エピソード

  • ボイスドラマ「10月の雪」
    2026/10/30
    10月なのに、雪だった。そしてその雪が、二人を出会わせた。亡き妻との「幸せな雪」を忘れられない静流。雪の日の事故で恋人を失い、「悲しい雪」を忘れられない紅葉。高山から新穂高へ向かうバスで、偶然出会った二人。雨はみぞれへ。奥飛騨へ近づくにつれ、季節外れの雪へと変わっていく・・・紅葉と初雪が交差する奥飛騨を舞台に描くヒダテン!切ないラブロマンス。【ペルソナ】・静流=シズル(30歳/CV:日比野正裕)妻を亡くした青年。妻との雪の思い出を大切にしている・紅葉=くれは/(24歳/CV:坂田月菜)恋人を雪の日の事故で亡くした少女。雪はトラウマ・天気予報アナウンサー=宮ノ下浩一さん【シーン1/高山濃飛バスセンター】◾️天気予報(宮ノ下さん)「続いて、気象情報です。日本付近には、この時期としては非常に強い寒気が流れ込んでおり、高山市内でも夕方にかけて急激に気温が下がる見込みです」▪️SE/高山濃飛バスセンターの雑踏天気予報の言う通り、10月の空は重い鉛色に閉ざされていた。まるで季節を飛び越えてしまったかのような、灰色の雲。高山濃飛バスセンター。バスを待つ客たちはみな体を丸めている。5番乗り場のホームは新穂高温泉行き。エアブレーキの音とともに、ロングデッキの路線バスが滑り込んできた。私の名前は静流。静かな流れ、と書く。30年の人生は、7年前まで、名前のように静かな軌跡をたどってきた。東京都内に生まれ、大学までずっと実家暮らし。卒業してからは、都内の小さな設計事務所へ。古い民家のリノベーションや庭園の設計を仕事にしてきた。ささやかな私の趣味は、季節を愛でること。研鑽を兼ねて、全国各地の自然を訪ねた。奥飛騨へ行ったのは7年前。大自然の中に悠然と佇む秘湯は、日々の疲れを優しく癒してくれた。そのとき出会ったのが妻。当時24歳の彼女は、都会の喧 騒を離れ、温泉宿で働くリゾートバイト。住み込みで仲居をしながら、奥飛騨の四季を楽しんでいた。話すようになってわかったのは、彼女がフリーターであること。自分では”自由人”と言っていたけど・・住まいは都内。私のオフィスと目と鼻の先。偶然は、引力に変わる。私たちの距離は、自然と近づいていった。結婚したのは、その次の年。新婚旅行は、彼女の希望で冬の奥飛騨へ。雪の降る露天風呂。彼女の微笑みは湯けむりに溶けていく。それは、人生で一番幸せなひとときだった。永遠に続くかと思っていた時間。あっけなく幕を閉じたのは、コロナが明けた2023年。逝ってしまう前、妻は何度も口にした。『あの温泉・・露天風呂にまたいきたいな』思いは叶わなかった。結局私はいま、ひとりでバスに乗っている。あの日と同じ、高山濃飛バスセンター。10月だというのに急に冷え込んだ空気。まるで私の心を映しているようだ。奥飛騨の紅葉は10月上旬から下旬。そろそろ終わりが近い。とはいえ、いまはまだハイシーズン。バスは満席ではないにしろ、そこそこお客さんは多かった。私の席は一番後ろ。人間観察が趣味、というわけじゃないけど、昔からこの場所が好きだった。私は手元の包み紙からさるぼぼをとりだす。購入したのは、駅前の土産屋さん。店員のおばちゃんは確かこう言ってたっけ。さるぼぼは、安産や子育てのお守り。女の子が幸せになるようにって願いをこめるんやさ。そうなんだ。あのとき、買っておけばよかったかな。・・なんて、どうしようもないことを考えてしまう。車内の半分以上は外国人。残りは高齢者のご夫婦か。そのとき。発車直前のバスに、1人の女性が乗り込んできた。私も含めてまわりがブルゾンやダウンを着込んでいるというのに、白い薄手のジャケットにサマーニット。デニムの裾をまくり、足元は白いスニーカー。髪は、無造作にまとめられたショートボブ。通路を挟んだ私の斜め前に、座る。空いているのはそこだけ。私と目が合ったとき、彼女は一瞬、小さく会釈をした。私はそっとうなづいて視線を落とす。視線の先・・後ろを向いた彼女のリュックに赤い色が揺れている。彼女が座るのを待っていたように、案内放送が流れ、バスが動き...
