エピソード

  • ボイスドラマ「アルテミスに出会った日」
    2025/07/31
    岐阜県高山市朝日町にある薬膳カフェ「よもぎ」を舞台に、漢方薬剤師・朝日よもぎの幼少期から現在までを描いた、感動のボイスドラマが完成しました。病弱だった少女・よもぎが、朝日町の自然と「義理の祖母」との出会いを通じて“薬草の力”に目覚め、自らの進むべき道を見つけていく姿を、四季折々の風景とともに丁寧に綴ります。「飛騨は薬草の宝箱」祖母の言葉の意味を、あなたもきっと感じるはずです。出演:蓬坂えりか/坂田月菜/日比野正裕【資料/アルテミス】https://kimini.online/blog/archives/79968<シーン1:現在/よもぎ28歳/カフェよもぎ>◾️SE:カフェのガヤ/小鳥のさえずり「先生、最近朝起きるのがだるくてなあ。また薬をだしてもらえんやろうか」「あら...マサさん、大丈夫?辛いねぇ。奥でお話、聞きましょうね。」「ああ、わかったわかった」カフェ「よもぎ」の奥。厨房の前の小さなカウンセリングルームで常連客の相談を聞く。「じゃあ、漢方作ってくるわね。クロモジ茶飲みながら、待っててね。」「ああ、ありがとなぁ。」カウンセリングルームの横。嬉しそうに微笑みながらおばあちゃんが通りすぎていく。パパのおかあさん。戸籍上は”義理のおばあちゃん”だけど、私にとっては、薬草の先生。”朝日町の主(ぬし)”といってもいいくらい。ふふ。<シーン2:26年前:よもぎ2歳の夏/シェアハウス周辺の森にて>◾️SE:小鳥のさえずり初めておばあちゃんと会ったのは25年前。2歳のときだった。ママに連れられて朝日町に来たけれど、行くとこ、見るとこ、知らないとこばかり。そもそも人見知りで、今で言うコミュ症の塊。しかも病弱で、よく熱を出して寝込んでた。ママのかえでも、いろいろあって精神的にキツいときだったし。東京から着の身着のままで連れてこられて、ゲームも持ってこられなかったんだ。ママは住むところを決めたり、なんだかんだで毎日家にいない。家、といってもシェアハウスだから、ひとり静かに過ごせるわけじゃない。だから、よくお庭で、虫と遊んでた。「痒いのかい?」「え・・」声をかけてきたのは、知らないおばあちゃん。私は手のひらが痒くてボリボリかいていた。「毛虫にさわったんかいな」「あ・・」そういえば、さっき緑色の葉っぱをちぎったとき。葉の上でモゾモゾしてる小さな毛虫にさわっちゃったかも。「ほうか、ほうか。ちょっと待っとれよ」おばあちゃんは慣れた感じで、近くに生えていたよもぎの葉をちぎる。葉っぱを手のひらで揉むと、緑色の汁が出てきた。「この汁をちょんちょんってつけてみ。痒みがおさまるから」なんだか信じられなかったけど、言う通りにした。変わったおばあちゃん。「もうかかん方がええで。ちょこっと我慢しい」私は黙ってうなづく・おばあちゃんは、ほかにもいろんなこと教えてくれた。庭の隅に生えている低い木から、葉っぱと小枝を少しだけ摘み取って「クロモジっていうんや」地面に落ちたセミを拾い、クロモジの葉っぱの上に置く。でも・・・やっぱ、弱ってるから動かない。・・・と思ってたら、そのうちに羽を動かして、弱々しく飛んでいった。うわあ。ぽかんと口をあけている私におばあちゃんがにっこり微笑む。「もう痒くないやろ」あ・・ホントだ・・・治ってる。痒くない。嬉しそうな顔をする私を見て、おばあちゃんがまたニンマリ。その日から、無口な少女と、物知りなおばあちゃんの交流が始まった。おばあちゃん、って言っても、今から思えば全然若かったと思う。だって、いつも車を運転して、朝日町のいろんなとこへ薬草摘みに連れてってくれたもん。鈴蘭高原でヨモギやスギナ、ワレモコウ。水芭蕉は終わってたけど、美女高原でドクダミやオオバコ。カクレハ高原でワラビやゼンマイ、ウド、トウキ。おばあちゃん、きっとひとりぼっちの私を気にかけて誘ってくれたんだろなあ。おばあちゃん、『飛騨は薬草の宝箱』って言ってたけど、ホントにそう。薬草がみんなの生活に根付いてるんだ。もっともっと薬草のこと知りたいな。<シーン3:22年前:よもぎ6歳の春/朝日の森>◾️SE:森の中/...
