エピソード

  • ボイスドラマ「美女と天狗〜奥飛騨温泉郷・上宝の平湯温泉にある天狗橋と天狗岩の伝説?」
    2025/09/18
    愛は呪いを解く鍵となるのか。奥飛騨の伝承「天狗岩」と「天狗橋」をモチーフに描かれる、幻想的で切なくも温かい“嫁入り譚”。親を亡くし、絶望の中で人柱となった少女・箏と、山の神の怒りによって姿を変えられた大天狗。二人の出会いは、呪いと運命を変える大きな転機となる──。現代の高校生・マコトとストーリーテラー・シズルの会話を通じて語られる、どこか懐かしくて、新しいファンタジー。終盤に訪れる“静かな奇跡”に、あなたもきっと心を奪われることでしょう。【ペルソナ】・シズル(35歳)=道の駅 奥飛騨温泉郷上宝のストーリーテラー(CV=日比野正裕)・マコト(17歳)=高根町の高校生。郷土史研究部=部員1名の部長(CV=山﨑るい)・箏(こと=17歳)=伝承の中で天狗に嫁入りする美女(CV=山﨑るい)・天狗(年齢不詳=35歳)=奥飛騨温泉郷上宝に住む天狗=もののけ(CV=日比野正裕)【参照:天狗岩/奥飛騨温泉観光協会】https://www.hirayuonsen.or.jp/article.php?id=10170<プロローグ/道の駅 奥飛騨温泉郷上宝>◾️SE/奥飛騨温泉郷の環境音「むかぁし、むかし。君が生まれるより、ずう〜っとずっとずっとむかし。この奥飛騨温泉郷・上宝には天狗が住んでいました」「(ゴクッ)」※唾を飲み込む音「天狗って知ってるかい?」「うん。知ってるよ。顔が赤くて、鼻がこ〜んなに長い妖怪でしょ」「妖怪?まあ、間違ってはいないけど・・」「妖怪じゃないの?」「妖怪、っていうよりもどっちかって言うと、神様に近いかな」「神様!?だから神隠しとかするんだ」「ああ〜。そうかもね。でもほら、京都の鞍馬寺とか栃木の古峯神社(こぶじんじゃ)とかは有名でしょ」「ふうん。知らないけど」「『天狗』って、元々は中国から伝わった言葉なんだよ。天(あま)かける狗(いぬ)と書いて、隕石や流れ星のことだったんだ」「すご〜い!シズルさん物知り〜」「大人をばかにするんじゃないの。今日はね、『天狗の嫁入り』というお話だよ」「やった!」道の駅 奥飛騨温泉郷・上宝で毎月1回開催される「昔話の読み聞かせ」。奥飛騨温泉郷・上宝の施設が持ち回りで担当している。今月は、新穂高温泉の、うちの施設がストーリーテラー。で、私が、読み聞かせするってわけ。まあ、昔、仕事でよくプレゼンをしてたから、人前でしゃべる、ってのは嫌いじゃないんだけど。今日は初日で平日だから、第一部のお客さんはたった1人。高根村から来た17歳の高校生マコトくん。なんでも、郷土史研究部の部長なんだって。部員は一人だけど?そうですか〜。今日の話、実は私の創作、フィクションなんだ。平湯温泉にある、天狗岩や天狗橋にインスパイアされて作った物語。ほら、さっきもマコトくんが言ってたじゃない。天狗って妖怪だって。神隠しとか、あまりいいイメージじゃないよね。私が天邪鬼だから、ってわけじゃないけど、ストーリーはそんなイメージを払拭するもの。なんとファンタジー作品なんですが・・「ちょっとシズルさん。早く続き、教えてよ」「ああ、ごめんごめん。じゃあ続きね」<『天狗の嫁入り』シーン1/人柱>◾️SE/村の雑踏「その村には20年前から天狗が住んでいました。天狗に対して村人たちが一番恐れるのは、神隠し。今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれていたのです。そのため、毎年1回、秋祭りのときに、天狗に人柱をひとり捧げていました。人柱となるのは、村の最高齢の老人。娘や子供の格好をして、人柱になっていたのです。ところが今年、人柱になるのは、17歳の少女、箏(こと)。この春、箏の両親は山崩れに巻き込まれて命を落としました。それから箏は天涯孤独に。自暴自棄となり人柱として名乗り出ました。村人たちは箏を一生懸命説得しますが、無駄でした。箏は、人柱として慣例通り天狗橋を渡り、天狗岩へ登っていきます。岩の上に寝転ぶと、目を閉じました。<『天狗の嫁入り』シーン2/箏と天狗>◾️SE/深い山中のイメージ横になった箏を包み込むように、いきなり風が吹きました。目をあけると、そこは空の上。天狗岩は笠ヶ岳の雲の上に浮かんでいました。...
