エピソード

  • ボイスドラマ「ノルディックベンチ」後編
    2025/03/09
    後編は、舞台を19世紀のノルウェーに移し、「ノルディックベンチ」に刻まれた伝説を描いていきます。厳しい冬の北極の町で、家具職人エミルと聖歌隊の少女カレンは出会いました。許されぬ恋、離れゆく運命、そして吹雪の中の決断。このベンチが、なぜ「永遠の愛を見守る」と語り継がれるようになったのか─その答えが、ここにあります。前編とは違った、静かで切ない物語。【登場人物のペルソナ】・エミル(25歳)=ノルウェーの『北極の町』アルタに住む家具職人。教会に頼まれて礼拝堂のベンチを作っている。カレンと出会い恋に落ちる。2人で語り合った思い出をいつまでも残すために、ベンチに北極の星座の装飾を彫る(CV:日比野正裕)・カレン(18歳)=クリスマスの時期になると小さな村を回る聖歌隊のなかの1人。初めてアルタにやってきたとき、エミルと出会い、恋に落ちるが、聖歌隊では恋愛は禁止。2人はエミルの作ったベンチに座って語り合った・(CV:桑木栄美里)・■資料/古代遺跡を照らすオーロラの町!ノルウェー・アルタhttps://skyticket.jp/guide/314110/<シーン1/クリスマスの前〜アルタの町の小さな教会の礼拝堂>(SE〜吹雪の音〜教会の鐘の音)神父:「皆さん、今年もクリスマスが近づいてきました。神の恵みに感謝し、心を一つにしてその日を迎える準備をしましょう」エミル:ノルウェー。北極の町、アルタ。19世紀の中ごろ。田舎町の小さな教会で、年老いた神父が語り出す。神父:「来週には聖歌隊もやってきます。この礼拝堂もいつもとは違った温かな歌声で満たされるでしょう」エミル:私の名はエミル。駆け出しの家具職人だ。アルタで生まれ、アルタで育った。いまは、神父さまに頼まれて、ベンチを作っている。あとは、聖歌隊席に置く4脚のベンチを作ればすべて完了だ。小さな教会だから、ベンチの数も多くない。礼拝堂に3人かけのベンチが10脚。聖歌隊席には2人かけのベンチが4脚。聖歌隊の人数も10人に満たないのだから問題ない。さあ、急ごう。来週、聖歌隊がやってくるまでに、完成させないと。<シーン2/小さな教会に聖歌隊がやってきた>(SE〜教会の鐘の音〜ゴスペル〜曲終わりで)エミル:今年の聖歌隊は1人多い。大人の女性たちに混ざって、1人だけ、多分10代、の少女が歌っていた。ひときわ澄んだ歌声に、心が洗われるようだ。と、感心している場合じゃない。僕はゴスペルを聴き終えると、神父さんに目配せをして工房へと急いだ。(SE〜工房の環境音)今晩無理すれば、あと一脚くらい、ベンチは作れるだろう。少女は1人、立って歌っていた。本当に悪いことをした。罪滅ぼしの意味も含めて、聖歌隊席に追加したベンチには心をこめて北極の星座を彫刻する。北極星(ポラリス)を含む小熊座。ポラリスは、永遠の導きと不変の象徴。これは彼女のために。彼女が座る左端に掘った。北斗七星がしっぽの、大熊座(おおぐま座)。航海や旅路の守り神だから。彼女へ。W字の形をしたカシオペア。美しさと知恵の象徴ってことはこれも彼女かな。<シーン3/小さな教会の礼拝堂に最後のベンチを納品>(SE〜朝の環境音/小鳥のさえずり/ベンチを設置する音)カレン: 「おはようございます」エミル: 「あ」カレン: 「まあ、なんて美しいベンチ」エミル: 「あ、ありがとうございます」カレン: 「やだ、こんな小娘に敬語なんて」エミル: 「いや、だって・・・」カレン: 「カレンって呼んでください」エミル: 「はい、わかりました・・・」カレン: 「あなたのお名前は?」エミル: 「エミルといいます・・・」カレン: 「いいお名前」エミル: 「あ、ありがと・・・」カレン: 「ベンチに彫ってあるのは星座?」エミル: 「うん、北極の星座」カレン: 「へえ〜。夜じゃないのにキラキラ輝いてる」エミル: 「金箔と銀箔を埋め込んであるから」カレン: 「座ってもいいかしら、エミル」エミル: 「あ、どうぞ・・・カレン・・」君のために作ったんだ・・・とは言えなかったけど。カレンは、右端のカシオペアに座った。ギリシャ神話のカシオペアは、美しさを誇示するキャラクター...