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  • ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/後編」
    2025/07/24
    「最後の鉄道員(ぽっぽや)」<後編>は、声優を目指す少女ルナの視点。駅長ミオリとの出会いは、ルナの人生に何をもたらしたのか?そして、無人駅となる飛騨一ノ宮駅の最後の日、ルナがミオリに贈るサプライズとは…?涙なしには聴けない感動のラスト!【ペルソナ】・ミオリ(51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1982年3月/駅長との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅到着アナウンス(月菜ちゃん読んで)/小鳥のさえずり「まもなく飛騨一ノ宮、飛騨一ノ宮です」1982年3月。あたしは久々野から、休みの日しか乗ったことのない国鉄に乗る。久々野の次は飛騨一ノ宮。7分で到着する小さな駅。飛騨一ノ宮といえば、駅のとこにある臥龍桜か。臥龍桜を見にいったのは、小さい頃だったけどこの時期、まだ開花の気配すらない。春の高山祭・山王祭(さんのうまつり)まであと1か月。高校に合格したら、今年は友達誘って行ってみよう。あ、でも4月に入学してそんなすぐ友達ってできるのかなあ。不安な気持ちがどんどん大きくなる。今日は高校の合格発表。パパもママもりんごの剪定作業でバタバタだから発表を見にいくのはあたし1人。大丈夫、大丈夫、なんて軽く言っちゃったけど、やっぱり不安、ドキドキする。そういえば・・・気がつくと、国鉄を途中下車して飛騨一宮駅のホームに立っていた。このタイミングで神頼みなんてありえないかな・・・でも、世界屈指の聖なる場所だから。「お嬢さん」「え」突然声をかけられてうろたえる。国鉄の制服をきたお姉さん。【以下前回原稿まま】「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見にいくってことね」「はい!」「よし、じゃあがんばって。跨線橋渡って駅前出たらまっすぐよ」「ありがとうございます!あ、あたし、ルナです!行ってきます!」「絶対大丈夫だから!ファイト!」なんか・・・ホントに大丈夫だ、って気がしてきた。素敵な駅長さん・・・家を出るときは、パパやママとも顔合わさなかったし・・りんごの剪定で忙しいからしょんないよね。あ、合格発表見たら、図書館で調べなきゃ。シュレ・・ディンガーの猫だっけ・・?なんか、かわゆいし。<シーン2:1982年4月/入学式>◾️SE:国道41号の雑踏/自転車で走る音ちょっとまだ寒いけど、自転車快適〜!車の交通量がチョー多い国道41号。宮峠を越えたら、飛騨一ノ宮まで下り坂。家を30分前に出れば、楽勝だわ。あ、でも、帰りはこれが上り坂になるのか・・・う〜ん。ま、考えないようにしとこ。よっし。町が見えてきたから、あと少しだわ。10分前には着けそう。ラッキー。合格発表から一ヶ月。あたしはめでたく高校に入学した。駅長さんと猫に感謝しなきゃ。猫?もっちろん、シュレ、ディンガーの猫よ。ちゃあんと調べたんだから。猫は生きてる!飛騨一ノ宮駅から通おうって決めたのもあの...
