エピソード

  • ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/完全版」
    2025/10/31
    荘川さくらと朝日よもぎ。ふたりの少女の“心”が入れ替わった日。八幡祭の喧騒の中で、恋と友情と運命が交錯する。それぞれの想いを胸に、他人の身体で過ごしたわずかな時間が、やがて本当の自分を見つめ直すきっかけとなっていく。――「あなたの中のわたし」と「わたしの中のあなた」。入れ替わった心が奏でる三重奏《トライアングル・ラプソディ》。荘川さくらと朝日よもぎ、それぞれの視点で描かれた前後編をひとつにまとめた完全版、ついに配信スタート!【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1A:古い町並>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「すごい人出・・高山祭なんだから、あたりまえだけど」古い町並を上(かみ)から下(しも)へ。屋台の曳き揃えを目指して、人の波は桜山八幡宮へ流れる。私はさくら。実家は荘川町でそばの栽培農家をやっている。9月後半からは収穫の最盛期。でも昨日までにすべて終え、今朝、路線バスに乗った。趣味の一眼レフをかかえて。秋の高山祭。八幡祭(はちまんまつり)。パートナーのショウと桜山八幡宮で待ち合わせしている。彼は市街地で働いてるから、今日もお昼まで仕事だって。ついさっき少し遅れるって連絡があった。だから私はひとりでゆっくりと、古い町並を歩く。中橋(なかばし)から上三之町(かみさんのまち)へ。古い町並を順番に撮影していく。なじみの酒蔵があるあたりで、人力車とすれ違った。いい被写体。杉玉が吊るされた軒先越しに町並を写す。そのまま人の流れにのって安川通り(やすがわどおり)方面へ。人波にもまれながらファインダーを覗いていたとき・・・「あっ!」古い町並の左端を歩いていた私は、足を踏み外して側溝で転んでしまった。一眼レフを庇うあまり、焼板の壁で強く頭をうち・・・朦朧とする意識・・・ああ、祭囃子の音がフェードアウトしていく・・・<シーン1B:朝日町の薬膳カフェ「よもぎ」>◾️カフェの雑踏「なんかこのお茶、苦いんですけど」「ああ、ごめんなさい。さっき、昨夜飲みすぎちゃった、って言ってたから五行茶をお出ししたんですよ」「ゴ・・ギョウチャ?」「はい。五種類の薬草をブレンドしたお茶です」「で?」「焙煎した生薬は苦味があるんです。でも、甘草とかナツメの甘みが、苦さを和らげてると思うけどなあ」「だから?」「苦いだけじゃなくて、飲んだあとほんのり甘さが残りませんか」「そんなんどうでもいいから、なんとかしてよ。砂糖でもなんでもいれればいいじゃない」「そんな・・・砂糖なんて入れたら、血糖値も変化しちゃうし。体も冷やしちゃいますよ」「関係ない。苦くないようにして」お客さんの声がだんだん荒くなる。あ、だめ。久々に・・・これ・・過呼吸かも・・「ちょっと、聞いてる?」意識が遠のく・・・お客さんの声が遠ざかっていく・・・<シーン2B:古い町並/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「あ・・・れ・・?えっと・・えっ!?ここどこ?」気がつくと、薬膳カフェ「よもぎ」とはまったく違う場所に、私は倒れていた。ここは・・・?あたりを見回す。高山市街地の・・・古い町並だ。しかも私、側溝に左足を突っ込んで倒れている。体が重い、って思ったら、首にブラ下がっているのは、大きなカメラ。そうだ。持ち物。肩かけの小さなポーチを手で探る。ポーチの中に見つけたのは、かわいい手鏡。そこに映っていたのは・・・誰?この人誰!?桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・凛とした美しい顔立ち。誰なの〜!?なんで?なんで?どういうこと、これ?鏡の中で整った顔が困惑した表情を見せる。鏡を遠ざけて体全体を映すと・・・淡い桜色のロングTシャツ。透け感のある軽やかなパーカー。...