    続きを読む 一部表示
    13 分
  • ボイスドラマ「ノルディックベンチ」前編 
    2025/03/09
    インテリアデザインの世界に生きる若き二人─建築士の彼と、インテリアコーディネーターの彼女。最悪の出会いから始まる二人の関係が、1年という時間の中でどのように変わっていくのか。北欧家具のデザインと、伝説のベンチがどんな意味を持つのか。「インテリア」とは、単なる家具や空間の話ではなく、「人の暮らしと記憶を紡ぐもの」でもあります。その本質が、この物語を通じて少しでも伝われば嬉しいです。そして、この物語は Spotify・Amazon・Apple などのPodcastプラットフォーム、服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイト でもお聴きいただけます。【登場人物のペルソナ】・男性(25歳)=大手の建設設計会社で働くエンジニア。働きながら将来的にはインテリアデザイナーを目指して勉強している。12月の声を聞いた頃、本社東京への転勤の話が持ち上がる(CV:日比野正裕)・女性(26歳)=ハウスメーカーで自社物件のインテリアコーディネーターをしている。海外研修をしたくて入社した当初から人事部に志望を出していた。来春のLA支社開設に伴い、支社専属コーディネーターの候補として自分の名前があがっていた(CV:桑木栄美里)【Story〜「ノルディックベンチ/前編」】※今回は試験的にモノローグがシーンごとに変わります<シーン1/最悪の出会い(1年前)>(SE〜展示会の環境音/BGMはクリスマスソング)女性:「正直に言わせてもらいますけど、この家具。 北欧風のダイニングってテーマに全然合ってないですよね。 まず、シルエットが重すぎる。 北欧家具の魅力って、シンプルで軽やかなラインと、 視覚的にも空間的にも“抜け感”を生むデザインにあるんです。 これじゃ、空間全体が圧迫されてしまう」男性: インテリアショップのワークショップ。 出品者同士で語り合うオフ会で いきなりの先制パンチ。 彼女、確か、ハウスメーカーのインテリアコーディネーターだったよな。女性:「素材のチョイスも疑問ね。 北欧スタイルは、オークやアッシュみたいに明るい色味の天然木材が主流でしょ。 でもあなたのベンチは色味が暗くて、まるで重厚な和風家具みたい」男性:「な・・」女性:「あと、プロポーションがアンバランスだわ。 チェア自体が大きい割に、座面の高さが低すぎる。 北欧のダイニングセットは、家族や友人が集まる“ソーシャルスペース”。 座り心地やテーブルとの相性をもっと考えるべきじゃないですか?」男性:「この・・言わせておけば・・」 しかし、確かに言われることには筋が通っている。 そもそも僕はまだプロのインテリアデザイナーじゃない。 今回、プロアマ問わずに作品を募っていたワークショップに出品したんだ。 僕は大手の建設コンサルタント会社で働く建築設計士。 まだ4年目だけど、二級建築士の資格を持って建築図面を引いている。 でも今日のワークショップは仕事じゃない。 実はいま、インテリアデザインの勉強をしているんだ。 それで、『北欧デザイン』をテーマにしたこのワークショップに 作品を作って応募したってわけ。 撃沈。 苛立って睨みつける僕に、彼女は余裕の笑みを返してきた。<シーン2/会長宅リフォームのプレゼン>※最悪の場合、会長は湯淺・・(SE〜プレゼンルームの環境音)女性:「今回の会長宅のリフォームでは、北欧スタイルを取り入れたいと思います。 自然素材の家具と柔らかな間接照明を活かした温かみのある空間。 リビングには、明るいオーク材のフローリングと、 シンプルなラインのソファを中心に、家族が集まりやすい配置を考えました。 壁面は自然光を反射するためのライトグレーのペイント。 昼間でも柔らかな光が部屋全体に広がるようにしています・・」会長:「北欧スタイルねえ。 良さはわかるんだけど、ちょっと軽くないかね」女性:「もちろん、会長のおっしゃる重厚感も大切だと考えています。 ダイニングにはウォールナットのテーブルを配置して、 高級感と重厚感を演出しました」会長:「ウォールナットも悪くないんだけどなあ。 なんかピンとこないんだよ」女性:「そうですか・・」男性:「会長」会長...