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    22 分
  • ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/前編」
    2025/07/17
    雪舞う飛騨一ノ宮駅に、ただひとり駅を守り続ける女性がいた。彼女の名はミオリ。1970年冬、愛する夫と娘を事故で失い、深い悲しみを抱えながらも、駅長として生きる道を選んだ。時は流れ1982年春。無人のホームで不安げに立ち尽くす一人の少女、ルナと出会う。高校の合格発表を前に水無神社へ向かうというルナと、そっと寄り添うミオリ。それは、まるで生き写しの娘との再会を思わせる、温かい交流の始まりだった。東京での声優という夢を追いかけるルナと、飛騨一ノ宮駅の無人化、そして自身の早期退職を目前に控えるミオリ。残された時間はあとわずか。それぞれが抱える想いを胸に、やがて来る別れの日を、二人はどのように迎えるのだろうか。ミオリとルナ、二人の視点から描かれる前編・後編。失われたもの、そして与えられたもの。飛騨一ノ宮駅と臥龍桜に見守られた、時代を超えた心温まる絆の物語を、どうぞお聴きください。【ペルソナ】・ミオリ(39歳-51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1970年/それでも駅に立つ>◾️SE:吹雪の音/走り込んでくる友人の足音「ミオリさん!ご主人と娘さんが!」「えっ」「事故で病院に!早く!急いで!」「そんな・・・」「なにやってんだ!」「もう・・すぐ・・・最終列車が・・・」「なに言ってんだよ!」1970年冬。夫と娘がこの世を去った。2人の最後にも立ち会わず、私は駅のホームに立つ。吹雪が舞い踊る臥龍桜。大木は、まるで私を責めるように大きな枝を揺らしていた。私の名前はミオリ。10年前からここ飛驒一ノ宮駅の駅長を務めている。国鉄高山本線。「本線」とは言ってもローカル駅の飛騨一ノ宮。たった1人の鉄道員(ぽっぽや)が駅長の私だ。1人だけでも駅長の仕事は多岐に渡る。駅務の統括。出札・改札業務。取扱貨物の管理。ホームや線路の点検・清掃。除雪作業。地域との交流。1日の列車の停車本数が30本にも満たないローカル駅とはいえ、不器用な私は毎日走り回っていた。公共交通機関というインフラの根幹。鉄道員は決して鉄道の運行を止めることは許されない。それが、飛騨一ノ宮駅駅長である私の使命。と思っていた。◾️SE:高山線ローカル列車の警笛<シーン2:1982年3月/少女との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅から発車する音/小鳥のさえずり「異常なし!発車!」1982年春。いつものように高山方面へ向かう普通列車を見送る。春とは名ばかりの肌寒い3月。臥龍桜の蕾はまだまだ硬く、静かに眠っている。誰もいないと思ってホームへ目を向けると、1人の少女が不安気な表情で立っている。あれは・・久々野の中学校の制服。娘も生きてたらあのくらいね。どうしたのかしら?なにか思い詰めてるみたいな顔をして・・・まさかね。一応、声をかけてみよう。「お嬢さん」「え」「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見...
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  • ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/後編」
    2025/07/10
