『ずっとお城で暮らしてる』のカバーアート

ずっとお城で暮らしてる

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ずっとお城で暮らしてる

著者: シャーリイ・ジャクスン, 市田 泉
ナレーター: 浅井 晴美
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このコンテンツについて

あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている……。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。©市田泉・東京創元社・RRJ Inc. ホラー ミステリー
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低評価が多かったので聴くのをためらったのですが、最後まで聴きました。多くの方が仰る通り、人々の悪意の描写が多くかなり疲れる作品です。長いし。私もこの手の作品はあまり好んで読まないタイプです。

内容は人々の悪魔的な側面に弱さや歪みを容赦なく描いたもの。駄文とかではないと思います。
ともあれとにかく酷い言葉やいじめの描写は音声で聞くと悪人らしさの表現がちょっとしつこすぎたので、紙で読むほうがやはり良いかも。

以下はあらすじ。ネタバレがあります。
上流階級で村の人々と距離を置いていたブラックベリー家で起きた殺人事件。主が不在となり、ひっそりと暮らす残された家族は娘たちと病人のみ。村の人々は富豪の家が弱ったところに悦びを感じたのか、醜聞が出てもはや敬う価値なしということなのか、これまでの鬱憤を晴らすように嫌がらせをしています。

この辺の村人たちの心理はSNS集団バッシングにも近いです。小説聴いていると胸糞ですが、事件起こした人をボロカスにみんなで叩く、嘲るって、ネットではよく見かけますね。

家をつつましく切り盛りしているのは姉(28くらい)。やさしく、良家の娘らしい誇りがあり、愛情深い。殺人事件の当事者として良くない形で名が広く知られることとなり、私有地から出ることが出来ません。彼女はピュア故に愚かで、歪んだ優しさを持っています。歪んだ弱さと言うべきでしょうか。

妹(10〜14歳くらい?)は空想家で、まじないや目に見えないものの力を信じています。直感は鋭く繊細で、家族の生前からあまり理解されず寂しい思いをしたのでしょう。彼女なりに気丈に強く生きてきた様子が見えます。しかし愛情に飢えていて、やはり歪んでいる。というか、何かが欠けている。

物語はいくつかの出来事と交流を経て崩壊していく家と人々の姿を捉えながら進んでいきます。悪意、偽善、嘘、逃避、狡さ、弱さ…見たくないものの詰め合わせです。あまりに容赦なく不幸が押し寄せるので何度も悲しくなりました。

容赦ない不幸と悪意、その中で幸せになるには、やはりある意味で正気を失わないといけないのでしょう。
救いがないかどうかというのはちょっと難しいです。事件がおきたときすでに終わりが始まっていたとするならば、"家"そしてその誇りとともに静かに朽ち行くことが救いとも読めるのでは、と思いました。

容赦ない不幸と悪意、その中で幸せになるには

問題が発生しました。数分後にもう一度お試しください。

主人公メアリの視点で、姉コンスタンスと伯父ジュリアンとの屋敷での穏やかな三人暮らしが描かれます。ただ、だんだんとわかってくるのは、6年前、彼らの家族は夕食の席でヒ素を盛られて死亡し、三人は唯一の生き残りであるということ。その際、家庭菜園でハーブも育て、一家の食事を用意していたコンスタンスが容疑者として捕まり、証拠不十分で釈放された過去があることなどがわかってきます。その事件のせいか、それとも元々か、村人たちに彼らの家は忌み嫌われています。
しかしある日、三人の暮らしに従兄弟のチャールズが入ってきたことで、コンスタンスの態度が変わっていき、メアリはチャールズに敵意を向けるようになりますが……。

まず語り手のメアリの18歳のわりには酷く子供っぽく、空想がちで、外界に敵意しか向けない態度に嫌気がさすかもしれません(笑)。私は家族の犠牲になってるとしか思えないコンスタンスを気の毒に見ていたのですが、読み終えてみるとわからなくなってきました。メアリから見える彼女なので、彼女の内心の望みがわからず、モヤモヤしますが、事件の真相を知ってなお、メアリといることを選んだのですから、彼女もお城での暮らしが居心地がいいのでしょう。
チャールズの存在が一時お城の暮らしを脅かしますが、結果、メアリにはより理想の暮らしになったという……読者のカタルシスなどドン無視の話の結び方に、さすがジャクスンだわと思いました。

時が止まったままのお城が動きだした気がしたけど、ふたたび静かになる話

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家父長制や狭いムラで抑圧される女性の話ではあるのですが、主人公メアリのエキセントリックな人物造形が面白く、悲惨な出来事とブラックユーモアが同居する独特の語り口です。
小説の文体と、朗読という表現がうまくはまっています。

どこからどこまでが事実なのか、何が起きたのかが少しずつ明かされていく過程に引き込まれました。

「フェミニズム文学」としても読める

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まず、ホラーらしいホラーではありません。
怪物とか、幽霊とか、不思議な現象とかもありません。
あるのは人間の悪意と狂気です。
その悪意と狂気に潰れてしまった二人が救われずに終わっていきます。

二人に手を差し伸べる人もいるにはいるのですが、悪意と狂気を見た後ではそれが嘘なのか悪意をぶつけすぎた加害者の言い訳なのかが判然としません。
最初はわけがわからず、後半からは人の悪意と狂気で聞くのがほんとにしんどかったです。

しんどい

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卑しく節操無い悪意や虚栄の市的悪徳が張り詰める外界と違って秩序と慈愛ある"お城"の生活は豊かで、子どもらしい空想世界やヨーロッパの自然、姉の作る手の込んだ料理と焼き菓子等美しい描写に癒やされます。
従兄弟の登場で一悶着あるものの、静かで平穏で愛ある暮らしを守れて良かった。
聞き流しでは考察が浅くなるのでまた本でも読みたい。

お決まりのハッピーエンドや分かりやすいバッドエンドではないから万人受けする作品ではないと言われますが
だからこそ大切に読み継がれ、半世紀越しに映画化される程人気のある褪せない無二の作品なのでしょう。
Audibleで取り上げてくれて嬉しいです。

ナレーターさんの演じ分けはキャラクターや場面に合っていて、自然に情景のイメージが出来ました。

半世紀経っても色褪せない作品

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