のあと、深川佐賀町の味噌問屋〔佐野倉勘兵衛〕方で用心棒をつとめている。

勘定方から見回りに変更になった細川峯太郎が父母の墓参をするため目黒に向かった。

仕込みに年月と手間と金がかかる本格の盗みは近年絶えかかっているなかで、〔傘山の弥太郎〕は盗人の掟三カ条を堅守して本格の盗めにはげんでいた。そんな弥太郎のもとに〔鳴海の繁蔵〕から嫁の遣り取りについて手紙が届いた。父親の友人であった先代は本格の盗賊であったが、二代目は殺生をいとわぬ〔畜生ばたらき〕をするようになっていた。（時代小説）
監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

木村忠吾が相談に乗っていた藤田彦七が元妻のりつと逃げたとのことをを聞いて、忠吾はとても驚いた。

風邪が快癒した平蔵は、むさ苦しくのびた月代と髭のまま古着物で市中見廻りにでかけた。京橋のたもとで平蔵に声をかけた者がある。堂々たる巨躰に立派な髭の男。先に〔笹や〕のお熊が、泣き虫の不良息子が鍾馗様みたいになって江戸に戻ってきたが「人間というもなあ、あも変わるものかね」と噂していた、高木軍兵衛その人であった。が、当の軍兵衛は平蔵の正体を知らなかった。　　　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

鬼平犯科帳より

かつておかねが目を刺した弥助のことを、また刺そうと狙っているらしい。

夜半、抱き潰されて眠っている嫁のおみねを、徳次郎は殺そうとした。と、おみねが、ぱっと両眼をひらき、ぬたりと徳次郎へ笑いかけたものである――「殺す気かえ」。大盗〔網切の甚五郎〕の腕ききの配下〔山彦の徳次郎〕ほどの男が完全に虚をつかれたのであった。　（時代小説）監督/吉田純子・編集/三好達也_武井寿夫

泥亀の七蔵

鬼平犯科帳より

高杉銀平道場に、平蔵と岸井左馬之助をしのぐ、別格の剣士・井上惣助という男がいた。

姦婦おきんに続き、今度は裕福な饅頭屋の後家、そして人妻お六も妾にした西門屋慶左衛門。

「百両を用意しなければ、お富の亭主に全てをばらす」と、お富はかつての掏摸仲間の岸根の七五三造に脅されていたため、掏摸をして百両を作ろうとするが回数を重ねるごとに感覚を取り戻すお富。

もふもふ妖怪の鵺（呼び名はアキ君）の元気がない。満月が近づいていて、かぐや姫のことを思い出しているみたい。会えなくなって千年たっても、ずっと――。そんなアキ君を見て、しんみりしていた若菜の前に…

鬼平犯科帳より

本作作者菊池寛は、小説家で、劇作家で、ジャーナリスト、東京市会議だったり、大映の社長だったり。文藝春秋社つくって、芥川賞・直木賞も創立した。日本麻雀連盟初総裁をつとめ、競馬に入れ込み馬主にもなり、将棋も嗜み「人生は一局の将棋なり 指し直す能わず」と嘯いている。 頭の回転早くお茶目でいたずら好きで屈託なくむとんちゃく、大人になっても泥まみれで遊んでいる子供のような彼は、ねらいたがわず合戦とか武将も大好きで、ウンチクたれてるだけでは飽き足らず本作を上梓した。 毛利元就の善謀と麾下の団結が大勝をもたらした厳島の合戦、奇兵を弄した信長が大敵を破った桶狭間の合戦、西南戦争の天王山・田原坂の合戦、戦国時代の序幕・応仁の乱、忠臣楠木正行が散華した四条畷の戦、大阪の陣における智将真田幸村の奮戦など、歴史通の著者が史書からわかりやく読み解いた歴史随想集。 日本代表の合戦譚としての選書としては、著者ならではの戦も収録。 収録作品：真田幸村/応仁の乱/島原の乱/山崎の戦い/大坂夏の陣/姉川合戦/長篠合戦/小田原の陣/四條畷の戦/賤が岳合戦/桶狭間合戦/厳島合戦/川中島合戦/田原坂合戦/碧蹄館の戦/鳥羽伏見の戦

野槌の弥平一味のうちただ一人取り逃がした〔小川や梅吉〕らしい男を見かけたと密告があった本所に足を運んだ平蔵は、つい思い出深き高杉銀平の道場あとに入り込み、そこで思いがけず旧友・岸井左馬之助と再会した。盃を交わしての昔話は〔桜屋敷〕の娘おふさのことになった。──おふさは、二人の青春の女性である。女性への憧憬のすべてがふくまれている彼女への想いを、二人とも忘れきることはできないでいる。　　監督/吉田純子・編集/三好達也_野田仁志

役宅に暮らす長谷川平蔵の目白台の私邸は長男・辰蔵とその妹の清が留守を守っていたが、この辰蔵、女あそびにかけては相当なものだった。今は雑司ヶ谷の鬼子母神境内にある茶店〔笹や〕の小女・お順に熱をあげていた。が、お順の父は実はただ者ではなかった・・（時代小説）監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史