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  • ボイスドラマ「あさひの風」
    2026/10/23
    「移住なんて、ハ・ン・タ・イ!」名古屋で暮らす27歳のつむぎ。夫から提案された飛騨・朝日町への移住に大反対!でも、朝日町で過ごした一日が、彼女の未来を変えていく・・・【ペルソナ】・つむぎ=(27歳/CV:蓬坂えりか)※名古屋から子育てのために移住先を検討中の主婦・よもぎ=30歳/つむぎの夫(アートデザイナー)・なずな=3歳/つむぎの娘(保育園入園前)・かえで=54歳/つむぎの母(名古屋在住)【シーン1/道の駅ひだ朝日村/到着】▪️SE/スマホの着信音「もしもし、あ、カイト?・・うん、今着いたところ。『道の駅ひだ朝日村』。って駐車場入れないじゃん。なんか、イベントやってて・・あさひたかねわくわくフェスタ・・っての。周辺のイベント用駐車場に入れって。ま、いっか。ん?うん、名古屋出たのは朝8時よ。カイトが仕事に出かけたあと。掃除してから出たの。ダンナさまを見送ってから家事こなして、って主婦の鏡でしょ。え?ナズナ?もちろん、おかあさんに預けてきたわ。まだ3歳なのよ。長距離ドライブなんてかわいそうでしょ。アタシもアナタの車って、あんまり運転慣れてないし。ま、いいんじゃない。おかあさん、すごく喜んでたわ。でも、言われたし。たまには顔見せてちょうだい、って。ちゃんと伝えたからね、いい?それより、今日の仕事、時間かかるの?お昼前までくらい?え〜、昨日はすぐに終わるって言ってたじゃない。施主さんが遅れてる?あ〜あ、大変ね。建築デザイナーって。てかさ、そんな状態で本気で移住するつもりなの?ここ、朝日町へ。収入とか大丈夫?え?なになに?木工デザイナー?クラフトマン?ふうん。いいけど。現実と理想がちゃんと一致するといいわね。ん?そうよ、もちろん変わってないわ。アタシの考えは。どこにしろ移住なんて、ハ・ン・タ・イだから。子供のことも考えてよ。来年から保育園なのよ。ちょうどいい?はぁ〜。オトコの考え方ね、ったく。まあでも、本気で考えるならアタシもいまの仕事考えないとか。なに?まだ覚えられないの?アーユルヴェーダよ、アーユルヴェーダ。インドの伝統医学。ウチは完全紹介制の高級スパサロンなんだから。アタシはチーフセラピスト。結婚してもう4年なのよ。いい加減覚えなさい。でも、どうするかなあ〜。朝日町でなにができるんだろ。って、あたりまえじゃない。不安しかないわよ。ま、それも踏まえて、今日はじっくり見ておくわ、朝日町を。あ、っとゴメン。もう駐車場着いたから。切るよ。あんまり遅くならないでね。じゃ」▪️SE/スマホを切る音「ピ!」イベント用の駐車場は、朝日小学校か・・・へえ〜、木造で、いい感じ。まあ、子供を通わせるなら、こういう小学校がいいわねえ。さてと。元気にしてるかな。ナズナ。おかあさん、遊んでくれてるよね。▪️SE/スマホをかける音「プルルル」「あ、もしもし。おかあさん?つむぎです(※名前はタテる)今日は朝からすみません。ええ、カイトは仕事です。終わってからソッコーで朝日に向かうって言ってたけど。あ、はい。夕方にはこっちを出ます。夜遅くならないようにしますから。え?はあ・・明日はカイト、代休で仕事休みですけど・・・泊まり?そんな・・・大丈夫です。帰ります。申し訳ないですし・・え?そうですか・・・わかりました。カイトの来る時間が遅くなるようなら考えます。はい。ありがとうございます。いま?駐車場から歩いてるとこです。道の駅まで。なんか、今日、イベントやってるみたいなんで。道の駅で。あー、見えてきた、見えてきた。賑やかそうだなあ。楽しそう。あさひたかね わくわくフェスタか・・さっきも言ったけど・・・え?いえ、なんでもありません。え?わ!ちょっとすごいスケールおっきいかも。グルメにマルシェに・・・キッチンカーの数とか、ハンパないですー。あー、ナズナも連れてきてあげればよかったなあ。元気にしてますか?ナズナ?ちゃんとお昼寝しました?ああ、よかった。え?あ、はい。ありがとうございます。代わってください。(※しばらく間を開ける)もしもし。ナズナ?...