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    35 分
  • ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/後編」
    2025/10/30
    朝日町から高山へ――“よもぎ”の心がさくらの身体に宿り、八幡祭の中で彼女が見たのは、祭よりもまぶしい恋の光景。一方、さくら(よもぎの体)は、カフェの温もりの中で“他人の生き方”を知っていく。やがて二人の道が再び交差したとき、運命は静かに“元の形”へと還っていく。──心が入れ替わっても、想いは消えない。ヒダテン!ボイスドラマ第29話『トライアングル・ラプソディ/後編』は、朝日町の薬膳カフェと桜山八幡宮を結ぶ“よもぎの視点”の物語です。【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1B:朝日町の薬膳カフェ「よもぎ」>◾️カフェの雑踏「なんかこのお茶、苦いんですけど」「ああ、ごめんなさい。さっき、昨夜飲みすぎちゃった、って言ってたから五行茶をお出ししたんですよ」「ゴ・・ギョウチャ?」「はい。五種類の薬草をブレンドしたお茶です」「で?」「焙煎した生薬は苦味があるんです。でも、甘草とかナツメの甘みが、苦さを和らげてると思うけどなあ」「だから?」「苦いだけじゃなくて、飲んだあとほんのり甘さが残りませんか」「そんなんどうでもいいから、なんとかしてよ。砂糖でもなんでもいれればいいじゃない」「そんな・・・砂糖なんて入れたら、血糖値も変化しちゃうし。体も冷やしちゃいますよ」「関係ない。苦くないようにして」お客さんの声がだんだん荒くなる。あ、だめ。久々に・・・これ・・過呼吸かも・・「ちょっと、聞いてる?」意識が遠のく・・・お客さんの声が遠ざかっていく・・・<シーン2B:古い町並/さくらの体=よもぎの意識>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「あ・・・れ・・?えっと・・えっ!?ここどこ?」気がつくと、薬膳カフェ「よもぎ」とはまったく違う場所に、私は倒れていた。ここは・・・?あたりを見回す。高山市街地の・・・古い町並だ。しかも私、側溝に左足を突っ込んで倒れている。体が重い、って思ったら、首にブラ下がっているのは、大きなカメラ。そうだ。持ち物。肩かけの小さなポーチを手で探る。ポーチの中に見つけたのは、かわいい手鏡。そこに映っていたのは・・・誰?この人誰!?桜色のロングヘアー。桜の髪飾り。そして・・・凛とした美しい顔立ち。誰なの〜!?なんで?なんで?どういうこと、これ?鏡の中で整った顔が困惑した表情を見せる。鏡を遠ざけて体全体を映すと・・・淡い桜色のロングTシャツ。透け感のある軽やかなパーカー。ボトムスはデニムのスリムパンツ。女性カメラマン?気がつくと、私の周りには人だかりができていた。その中から現れたのは・・・「大丈夫?怪我はない?」いかにも爽やかな、長髪の男性。「いや、だ、大丈夫です。おかまいなく」という私の言葉など関係なく、片手を差し出してくる。「さあ、つかまって」「いや、そ、そんな・・」口では断っているのに、なぜかその手をとってしまった。「歩ける?」「た、たぶん」「ここ、酒蔵の入口だから。ほら、そこのカフェのベンチ。あそこをお借りしよう」彼はカフェの人に断りを入れて、私をベンチへ座らせた。「さ、お水もらってきたから。はいどうぞ」「あ、ありがとうございます・・」「なんだよ、その喋り方。頭うったの?」「し、失礼ね。あなた・・・誰ですか?」「え?どういうこと?待合せに遅れたこと、怒ってるの?」「え・・だから・・名前は?」「もう〜。ショウに決まってるだろ」冷静に、冷静に。えっと、これからどうしよう・・・とにかく朝日町へ帰らなきゃ。いまごろどうなってるんだろう。怒ってたあのお客さん・・・そうこうするうちにコーヒーが運ばれてきた。そっか。カフェだもん。コーヒーくらい飲むのが礼儀だよね。「良いショットは撮れたかい?」「え・・・あ、...