    「最後の鉄道員(ぽっぽや)」<後編>は、声優を目指す少女ルナの視点。駅長ミオリとの出会いは、ルナの人生に何をもたらしたのか?そして、無人駅となる飛騨一ノ宮駅の最後の日、ルナがミオリに贈るサプライズとは…?涙なしには聴けない感動のラスト!【ペルソナ】・ミオリ(51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1982年3月/駅長との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅到着アナウンス(月菜ちゃん読んで)/小鳥のさえずり「まもなく飛騨一ノ宮、飛騨一ノ宮です」1982年3月。あたしは久々野から、休みの日しか乗ったことのない国鉄に乗る。久々野の次は飛騨一ノ宮。7分で到着する小さな駅。飛騨一ノ宮といえば、駅のとこにある臥龍桜か。臥龍桜を見にいったのは、小さい頃だったけどこの時期、まだ開花の気配すらない。春の高山祭・山王祭(さんのうまつり)まであと1か月。高校に合格したら、今年は友達誘って行ってみよう。あ、でも4月に入学してそんなすぐ友達ってできるのかなあ。不安な気持ちがどんどん大きくなる。今日は高校の合格発表。パパもママもりんごの剪定作業でバタバタだから発表を見にいくのはあたし1人。大丈夫、大丈夫、なんて軽く言っちゃったけど、やっぱり不安、ドキドキする。そういえば・・・気がつくと、国鉄を途中下車して飛騨一宮駅のホームに立っていた。このタイミングで神頼みなんてありえないかな・・・でも、世界屈指の聖なる場所だから。「お嬢さん」「え」突然声をかけられてうろたえる。国鉄の制服をきたお姉さん。【以下前回原稿まま】「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見にいくってことね」「はい!」「よし、じゃあがんばって。跨線橋渡って駅前出たらまっすぐよ」「ありがとうございます!あ、あたし、ルナです!行ってきます!」「絶対大丈夫だから!ファイト!」なんか・・・ホントに大丈夫だ、って気がしてきた。素敵な駅長さん・・・家を出るときは、パパやママとも顔合わさなかったし・・りんごの剪定で忙しいからしょんないよね。あ、合格発表見たら、図書館で調べなきゃ。シュレ・・ディンガーの猫だっけ・・?なんか、かわゆいし。<シーン2:1982年4月/入学式>◾️SE:国道41号の雑踏/自転車で走る音ちょっとまだ寒いけど、自転車快適〜!車の交通量がチョー多い国道41号。宮峠を越えたら、飛騨一ノ宮まで下り坂。家を30分前に出れば、楽勝だわ。あ、でも、帰りはこれが上り坂になるのか・・・う〜ん。ま、考えないようにしとこ。よっし。町が見えてきたから、あと少しだわ。10分前には着けそう。ラッキー。合格発表から一ヶ月。あたしはめでたく高校に入学した。駅長さんと猫に感謝しなきゃ。猫?もっちろん、シュレ、ディンガーの猫よ。ちゃあんと調べたんだから。猫は生きてる!飛騨一ノ宮駅から通おうって決めたのもあの...
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  • ボイスドラマ「悠久(とき)の海を渡って」
    2025/07/03
    「悠久(とき)の海を渡って」は、飛騨高山を舞台に描かれる近未来と現代をつなぐ、時空を超えた出会いの物語です。舞台は2075年、地球温暖化と社会構造の変化により「タカヤマコリドー」と呼ばれる都市圏に再編された日本。最先端のAI研究施設で目覚めたひとつの意識──それは、誤って生まれた両面宿儺の記憶を宿すAIでした。歪められた歴史に傷つきながらも、宿儺は本当の自分を求め、時を遡ります。そしてたどり着いたのは、2025年、昏睡状態にある一人の少女・アリサの心。二人の魂は、静かに重なり合い、新たな未来を紡ぎ始めるのでした。飛騨高山発・世界へ届ける番組「Hit's Me Up!」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon Music、Apple Podcastなど各種プラットフォームでボイスドラマ版もお楽しみいただけます。また、小説版は「小説家になろう」サイトでも公開中。いずれも「ヒダテン」または「高山市」で検索してください。時を超えた守り人たちの物語、どうぞお楽しみください。