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  • ボイスドラマ「林檎失踪事件」
    2026/10/16
    「もうマジで無理! こんな家出ていってやる」秋の高山祭で賑わう10月。久々野のりんご農園で母親と大喧嘩した林檎は、本当に家を飛び出してしまいます。向かった先は、父・静流がペンションを営む奥飛騨温泉郷。今回はアガサ・クリスティの名作ミステリー『アクロイド殺し』『オリエント急行殺人事件』にオマージュを捧げた、ヒダテン!流ミステリーコメディ。舞台となるのは、高山から平湯、新穂高、そして中尾温泉へと走る濃飛バス新穂高線。紅葉の奥飛騨を走る路線バスとともに、ちょっと不思議な「失踪事件」をお楽しみください。果たしてあなたは、林檎が隠している“真相”を見破れるでしょうか?【ペルソナ】・林檎=りんご(18歳/CV:坂田月菜)=JK3年生/父と離婚した母と2人暮らし/バスマニア・静流=シズル(42歳/CV:日比野正裕)=離婚後に中尾温泉で温泉付きペンションを営む。ペンションの畑でスクナカボチャを育てている・如菜=ジョナ(39歳/CV:小椋美織)=林檎の母/離婚したあともシングル/農園で働く・理玖=リク(19歳/CV:田中遼大)=林檎のバスマニア仲間/福井在住・愛李彩=アリサ(40歳/CV:中島ゆかり)=新穂高の旅館で働く仲居さん・沙羅=さら(25歳/CV:岩波あこ)=渋谷の旅&グルメ系インフルエンサー(インスタグラマー)【プロローグ/久々野のりんご栽培農家】▪️SE/小鳥のさえずり「もうマジで無理!なんで毎年10月ってこうなん!?意味分かんないんだけど!なんで私だけ、高山祭行けないの!?おかしくない!?見てよ、ママ!インスタもTikTokも!屋台の引き揃えの写真、こーんなにいっぱい。友だちみーんなみだらしとか五平餅とか食べ歩きして、超楽しそうなのに!私だけいけないの、なんで!?」「りんご農園の娘だからでしょ!いまさら何言ってんの!」「マジでりんご農園になんて生まれてこなきゃよかった。最悪」「林檎!いい加減にしなさい!」「なんで?間違ったこと言ってないし。いいわ。もう。こんな家出ていってやる」「っとにもう!やんなるわ。そういうとこそっくりなんだから・・」え・・・ママが思わず口にする。それは去年別れたパパのこと。ママも私も、ずっとタブーにしてたのに。絶対口にしなかった言葉。「あ・・・いや・・ちがくて・・・とにかく黙って収穫手伝いなさい」私は黙ってママに背を向けた。うちは久々野のりんご農園。毎年この時期は、目が回るくらい忙しい。って、そんなこと言われなくてもわかってるし。生まれたときからず〜っとそう。私は林檎。名前も林檎。畑で実ってるやつとおんなじ。それもず〜っといやだったけど。友だちの楽しそうなストーリーを見て、ついにキレちゃった・そのあとはママがなにを言ってきても全部シカト。アタシは部屋に戻って、速攻で荷造りを始めた。思ったとおり。ママは追いかけてこない。そんなヒマないよね。黙々とりんごの収穫を続けていた。【シーン1/高山濃飛バスセンター新穂高線のりばから中尾高原口へ】▪️SE/高山濃飛バスセンターのガヤ高山濃飛バスセンター新穂高線5番のりば。路線バスは意外と混んでない。なんで?紅葉シーズンの奥飛騨って、まじハイシーズンじゃん?あ、そっか。今日はみんな祭り見てるから。てか、なんでこの路線なの?って話なんだけど、ぶっちゃけ・・・パパ、離婚してから新穂高の中尾高原でペンションやってんだよね。ハッキリ教えてくんないけど、ワンチャンそれも離婚のガチ原因説。アタシは、裏垢でパパのペンション、フォローしてるし。宿泊客の投稿、まじでレベチすぎてえぐい。まずは、中尾高原の絶景掛け流し貸切風呂。貸切風呂だからスマホ持ち込めるのガチで神。湯煙の向こう、北アルプスのビジュがまじで大優勝してる。で、標高1,100mならではの、天然のプラネタリウム。街明かりゼロ、お風呂に浸かりながら見上げる満天の星!ってかガチで優勝確定っしょ。からの〜、とどめはペンションから車ですぐの『北アルプス大橋』!全長150m、谷底からの高さ70m。上路式ソリッドリブアーチ橋?錫杖岳とか笠ヶ岳をバックにしたビジュ。...