    続きを読む 一部表示
    11 分
  • ボイスドラマ「家族の食卓/もうひとつの物語」後編
    2025/03/08
    東京での生活が始まり、紅葉は夢を追いかけて日々奮闘します。けれど、思い描いていた理想と、現実の厳しさは違うもの。そんな中、彼女にとって心の支えとなるのは、先輩との交流、そして父の言葉でした。「家具は、家族をつなぐもの。」父の仕事に無関心だった紅葉が、ある仕事を通じてその意味を知ることになります。そして迎える、久しぶりの帰省。紅葉は、父とどんな言葉を交わすのでしょうか。それでは、後編をお楽しみください。【登場人物のペルソナ】・娘:紅葉(くれは)/声優の卵(21歳)=真面目で一途。子供の頃から声優に憧れ、夢を追いかけて東京へ上京する。感情を表に出すことはあまり得意ではないが、家族への深い思いを胸に秘めている。実家の家具屋で育ったため、無意識に家具に対する愛着があるが、家業を継ぐという両親の期待に反発していた(CV:桑木栄美里)・先輩:冬紀(25歳)/若手声優=沖縄出身。優しく親切で、自然体で人に接するが、実は沖縄での家族や地元を大切に思っており、東京での生活にも孤独を感じることがある。娘にとって、東京での厳しい生活の中で心の支えとなる先輩。彼の優しさに触れるたびに、紅葉は自分の父の面影を感じ、心の距離が近づいていく(CV:日比野正裕)<シーン1/声優養成所>(SE〜養成所の環境音)娘: 「おつかれ様でした!」先輩: 「おつかれ!今日もバイト?」娘: 「はい!」先輩: 「たしか・・フィットネスジム・・だっけ?」娘: 「はい、自由な時間に働けるので助かってます」先輩: 「だけどあんまり無理しないようにね。 昼も、和食屋さんでお皿洗ってるんでしょ? うちのレッスンは、ダンスもまざってるから体力消耗するし」娘: 「あ、ダンスは小さい頃から踊ってたんで」先輩: 「それでも疲れる。人間だから」娘: 「大丈夫です!」先輩: 「まあ、若いからがんばれるんだろうけど」娘: 「ありがとうございます!」先輩: そういえば、この子、最初の挨拶で面白いこと言ってたよな。 なんだっけな。え〜っと・・■一瞬、回想シーン娘: 「みなさん、はじめまして! 今日から養成所でお世話になります!よろしくお願い申します! 養成所って、私にとっては夢を育てる場所。 だから、”養成”という文字は、フェアリーの”妖精”。 私はいつも脳内変換しています!」先輩: それで、記憶に残ってるんだよな。 人に覚えてもらう、ってのもこの仕事じゃ重要だから。 実際僕もそれ以降、彼女のこと気になってるんだよな。<シーン2/夜の渋谷/バイト終わりの紅葉>(SE〜繁華街の環境音)娘: 「お先に失礼します!」先輩: 「あれ?」娘: 「あ、先生!」先輩: 「おいおいやめてくれよ、こんな往来で”先生”だなんて」娘: 「だって先生じゃないですか?」先輩: 「養成所でレッスンしてるってだけだろ。 せめて”先輩”にしてくれ。 僕はまだ25歳なんだぜ」娘: 「年齢なんて関係ないと思います。 たとえ小学生だって、私の師匠なら”先生”だわ」先輩: 「そうか。 にしても、遅くまでバイト、がんばってるね」娘: 「はい。 だって東京って家賃すっごく高いんだもの」先輩: 「君は東京の人じゃなかったね」娘: 「そうです、東京でてきてびっくりしました。 バイトしてもバイトしても家賃と授業料に消えていく感じ」先輩: 「そうだよなあ、駆け出しの声優は結構バイトしてるもんなあ。 ましてや、養成所なら出て行く方が多いだろうし」娘: 「そうなんです。だから自炊もしてるんですけど 東京は物価も高い」先輩: 「自炊してるんだ。立派なもんだ」娘: 「なんで?たんに生活費を浮かすためですよ」先輩: 「自炊は体にもいいだろ。 とにかく体が一番だからな。 あとは、規則正しい生活を送ること。 ってそれは難しいか。 まあ、無理せずにがんばって」娘: 「先輩」先輩: 「ん?なんだ?」娘: 「先輩って、お父さんみたいですね」先輩: 「なんじゃ、それ? まだ25だって言っただろ」娘: 「ふふ」先輩: 結局、彼女とは、明るい夜の街をいつまでも話しながら歩いた。 話は尽きず、一駅歩くくらいのボリューム...