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    18 分
  • ボイスドラマ「トライアングル・ラプソディ/前編」
    2025/10/23
    秋の高山祭──荘川そば農家の娘・さくらは、恋人ショウと再会するはずだった。しかし祭の雑踏の中で転倒し、気がつくと見知らぬカフェの記憶と、自分ではない声…。いっぽう同じころ、朝日町の薬膳カフェでは“苦いお茶”をきっかけに騒ぎが起こる。ふたりの意識が入れ替わった瞬間から、物語は静かに、そして切なく動き出す。──すれ違いの恋、入れ替わる心。ヒダテン!ボイスドラマ第28話『トライアングル・ラプソディ/前編』は、高山祭の喧騒を背景に描く“さくらの視点”のラブストーリーです。【ペルソナ】・さくら(24歳)=荘川そばの栽培農家。収穫が終わった休みの日に八幡祭へ(CV=岩波あこ)・よもぎ(29歳)=朝日町の漢方薬剤師。東京の友達と約束して八幡祭へ(CV=蓬坂えりか)・ショウ(35歳)=さくらのパートナー。八幡祭で待ち合わせした(CV=日比野正裕)・観光客(22歳)=二日酔いで薬膳カフェ「よもぎ」へきた旅行客(CV=小椋美織)<シーン1A:古い町並>◾️高山祭の雑踏(お囃子)「すごい人出・・高山祭なんだから、あたりまえだけど」古い町並を上(かみ)から下(しも)へ。屋台の曳き揃えを目指して、人の波は桜山八幡宮へ流れる。私はさくら。実家は荘川町でそばの栽培農家をやっている。9月後半からは収穫の最盛期。でも昨日までにすべて終え、今朝、路線バスに乗った。趣味の一眼レフをかかえて。秋の高山祭。八幡祭(はちまんまつり)。パートナーのショウと桜山八幡宮で待ち合わせしている。彼は市街地で働いてるから、今日もお昼まで仕事だって。ついさっき少し遅れるって連絡があった。だから私はひとりでゆっくりと、古い町並を歩く。中橋(なかばし)から上三之町(かみさんのまち)へ。古い町並を順番に撮影していく。なじみの酒蔵があるあたりで、人力車とすれ違った。いい被写体。杉玉が吊るされた軒先越しに町並を写す。そのまま人の流れにのって安川通り(やすがわどおり)方面へ。人波にもまれながらファインダーを覗いていたとき・・・「あっ!」古い町並の左端を歩いていた私は、足を踏み外して側溝で転んでしまった。一眼レフを庇うあまり、焼板の壁で強く頭をうち・・・朦朧とする意識・・・ああ、祭囃子の音がフェードアウトしていく・・・<シーン2A:薬膳カフェ「よもぎ」/さくらの体=よもぎの意識>◾️カフェの雑踏「ちょっと・・大丈夫ですか?」「え?」「急に倒れちゃったみたいですけど・・・」「あ・・・あ・・・あれ?」ここ、どこ?私、古い町並を歩いてたんじゃ・・・ここって・・・カフェ?どうして?「顔色悪いよ・・・」「あ、あの・・・ここって、どこですか?」「え〜!どうしちゃったんですか、一体?」「高山じゃないの?」「高山でしょ。朝日町のカフェ『よもぎ』・・・って、あなたのお店じゃないの?」「朝日町・・・?よもぎ・・・?」どういうこと?どうして?どうして朝日町にいるの?頭を抱える私に、テーブルに座った女性は、「救急車、呼びましょうか・・・?」「救急車・・・?い、いえ・・・大丈夫です。あの・・・私、ここの店員なんですか?」「ちょっと・・・本当に大丈夫?」「あ・・・はい・・・何か飲まれますか?」「え・・・だから・・あの・・・このナントカ茶っての、苦くって飲めないから・・」「お茶・・・?ちょっと失礼・・・わ、にがっ」「でしょ。だからお砂糖を」「わかりました・・・ちょっと待って」厨房へ行ってお砂糖を探す。ってか、このカフェ、ほかに誰もいないの?砂糖・・砂糖・・・見当たらない。カフェなのに白砂糖置いてないのかな。ん?これは?ラベルに書いてある。『ナツメのシロップ』『はちみつ』『羅漢果(らかんか)エキス』?これでいっか。「ごめんなさい。白砂糖はないみたいだけど、こんなシロップでいい?」「あ・・・ありがとう・・」シロップの容器をお客さんのテーブルに置く。そのとき目に映ったのは私の指。あれ?ネイルがついてない?取れちゃったの?桜の花びらの模様。気にいってたのに。そんなことを思いながら厨房へ戻ったとき。入口の鏡を見...
