小学館の名作文芸朗読

【小学館の名作文芸朗読】

山中貞雄への追悼文。出征し戦死した映画監督・山中貞雄との交流と彼の人となりが綴られる。平安神宮での出征式の様子、入営後の面会、そして戦死の報に接した驚きから始まる。筆者は茶話会の席で初めて山中と出会うが、その時は彼の作品も名声も知らなかった。後に山中の作品を見るようになるが、その才気に満ちた作品よりも、人間としての山中の方に魅力を感じていたと述懐する。

【小学館の名作文芸朗読】大正・昭和期に『國士無双』の映画監督、『無法松の一生』の脚本家などで知られ、俳優・挿絵画家としても活動。

【小学館の名作文芸朗読】敗戦の年、ニューギニアの戦地から故郷に帰る途中、佐太郎は幼友達の秀治から「初世ちや、待っているよ」と言われる。二十四になる初世が嫁がずにいるはずはない。

【小学館の名作文芸朗読】いつもなら、家でわずかの間に姿が見えなくなれば、必ず子供はどうしたと尋ねるのが常であるのに、その日の午後は、なぜか数時間の間、子供を尋ねることをしなかった。

【小学館の名作文芸朗読】土色の雲がひっきりなしに北の方へ走り行く。時々、空が暗くなると雨を降らせる。

【小学館の名作文芸朗読】老獣医の糟谷は家族とともに暮らし、貧しいながらも診療所を運営していた。

【小学館の名作文芸朗読】太宰治による随筆形式の短編小説。男は「禁酒」を決意する。昔は酒が人間を豪放にするものと考えられていたが、現代では精神を浅薄にするものとなっていたためである。男は配給された少量の酒を分割して飲み、さらに水で薄めるといった工夫や、居酒屋で客が店主に媚びへつらい、少しでも多くの酒を得ようと奮闘する姿を目にし、酒がもたらす悲惨さを見出す。

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Yを初めて見たのは米騒動の頃で、集会の席で無遠慮な様子と田舎っぽい格好が印象に残った。彼は新宿で鍛冶屋をしていた。私たちが滝野川に引っ越してからYは頻繁に訪れるようになり、無学でありながら物分かりの良い労働者として興味深く観察していた。しかし次第にYの無遠慮さは増し、わざと泥足で縁側を歩いたり火鉢に唾を吐いたりするようになった。

【小学館の名作文芸朗読】

登志子は電車の連絡船を降り実家へ向かう際、同行する従姉のまき子や安子と違い重い足取りで歩いていた。「仇敵」のように思う叔父や、自分より「低級」と感じる夫との再会が待ちうけていることを考えると、実家に戻ることに強い嫌悪感を抱かざるを得なかったのである。 登志子はそこから逃げるように、かつて東京で別れた男性との思い出に浸る──。

【小学館の名作文芸朗読】「私」と山岡は廃村となった谷中村にようやく辿り着いた。谷中村は鉱毒問題や土地収用で世間を騒がしている。住民達は立ち退きを迫られ、残った家屋は強制破壊され、残留民は貧困と迫害の中にいる。三、四年前にこの現状を知った私は、彼らの力になりたいと考え、Tと別れて山岡と行動を共にするようになる。山岡と面倒な恋愛関係になった私は、生涯を通じて最大の転機に立った。

【小学館の名作文芸朗読】

高等小学校二年生の圭太は、餓鬼大将の三郎（通称さぶちゃん）にいつも苛められている。学校へ行く途中の長い橋で、圭太は三郎とその子分達に欄干を下駄で渡れと命令される。遙か底の方では、青い水が渦を巻いて流れている。意を決して五、六歩と行くうちにだんだん駆け出したが、橋の中央まで行った時、欄干を踏み外して宙を飛んでしまう。気がつくと、女生徒達が心配そうに立っている。

【小学館の名作文芸朗読】

不景気な村で暮らす仙太は、妻に隠れて大切な納税用の五円札を握りしめ、「今日は山だ！」と唐鍬を担いで家を出る。実は競馬場へ向かうのだ。村人たちは地道な農作業では小遣い銭も稼げず、一攫千金を夢見て馬券に熱中していた。一枚の馬券がたった五分間で五円も十円も稼いでくれる―そんな誘惑に村全体が疫病のように取り憑かれている。

【小学館の名作文芸朗読】お通は、町の呉服屋で見つけたレーヨン錦紗を買うために一生懸命お金を貯めていたが、買い物に向かう途中で蟇口を紛失してしまう。

【小学館の名作文芸朗読】

岩野は左腕を失った友人を訪ね、その戦争体験を聞く。友人の現在の苦境と戦争の記憶が対比され、戦争の恐怖と英雄への複雑な感情が描かれている。彼は日露戦争の鳳凰山の戦いで後備歩兵として従軍し、特異な性格の大石軍曹と共に戦場に赴いた。弾丸の雨の中、大石軍曹は「沈着にせい」と言いながら前線を行き来し、仲間を鼓舞する。友人は重傷を負いながらも生還したが、大石軍曹は──。

【小学館の名作文芸朗読】

『日本文学の写実精神』などの著書があり、昭和期に活動した国文学者・随筆家の旅行記。久しぶりに京都の秋を観ようと東京駅を発つ。中京にある古風で小さな宿は、馴染みの客ばかりで、ふりの客は稀だという。折からの時雨に、中庭にある松の緑が土蔵の白壁を背景に美しい色を見せている。京都駅に着いた時にはもう降り始めていた雨は本降りになった。

【小学館の名作文芸朗読】明治～昭和期に活躍した日本画家の上村松園が幼少期を回顧する母の思い出を綴る随筆。母は二十六歳の時に私を生んだが、茶舗を始めた父は亡くなったばかり。

【小学館の名作文芸朗読】私は明治時代の女風俗画を描いている。幼い頃から母とともに髪結いに出かけ、女風俗に馴染みがあった。明治時代には女性の身分によって、様々な髪型があった。

【小学館の名作文芸朗読】日本美術における女性の描き方と美の表現についての随筆。美人画についての上村自身の美学観が述べられている。

【小学館の名作文芸朗読】明治期から昭和期に活躍し、美人画「焔」「序の舞」などの代表作がある女流日本画家の随筆。

【小学館の名作文芸朗読】 明治～昭和期に活躍した日本画家の上村松園が幼少期を回顧する随筆。幼い頃から人物画ばかり描いていた私は、母にねだって絵草紙屋で白描を買ってもらった。小学校時代も石盤