    続きを読む 一部表示
    8 分
  • ボイスドラマ「家族の食卓/もうひとつの物語」前編
    2025/03/08
    「家族の食卓/もうひとつの物語」は、家具職人の父と、声優を夢見る娘の心の交流を描いたものです。「家族の食卓」は、単なる食事の場ではなく、思い出や愛情が積み重なる特別な空間。けれど、親子の関係はいつも順風満帆とはいかず、時にはすれ違い、ぶつかることもあります。それでも、どこかでお互いを思い合っている—そんな二人の物語をお届けします。本作は 服部家具センター「インテリアドリーム」 の公式サイトをはじめ、SpotifyやAmazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームでもお楽しみいただけます。◾️登場人物のペルソナ・娘:紅葉(くれは)/専門学校生(20歳)=真面目で一途。子供の頃から声優に憧れ、夢を追いかけて東京へ上京する。感情を表に出すことはあまり得意ではないが、家族への深い思いを胸に秘めている。実家の家具屋で育ったため、無意識に家具に対する愛着があるが、家業を継ぐという両親の期待に反発していた(CV:桑木栄美里)・父(59歳)=インテリアショップのオーナー兼家具職人。無口で職人気質、細やかな技術と頑固さを持ち合わせるが、家族への愛情は深い。言葉では多くを語らないが、家具を通じて娘に自分の気持ちを伝えようとしている。娘が家業を継がずに上京することを不安に感じ、心配しながらも彼女の夢を応援したいという気持ちを隠している(CV:日比野正裕)【Story〜「家族の食卓/もうひとつの物語/前編」】<シーン1/20歳の食卓>(SE〜食卓の環境音)父: 「声優・・? そんなフワフワした職業じゃなくて、まじめに将来を考えなさい」娘: 「別にうわついてなんかいないもん! なんにも知らないくせに」娘: 売り言葉に買い言葉。 喧嘩なんて、したくもないのに・・ お父さんなんて、大っ嫌い。父: 「おまえには、いずれうちの家業も継いでもらわないと」娘: 「継がないから。 私、家具なんて興味ない」父: 「なんだと」娘: お父さんったら、言ってることが、まるっきり昭和。 タイムマシンに乗って1970年代に戻ったみたい。 って、生まれる前の時代なんて知らんけど。父: 「大学を卒業したら家の手伝いを・・」娘: 「大学卒業したら東京へ行くの」父: 「と、東京!?」娘: 「卒業後は1人暮らしするって、ずうっと言ってるじゃない」父: 「東京なんて聞いてないぞ」娘: 「東京じゃないと、ちゃんとした声優事務所なんてないもん」 父: 「母さんは知ってるのか?」娘: 「お母さんにはもう話したから」父: 「なに・・?」娘: 「賛成してくれたもん。 お父さんだけだよ。 そんな古臭いこと言って反対してるのは・・父: 「うるさい・・」娘: 怒りの感情は6秒で収まるっていうけれど、 お父さんのテンションもだんだん下がっていく。 結局、私の希望は認められ、晴れて春から1人暮らしとなった。<シーン2/東京〜アパート探し>(SE〜東京の雑踏)娘: 「お父さん、 何回も言ってるけど、お部屋くらい自分で探せるって」父: 「ばか言うな。 なにも知らない田舎者がアパート探そうと思ったって 不動産屋にいいように騙されるだけだ」娘: 「ちょっと、それ、不動産屋さんで言うせりふ?」 少し困ったような表情を見せたあと、 不動産屋さんは手際よく、いくつか部屋を見せてくれた。 これが、内見、ってやつ? (SE〜鍵を開錠する音)父: 「ここはだめだ。 リビングが南向きじゃないと、陽も当たらないし、 電気代もかかるからだめだ」娘: このご予算では、これ以上のお部屋はちょっと・・ と言って、不動産屋さんが口籠る。 結局、4件目の内見でやっと、少しだけ明るい部屋に出会った。 とは言っても、電気が通っていないと、ほんのり暗い。 私は、薄暗い部屋の真ん中に立って、あたりを見回す。 娘: 「ねえ、お父さん。 お部屋って、な〜んにもないと、 こんなに暗くって、寒いんだ」父: 「ああ、そうだ。 だから、どんな部屋にも、まず食卓を置くんだよ」娘: 「こんな狭い部屋に食卓なんて置いたら、よけい狭くなっちゃう」 父: 「狭くなるんじゃない。あったかくなるんだよ」娘: 「え・・」 父: 「別に大きな食卓を置け、って言...