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    19 分
  • ボイスドラマ「お助け小屋の鬼婆〜ならず者には容赦なく少女たちには母のような優しさを持つ伝説の”ばさま”」
    2025/09/11
    命を懸けて少女たちを守った、ある“ばさま”の物語。吹雪の夜、命からがら辿り着いた工女たち。山賊に追われ、給金も誇りも奪われそうになったとき、小さな峠の小屋に現れたのは「鬼婆」と呼ばれる年老いた女性だった。男衆には容赦なく、少女たちには母のような優しさを。鋭くも温かなまなざしで、すべてを背負った“ばさま”の姿に、胸が熱くなります。明治の日本を影で支えた工女たちと、名もなき守り人——どうぞ心してお聴きください。【ペルソナ】・鬼婆(年齢不詳70歳)=野麦峠お助け小屋の主、男衆には厳しく工女に優しい(CV=山﨑るい)・政井辰次郎(22歳)=飛騨の河合村出身。河合村政井みねの兄(CV=日比野正裕)・政井みね(14歳-20歳)=かつて野麦峠を越えた工女のひとり(CV=山﨑るい)・山賊(30-40代)=野麦峠を根城とする山賊・追い剥ぎ(CV=日比野正裕)【原作:山本茂美「あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史」(角川文庫)】※32頁〜https://amzn.asia/d/eEQROC8<シーン1:1903年・冬の晩1>※シーンはすべて野麦峠のお助け小屋/ソマ衆=野麦の原始林で働く屈強な木挽きたち◾️SE/吹雪の音〜木戸を激しく叩く音/外から響く山賊の声「おおい!開けろ!鬼婆さ!いるこたぁわかってる!開けねえと、ぶち破るぞ!」◾️SE/関を引いて木戸を開ける音「るっさいな、いま何時やと思うとる」「おい!ばばあ!小屋に工女が逃げ込んだろう。今すぐここへ連れてこい!」「はあ?そんなもんはおらん!帰れ!」「嘘こいたらただじゃすまんぞ。中をあらためさせてもらうからな!」◾️SE/奥の方で物音「ガタン」「なんだぁ〜、いまの音はぁ?」「ふん。知りたいか。下衆どもが」「なんだと?」「おおい!ソマ衆やぁ!降りてこいやぁ!」「なっ、なに!?」「ソマ衆や!夜食の握り飯できとるで!」「ソマ衆だとぉ!?」「20(ニジュー)しか間に合わなんだで、1人2個じゃ!文句はこいつらに言うとくれや!」「くそっ、お、覚えてろよ!また来るからな!」「二度と来るな!」◾️SE/木戸を強く閉め、関をかける音「ばさま・・」「しいっ!」「ひっ・・」※エキストラ/固唾を飲む「・・・うん、よしよし。もういいだろう。おまえら、大丈夫やったか?」「はい、ありがとうございます。でも・・」「なんだ?どうした?」「給金が・・」「なに!?」「キカヤからもろうた一年分の給金・・わしら、トトマ、カカマの喜ぶ顔を思うて雪の峠越えてきたのに・・山賊たちにとられてしもうて・・もう会わす顔がねえ・・」「いくらだ?」「わしが九十五円五十銭、フデが七十二円十五銭イクが十七円六十九銭、トモが七円四十銭じゃ」※エキストラ/すすり泣き「そうか、わかった」「わかった、ってばさま・・・」わしはそう言って、板張りの床を開けて、脇差を取り出す。「ばさま!?」「相手は2人やな」「はい」「ちょこっとだけ待っとけ。鍵をしっかりかけて、誰が来たって死んでも開けるでねえぞ」「そんな・・・」「心配せんでええ。わしを誰やと思うとる。野麦峠お助け小屋の鬼婆さやぞ!2人ばかしの下衆どもにはやられはせん」「ばさま!!」※エキストラ/驚いて「ばさま!」工女たちの声を背中で受けて、わしは吹雪の中へ出掛けていく。ときは1902年。そう、あれは1時間ほど前のこと。暮れも押し迫った吹雪の夜。工女たちが泣きながらお助け小屋に駆け込んできた。検番もつけず、身ひとつで実家に帰っていく工女たち。懐には、必死で働いた一年分の給金袋。工女の多くは貧しい百姓の出である。年の瀬に家に帰って給金を渡せば、父や母は『これで年が越せる』と泣いて喜ぶ。その金を狙って山賊たちが集まってくる。ただでさえ、命を落とす工女が絶えぬ野麦峠。無垢な少女を狙う外道どもをわしはどうしても許せなかった。<シーン2:1903年・冬の晩2>◾️SE/囲炉裏の音〜「遅なったの。すまんすまん」「ばさま!」※エキストラ/心配からの嬉しみ「ばさま!」「さあさ、甘酒飲んであったまりぃや」「ありがとうございます!これ・・わしらの給金まで・・」※エキストラ/「ありがとうございます」「...