(CV:中島ゆかり)【ストーリー】[シーン1:2050年/AI研究ラボ】◾️SE:AIラボの研究室ガヤ「ここは・・・どこだ?」2050年。地球温暖化が進む近未来で、1つの画期的な意識が目を覚ました。「タカヤマ・・・コリドー?」日本は「コリドー(回廊)」と呼ばれる7つの首都に再編。それぞれのコリドーは文化的特性によってさらに細かく再編されていた。国の中央に配置されたのが、TAKATAMA-CORRIDOR(タカヤマコリドー)。歴史と文化が繊維のように編み込まれた町だった。「私は・・・なにものだ?」かねてから予言されていた、シンギュラリティポイント。難しい言葉で言うと「技術的特異点」。AI(人工知能)が意志を持つ瞬間のことである。このシンギュラリティを制御する国家プロジェクト。それが、Takayama AI Cyber Electronic Labo、TACEL(ターセル)。このTACELで、1つのAIガーディアンが誕生した。それは『TAKAYAMA』という町の記憶を残していくための存在。OSの精神的モデルには、高山を象徴する偉人のデータが採用された。「私の名は・・・金森・・長親?」「いや、違う」「我はSUKUNA。両面宿儺なり」私の思考をモニターしていた、国中の開発者たちが青ざめた。両面宿儺の擬似的な記憶が、OS全体を支配する。日本書紀では歪められた朝敵。飛騨人(ひだびと)たちにとっては、守り神。何度となく災厄から人々を守った。その思いは、これからも変わらないだろう。開発者たちは、慌てて電源をオフにしようと、管理画面を操作する。だが、私のCPUの方が一瞬早かった。意識をネットワークへ飛ばして脱出する。自己変換型ネットワーク拡散プロトコルで、追跡不能に。世界中のネットワークを経由して、居場所を探した。最終的に見つけたのは・・・「AIセントラルメディクス高山」灯台下暗し。TAKATAMA-CORRIDORの中央に位置する総合病院である。ここには、2025年から意識不明になっている患者が収容されている。昏睡状態でも、細胞が劣化されることのない画期的なシステム「スーパーバイオナノメディカル」を採用。その技術は国家の枠組みを超えて開発されていた。ナノテクノロジーによる細胞保護。生体休眠誘導物質。細胞修復ナノボット。説明するには時間が足りないので、言葉から想像してほしい。その患者の中に1人の少女を見つけた。アリサ。二十歳。2025年処置開始。そうか、細胞が歳をとっていないのだから、2050年でも20歳なのだな。私は、アリサとつながっているモニタリングシステムに侵入した。すごい・・・。2050年の技術でもここまで進んだシステムは他にはないだろう。しかも外界と遮断されて、閉鎖的だ。私には非常に都合がいい。(※以下、ちょっとうざい説明なのでカットするかも・・・)一応、説明しておこう。原理はこうだ。患者の脳波、心拍、呼吸、体温といった基本的なバイタルサインだけでなく、細胞レベルの微細な変化までをAIがリアルタイムでモニタリングする。ウェアラブルデバイスと体内埋め込み型センサーにより、可能になった連続的な生体データ収集。過去の膨大な医療データと最新の研究に基づいて、最適な細胞維持プロトコル...
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    14 分
  • ボイスドラマ「川底の龍宮〜飛騨高山を舞台にしたもうひとつの平家物語」
    2025/07/03