    続きを読む 一部表示
    7 分
  • ボイスドラマ「オーロラの彼方に」後編
    2025/03/06
    前編では、オーロラに魅せられたヒロインと、彼女を想う先輩研究者の静かな交流が描かれました。後編では、物語が大きく動きます。研究に打ち込みすぎて、自分の体を顧みない彼女。そんな彼女がある日、倒れてしまう…。「オーロラ姫」を救ったのは、科学でもデータでもなく、たった一つの“想い”でした。この物語は、科学と愛、そして眠りが交差する不思議な縁の物語。果たして、彼女は「本当に安らげる場所」を見つけることができるのでしょうか?【登場人物のペルソナ】・女性(26歳)=大学院生で天文学を専攻。太陽風と地球の磁場の相互作用によって生じるオーロラについての研究に没頭している。最近、研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールにより、睡眠障害に悩まされている。オーロラの研究にのめり込みすぎているため、周りからは尊敬と揶揄をこめて「オーロラ姫」と呼ばれている(CV:桑木栄美里)・男性(28歳)=女性と同じ大学院で天文学を研究している先輩。博士号終了後も国立天文台からのオファーを期待してポスドク(博士研究員)としてキャリアを積んでいる。「オーロラ姫」のことを慕っているが、なかなか言い出せないでいる(CV:日比野正裕)<シーン1/先端科学研究所>(SE〜ラボの環境音)女性: 「スーパーカミオカンデからのオファー!?私が?」男性: 彼女が通常より1オクターブ高い音階で驚く。 まあ、無理もない。 大学が運営する先端科学研究所で天文学を研究して、 去年の年末に、オーロラの出現を予測したんだから。 オーロラ姫の面目躍如だ。 それにしても、スーパーカミオカンデとはね。 東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の宇宙素粒子観測装置。 ニュートリノという素粒子を観測する施設からのオファーか。 期待の高さがわかるってもんだな。女性: 「去年のオーロラ出現以来、 毎日毎日観測室とデータ解析室の往復を繰り返してるのよ。 睡眠障害だった1年前より、睡眠不足だわ」男性: そうだった。 オーロラ姫はずうっと睡眠障害で悩んでいたんだ。 彼女の言葉を聞いた僕は、いてもたってもいられなくて いろんな文献を調べたんだっけ。 あ、いや。 彼女のことが好きだとか、そういう直接的な意味じゃなくて。 なんとなく・・・ あれ?やっぱり、好きなのかな・・・ まいいや。 それで結局、治療もさることながら ベッドや寝具も重要、と厚労省のガイドブックにあったから。 足を向けたのが、インテリアショップ。 そこで真っ先に目についたのが、電動リクライニングベッドだった。 高機能なツーモーターでありながらリーズナブル。 これなら研究員の僕でも手が出るかな・・ なんて思ってたらそのネーミングを見て驚いた。 電動リクライニングベッド”オーロラ”。 まるで、僕の心を突き動かすように 目が離せなくなった。 そのとき、同じベッドを見つめていたのが、なんとオーロラ姫。 偶然はドラマを生む。 なんてことはありえないんだな。 そのあと、少しだけ彼女と話し、お茶を飲んで別れた。 彼女と2人っきりの空間で話をしたのは、 あとにも先にもこの日だけ。 僕の思いは、オーロラの光のように、儚く消えていった。<シーン2/先端科学研究所(実験室)>(SE〜ラボの環境音)女性: 「あら?今日は先輩と2人だけ?」男性: え? あ、そうか。 今日は休日だったっけ。 最近はみんな、休日は休んでるからなあ。 当たり前か。 待てよ。 オーロラ姫は・・・彼女は・・ 全然休んでないんじゃないか。 嫌な予感。 不安が心をよぎる。女性: 「お腹すかない? なんだか血糖値が下がってきちゃったみたい」男性: 「ああ、もうこんな時間じゃないか。 夢中になって観測してると、時間も忘れちゃうんだな」女性: 「そうよぉ。 相対性理論でいうタイムマシンの原理ね」男性: なんか違うような気もするけど。 ああ、体の疲れがピークだ。 力を抜くと瞼が閉じていく。 そのとき・・・(SE〜人が倒れる音とガラスの割れる音)男性: 「オーロラ姫!?」 大きな音に目を見開くと・・ 高性能天体望遠鏡が床に倒れ、 その上にオーロラ姫が横たわっていた。 ...