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    20 分
  • ボイスドラマ「ホリデー/後編」
    2025/09/04
    前編で荘川を訪れたよもぎに続き、今回はさくらが朝日町を体験します。薬膳や薬草、そして美女高原に広がる空の下で、彼女は新しいインスピレーションを得ていきます。そして――村芝居の舞台で訪れる運命の再会。偶然の出会いから始まった休日交換は、やがて必然の再会へ。荘川と朝日、二つの里の魅力を舞台に、物語は感動の結末を迎えました。この物語が、あなた自身の旅のきっかけになれば幸いです。【ペルソナ】・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山濃飛バスセンター>◾️朝のバスセンターの雑踏/ステップを降りて深呼吸するさくら「ふう〜っ!気持ちいい〜!」荘川の支所前から高山の濃飛バスセンターまで1時間20分。路線バスの旅って楽しい〜!おのぼりさんみたいに、大きなスーツケースを抱えてバスを降りる。しかも、今日は私、浴衣姿!って、見ればわかるよね。白地に桜の花が満開の浴衣柄。ヒノキのエッセンシャルオイルをさっと振って。エアコンが効いてるバスの中は、浴衣だけだとちょっと寒い。だから薄い羽織を重ねてる。ほら、これも素敵でしょ。透け感のある、淡い桜色の夏羽織。ステップを降りて時計を見ると・・8時前か・・・◾️朝の町を歩く足音まだ陣屋前の朝市は開いてないから、国分寺通りを宮川へ。朝市なんて何年ぶりだろう。なんだかドキドキする。今日の目的は、村芝居のあしらい探し。ここだけの話だけど、今年のテーマはファンタジー。お花の精たちが集まって、夏の終わりを告げる人情時代劇よ。設定はいつものように江戸の元禄時代。え?よくわかんない?じゃあ、見に来てよ。荘川まで。スケジュールは観光協会のサイトに載ってるから。私の役は、桜の精。クライマックスには季節はずれの桜吹雪が舞うんだよ。相手役は、江戸からやってきた役人。ロミジュリの江戸時代版って感じかな。舞台の小道具、あしらいはやっぱり、お花がいいよね。艶やかな花魁たちには、ハイビスカスやアサガオ。恋人役の男の子は・・ひまわり!いろんなお花売ってるといいな。◾️朝市の雑踏「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」鍛治橋(かじばし)に近いお店。お花の苗を売っているおばちゃんに、腰をかがめて話しかける。そのときおばちゃんの前に座っていたのは・・・ミズバショウの柄のグリーンの浴衣を着た女性。手にはラベンダー?の苗。大きなトートバッグを背負って(しょって)・・観光客かしら。おばちゃんは私に向かって、人の良さそうな笑顔で、「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます。行ってみます」私は浴衣が汚れないよう、裾をひるがえして歩いていく。◾️足音「まって」「はい?」声をかけてきたのは先ほどの女性。浴衣の裾にミズバショウが咲いている。「お花を探してるんですか?」「ああ、はい。今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」村芝居だけど・・・「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」だから村芝居なんだけど・・・「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ」私のこと、自分と同じ観光客だと思ってる?ま、荘川からきた観光客、と言えなくもない。荘川も高山市なんだけど。ふふ。「貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「...