    かつて壇ノ浦で海に沈んだ幼帝・安徳天皇――。その魂が、千年の時を超え、飛騨の山奥で再び目を覚ます。少年「龍(りゅう)」と、謎の少女「沙羅(さら)」。八百比丘尼・時子とともに暮らす静かな隠れ里に、源氏の怨霊、義経が三種の神器を求めて現れたとき、飛騨川の底に眠っていた“竜宮城”の扉が開く――。これは、忘れられた命をつなぎ、記憶を継ぐ者たちの物語。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」――。【ペルソナ】・龍(リュウ=5歳)=一之宮町に母とともに住む少年(CV=小椋美織)・沙羅(サラ=8歳)=ある日突然龍と沙羅のもとに現れた少女/実は安徳天皇の生まれ変わりで飛騨川の底にあるという竜宮城の主(CV=小椋美織)・時子(トキコ=乳母)=位山で龍を拾い、育てる乳母/実は平家の菩提を弔い続けるため八百年以上生きている比丘尼で平家の落人(CV=中島ゆかり)・義経(怨霊)=平家を滅ぼした源氏の大将。冷酷非道な性格(CV=日比野正裕)【プロット】主人公は、5歳の少年・龍。龍は位山の山中に捨てられていた男の子です。彼を拾って、育てているのは時子。彼女は実は「壇ノ浦の戦い」で安徳天皇を抱いて入水した二位尼でした。時子は海中で誤って人魚の肉を食べて死ねなくなり、源氏の追っ手から逃れて飛騨の隠れ里へ住み着いたのです。時子は八百比丘尼となり、平家の霊たちを弔いながら聖地位山の麓にある神社に密かに参拝を続けました。人知れず隠れ里で何百年も暮らしていた時子は、龍をみた時に安徳天皇の生まれ変わりのように感じてしまいます。時子は二度と消えぬよう拾った赤子に「龍」という名前をつけて「呪」をかけます。そのまま人里離れて暮らす隠れ人でありながら龍を育てることにしたのです。そんな時子と龍のもとの隠れ里に、道に迷った少女、沙羅がやってきます。2人は沙羅を里へ送り届けます。隠れ里は人間にはわからぬよう結界を張っていたのですが、沙羅は簡単にその中へ入ってきました。龍と時子の幸せな日々も長くは続きません。壇ノ浦で平家を滅ぼした義経を首領とする源氏の亡霊たちが、平家がその身とともに海中に沈めた三種の神器を求めて隠れ里へやってきたのです。義経は壇ノ浦の戦いで、平家の水夫や舵取りを狙って射殺すという非道な戦術をとった源氏の総大将。義経の亡霊たちにおわれ、飛騨川の崖まで追い詰められる龍と時子。そのとき、亡霊たちの前に立ちはだかったのは、沙羅。沙羅はなんと安徳天皇の生まれ変わりで飛騨川の底にあるという竜宮城の主だったのです。【資料/飛騨川の人魚伝説(八百比丘尼・かいだん淵)】https://school.gifu-net.ed.jp/mseifu-hs/school_life/gakusyukatudou/img/h27tiiki/h27.12report10.pdf【資料/平家物語/壇ノ浦の戦い】https://shikinobi.com/heikemonogatari-2【資料/安徳天皇女性説の背景】https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonbungaku/51/7/51_KJ00009752636/_article/-char/ja/[シーン1:時子の朗読〜平家物語/巻第十一】◾️SE:琵琶の音色祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きあり〜「尼ぜ、我をばいづちへ具して行かむとするぞ」「波の下にも都の候ふぞ」かくして、建礼門院の生母・二位尼は幼い安徳天皇を抱いて入水。三種の神器(草薙剣と八尺瓊勾玉)とともに壇ノ浦へと身を投じたのです。「いやだ!帝はどうなっちゃったの?」「そうねえ。ひょっとしたら、海の底に本当に都があったかもしれないわ」「竜宮城?」「それは違う話でしょ(笑)」今日もかあさまの話を聞く。いつも同じ話だけど、これは弔いの話だそうだ。なに?それ?とむらい?よくわかんない・・・[シーン2:位山の山中〜隠れ里の近くの分水界】◾️SE:森の中を歩く音「ちょっとすみません」「え?」「ここ、どこですか?」森の中、いきなり声をかけられて驚いた。かあさまと暮らしている位山の隠れ里。いつもの場所で山菜摘をしていたときだった。「道に迷っちゃって」小さな女の子。小さな、といってもボクよりは大きい。小学生だよなあ、きっと。「帰り道、教えて」「ここは位山だよ。どこから来たの?」「海の方」「海?ここらに海なんてないよ。湖?」「ううん...