    続きを読む 一部表示
    10 分
  • ボイスドラマ「オーロラの彼方に」前編
    2025/03/06
    オーロラを実際に見たことがありますか?夜空に揺らめく幻想的な光のカーテンは、まるで地球からの贈り物のように美しく、見る者の心を奪います。本作の主人公は、そんなオーロラに魅せられた女性研究者。彼女は科学の視点からオーロラを追い求めていますが、研究に没頭するあまり、睡眠障害に悩まされています。そんな彼女を密かに見守る先輩研究者との何気ない日常と、ある“運命的な出会い”が彼女の未来を少しずつ変えていきます。この物語は、天文学と家具が交差するちょっと不思議なラブストーリー。果たして「オーロラ姫」は、心休まる眠りを手に入れることができるのでしょうか?登場人物のペルソナ・女性(26歳)=大学院生で天文学を専攻。太陽風と地球の磁場の相互作用によって生じるオーロラについての研究に没頭している。最近、研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールにより、睡眠障害に悩まされている。オーロラの研究にのめり込みすぎているため、周りからは尊敬と揶揄をこめて「オーロラ姫」と呼ばれている(CV:桑木栄美里)・男性(28歳)=女性と同じ大学院で天文学を研究している先輩。博士号終了後も国立天文台からのオファーを蹴ってポスドク(博士研究員)としてキャリアを積んでいる。「オーロラ姫」のことを慕っているが、なかなか言い出せないでいる(CV:日比野正裕)【Story〜「オーロラの彼方に/電動ベッド『オーロラ』/前編」】<シーン1/先端科学研究所>(SE〜ラボの環境音)男性: 「日本でオーロラ? そんなの・・無理だよ」女性: 「無理じゃない! だって、最近の太陽フレア、異様に活発化してるの知ってるでしょ」男性: 「そうだけど、地磁気のデータ見ててもそこまでじゃないと思う」女性: 「20年前には、実際に観測されてるわ」男性: 「あのときはすごく長い時間、磁気嵐が吹いてたからね」女性: 周りのみんなは私を見て笑う。 ここは、大学の先端科学研究所兼観測所。 私は大学院生として天文学を専攻しながら、オーロラの研究に没頭している。 オーロラ。 誰もが知っている、幻想的な大気の発光現象。 太陽風に運ばれたプラズマが電離圏の分子や原子と衝突して発光する。 ”太陽風”なんて、ロマンティックな言葉。 太陽の黒点で爆発が起きると、プラズマが吹き出すの。 真空の宇宙空間を吹き抜けていく”神秘の風”。 太陽の風と地球の磁場が作り出す、光のカーテン。 ああ、だめ。 オーロラのことを話し出すと、止まらないわ、私。 だから、研究所のみんなは、私のことを『オーロラ姫』と呼ぶ。 名前通り、私の研究課題は、オーロラの発生メカニズムとその予測モデルの開発。 どちらも結構いいところまできてるんだけどなあ。 でも私、オーロラにのめり込むあまり、 眠るのを忘れて、いまや睡眠障害。 研究のプレッシャーと不規則な観測スケジュールが原因ね。男性: 「なんか、顔が疲れてるよ。 大丈夫?オーロラ姫」女性: あ〜。やっぱ、わかるよねえ。顔に出ちゃうんだもん、疲れが。 彼は天文学の博士号を持つポスドク、つまり博士研究員。 短期契約を結ぶ前は国立天文台の研究機関にいたそうだ。 ま、つまり天文学のエリートね。 天才肌って感じ。男性: 「今夜はもう帰って休んだら? 明日また夕方からくればいいじゃん」女性: 「そっか。まあ、昭和じゃないしね。 でも、帰ってもなかなか眠れないんだなあ」男性: 「不眠症?ストレスで?」女性: 「う〜ん。 毎日好きな研究に打ち込んでるんだから、ストレスじゃないと思う」男性: 「好きなことやってたって、こん詰めれば精神はダメージ受けるよ」女性: 「かもね」 彼は小さく笑って、データ解析室を出ていった。 2歳年上の先輩。 なのに私、タメ口だ。 それは、彼が『みんな仲間なんだからタメ口でいいよ』 って言ったから。 私は、観測室へ行き、大型望遠鏡を覗く。 最近、太陽活動が活発化している。 「太陽フレア」と呼ばれる爆発が、強い太陽風を地球に送り込む。 オーロラが見られるのは、緯度60°から70°の極地だけ。 だけど、異変を感じているのは私だけじゃない。 北海道...