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    27 分
  • ボイスドラマ「ホリデー/前編」
    2025/08/28
    飛騨高山を舞台に描かれる、女性二人の“休日交換”の物語。宮川朝市での偶然の出会いから、アプリ「ホリデーシェア」を通じて始まる不思議な体験。薬膳カフェを営むよもぎが、荘川町で見つけた新しい風景と心の揺れをお楽しみください。【ペルソナ】・よもぎ(28歳)=薬膳カフェのオーナー、芯の強い漢方薬剤師(CV=蓬坂えりか)・さくら(28歳)=荘川の村芝居に出演、伝統芸能に興味ある静かな女性(CV=岩波あこ)・朝市のおばちゃん(40歳くらい)=宮川朝市で花の苗を売る女性(CV=小椋美織)<シーン1:高山市街地の宮川朝市から>◾️朝市の雑踏「よもぎちゃん!朝市くるのひさしぶりやな!まめやったか?」「まめまめ!おばちゃんも元気やった?」「今日は何さがしよる?」「薬膳の材料でなんかいいの、ないかな、と思って」「白花(しろばな)ラベンダー、あるで」「ホント?やたっ!」「苗やから、一株もってけ」早起きして来てよかったわ〜、宮川の朝市。3か月に1回くらい。夏から秋へと向かうこの時期は、体調を崩すお客さん、多いから。市場にはあまり出回らない食材を、生産者から買いにくるの。今日はラッキー。花の苗売るおばちゃんに会えたし。なんと白花(しろばな)ラベンダーにも出会えるなんて。イングリッシュラベンダーの貴重な白花。ハーブティーにすれば、香りだけで癒されそう。アロマを抽出して、カウンセリングルームに置いとこうかな。癒しを求めて朝日に来たお客さんもきっと喜ぶわ。「すみません」「はい、いらっしゃい」「ヒマワリってありますか?」季節外れの桜の花が私の前を横切った。上品な檜の香りがかすかに漂う。顔を上げると、腰をかがめておばちゃんに話しかけているのは・・・桜柄の清楚な浴衣を着た女性。桜色のスーツケースを引いて・・観光客かしら。薄紅色の帯も素敵。「切り花かい?うちには切り花は置いてないわなあ。もう少し待てば、陣屋の市が開(あ)くで。あっちに確か切り花の店があったわ」「そうですか・・ありがとうございます」彼女は浴衣の裾をひるがえして、颯爽と歩いていく。◾️遠ざかる足音「まって」「はい?」「お花を探してるんですか?」「ええ、そうですけど・・」つい声をかけてしまった。浴衣姿に見惚(みと)れてしまって、なんて言えない。「今度・・お花を題材にしたお芝居をやるんです」「お芝居?劇団の方ですか?」「あ、そんなたいしたものじゃないです。ただの趣味で・・」「それで高山まで?」「ええまあ・・・そんな感じ。貴女(あなた)は?さっきラベンダーを持ってらっしゃったみたいだけど」「ええ、白花ラベンダー。ハーブティーにしたり、入浴剤にするとリラックスできますよ」「そうなんですか・・」「はい。私、薬膳カフェをやっているので」「まあ素敵。お似合いよ」「ありがとう。このあと陣屋前の朝市へ行かれるんでしょ。よければご一緒にいかがですか?」「本当ですか?」「私も見たいものがあったので」「よろこんで」私たちは肩を並べて宮川沿いを歩いた。言い忘れてたけど、今日は私も浴衣姿。蓬色の浴衣の裾には水芭蕉が咲いている。まるで桜の花とよもぎの青葉が並んでいるような色合い。でも、彼女はスーツケース。私はショルダータイプの大きなトートバッグ。少し厚手のキャンバス地に、ナチュラルレザーのワンポイント入り。私だって、どう見ても観光客だ。はは。たまに外国人観光客が振り返る。せせらぎの音が気持ちいい。<シーン2:よもぎのシェアハウスでアプリインストール>◾️虫の声シェアハウスへ帰ってから、朝市で買ったものをまとめてみた。赤かぶは、すりおろしておろし汁に。体を温める薬膳スープのアクセントになる。朴葉の樹皮は漢方薬に。丹生川のトマトは薬膳スープにもスムージーにもいいな。荏胡麻(えごま)は、血液をサラサラにしてくれる。あとは・・荘川のそばの実、か。これは一緒に陣屋前朝市を見た彼女のセレクト。素敵な女性だったから、つい聞いちゃったのよね。高山の食材で何が一番いいと思う?って。そしたら・・・荘川のそば。だって。...