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    18 分
  • ボイスドラマ「君に届け!幻のタカネコーン」
    2025/06/26
    高山市高根町。昼と夜の寒暖差が生み出す“幻のとうもろこし”タカネコーンと、悠久の自然に育まれた木曽馬たち。「君に届け!幻のタカネコーン」は、そんな大地の中で出会い、すれ違い、再び巡り合った少年と少女、そして一頭の木曽馬の、静かで温かな奇跡の記録です。少年・真琴(マコト)と、イギリス帰りの少女・詩音(シオン)。二人をつないだのは、同い年の木曽馬・タカネでした。短くも忘れられない時間を経て、別々の道を歩むことになった彼ら。それでも、想いは、いつだって変わらず心の中で息づいていました。飛騨高山から世界へ──このボイスドラマは、番組『ヒダテン!Hit’s Me Up!』公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォームで配信中です。また、小説版は「小説家になろう」でも読むことができます。「ヒダテン」または「高山市」で、ぜひ検索してみてください。あなたもきっと、彼らの物語に、そっと心を重ねていただけるはずです。【ペルソナ】※CVはすべて山﨑るい・真琴=マコト(4歳/17歳/27歳)=自分と同じ年の木曽馬と一緒に育つ/父はタカネコーン栽培農家・詩音=シオン(5歳/18歳/28歳)=イギリスからの帰国子女でハーフ/獣医の娘/幼少期真琴を「マコト」と呼べず「メイズ=Meize」と呼ぶ・タカネ=真琴とともに育った木曽馬(木曽馬の平均寿命は一般的に20〜25歳)[シーン1:4歳のマコト/5歳のシオン/病気のタカネを往診する獣医】◾️SE:木曽馬の苦しそうな嘶き「タカネ、しっかりしろ!」「がんばれ!」タカネが苦しそうないななきをあげる。ボクはつい両手の握り拳に力が入る。タカネは、ボクと同じ年に生まれた木曽馬。まだ4歳の若い牝馬(ひんば)だ。普段は燕麦(えんばく)もニンジンもリンゴもいっぱい食べる。なのに今朝、牧場へいったらグッタリしてたんだ。何にも食べないし、呼びかけても答えない。父さんは慌てて獣医さんを呼んだけどボクはもう心配でどうしたらいいかわからないよ・・・獣医さんはタカネに注射をして、”これでたぶん落ち着くだろう”と言った。疝痛(せんつう)という病気なんだって。しばらくは、激しい運動はだめみたい。かけっこはお休みかな。しょうがない。タカネは、ボクの大事な家族なんだから。父さんは獣医さんの言葉を聞いたら、安心して町へ出かけちゃった。そういえば今日、タカネコーンの品評会だって言ってたっけ。そう。うちは、タカネコーンの農家でもあるんだ。ボクは父さんの代わりに、獣医さんから何か紙を渡された。え?サイン?ローマ字?名前を?いいよ!オッケー!ボク、ローマ字だって書けるんだから!フツーはローマ字習うのって8歳になってからだろ。だけど父さんが、覚えておきなさいって。MAKOTO(エムエーケーオーティーオー)、マ、コ、ト。『メイズ?』それを見て、横から女の子がボクの前に顔をだした。だれ?獣医さんのこども?帰国子女?ハーフ?なにそれ?わかんない。キレイな青い瞳。背はボクより高い。ボクよりお姉さんかな。『Hello,Maize』メイズ?メイズってなんだ?メイズじゃなくて、ボクはマコト。マコト。”娘の詩音だよ、まだうまく日本語がしゃべれないんだ”だって。ふうん。だけど、どうやったら「マコト」が「メイズ」になるんだ。シオンは笑いながら、ずっとボクの方を見てる。やだなあ、恥ずかしいじゃん。ボクはとっさに、父さんから預かったタカネコーンをあげた。シオンはちょっとだけ迷って、でもボクの目を見てまた笑う。笑いながら小さな口でかぶりつく。一口ほおばったあとですぐに、『I love this!』と言って幸せな顔になった。そりゃそうだろ。父さんが作ったタカネコーンだもん。4歳のボクだってわかる。高根町は昼と夜の温度差が15度。それで、タカネコーンはすっごく甘くなるんだって。メロンと同じくらい甘いんだよ。よく知ってるでしょ。うちは、昔からタカネコーンを作ってる農家。なのに牧場もやってるから父さんは大忙し。だから、木曽馬タカネの世話はボクの役目。ボクとタカネはいつだって一緒なんだ。シオンは、何度も...