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  • ボイスドラマ「LOBO★ユアフレンド」
    2025/10/16
    久々野町の森にひっそりと暮らしていたオオカミの母と子。クマに襲われ、母を失った子ども「カムイ」が、幼稚園児の少女・りんごと出会うことから物語は始まります。“ロボ”と呼ばれ、人間の家族と暮らしながらも、心の奥底には「オオカミの誇り」を宿し続けるカムイ。彼はりんごを守るため、幾度となく命を張ります。そしてついに訪れる、運命の夜──。母が遺した言葉を胸に、最後の最後まで少女を守り抜いたカムイの姿は、聞く者の心を揺さぶります。「もしも、ニホンオオカミが生き延びていたら?」そんな“もし”を描いた感動のボイスドラマを、ぜひお聴きください。【ペルソナ】・カムイ/LOBO(0歳〜)=子どもの狼(CV=坂田月菜)※カムイはアイヌ語で「神」・母狼(30歳くらい)=誇り高き飛騨狼の最後の生き残り(CV=小椋美織)・りんご(5歳)=久々野町の幼稚園年長さん。(CV=坂田月菜)・ママ(28歳)=りんごのママ(CV=岩波あこ)・パパ(32歳)=りんごのパパ(CV=日比野正裕)・ニュースアナウンサー=宮ノ下さん(カメオ)【参照:日本オオカミ協会】https://japan-wolf.org/faq/<シーン1/久々野の森から国道41号へ>◾️SE/森の中/虫の声/クマの声「カムイ!逃げて!」「おかあさんは!?」「いいから逃げなさい!ウェン/カムイより早く!」おかあさんはボクを庇うように、大きなクマの前に回り込んだ。ウェンカムイ。ボクたちを襲ってくる悪いクマのことをおかあさんはそう呼んだ。弟のイメルも妹のレンカもウェンカムイに襲われていなくなった。おかあさんとボク=カムイは、オオカミの母子(おやこ)。オオカミ?正しくはニホンオオカミって言うんだって。ボクたちはここ久々野で生まれ、久々野で育った。おかあさんは一之宮からやってきた、って言ってたけど。ボクは夢中で逃げた。無我夢中で走ったら、目の前には人間が作った大きな道。よし、あの向こうまで行けば・・・勢いをつけて飛び出す。そのとき、◾️SE/急ブレーキの音「カムイ!あぶない!」「おかあさん!」草むらから飛び出したおかあさんが、ボクに体当たりした。ボクは道の端に投げ出され、お母さんも草むらへ。「おかあさん!おかあさん!」おかあさんは草むらに横たわって動かない。ただ、ボクの方をじっと見つめた。おかあさんの声は心の中に直接聞こえてくる。「ねえ、カムイ。聞いて。覚えておいてほしいの。私たちは誇り高きニホンオオカミ。ここ、飛騨では神の使い」「かみさま?」「そう。だから、これからも悪いやつに負けちゃだめ。どんな大きな相手でも背中を見せてはいけない」「うん、わかったよ」「もし、あなたに家族ができたら命懸けで守るのよ。家族なんて・・無理かもしれないけど・・・」「おかあさん・・?」「さあ、もう・・・いきなさい・・・」「おかあさん!」「ここにいちゃ・・いけない」そう言っておかあさんはゆっくりと目を閉じた。「おかあさん!おかあさん!どうしたの?なんで返事してくれないの?」「おかあさん・・・」「わかったよ・・・ボク、いくね・・」ボクはおかあさんにさよならを言って、大きな道をもう一度渡っていった。「あぶない!」「えっ?」気がつくと、さっきよりおおきな乗り物が目の前を走り去っていった。ボクを抱きかかえて尻餅をついているのは・・・人間のこども!「あぶなかったねー」と言って、ボクの頭を撫でてくる。「さわるな!」「こら、助けてあげたのに怒っちゃだめでしょ。りんご、年長さんになったから知ってるもん。親切にされたら『ありがとう』って言うんだよ」なに言ってるかわかんないけど、ちょっと困った顔をして、もう一度触ってきた。あ、あったかい・・・「よしよし。もう道路に飛び出しちゃだめだよ。じゃあね。ばいばい」そう言ってどっかへ行っちゃった。「おかあさん・・・」どうしてかわかんないけど、ボクは女の子のあとをついていく。大きな道から、少し小さな道へ。おっきくてながぁい乗り物が走る道も越えて。りんごがいっぱい実っている畑を通ったとき女の子は振り返った。ボクも距離を保ったまま立ち止...