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    18 分
  • ボイスドラマ「ハッピーアグリーデイ!」
    2025/08/23
    春の出会いが、夏の実りへとつながっていく。飛騨高山・国府町で生まれた、もうひとつの“ももの物語”。『桃花流水〜夢に咲く花』の続編、ボイスドラマ『ハッピーアグリーデイ!』では、収穫の季節を迎えた飛騨桃の果樹園を舞台に、ももと農家のおじいちゃん・おばあちゃんの心あたたまる交流が描かれます。農作業を通して生まれる絆、季節のうつろい、そしてラストに訪れる小さな奇跡──“もも”がどこから来たのか、彼女が運んできたものは何だったのか。国府町の風景とともに、優しい余韻に浸ってください。物語は「ヒダテン!Hit’s Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Apple Podcastなど各種プラットフォームで配信中。小説として「小説家になろう」でも読むことができます。(CV:高松志帆/日比野正裕/桑木栄美里)【ストーリー】[シーン1:7月末/収穫の始まり】<飛騨もものモノローグ>むかしむかし。飛騨の国府(こくふ)という町に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに・・じゃなくて、自分の果樹園に桃の収穫に出かけました。ではおばあさんは?川へ洗濯へ・・行きたかったのですが、腰を痛めたおじいさんと一緒に果樹園へ出かけていったのです・・■SE/ニイニイゼミの鳴き声(初夏のセミ)<おばあさん> 『今年はほんとにあっついなあ、おじいさん。まだ7月やっていうのに』おじいさんは目で返事をします。あたり一面に漂う、うっすらと甘い香り。2人は籠を片手に、丁寧に桃を摘み取っていきます。低いところに実った桃はおばあさん、高いところに実った桃を獲るのはおじいさんの役目ですが・・獲ったあと痛くて腰をかがめないので、大変そう。『おじいさん、すごい汗やな。大丈夫か』『ああ、だいじょう・・・うう』大丈夫じゃなかった。熱中症。そりゃこの暑さだもの。仕方ないけど。力の抜けたおじいさんをおばあさん1人で家まで連れていくのは大変でした。家に着いて、おじいさんを寝かせ、ひと息ついたところで、おばあさんもぐったり。『残りの収穫はもう明日以降でいいやな。熟してまってもしょうがない。わしまで倒れたらどもならん』しばらく休んだあと、よっこらしょ、と立ち上がり、お勝手へ。一服しようと、お茶を沸かしているときでした。『こんにちは』『ん?誰かいな』『あの・・夏休みで高山へ遊びにきた大学生です』『ほうほう』『もも、と申します』『もも!?そりゃそりゃ、めんこい名前やわ』『こちらの農園の方ですか?』『ああ。うちには、わしとおじいさんと、2人しかおらんで』『ほかには?お子さんとかいないんですか?」『おらん。息子は30年前、高校生のとき家を飛び出して東京へ行ったわ。それきり音沙汰もない。よっぽど、畑仕事が嫌やったんやろなあ』「そうなの・・・実は、飛騨ももの収穫体験をさせていただこうとお邪魔したのですが』『収穫体験?桃の?』『はい、グリーンツーリズムで』『なんやて?グリーン・・・』『グリーンツーリズムです。農業体験をしながら農家へ泊まらせていただくこと』『そんなもんがあるんかい?そりゃしらなんだ』『でも、やってるとこ、どこもいっぱいなんですって」それであのう・・・申し訳ありませんが・・・よければ、収穫のお手伝いをしながらこちらに泊めていただけませんか?』『なに?うちに?』『あ、いきなりごめんなさい。もちろん、宿泊代はお支払いします』『いやいや、お金なんていらんやさ。それよりこんな汚いとこに泊まらんでも』『きれいじゃないですか、埃ひとつない』『布団も煎餅布団しかないし』『そんなの関係ありません。飛騨ももの収穫を手伝わせてください!』『いやあ、ちょうどおじいさんが熱中症で倒れてしまってな。しばらく作業を休もうかと思ってたんや』『そんな。桃が熟しちゃう』『そうやな』『私じゃ全然お役に立てないけど、これも何かの縁だと思いませんか』『う〜ん・・』『私、こう見えても、立ち仕事には慣れてるんです』『でもなあ・・』『ヘバったり、泣き言言ったりしません』『そうか・・』『お願いします』[シーン2...