    続きを読む 一部表示
    11 分
  • ボイスドラマ「嫁入りトラックに乗って」後編
    2025/03/05
    30年の時が流れました。かつて「嫁入りトラックなんて絶対に嫌!」と叫んでいたハルナも、今や一人の母親。そんな彼女の娘・えみりが、名古屋へと嫁ぐ日がやってきました。「時代が変わったら、伝統も変わる?」「親の想いは、どうやって受け継がれていくの?」30年前と今、母と娘、それぞれの立場で迎える“嫁入り”の物語。時代を超えて紡がれる、家族の愛のかたち。どうぞ最後まで見届けてください。◾️登場人物のペルソナ(※設定は毎回変わります)・お嫁さん(23歳)=ハルナ・・・東京の大学時代に知り合った彼と婚約(CV:ハルナ)・お婿さん(23歳)=マサヒロ・・・浅草生まれ浅草育ちの生粋の江戸っ子(CV:日比野正裕)・嫁の母(44歳)=エミリ・・・名古屋生まれ名古屋育ち(CV:桑木栄美里) ↓・お嫁さん(30年後=54歳)=ハルナ・・・結婚してから30年目。娘が嫁いでいく・お嫁さんの娘(29歳)=えみり・・・東京の同棲していた彼と結婚して名古屋へ・娘の彼氏(27歳)=まさひろ・・・娘と同棲していたが心機一転名古屋で彼女の両親と同居へ<シーン1/嫁入りの日>(SE〜菓子まきの音)エミリ: 「嫁入りよぉ〜!」ハルナ: 「もう、おかあさん!恥ずかしい!」エミリ: 「なにが恥ずかしいもんかい。 私もここへ嫁ぐ日は、こうやって母さんに送り出してもらったし、 私の母さんも、母さんの母さんに送り出してもらったんだよ」ハルナ: 「でも、恥ずかしい」マサヒロ: 「嫁入りよぉ〜!」ハルナ: 「あなた!」エミリ: 「あなた、きちゃだめじゃないの、式の前に」マサヒロ: 「す、すいません。お二人じゃ大変だろうと思って」ハルナ: 「おかあさん、なにニヤニヤしてんのよ」エミリ: 「ううん、思い出しちゃってさ。 私が嫁ぐ日の朝、とうさんの家じゃちょっとした騒動が起こってたんだ」ハルナ: 「どんな騒動?」エミリ: 「新郎がいなくなったぞぉ、って」ハルナ: 「ええええええええ?」マサヒロ: 「それって・・・」エミリ: 「そう。いまのあなたと同じよ」ハルナ: 「おとうさんもおかあさんちに来ちゃったんだ」エミリ: 「うん。でもうちの親はしきたりに厳しかったから、 ”縁起悪い!””式は中止だ!”なんてわめき散らして」ハルナ: 「おじいちゃん、気が短かったもんねえ」エミリ: 「おばあちゃんもよ」マサヒロ: 「はは・・・」エミリ: 「裏口から、そっと追い出して。 ”いいか、見つかったら問答無用で破談だからな”って」ハルナ: 「おどしじゃん、それ」エミリ: 「で、こそこそ抜け出してったら、 近所の子どもに見つかっちゃって」ハルナ: 「あ〜あ」エミリ: 「それがね。菓子まきの手伝いだと勘違いされて、 ず〜っと追いかけられたんだって」ハルナ: 「おとうさんらしい」マサヒロ: 「ボ、ボク、裏口から出ていきます」エミリ: 「いいのいいの。あなたは誰にも顔なんて知られていないから。 それに、もうそんな時代じゃないでしょ」ハルナ: 「おかあさん、なんか、熱でもあるの」エミリ: 「もう〜」マサヒロ: 「あのう・・・」エミリ: 「なあに?」マサヒロ: 「どうして縁側に家具や着物が置いてあるんですか?」エミリ: 「ああ、あれ? 本当はね、嫁入りトラックがお婿さんちに着いたら そこの縁側に並べるのがしきたりなのよ」マサヒロ: 「うちの?」ハルナ: 「無理じゃん、アパートだし」エミリ: 「でしょ。 だから、うちの縁側へ置いたの」ハルナ: 「へええ」エミリ: 「ご近所さんたちみんなから、 ”立派な桐の箪笥だわ”とか”ええもんしつらえたなあ” とかって、まあ、ものすごい評判よ」ハルナ: 「おべんちゃら言われて、ご祝儀渡したんでしょ」エミリ: 「当たり前じゃない。 ほら、あんたたちもこれ持って行きなさい」マサヒロ: 「なんですか?」エミリ: 「ご祝儀袋に決まってるでしょ」ハルナ: 「なんで、そんなもんがいるの?」エミリ: 「なに言ってんの? 嫁入りトラックは、バックできないって言ったでしょ」マサヒロ: 「え?」エミリ: 「だから、細い道とかにさしかかると、周りの車は必ず道を譲ってくれるわ...