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  • ボイスドラマ「梅花藻/後編(飛騨一之宮編)」
    2025/10/09
    1934年、高山本線が開業したばかりの飛騨。久々野から宮峠を越え、二人がたどり着いたのは聖域・飛騨一宮水無神社。前編で出会った“女スパイ”梅花藻と少年りんごは、臥龍桜/夫婦松/水無神社に散らされた暗号を手がかりに、山上の奥宮へと向かいます。待ち受けるのは、陽炎を創設した男・蛇(オロチ)。そして、国の命運すら揺るがす「ある秘匿物」の真相。後編は、りんごのモノローグが中心。リンゴを分け合うささやかな時間、臥龍桜のしめ縄に潜む数字、そして奥宮での決断。スパイ・アクションの緊張感と、少年のまっすぐな祈りが同時に走る、ヒダテン!屈指のエピソードです。<『梅花藻(バイカモ)』後編「飛騨一之宮編」>【ペルソナ】・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/宮峠の鞍部にて>◾️SE/秋の虫の声/森の中を歩く音/近くに流れる沢の細流(せせらぎ)「はあっ、はあっ、はあっ・・」「りんごクン、大丈夫?もうヘバっちゃった?」梅花藻のお姉さんが意地悪そうに笑う。「宮峠を越えたらもう宮村だから」そう言ってボクの手を引く。ボクたちはまだ、出会ってから24時間も経っていない。この道行(みちゆき)が始まったのは、昨日。母さんの葬式の真っ最中から。(葬式の最中、見知らぬ男たちが父さんを連れ去った。「久々野のおじいちゃんに届けるように」そう言って父さんがボクに託したのは母さんの遺骨。ボクは一晩中逃げたんだけど、岐阜駅で知らない男たちに捕まってしまった。気づけば汽車に乗せられて、高山本線で富山へ。助けてくれたのは、一人の女の人。梅花藻という名前のお姉さんがたった一人で悪者をやっつけちゃったんだ。お姉さんは、故郷の宮村へ向かう途中だと言った。久々野と宮村。目的地が近かったからボクたちは一緒にいくことになった。でも、どうして悪者はボクを追ってくるのか。それに気づいたのもお姉さん。お姉さんは、母さんの遺骨の中から、一枚の地図を見つけた。それがなんなのかわかんないけど、悪者はそれを探してたんだと思う。だっておじいちゃんのりんご農園へ帰ったときもやつらがいたんだもん。お姉さんが知らないうちにやっつけてくれたけど。用事を終えたお姉さんは、ボクを置いて一人で水無神社へ行こうとしたけれどボクはお姉さんを追いかけた。だってボクは決めたんだ。お姉さんについていこうと)父さんが悪者に連れ去られたり、ボクも汽車に乗せられたりといろいろあったけど。いまはこうして手をつないで、宮村への山道を歩いてる。「なに独り言つぶやいてるの?」お姉さんは、覗き込むようにボクに顔を近づける。「そろそろ分水嶺だから、少し休もうか」「うん。久々野の飛騨リンゴ。食べようよ」「そうね。こっちへ」リンゴを投げると、お姉さんは片手で受け取る。そのまま片手でトランクのヒンジを開けて・・さっと取り出したのは刃渡りのおおきな果物ナイフ。あっという間にリンゴを八等分にして僕に手渡す。「いい香り。食べる前から美味しい、ってわかるわ」「そりゃそうさ。おじいちゃんちの飛騨リンゴは世界一だから」「ほんとね。間違いない」(※食べながら)「これからどこへ向かうの?」「まずは、飛騨一宮水無神社」「どうして?」「見て」お姉さんが見せてくれたのは、父さんが残した地図。...