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    13 分
  • ボイスドラマ「臥龍の記憶」
    2025/08/12
    臥龍桜に誓ったのは、たった一度の祝言でした。昭和19年、戦時中の飛騨高山・一之宮。臥龍桜の下で少女ミオリと青年カズヤは、許嫁として再会します。自由も恋も、そして未来もままならない時代の中で、二人が交わしたひとつの約束。それは“この桜が咲く日まで、生きていてほしい”という切なる願いでした。臥龍桜のつぼみが膨らむころ、カズヤに届いた赤紙。出征を前にして、二人が選んだ道とはーー。飛騨の記憶と、桜の下で交わされた言葉を紡ぐ、時を超えたラブストーリーです!【ペルソナ】※物語の時代は昭和19年〜22年・ミオリ(17歳)=飛騨一ノ宮駅の東側にある実家で育った。一之宮尋常高等小学校を卒業後、高山の女学校に通う女学生。勉学に励み、将来は子どもたちに教える教師になることを夢見ている。真面目で一本気な性格だが、感受性豊かで、心の奥には繊細さも持ち合わせている。親が決めた許嫁であるカズヤとの関係に反発しつつも、どこか彼の不器用な優しさに気づいている(CV=小椋美織)・カズヤ(19歳)=飛騨の林業を営む家に生まれた。家は飛騨一ノ宮駅の西側。幼い頃から木に親しみ、その温もりと力強さに魅せられ、いずれは家業を継ごうとは思うが、今は家具職人(匠)になりたいと思っている。1944年現在は高山市の家具工房で修行の身。寡黙だが、内に秘めた情熱と職人としての誇りを持つ。不器用ながらも、ミオリのことをいつも気にかけている(CV=日比野正裕)【設定】物語はすべて臥龍桜の下。定点描写で移りゆく戦況と揺れ動く2人の心を綴っていきます【資料/飛騨一ノ宮観光協会】http://hidamiya.com/spot/spot01<第1幕:1944年3月5日/臥龍桜の下>◾️SE:春の小鳥のさえずり「冗談じゃないわ!どうして私がカズヤと祝言(しゅうげん)あげなきゃいけないのよ!」「親が決めたことだからしょうがないだろ。」「情けないわね!あんた、それでも日本男子?しっかりしなさい!」「日本男子は関係ないだろうに」「そうね、カズヤには関係ないかも。だけど私には大あり」「どういうことだ、ミオリ?」「カズヤにはわかんないでしょうね。でも私はね、花も恥じらう十七歳。一之宮尋常高等小学校を卒業して、高山の女学校に通う学生なのよ」「だからなんなんだ」「あー、いや、ちょっと待って。そういや、あなただって、林業を捨てて高山の工房で家具を作ってるじゃない」「捨ててなどないぞ。オレは別に父母の仕事を卑(いや)しめてはいない。ただ家具作りが・・」「好きだからでしょ。昔から手先が器用だったし」「そ、そうだけど」「こんなふたりが。戦時中だというのにこんな好き勝手やってる男女がよ。親が決めた許嫁と祝言なんて、まあなんて前時代的な話だこと。いま何年だと思ってるの?昭和ももう19年よ。昭和19年。明治時代じゃないんだから」「ちょっと言い過ぎじゃないか」「なんでよ」「親が言っていることの意味も考えねばならんだろう。戦局はますます激化していくこのご時世で」「はあ?」「厚生省が『結婚十訓』を発表したではないか」「それがどうしたの?」「『結婚十訓』第十条『産めよ殖(ふや)せよ国のため』」「ばかばかしい」「ばかばかしい?非国民かオマエは」「非国民でけっこう」「なに」「だいたいカズヤと夫婦(めおと)になるなんて無理無理」「ふん。こっちだって願い下げだ」「あら。初めて意見が合ったじゃない」「た、たしかにな」「あゝせいせいした」「なあ、ミオリ。オマエ、ひょっとして・・・」「なによ」「いや、別に・・」「言いなさいよ」「ああ。ほかにいい人がいるのか・・」「え・・」「やっぱりそうか・・」「な、なによ。悪い?お慕いする方くらい、いたっていいでしょ」「別にかまわんけど。オレだって・・・」「へえ〜、カズヤにもいるんだ。そんな相手が」「馬鹿にするな。こう見えてもモテるのだぞ」※当時からあった言葉です「馬鹿になんてしてない。だってカズヤ、見た目だけはいいんだし」「だけ、って・・失礼千万だな」「じゃ、いいじゃない・・」「うむ・・」「ねえ、ようく見てみなさい。あそこ。飛騨一ノ...