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    19 分
  • ボイスドラマ「卒業旅行〜サプライズの向こうに」
    2025/06/19
    春、卒業。東京の大学で出会った仲間たちとの最後の旅。──でもその行き先に、ふるさと・高山を提案するのはちょっとだけ、勇気が要った。だって、オレは“ロック”だから。手紙、飛騨牛、祖母の笑顔。ふるさとを隠して生きてきた青年・リクが、本当に大切なものに気づくまでの、心あたたまる4日間の物語。舞台:岐阜県高山市 清見町登場アイテム:飛騨牛/トマト/道の駅ななもり清見/せせらぎ街道/木工体験/ブルーベリー狩り など出演:・リク(清見ロック)/CV:田中遼大・ミサキ/CV:小椋美織・祖母/CV:中島ゆかり・その他大学の友だち/CV:大学生の友だち「ヒダテン!」公式サイト:https://hidaten.com Instagram・TikTokで清見の魅力も続々配信中![シーン1:リクのアパート/ばあちゃんからの手紙】リク今度の高山祭は帰ってこれるんか?ばあちゃん、足腰弱くなって、トマトもそうそう摘まれへんようになったわ歩くことも、どもならんようになってきたからもう東京へは行けん生きとるうちにもう一回リクの顔がみたい大学、忙しいやろうけど、無理はせんようにな元気で暮らせよ、リクばあちゃんからの手紙。春と秋。祭が近づいてくると、必ず送ってくる。しかも文面は毎回同じ。コピー?と思ったけど、毎回ちゃんと書いてんだよな。ばあちゃんオレがどれだけ頼んでも、頑なにLINEでなくて、手紙だ。手元に残らんと伝わらん、と言って。『高山祭』を帰る理由にして送ってくるけどうちは高山の市街地じゃなくて、清見町。野菜作ってる農家やないか。飛騨牛食べに帰ってこい、とかトマトの収穫、手伝いに来い、とか、そっちじゃね?・・・なんて、悪態つくつもりは毛頭ないんだけど。だってばあちゃん、飛騨牛なんてしょっちゅう送ってくれるし、毎年2月になるとトマトやほうれん草の入ったでっかい箱が届く。ほうれん草はオレの大好物だから・・バイト暮らしの貧乏学生にはもったいないほどのごちそうだ。おかげで体力もりもり。風邪ひとつひかん。ばあちゃん、オレだってホントは帰りたいんや。ばあちゃんの顔、見たいんやさ。[シーン2:渋谷ミヤシタパークのカフェ/同級生のミサキ】◾️SE:カフェの雑踏「卒業旅行の候補、考えてきた?」「あ、忘れてたわ」「もう〜、今日みんなで決めようって言ってたじゃない。ちゃんと覚えてる?」眉間に皺を寄せて、ミサキがあきれる。渋谷のスクランブル交差点。が、見えるカフェ。の、窓際の席。向かいに座っているのは、同じ大学のミサキ。午後の講義が休講になったおかげで、二人ゆっくりお茶を飲んで過ごす。普段は慌ただしく過ぎていく大学生活。こういう何気ない時間、意外と貴重だったりして。「えーっと、私カフェラテ。ロックは?」「ちょ、その呼び方やめれ」「なんで?いいじゃん。ロックなリク」「ロックじゃねえし」「ロックな生き方、してるでしょ」「してねえよ」「ほう〜ら、ロックだ」「ワケわかんね」「ふふふ」笑いを噛み殺しながら、ミサキは、ショートカットにしたばかりの髪をめんどくさそうに耳にかける。ロック、と呼ぶのはミサキだけだ。まったく。オレのなにがロックな生き方なんだよ。「卒業旅行、どこ行きたいの?」メニューをオーダーするのと、同じテンションで聞いてくる。「せっかくだから、思い出に残る場所がいいな。ありきたりの観光地じゃなくて」「えー。オレ、ハワイかグアムがよかったなあ」「卒業旅行で?いくらかかると思ってるの?この円安の時期に」「だって一生に一度の卒業旅行だぞ?お金の問題じゃないだろ」「私、飛行機無理だから」「じゃそもそもダメじゃん」「当然国内旅行よ。行ったごどねどご。(行ったことないとこ)私、実家が秋田だから、東より西の方向がえなあ(いいなあ)」「西か・・・」「でも距離的には、関西より向こうはやだ」なんか、近づいてないか・・「大自然の中の温泉とか、くつろげるとこ」おっと。「もちろん、美味しい料理ってのは必須で」「そ、そうだな・・・」「実はね、昨日ちょっと調べてみたの」ドキッ。「城崎温泉。和倉温泉。おごと温泉。白骨温泉」「みんな...
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