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    20 分
  • ボイスドラマ「梅花藻/前編(久々野編)」
    2025/10/02
    1934年、高山本線開業の日。非公認諜報機関「陽炎」から逃げた女スパイ・梅花藻は、久々野へ向かう汽車の中で少年りんごと出会う。母の骨壷に隠された地図、そして迫りくる追手――。飛騨のリンゴ畑を舞台に繰り広げられるスリリングな物語。後編(一之宮編)へ続く。【ペルソナ】・梅花藻(25歳/CV:小椋美織)=コードネーム梅花藻(ばいかも)。政府の諜報機関「陽炎」所属・少年りんご(12歳/CV:坂田月菜)=岐阜から高山線に乗り込んできた尋常小学校の低学年・春樹(ハルキ=62歳/CV:日比野正裕)=蛇の同級生。詩人であり小説家。父は水無神社宮司・蛇(オロチ=62歳/CV:日比野正裕)=諜報機関「陽炎」を作った人物。逃げた梅花藻を追う【プロット】【資料:バイカモ/一之宮町まちづくり協議会】https://miyamachikyo.jp/monogatari/pg325.html・時代設定=高山本線が開業した1934年(10/25全線開業)・陸軍省が国防強化を主張するパンフレットを配布し軍事色が強まる・国際的には満州国が帝国となり溥儀が皇帝に即位・ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた※一部が梅花藻のモノローグ、二部はりんごのモノローグ<プロローグ/東京・蒲田の陽炎の諜報施設>◾️SE/走る足音・銃声・虫の声はぁ、はぁ、はぁ・・・あと少しで蒲田駅。そこまで行けば、あとは・・・海軍の施設や工場が集積する蒲田。看板もなにもない木造の施設が廃墟のようにたたずむ。それが、私を育てた組織「陽炎」の本部。育てた?いや、正しく言えば、私をつくった組織。創業者のオロチに言わせると私は、工作員として史上最高の傑作らしい。コードネームは、梅花藻。ついさっきまで「陽炎」のトップエージェント、女スパイだった。そう。「陽炎」が解体されると知るまでは。1934年。ドイツとポーランドの間で不可侵条約が結ばれた。一方・・満洲国という傀儡国家を作り、アジアでの地位を築こうとする日本。非公認の諜報機関について都合が悪い状況が増えてきた。結論は、歴史の闇に葬り去る。存在そのものを抹消する、ということらしい。いち早く情報を入手した私は、上官を撃って施設から脱走した。ためらいなどない。そう教えられてきたのだから。◾️SE/銃声一発/工場のサイレン/遠くに響く汽笛よし、これで追っ手はすべて消えた。蒲田まで行けば、国鉄で品川、東京へ。そのあとは・・・?「さすがだな、梅花藻。だが、この蛇から逃げられると思うなよ」◾️SE/東京駅の雑踏東京駅にとまっていたのは2つの特急列車。南回りの「櫻」と北回りの「富士」。同じ時刻に東京駅を発車して「下関」に向かう寝台特急である。私は中央西線経由の「富士」に乗ったように偽装。サングラスをはめ、変装して東海道線の「櫻」に乗り込んだ。空いていたのは一等寝台。まあ、そのくらいの蓄えはある。ああ、疲れた。横になりたい。だが決して油断はせず。古びたトランクを右手側に置いて体をコンパートメントのベッドへ預けた。<シーン1/岐阜駅>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/岐阜駅の環境音/機関車転車台の音/ハイヒールの音転車台の上を機関車が回転する。東海道線の要衝、国鉄岐阜駅。私は東京発下関行きの特急「櫻」を途中下車した。まだ暗い早朝だからほとんど人はいないだろう。と思ったら大間違い。ガス燈の薄灯りに照らされた構内はかなりの人出。そうか。今日、高山本線が開通したんだ。いや。この混雑。私にとっては都合がいい。駅構内を入念にチェック。一人でホームに立つ女性など、目立って仕方がないからな。ふむ。高山で乗り換えて富山まで。なるほど・・・感じるものがあって、私は高山行きの列車に乗り込んだ。<シーン2/高山線車内/少年との出会い>◾️SE/蒸気機関車の汽笛/狭軌蒸気機関車車内の音(No.532452)ゆったりした二等客車の先頭。私は進行方向とは逆の座席に腰掛けた。スパイの習慣。後方の三等客車から二等車両へ入ってくるものはほとんどいない。逆に前方の二等車両から入ってくるものはすべて視界に納められる。敵が現れても瞬時に対応できる体勢。流れ去る景色をじっくり見られるのも大きい...