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    19 分
  • 『桃花流水〜夢に咲く花』
    2025/08/07
    飛騨高山・国府町を舞台にした、春と初恋の物語。ヒダテン!ボイスドラマ第17弾『桃花流水〜夢に咲く花』がついに公開!春のピーチロードで出会ったのは、東京からやってきた農業大学の青年・ショウタ。桃の花に導かれるように、彼とももは少しずつ距離を縮めていきます。しかし彼には、ある“秘密”があって――国府町の自然、伝承、そして飛騨桃の魅力をたっぷり詰め込んだ、甘く切ない春の出会いと別れの物語。公式サイト&Spotify・Amazon・Apple Podcastなど各種配信サービスにて公開中!小説として「小説家になろう」でも全文公開しています。(CV:高松志帆)【ストーリー】[シーン1:4月/満開の桃の花(ピーチロード)】◾️SE:平地の小鳥/高山線の通りすぎる音〜自転車の急ブレーキの音「大丈夫ですか!?」「あ、はい、大丈夫です!」夕暮れが近いピーチロード。満開の桃の花の下。突然現れた彼は、道の脇で、桃の木にもたれかかるように倒れていた。「子狐を避けようとしたら転倒しちゃって」「子狐・・・?」「まさか、こんなところに子狐なんて・・」「別に不思議じゃないわ」「え・・」「安国寺のきつね小僧って民話、知らないの?」「なんだい、それ?」「あなた・・・高山の人じゃないのね」「うん、そうだよ」彼はお尻についた土を振り払って、よいしょっと立ち上がる。Eバイクのスタンドも立て直して。私も、乗っていたEバイクを道の端っこに停める。「東京からきたんだ」「へえ〜。どこに泊まってるの?古川?市街地?」「宇津江四十八滝」「キャンプ場?アウトドア派なんだねー」「きみはここ、国府の人?」「まあね。私、もも。よろしくね」「もも?いい名前!よろしく。僕はショウタ」「ショウタこそ、いい名前。私、ここが高山市になる前から、ずうっと国府に住んでるの」「そうなんだ。いいところだね」「当然でしょ。見ての通り」「桜と桃の花が一緒に見られるなんて」「そう。この季節だけの特権。いいときに来たわね」「本当にきれいだ」「やだ。照れるじゃない」「って桃の花のことだけど・・」「あ、そうか・・・桜野公園は行った?」「うん、宮川(みやがわ)沿いに通ってきたけど、明るいうちに桃の花が見たくて」「どうして?」「桜より桃の花の方が好きなんだ」「へえ〜、変わってるわね」「春の光をあつめて、淡く、やわらかな色をひらく」「ほう〜」「風が花びらを撫でるたびに、甘い香りが漂う」(ゴクリ)※唾を飲み込む「ちょっとちょっと、ショウタって詩人なの?」「いや違うけど、それほど好きってことさ」「好き・・・?」「あ、ごめん。ちょっとカッコつけすぎちゃった」「ううん。よかったわ。ねえ、もっと、ショウタのこと教えて」木陰を選んで、また腰をおろす彼。私も横に並んで、ピーチロードの端っこに座る。風になびく飛騨桃の花びら。暮れ行く前の春の日差しが、私たちの顔に花の影を落としていた。彼は東京の農業大学へ通う一年生なんだって。でも父親は農業の道へ進むことに猛反対。ときどき喧嘩しては家出しているらしい。国府は今回が初めて。でも、どうして高山?どうして国府?「ちょっとだけ、縁があるんだ」「どんな縁?」「ん〜、ナイショ」「もう〜」「さぁて、暗くなる前に出発しようかな、桜も見たいし」「あー、浮気するんだぁ」「なに言ってんだか」「キャンプ用品とか荷物は?」「レンタカーの中。駅前の駐車場だよ」「用意周到ね」「ソロキャンプは慣れてるから」そう言って笑う彼の口元から八重歯が覗く。よく見ると、キュートな感じ・・・かな。「きみの家はこのへん?」「ううん、うちは国府町宇津江」「それって・・・」「そう、ショウタがこれから行くところ」「宇津江四十八滝に住んでるの?」「なわけないでしょ。自然公園の近くよ」「じゃあ送るよ、一緒にいこう」「いいわ」ショウタは笑顔で親指を立てる。一面を淡いピンクに染めた、飛騨桃たちのピーチロード。Eバイクで並んで走る私たちの目の前を、花びらが静かに舞い降りる。後方から子狐の鳴き声が聞こえたような気がした。[シーン2:5〜6月/クリンソウ...