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    19 分
  • ボイスドラマ「101番目の提灯」
    2026/10/09
    「君の灯りは、世界で一番綺麗な灯りになるんだ・・・」 朝の高山濃飛バスセンター。5分間の缶コーヒーから始まった、届かないはずの恋。伝統の秋祭りの夜、100個の提灯の中で待つ彼のもとへ届いた奇跡とは・・・【ペルソナ】・アカナ=(20歳/CV:米山伸伍)=古川の専門学校で木工や家具の技術を学ぶ・萌々=(もも/22歳/CV:高松志帆)=高山駅前のリゾートホテルで働くホテリエ【シーン1/高山濃飛バスセンター(8月終わり)】▪️SE:高山濃飛バスセンターの雑踏(セミの声)「おはよう!今日もきれいだね!」「もう〜、やめてよ。みんな見てるのに」「仕事がんばって!」「ありがと!アカナもね!」オレだけにわかるよう、小さくウィンクをして彼女は市街地へ駆けていく・・・・・・・・なんて、あるわけないよなぁ〜!高山濃飛バスセンター。古川神岡線の降車場で、毎朝オレは妄想する。朝6時20分。古川駅前から高山濃飛バスセンターへやってくる始発のバス。彼女はいつもこのバスから降りてくる。残暑厳しい8月。少しだけ残っている夜の涼しさ。バスを降りた彼女は静かに歩き出す。肩のラインが綺麗な、白いサマードレス。風が吹くたび、裾のフリルが軽やかに揺れる。丁寧に編み込んでアップにした髪型。うなじのラインが美しい。あ・・心の中で声をかけようとしても、言葉がでない。ほんの一瞬、視線が動いてオレの方へ。口角が少しだけ上がったような気がした。オレの名前はアカナ。大新町(おおしんまち)1丁目に住む20歳(はたち)の学生。古川にある専門学校で、木工とか家具の技術を学んでいる。ホントは、からくりを作りたいんだ。関係ないけど。オレの乗るバスは6時40分。彼女に会うために、毎朝15分も早起きしてる。バカだよな。ったく。【シーン2/高山濃飛バスセンター(9月中旬)】▪️SE:高山濃飛バスセンターの雑踏(雨の声)9月の雨。アスファルトに跳ね返る雨の音。冷たい雨粒を見ながら、オレはいつものバスを待っている。手にはコンビニで買ったビニール傘。始発バスがロータリーに滑り込んできた。小さく水飛沫が上がる。タラップを降りる彼女は今日も美しい。チャコールグレーのボトムスに、白いブラウス。その上から、薄手のカーディガンを羽織っている。雨でもやっぱり綺麗だな・・・コンコースでバッグから折りたたみの傘を取り出す。ワインレッドの上品な生地。ボタンを押して開こうとしているみたい・・・だけど・・ん?どうかしたのかな?なにか引っかかって開かないようだ。道ゆく人は、気づかずに通り過ぎていく。オレは迷わず彼女の横へ。彼女に見えるように、手を差し出す。「え・・」「貸して。オレが開けてやるよ」「あ・・、だ、大丈夫です」一瞬オレをみたあと、すぐに視線を傘に戻して開こうとする。「あれ・・・なんでかなあ」「いいから貸して」「いえ・・」オレはなかば強引に彼女の手から傘をとりあげる。そのまま、力任せに開いた。すると・・・▪️SE:傘の骨が折れる音「バキッ」「あ・・・」「ごっ、ごめんなさい!」「ぷっ・・・」(笑)傘は開いたけど、中の骨が折れて、飛び出している。彼女は鼻で笑ったあと・・・「ありがとうございます」そう言って、オレの手から傘をひったくった。「じゃ、急ぐので・・」「待って!」「なにか・・?」「これ・・オレの傘、使って」「結構です・・駅前のお店で傘を買うから」「そんなん、もったいない。いいからオレの傘持ってって。で、その傘はこっちへ。オレが直しとくから」「いえ、ホントに大丈夫ですから・・」「大丈夫じゃない。オレ、木工の学校行ってるんだ」「え・・」「そういうの直すの得意だから」「でも・・」彼女が言葉に詰まったのをみて、強引に壊れた傘を奪う。「あ・・」そのまま、自分の傘を彼女に押し付ける。「それじゃあなた、濡れちゃうじゃない・・」「明日、きっちり修理して渡すから」「待ってよ・・・」何か言おうとする彼女に背中を向けたまま手を降る。振り返らずに、ロータリーへ入ってきた古川神岡線に乗り込んだ。【シーン3/高山濃飛バスセンター(翌日)】...