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  • ボイスドラマ「LOBO★マイフレンド〜国道沿いで拾った子犬はまさかのニホンオオカミだった!?」
    2025/09/25
    知られざる最後のオオカミの物語──その名は「ロボ」舞台は、飛騨高山・久々野町。国道沿いの草むらで母を亡くした一匹の“子犬”と、年長さんの少女・りんごが出会うところから物語は始まります。成長とともに、次第に周囲から「異質な存在」として扱われていくロボ。しかし、りんごにとってロボは“友だち”であり“家族”であり、かけがえのない存在でした。守るために牙をむいたとき、愛するがゆえに手放さなければならなかったとき、子どもと動物の間に芽生えた絆が、あなたの心に静かに火を灯します。そして最後に、明かされるロボの“本当の正体”。これは「もういないはずの命」と「小さな命」の奇跡の物語です。【ペルソナ】・LOBO(0歳〜)=りんごに拾われた狼の子ども(CV=坂田月菜)※「lobo」はスペイン語で「狼」・りんご(5歳)=久々野町の幼稚園年長さん。(CV=坂田月菜)・ママ(28歳)=りんごのママ(CV=岩波あこ)・パパ(32歳)=りんごのパパ(CV=日比野正裕)・ニュースアナウンサー=宮ノ下さん(カメオ)【参照:日本オオカミ協会】https://japan-wolf.org/faq/<シーン1/久々野町・国道41号沿いの草むら>◾️SE/急ブレーキの音と狼の悲鳴※りんごのモノローグは主観ではなく客観的な視点「おかあさん!おかあさん!どうしたの?なんで返事してくれないの?」久々野町、国道41号線沿いの草むら。車に跳ねられ、飛ばされた野犬が横たわっていました。その横には、小さな子犬が1匹。冷たくなった母の乳房をしゃぶりながら泣いています。濃い茶色の体毛。長い脚。尻尾は丸く湾曲して、耳は短い。やがて、乳が出なくなった母の亡骸から子犬は離れていきます。ふらふらと国道に歩いていきました。「あぶない!」「えっ?」目の前を、おおきなトラックが走り去っていきます。子犬は女の子に抱えられて、一緒に道の端で尻餅をつきました。女の子の名前は、りんご。この春、5歳になったばかりの年長さんです。「よいしょっ・・」と、お尻の土を払って立ち上がったりんごは「あぶなかったねー」と言って、子犬の頭を撫でます。子犬は抱っこされたまま、牙を剥きました。「ウ〜ッ」「こら、助けてあげたのに怒っちゃだめでしょ。りんご、年長さんになったから知ってるもん。親切にされたら『ありがとう』って言うんだよ」「くう〜ん・・」「よしよし。もう道路に飛び出しちゃだめだよ。じゃあね。ばいばい」りんごは、抱っこした子犬を草むらに戻しておうちに帰っていきました。ところが・・・「おかあさん・・・」りんごのあとを少し離れて、子犬はついてきちゃったのです。おうちまであと少し、という農道。踏切を越えて果樹園の前を通ると、葉摘み(はつみ)をしているおじさんがこっちを見て笑っています。りんごが振り返ると、後(あと)についてきているのは、あの子犬。距離を保ったまま、子犬も止まっていました。「あれぇ?ちびちゃん、ついてきちゃったの?」りんごはしゃがんで、子犬を手招きします。子犬は・・・少し悩むような顔をしてからゆっくり近づいてきました。「どうしよう・・・ママ、犬、きらいって言ってたよなあ・・」「ねえ、いい子にできる?」子犬はなんにも言わずにりんごを見ています。「できるよね?」子犬はりんごを見て、首をかしげています。「もう〜。いい子にしないと、追い出されるんだってば!」りんごが頭を撫でると、子犬は初めてすり寄ってきました。<シーン2/久々野町・りんごの家>◾️SE/食卓の音「ちゃんとりんごが自分で面倒みるのよ」意外なことに、おかあさんは、飼うことを許してくれました。もちろん、りんごは大喜び。おとうさんが、子犬に名前をつけました。ふた文字で「ロボ」。りんごは、あんまり気に入りませんでしたが、飼えることになったので、文句は言えません。それからは、ロボの世話で大忙しの毎日。朝、りんごが目を覚ますと、ロボはベッドの横。黙ったままじいっと座っています。ダンボールで作った寝床はいやみたい。りんごは背伸びをして体を起こし、ロボを抱っこして、お外へ。「おしっこだよ〜」声...