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    15 分
  • ボイスドラマ「アルテミスに出会った日」
    2025/07/31
    岐阜県高山市朝日町にある薬膳カフェ「よもぎ」を舞台に、漢方薬剤師・朝日よもぎの幼少期から現在までを描いた、感動のボイスドラマが完成しました。病弱だった少女・よもぎが、朝日町の自然と「義理の祖母」との出会いを通じて“薬草の力”に目覚め、自らの進むべき道を見つけていく姿を、四季折々の風景とともに丁寧に綴ります。「飛騨は薬草の宝箱」祖母の言葉の意味を、あなたもきっと感じるはずです。出演:蓬坂えりか/坂田月菜/日比野正裕【資料/アルテミス】https://kimini.online/blog/archives/79968<シーン1:現在/よもぎ28歳/カフェよもぎ>◾️SE:カフェのガヤ/小鳥のさえずり「先生、最近朝起きるのがだるくてなあ。また薬をだしてもらえんやろうか」「あら...マサさん、大丈夫?辛いねぇ。奥でお話、聞きましょうね。」「ああ、わかったわかった」カフェ「よもぎ」の奥。厨房の前の小さなカウンセリングルームで常連客の相談を聞く。「じゃあ、漢方作ってくるわね。クロモジ茶飲みながら、待っててね。」「ああ、ありがとなぁ。」カウンセリングルームの横。嬉しそうに微笑みながらおばあちゃんが通りすぎていく。パパのおかあさん。戸籍上は”義理のおばあちゃん”だけど、私にとっては、薬草の先生。”朝日町の主(ぬし)”といってもいいくらい。ふふ。<シーン2:26年前:よもぎ2歳の夏/シェアハウス周辺の森にて>◾️SE:小鳥のさえずり初めておばあちゃんと会ったのは25年前。2歳のときだった。ママに連れられて朝日町に来たけれど、行くとこ、見るとこ、知らないとこばかり。そもそも人見知りで、今で言うコミュ症の塊。しかも病弱で、よく熱を出して寝込んでた。ママのかえでも、いろいろあって精神的にキツいときだったし。東京から着の身着のままで連れてこられて、ゲームも持ってこられなかったんだ。ママは住むところを決めたり、なんだかんだで毎日家にいない。家、といってもシェアハウスだから、ひとり静かに過ごせるわけじゃない。だから、よくお庭で、虫と遊んでた。「痒いのかい?」「え・・」声をかけてきたのは、知らないおばあちゃん。私は手のひらが痒くてボリボリかいていた。「毛虫にさわったんかいな」「あ・・」そういえば、さっき緑色の葉っぱをちぎったとき。葉の上でモゾモゾしてる小さな毛虫にさわっちゃったかも。「ほうか、ほうか。ちょっと待っとれよ」おばあちゃんは慣れた感じで、近くに生えていたよもぎの葉をちぎる。葉っぱを手のひらで揉むと、緑色の汁が出てきた。「この汁をちょんちょんってつけてみ。痒みがおさまるから」なんだか信じられなかったけど、言う通りにした。変わったおばあちゃん。「もうかかん方がええで。ちょこっと我慢しい」私は黙ってうなづく・おばあちゃんは、ほかにもいろんなこと教えてくれた。庭の隅に生えている低い木から、葉っぱと小枝を少しだけ摘み取って「クロモジっていうんや」地面に落ちたセミを拾い、クロモジの葉っぱの上に置く。でも・・・やっぱ、弱ってるから動かない。・・・と思ってたら、そのうちに羽を動かして、弱々しく飛んでいった。うわあ。ぽかんと口をあけている私におばあちゃんがにっこり微笑む。「もう痒くないやろ」あ・・ホントだ・・・治ってる。痒くない。嬉しそうな顔をする私を見て、おばあちゃんがまたニンマリ。その日から、無口な少女と、物知りなおばあちゃんの交流が始まった。おばあちゃん、って言っても、今から思えば全然若かったと思う。だって、いつも車を運転して、朝日町のいろんなとこへ薬草摘みに連れてってくれたもん。鈴蘭高原でヨモギやスギナ、ワレモコウ。水芭蕉は終わってたけど、美女高原でドクダミやオオバコ。カクレハ高原でワラビやゼンマイ、ウド、トウキ。おばあちゃん、きっとひとりぼっちの私を気にかけて誘ってくれたんだろなあ。おばあちゃん、『飛騨は薬草の宝箱』って言ってたけど、ホントにそう。薬草がみんなの生活に根付いてるんだ。もっともっと薬草のこと知りたいな。<シーン3:22年前:よもぎ6歳の春/朝日の森>◾️SE:森の中/...
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