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  • ボイスドラマ「おおきなさくらのおひっこし」
    2026/10/02
    湖の底に沈んだふるさと。そして、生き続けた二本の桜。2024年、東京・渋谷。89歳の咲良のもとへ届いた一冊の絵本。『おおきなさくらのおひっこし』そこに描かれていたのは、70年以上前、ダム建設によって湖の底へ沈むことになった故郷・荘川村中野地区と、二本の大きな桜の物語でした・・・【ペルソナ】・さくら=荘川桜の精(年齢不詳/CV:岩波あこ)=ストーリーテラー・咲良=さくら(19-20歳/23歳/26歳/89歳/CV:岩波あこ)青年団所属で反対同盟の運動員・昭一=しょういち/通称ショウ(年齢同上/CV:岩波あこ)咲良の幼馴染【プロローグ/2024年4月/東京渋谷】▪️SE/玄関チャイム「お荷物です」2024年春。私の元に小さな小包が届いた。私の名前は、咲良。89歳。東京の渋谷に住んで、もう60年以上になる。▪️SE/荷物の中身を開ける音小包の中身は・・・絵本?題名は・・・『おおきなさくらのおひっこし』。私は本のページを捲る。『荘川町中野地区。そこには照蓮寺、光輪寺というお寺があり、お寺には人々が大切にしていた二本の桜の木がありました』え?荘川村?中野地区?桜の木?何十年ぶりかに耳にするその名前。荘川村の中野は、私が産まれたところだ。【シーン1/1952年10月〜1953年1月/荘川村中野】『ある日突然、この荘川にダムができるという話がきました。中野地区の人たちは、みんなダムづくりにはんたいでした。ダムは中野地区につくられるため、ふるさとが水の中にしずんでしまうのです』▪️SE/小鳥のさえずり1952年10月。ダム建設計画が公表された。私がその話を聞いたのは、光輪寺の境内。19歳の私は、幼馴染のショウ=昭一と一緒だった。光輪寺の境内は、小さい頃から私たちの遊び場。大人になってもそれは変わらない。遅い春には、桜吹雪の下でいつまでもショウと語り合った。”お寺も、桜も、なにもかも・・・私たちの村が水の底に沈む?”当時の荘川村は農作物も豊富で、恵まれた農村だった。土地を失うということは『職と未来を同時に失うこと』を意味する。年が明けると『御母衣ダム絶対反対期成同盟死守会』を結成。日に日に反対運動は激しくなっていった。私とショウは、家々の玄関に『ダム絶対反対』と書いた木札を打ち付ける。バス停や道路沿いの家には巨大な横断幕を張って回った。その年、白川村と合同陳情団を結成。国会議事堂まで直訴に出かけた。反対運動は日を追うごとに、激しさを増していく。争いは何年にも渡り、終わりの見えない暗闇へと突き進んでいった。そこに現れたのが『賛成派』の村人たち。それは村を二分する深刻な対立へと発展した。死守会の若手頭、ショウの怒りは頂点に達していく。そんな時、私たちの目の前に、ひとりの老人が現れた。【シーン2/1959年夏/荘川村中野】『ある日、ダムづくりをすすめている、偉い人がやってきました。その人は、ダムづくりが日本のためになると説明しました。しかし、中野地区の人たちは、何回きてもらっても、ダムづくりには、反対だからね、と言いました』▪️SE/ヒグラシの声1959年。初めてその人を見たとき、少し驚いた。ダム開発の責任者。それは冷徹で心のない、怖い人私はそう想像していた。なのに、その人の目は全く違った。私たちを真っ直ぐに見て、深々と頭を下げる。時には、目を潤ませながら。ショウは、そんな姿を目にしてもまったく動じなかったけど。『日本のために、みなさんからふるさとをとりあげる。ほんとうにひどい話だと想っています』私にはその人が、うわべだけのでまかせを言っているようには見えなかった。ショウは相変わらず鋭い目つきで老人を睨みつける。その夜、家に帰ると、父と母が私を待っていた。仏壇の前に 正座して、私に告げたのは・・・『荘川を出る。新しい場所でやり直す』耳を疑う言葉。父の声は小さく、震えていた。母は仏壇に向かったまま、肩を落としてすすり泣いている。『もうここまでか・・・』私の心の中に、波紋が広がっていった。▪️SE/小鳥のさえずり次の日。私はショウを光輪寺の境内に呼びつけた。「さくら・・どうしたんだ?」「私、東京へ行...
