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尾花川
- ナレーター: 遠藤
- 再生時間: 37 分
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<あらすじ>
お秋は村次とは腐れ縁だった。十八の頃に出会ってからはや九年、仕事がものになれば、お秋を苦界の商売から足を洗わせてやる……何度もそう言われ続け、お秋は彼との縁を切れずにいた。その一方で船宿の船頭である藤吉には強く思いを寄せられ、一緒になろうと迫られていたが、村次のこともあり、お秋は断り続けていた。
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山本周五郎は「文学には“純”も“不純”もなく、“大衆”も“少数”もない。ただ“よい小説”と“わるい小説”があるばかりだ」を信念とし
著者: 山本 周五郎
あらすじ・解説
<内容紹介>
山本周五郎は「文学には“純”も“不純”もなく、“大衆”も“少数”もない。ただ“よい小説”と“わるい小説”があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。
<あらすじ>
太宰は最近の妻の変化をいぶかしく思っていた。
尊王攘夷の志士である太宰は、大津尾花川に屋敷を構え、そこには沢山の同士が訪れた。妻の幸子は、良人の志をよく理解して、客があれば出来るだけ篤くもてなした。
しかし、この頃はと言えば客があって酒宴になっても、以前のように下物の品数がそろわない、豊かな琵琶湖の鮮を控えているのに、焼き鮒とか干し魚とか漬菜などという質素なものが多くなった。酒も少し回ったかと思うと、「あいにくもうお酒がきれまして」と食事にしてしまう。出費がかさむといえど、亡父の遺した財産に比べればたかの知れたものであるにもかかわらずだ。ここ最近、質素倹約を通り越して、吝嗇に近い変わり方をした妻の気持ちが、太宰には分からずにいた。
ある時、越後国の泉仙介という志士が同士を引き連れて太宰の屋敷を訪れた。屋敷に逗留している宇都宮藩の鹿島金之助を交えて話すが、酒宴の中で仙介の連れの長谷川秀之進は、金之助の素性を見破ってこう言った。
「この男はいけません。こいつは偽志士です」……
<山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)>
1903~67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。