    続きを読む 一部表示
    9 分
  • ボイスドラマ「嫁入りトラックに乗って」前編
    2025/03/05
    結婚。それは人生の大きな節目であり、家族の文化や価値観が交差する瞬間でもあります。名古屋には「嫁入りトラック」という独特の風習があります。紅白幕を張ったトラックに嫁入り道具を載せ、ご近所に菓子をまきながら、新しい家庭へ向かう――。派手で豪快なこの風習に、「そんなの時代遅れ!」と驚く若者もいれば、「昔は当たり前だったよ」と懐かしむ人もいるでしょう。この物語は、東京育ちのハルナと、生粋の江戸っ子マサヒロ、そして伝統を重んじる名古屋の母・エミリが織りなす“嫁入り騒動”の一幕です。「伝統って、なんのためにあるの?」「本当に必要なものって、なんだろう?」笑いあり、涙ありの家族の物語を、どうぞお楽しみください。◾️登場人物のペルソナ・お嫁さん(23歳)=ハルナ・・・東京の大学時代に知り合った彼と婚約(CV:ハルナ)・お婿さん(23歳)=ヒビノ・・・浅草生まれ浅草育ちの生粋の江戸っ子(CV:日比野正裕)・嫁の母(44歳) =エミリ・・・名古屋生まれ名古屋育ち(CV:桑木栄美里)【Story〜「嫁入りトラックに乗って/婚礼家具/前編」】<シーン1/自宅リビングにて>(SE〜戸建て/庭に小鳥のさえずり)ハルナ: 「嫁入りトラック〜!? ないないないない。ありえない」エミリ: 「なにを言ってるの。 結婚するときは、菓子まきをして嫁入りトラック。 あたりまえでしょう」ハルナ: 「そんな恥ずかしいこと、絶対にいやだぁ」エミリ: 「恥ずかしいことなんてありません。 みんなやってるんだから」ハルナ: 「うえ〜ん。あなたも、なんか言ってよぉ」マサヒロ: 「あのう、おかあさん。 新居のアパート、前の道は細いのでトラックなんて入れないかも・・」エミリ: 「まだあなたから”おかあさん”と呼ばれる間柄じゃありません!」マサヒロ: 「す、すいません」ハルナ: 「あやまらないで〜。しっかりしてぇ。江戸っ子でしょ」エミリ: 「あなたには名古屋の文化を一度教えてあげないといけないわね」マサヒロ: 「は、はい」ハルナ: 「はい、じゃない」エミリ: 「名古屋人はね、普段は倹約をしてつましく暮らしているの。 だけど、いざというとき。 例えば、娘を嫁にだすときね。 嫁ぐ娘に惨めな思いをさせないために 一生分の荷物を持たせて送り出すのよ。 それが、尾張徳川家のお膝元、名古屋の嫁入りなんです」ハルナ: 「それ、江戸時代の話でしょ」エミリ: 「とにかく! 嫁入りするときは紅白幕の嫁入りトラック! 道が細かろうとなんだろうと新居までたどり着きます!」マサヒロ: 「う・・・」エミリ: 「これも覚えておきなさい・ 嫁入りトラックっていうのは、どんなに道が細くても、前進あるのみ! 間違ってもバックなんてしませんから!」ハルナ: 「雨降ったらどうするのよ」エミリ: 「ハレの日に雨なんて降りません!」<シーン2/家具屋さんにて>(SE〜家具屋さんの商談デスクにて)エミリ: 「絶対にダメです! 桐箪笥と三面鏡と羽毛布団。 この3つがなくて、娘を嫁に出せますか!」ハルナ: 「だーかーらー、江戸時代じゃないんだって。 新居だって、戸建てじゃなくて小さなアパートなんだから」マサヒロ: 「あ、おかあさん。 実は新居には作りつけの収納もあるんです。 それに狭い2DKなんで、箪笥やドレッサーはちょっと・・」エミリ: 「だからまだ”おかあさん”と呼ばないで!」マサヒロ: 「す、すいません」ハルナ: 「毎回謝るなっつーの」エミリ: 「私も、私の母も、そのまた母も、代々み〜んな 名古屋で生まれ、名古屋で育ったんです。 東京もんの余所者に、名古屋のしきたりについて あれこれ言われたくありません!」マサヒロ: 「は、はい」ハルナ: 「ちょっとぉ!しっかりしてよ!江戸っ子なんでしょ」マサヒロ: 「そんな、君まで江戸っ子とか、時代劇みたいなこと言わないでよ」エミリ: 「ごちゃごちゃ言ってないで。 ああ、お父さんが生きてたら、こんな、余所者にバカにされることなんて なかったのに。よよよ・・・」ハルナ: 「やめてよ、おかあさん。 家具屋さんも困っちゃってるじゃん」エミリ...
    続きを読む 一部表示
    9 分