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    17 分
  • ボイスドラマ「天文薄明」
    2026/09/25
    夕暮れと星空のあいだで、少女は少しだけ大人になる。昼が終わり、夜が始まるまでのわずかな時間。まだ空には明るさが残っているのに、少しずつ星が姿を現し始める・・・そんな「天文薄明」のような時間の中で、16歳の少女・星夜の小さな旅が始まります。【ペルソナ】※「星の降る里」「卒業旅行」の世界観・星夜=せいや(16歳/CV:坂田月菜)=東京・広尾に住むJK。星座ヲタク。久々野は母の実家・大空=リク(22歳/CV:田中遼大)=東京の大学4年生/高山出身/清見でキャンプ中・聖夜のママ=(42歳/CV:山﨑るい)=東京のヘアデザイナー/パリコレに参加・=あさひ(16歳/CV:蓬坂えりか)=朝日村のJK。漢方薬剤師になりたい【プロローグ】▪️SE:小鳥のさえずり〜携帯電話の着信音「もしもし?星夜?」ママから国際電話があったのは10月7日の早朝だった。ママは、フリーのヘアデザイナー。東京で雑誌の撮影とか、芸能人のヘアメイクとかをやってる。でもいまは、パリ。親友からのオファーでパリコレのヘアメイクチームに呼ばれた。友達ってのは、新進気鋭のファッションデザイナー。世界最高峰の舞台。からのー、裏側だもんね。フツーにすごいと思う。「パリコレ、さっき終わったわ。もうサイコーよ!」「おつかれ〜、飛行機のチケットとれた?」「それがねえ、星夜・・」「なに?」「ママのヘアデザインが・・・有名なファッション雑誌の編集長の目にとまっちゃったの」「それで?」「ショー直後のエディトリアル撮影、参加してほしいって」「だから?」「来週まで帰れない」「えーーーー」「ごめん、星夜。ほんっとにゴメン!おばあちゃんにはママから連絡しとくから。ひとりで高山行ける?行けるよね?」週末、本当はママと一緒に高山へ行くはずだった。秋の高山祭。『高山祭はねー、一生に一度は見ておかないと!言葉なんかじゃ表現できない!とにかくサイコーだから!』って言ったのママじゃん。まあ、いいわ。高山は初めてじゃないし。1か月前、一緒にトレッキングした朝陽にLINEしてみよっと。『星夜、ごめんーー!高山祭の2日間、富山の薬科大学で特別講義入っちゃってる。泊まり込みで。言ってなかったけど、私、漢方薬剤師になりたいの。そのためには大学の薬学部へ進学しないとダメなんだ。だけど、星夜、すごいねー!高山祭くるんだ!宵祭も楽しんで!』漢・方・薬・剤・師!ってマ!?ガチですごすぎ。朝陽って、ただの薬草オタクじゃなかったんだ。なんか、フツーなのウチだけじゃん。マジ病むわ〜。このあと、ママはおばあちゃんにすぐ連絡してくれた。だ・け・ど。おばあちゃんちは久々野のりんご農家。この時期、収穫とか、色づけって作業で、休む暇もないくらいガチで忙しいらしい。りんご狩りの対応もするんだって。ま、ウチは別に全然ヘーキ。ひとりで高山祭行くから大丈夫だし。前髪を触りながら、ジルの鏡を見る。パリ行く前にママがカットしてくれたやつ。『絶対星夜に似合うから!』っつって、ママオリジナルのウルフカット。パツンと切り揃えるんじゃなくて、ミリ単位でハサミを縦に入れたっつー、束感。指先で少しクシャッと崩せば、無造作だけど、カッケー束になって額に落ちてくる。マジでオシャ。はぁ〜。まいっか。久々野のおばあちゃん、マジで優しいし、高山祭楽しみすぎて無理。古い町並とかテキトーにぶらついてこっと。【シーン1/高山濃飛バスセンター】▪️SE:高山濃飛バスセンターの雑踏「あ、すみませーん!乗りまーす!!」高山濃飛バスセンターから、男の人が息を切らせて乗り込んできた。大学生、かなあ。なんか、派手じゃないのにシンプルにレベチで雰囲気ある感じ。今っぽいきれいめのブルゾンに、白シャツチラ見せのクリーム色ニットとか、マ。東京っぽい。ウチはノースリーブの白いティアードワンピース。肩が大胆に出たオフショル気味のデザイン。胸元にはネイビーのフリルとリボン。うーん。季節感バグってるかも。といいつつ、このビジュで、高山祭の2日間を思いっきり楽しんだ。いやマジ、すごすぎて語彙力失うレベル。控...