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    18 分
  • ボイスドラマ「美女と天狗〜奥飛騨温泉郷・上宝の平湯温泉にある天狗橋と天狗岩の伝説?」
    2025/09/18
    愛は呪いを解く鍵となるのか。奥飛騨の伝承「天狗岩」と「天狗橋」をモチーフに描かれる、幻想的で切なくも温かい“嫁入り譚”。親を亡くし、絶望の中で人柱となった少女・箏と、山の神の怒りによって姿を変えられた大天狗。二人の出会いは、呪いと運命を変える大きな転機となる──。現代の高校生・マコトとストーリーテラー・シズルの会話を通じて語られる、どこか懐かしくて、新しいファンタジー。終盤に訪れる“静かな奇跡”に、あなたもきっと心を奪われることでしょう。【ペルソナ】・シズル(35歳)=道の駅 奥飛騨温泉郷上宝のストーリーテラー(CV=日比野正裕)・マコト(17歳)=高根町の高校生。郷土史研究部=部員1名の部長(CV=山﨑るい)・箏(こと=17歳)=伝承の中で天狗に嫁入りする美女(CV=山﨑るい)・天狗(年齢不詳=35歳)=奥飛騨温泉郷上宝に住む天狗=もののけ(CV=日比野正裕)【参照:天狗岩/奥飛騨温泉観光協会】https://www.hirayuonsen.or.jp/article.php?id=10170<プロローグ/道の駅 奥飛騨温泉郷上宝>◾️SE/奥飛騨温泉郷の環境音「むかぁし、むかし。君が生まれるより、ずう〜っとずっとずっとむかし。この奥飛騨温泉郷・上宝には天狗が住んでいました」「(ゴクッ)」※唾を飲み込む音「天狗って知ってるかい?」「うん。知ってるよ。顔が赤くて、鼻がこ〜んなに長い妖怪でしょ」「妖怪?まあ、間違ってはいないけど・・」「妖怪じゃないの?」「妖怪、っていうよりもどっちかって言うと、神様に近いかな」「神様!?だから神隠しとかするんだ」「ああ〜。そうかもね。でもほら、京都の鞍馬寺とか栃木の古峯神社(こぶじんじゃ)とかは有名でしょ」「ふうん。知らないけど」「『天狗』って、元々は中国から伝わった言葉なんだよ。天(あま)かける狗(いぬ)と書いて、隕石や流れ星のことだったんだ」「すご〜い!シズルさん物知り〜」「大人をばかにするんじゃないの。今日はね、『天狗の嫁入り』というお話だよ」「やった!」道の駅 奥飛騨温泉郷・上宝で毎月1回開催される「昔話の読み聞かせ」。奥飛騨温泉郷・上宝の施設が持ち回りで担当している。今月は、新穂高温泉の、うちの施設がストーリーテラー。で、私が、読み聞かせするってわけ。まあ、昔、仕事でよくプレゼンをしてたから、人前でしゃべる、ってのは嫌いじゃないんだけど。今日は初日で平日だから、第一部のお客さんはたった1人。高根村から来た17歳の高校生マコトくん。なんでも、郷土史研究部の部長なんだって。部員は一人だけど?そうですか〜。今日の話、実は私の創作、フィクションなんだ。平湯温泉にある、天狗岩や天狗橋にインスパイアされて作った物語。ほら、さっきもマコトくんが言ってたじゃない。天狗って妖怪だって。神隠しとか、あまりいいイメージじゃないよね。私が天邪鬼だから、ってわけじゃないけど、ストーリーはそんなイメージを払拭するもの。なんとファンタジー作品なんですが・・「ちょっとシズルさん。早く続き、教えてよ」「ああ、ごめんごめん。じゃあ続きね」<『天狗の嫁入り』シーン1/人柱>◾️SE/村の雑踏「その村には20年前から天狗が住んでいました。天狗に対して村人たちが一番恐れるのは、神隠し。今まで何度も子供や娘が天狗にさらわれていたのです。そのため、毎年1回、秋祭りのときに、天狗に人柱をひとり捧げていました。人柱となるのは、村の最高齢の老人。娘や子供の格好をして、人柱になっていたのです。ところが今年、人柱になるのは、17歳の少女、箏(こと)。この春、箏の両親は山崩れに巻き込まれて命を落としました。それから箏は天涯孤独に。自暴自棄となり人柱として名乗り出ました。村人たちは箏を一生懸命説得しますが、無駄でした。箏は、人柱として慣例通り天狗橋を渡り、天狗岩へ登っていきます。岩の上に寝転ぶと、目を閉じました。<『天狗の嫁入り』シーン2/箏と天狗>◾️SE/深い山中のイメージ横になった箏を包み込むように、いきなり風が吹きました。目をあけると、そこは空の上。天狗岩は笠ヶ岳の雲の上に浮かんでいました。...
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