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【小学館の名作文芸朗読】

小さな仕立屋さんがジャムの香りに包まれながら仕事をしていたとき、パンの上にハエがわらわらと集まってきた。布きれで思い切り叩いてみると、七匹も仕留めていたではないか。仕立て屋は自分のいさましさを自慢に思い、「ひと打ちで七つ」と刺繍した帯を作って腰に巻く。そして町だけでなく世界にその武勇を知らしめようと、仕立屋さんは誇らしげに旅へ出発する。

【小学館の名作文芸朗読】仕事の楽しさと子育ての価値を説いたエッセイ。人生で最も楽しいものは仕事であると主張し、特に子どもを育てる仕事の素晴らしさを強調している。

【小学館の名作文芸朗読】

明治期の日本で「小泉八雲」の名で作家活動をしたラフカディオ・ハーンが、浦島伝説を紹介しながら綴る旅行記。旅館「浦島屋」の妖精のような女主人に人力車を手配してもらった私は、車中で浦島伝説に思いを巡らせる。日本の人々は浦島明神なる神社まで建立している。彼らが同情するのは、乙姫様ではなく、浦島の方なのである。

【小学館の名作文芸朗読】

春の朝、たね子は一枚の招待状を手にやや浮き足立っていた。帝国ホテルで行われる実業家令嬢の結婚披露式――華やかな場に自分も出席していいのか、そして何より「洋食の食べ方」がわからない。夫に「出るべきではない」と軽くいなされ、かつての家政読本を引っぱり出し必死に食卓作法を探すが見つからない。

【小学館の名作文芸朗読】むかし、冬の日、王妃が血のように赤い頬、雪のように白い肌、黒檀のような黒髪の子を望み、白雪姫が生まれるが、王妃は亡くなる。

【小学館の名作文芸朗読】

今年三十八になる私は初めて父の墓を訪れる。二十年前、父は私と同じ年齢の時に、この九州の野で国のために死んだのだ。横手村で墓守をする老爺に官軍改修墓地まで案内され、ようやく父の墓を探し出す。父が戦死してから、祖父母も母も兄も苦痛を抱えながら死んでいった。私も絶望が絶望に続き、苦痛が苦痛に続いた。その絶望と苦痛のうちで、私は人の夫となり、人の親となった。

【小学館の名作文芸朗読】

太宰治による随筆形式の短編小説。男は「禁酒」を決意する。昔は酒が人間を豪放にするものと考えられていたが、現代では精神を浅薄にするものとなっていたためである。男は配給された少量の酒を分割して飲み、さらに水で薄めるといった工夫や、居酒屋で客が店主に媚びへつらい、少しでも多くの酒を得ようと奮闘する姿を目にし、酒がもたらす悲惨さを見出す。

【小学館の名作文芸朗読】

どこからか小犬を貰ってきた三郎は、ボンと名付けて可愛がっていた。ボンは人馴れたやさしい犬で、誰でも呼ぶ人があれば懐いていたが、隣に住むばあさんと臆病な子供の母親からは、さんざん悪く言われ、いじめられた。姉や祖母は誰か欲しい人にあげたらどうかと言うが、三郎はどうしても納得できない。

【小学館の名作文芸朗読】ポコちゃんと千ちゃんは夏休みに月の世界を探検する計画を立てる。宇宙艇カモシカ号は順調に運行していたが、成層圏を通りこすと、突然、どえらい音をたてて艇が揺れる。空中分解するのではと心配したが、その正体は流星群の隕石だった。何とか危機を脱出し宇宙の墓場と言われる重力平衡圏まで来ると、三年前に遭難した新コロンブス号を見つける。

【小学館の名作文芸朗読】広島の原子爆弾で壊滅的な被害を受けた過去を持つ「彼」は、喪失感と孤独の中で日々を過ごしていた。

【小学館の名作文芸朗読】クラネクはニコリフスク近郊の村の警察署長である。彼はローゼン家の娘エルマに目をつけ、自分のものにしようと考えていた。

【小学館の名作文芸朗読】

秩父山系の笛吹川上流部である東沢と西沢の探索記録である。広瀬から出発し、子酉川と呼ばれる上流域へ進み、南北に分かれる東沢と西沢の様子を詳述する。険しい崖や滝が連続する渓谷美と、それを越える探検的旅行の醍醐味が描かれる。特に東沢では、鶏冠谷から広河原までの区間が詳細に記録され、釜沢や信州沢といった支流の特徴も説明される。

【小学館の名作文芸朗読】ホテル勤務の鶴代は、元博徒で母の知人だった川田と再会する。川田は珍しくドレスアップし、復活祭を祝おうと誘う。

【小学館の名作文芸朗読】龍夫と源吉は共に台風が好きであった。龍夫の父は南洋で亡くなり、その魂は台風に乗り帰ると母に聞かされて以来、龍夫は台風を待ち焦がれていた。

【小学館の名作文芸朗読】探偵小説に対する考えを綴ったエッセイ。友人らと犯人当てをして楽しむ中で、日本の探偵小説はミステリー要素が強く、推理が弱いと気付く。

【小学館の名作文芸朗読】

明治期における女性の社会的立場と自立について説かれた評論。前時代の社会が人の個性を無視し、男女それぞれにあるべき型を押し付けていた状況を批判し、明治維新後の五カ条の御誓文、憲法、教育勅語により、個人の権利と自由が尊重されるようになったと述べる。

【小学館の名作文芸朗読】

木之助は12歳の時に胡弓を習い始め、毎年旧正月に門付けに行くようになる。特に、ある味噌屋の主人が木之助の演奏を楽しみにしていた。年月が経ち、門付けの習慣は衰退していく。木之助の仲間たちも次第にやめていくが、木之助だけは続けていた。ある年、木之助は体調を崩し、門付けに行けなくなる。翌年、再び町に出かけるが、多くの家で断られてしまう。

The correspondence between Carrie Allsop and David Mayer reveals, piece by piece, the painful details of a devastating affair between their spouses. With each commiserating scratch of the pen, they confess their fears and bare their souls. They share the bewilderment over how things went so wrong and come to wonder where to go from here. Told entirely through the letters of two comforting strangers and those of two illicit lovers, Evidence of the Affair explores the complex nature of the heart. And ultimately, for one woman, how liberating it can be when it’s broken.

【小学館の名作文芸朗読】いつもなら、家でわずかの間に姿が見えなくなれば、必ず子供はどうしたと尋ねるのが常であるのに、その日の午後は、なぜか数時間の間、子供を尋ねることをしなかった。

【小学館の名作文芸朗読】戦争に負けて、北海道へ出征中のお父さんが三年ぶりに帰ってきた。ようやく会社に勤めるようになり、今にきっといいことがあると真面目に働く。