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    16 分
  • ボイスドラマ「蛟」
    2026/09/18
    時代に忘れられた水の女神と、山に生きる青年時は1912年――明治45年、大正元年。前年、国鉄中央線が全線開通し、飛騨の工女たちが歩いた過酷な「野麦越え」は、その役目を終えようとしていました。最後の野麦越え。工女たち。美女峠。そして・・・人と神。歴史と伝承。そして、時代が変わっても変わることのない人の想い。明治から大正へと移り変わる飛騨を舞台に描く、少し不思議で、どこか懐かしい愛の物語です【ペルソナ】※1912年(明治45年/大正元年〜大正三年)の春〜夏・水波=みずは(年齢不詳/CV:蓬坂えりか)=記憶を失った女性。実は水の女神、水龍   の化身・惣太=そうた(25歳/CV:日比野正裕)=朝日村で一人炭焼きを営む住む寡黙な青年・澪=みお(2歳/CV:坂田月菜)=惣太と水波の娘。半人半妖【シーン1/美女ケ池行き倒れ】・少女の姿をした記憶喪失の龍神・水波が美女ケ池のほとりで倒れている・冬に備えてナラ材を切り分けた木こりの惣太が運搬路を整えるため通りがかって発見する◾️創作・糸引き唄(※唄:蓬坂えりか&坂田月菜)※音声/https://hidaten.com/wp-content/uploads/2026/09/itohikiuta.wav〽ハァー 野麦(のむぎ)越えるときゃ 雪さえ溶ける 溶けぬ涙が エーヨー 胸を突く〽糸を引きましょ お国のために 親に仕送り エーヨー 果てるまで真っ暗な闇の中から『糸引き唄』が聞こえてくる。『お国のために、家族のために』吹雪の美女峠。工女たちの足音と、唄声。ああ、そうだ。覚えているとも。粗末な単衣(きもの)を何枚も重ね着して、三幅前掛け(みはば/まえかけ)を帯代わりに結んだ生娘(むすめ)たち。頭には手拭いを巻いて、脚には脚絆(きゃはん)。足袋の上からわらじを履いて、雪の峠を超えていく。美女峠は、過酷な道行きの入口。家族と離れ、野麦峠へと向かう『十三見送り(じゅうさんみおくり)』。『永の別れ』をねぎらうために、私は少女たちに餅をふるまった。親も子も、泣きそうな顔で『うまい』『うまい』と言うておった。最後の工女行列を見送った冬。役目を終えた私はどうなるのだろう?いや、そもそも、『私』とはだれなんだ?記憶の上に、果てしない忘却の雪が降り積もる。冬が終わり、春の足音が聞こえてくるまで・・・「おい、あんた!大丈夫か?生きてるか!」底なしの闇の中から、誰かが私を呼び覚ます。暗い。冷たい。水の底。ただ揺蕩(たゆた)うだけの深い眠りを覚ます響き。胸の奥がぎゅっと締め付けられるような・・・記憶の彼方から届く声。私は、閉じていた瞼を、ゆっくりと押し上げる。「おお、気がついたか」視界に飛び込んできたのは、眩い木漏れ日。そして、私の顔を覗き込む一人の男。荒れた手、煤けた衣服、私を見つめる、強い眼差し。炭焼きの男。その口から言葉が漏れる。「びっくりしたぞ。あんた、草むらのなか、美女ケ池の水際で倒れとったんや」「美女が池・・・」「ああ。真冬なら今頃生きちゃおらんやろが」「私は・・・私はだれじゃ・・・」男は眼を丸くして驚き、そのあと言葉が続かない。私も男と目が合った瞬間、再び、忘我の眠りに落ちていった。【シーン2/惣太の炭焼き小屋】◾️虫の声「ああ、よかった。眼を覚ましたな。生きてたんだ」「虫の声・・・もう夜か・・」「ちゃうて。あんた、3日間眠ってたんや」「三日・・・ん?ここは・・・どこじゃ?」「オレの家や。炭焼き小屋。美女ケ池からはそう遠くない」「・・・そうか・・」「自分のこと、思い出したか?」「私・・私は・・・」「まあええわ。ゆっくり思いだしゃええ」「ああ・・・」「腹へったやろう?」私の返事を聞く前に、男は囲炉裏に向かった。火吹き竹で消し炭を煽ると、またたく間に赤い火が熾(おこ)る。煤けた鉄鍋に山の湧き水を注ぎ、自在鉤(じざいかぎ)に掛けた。「オレは・・・惣太だ」半身(はんみ)を起こした私に、男が名乗る。「見ての通り、ここで炭を焼いとる」話しながら、山菜を豪快につかんで鍋に入れた。そのまましゃがみ込んで火吹き竹を強く吹く。すると、眠っていた炭がパッと赤く色づいた。月明かりだけだった...
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    19 分
  • ボイスドラマ「奥飛騨百姓座敷湯守」
    2026/09/11
    昭和の頑固親父 VS 令和のギャル娘12年前に家を飛び出した娘・凛子が、奥飛騨の老舗温泉旅館「湯守」に突然帰ってきた!「昭和男児とかマジでサゲ」「ギャル女将とかアゲてこ」飛騨弁とギャル語が飛び交う、100年続く温泉宿の跡取り騒動。変えてはいけないもの。変わらなければ、守れないもの。5代目の父から6代目の娘へ、そしていつか7代目へ――。笑って、ぶつかって、最後はじんわり。奥飛騨の湯けむりに包まれる、父と娘の物語・・・【ペルソナ】※舞台設定は現代/新平湯温泉・静馬(しずま/64歳/CV:日比野正裕)=百姓屋敷を改造した老舗旅館湯守の5代目・凛子(りんこ/30歳/CV:坂田月菜)=静馬の娘。高卒で東京へ家出したギャル娘【プロローグ/家出】◾️SE:セミの声(ニイニイゼミ)「ばかやろう!毎晩毎晩ほっつき歩きやがって!そんなチャラチャラしたやつは、娘でもなんでもない!いますぐこの家から出ていけ!」「はいはい、お疲れサマンサ〜。そうやってすぐにブチるの、マジでウケる。そんだけ激おこぷんぷん丸だと血管切れるよ?ウチの人生ウチが決めるんで。とりま、あざした〜!」そう言って、娘の凛子が家を出ていったのが12年前。世間では『ギャル』というらしいが、下品な化粧と言葉使い。いったいどこの国の言葉なんだ・・・私の名前は静馬。奥飛騨温泉郷・新平湯温泉にある老舗旅館『奥飛騨百姓座敷・湯守(ゆもり)』の5代目当主である。うちは元々、江戸時代から続く豪農の百姓屋敷。明治の終わり頃、初代がこの場所へ太い梁を移築。湯守として温泉旅館を始めた。今年でちょうど100年になる。じいさんも親父も、絵に描いたような昭和の頑固親父だった。『男は黙って背中で語れ』『客には命を削っておもてなしをしろ』口を開けば飛騨弁の怒声が飛ぶような環境。当然のように私も、典型的な昭和男子として生きてきた。最近ではなんだっけ?パワハラ?モラハラ?なんやそれ?ちょっと大きい声を出しゃあ『威圧的』やの、気合いを入れようと背中を叩けば『暴力』やの。コンプライアンスだの何だのって横文字にすりゃあいいと思って。男ってのはなぁ!健さんも言ってるやないか。理屈じゃねえ、行動で語れ。女は一歩引いて、男の背中を支えるもんだ!汗水垂らして、泥にまみれて、必死こいて働く姿を見せる。言葉が足りんけりゃあ、愛のムチだって必要だわ。でなきゃ、奥飛騨の厳しい冬が乗り越えられるかっての!湯口から吹き出す源泉の熱さに耐えられるかってんだ!今の若い奴らは、ちょっと怒られたくらいで『心が折れた』だの『メンタルがどうの』だの、くだらないことばっか言いやがって。一人前になるまでは、寝る間も惜しんで精進しろ、っつうの。「はい、今の全部アウト〜。セクハラ・パワハラ・ジェンハラのトリプル役満やめてもろて?」「り、凛子!?」【シーン1/出戻り】◾️SE:セミの声(ミンミンゼミ)「お父ちゃん!声デカすぎだって。バス停まで余裕で聞こえてるからね?ただでさえ昭和男児とかー、世間的にマジでサゲなのに」「お前、いつ帰ってきたんだ?」「新宿を7時に出て、いま新平湯温泉に着いたー。つか最近の高速バス、ガチでリッチすぎてビビるんだけど!移動中ずっと爆睡できたし、普通に優勝だわ」「なんだ、それが12年ぶりに再会した親に言うセリフか?」「それよりー、お父ちゃん、いまのお客さんに聞かれたらガチで詰むって。昭和男児って、老害ムーブ全開でマジ公害レベルだから」「うるさい!それより昼飯は食べたのか?まかないでよかったら食ってけ」「え、食べる食べる!まかないとかガチで神なんだけど!ぶっちゃけお腹ペコペコすぎてたから、超助かる〜。とりま秒で荷物置いてくるから、よろしくね!」12年ぶりに新平湯へ帰ってきた娘。今年で30になるっていうのに、なんだ、あの化粧に言葉使いは。出てったときより、酷くなってるんじゃないか。目の周りは真っ黒、爪に変な飾りまでつけおって。とてもじゃないが、あれじゃあ、ご近所様や宿のお客様には見せられん。「ちょっと、お父ちゃん、ウチの部屋...
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