『聴くおいしい記憶』のカバーアート

聴くおいしい記憶

著者: キッコーマン
  • サマリー

  • 「聴くおいしい記憶」は、キッコーマンがお届けする番組です。
    キッコーマングループのコーポレートスローガン「おいしい記憶をつくりたい。」にこめ
    た想いを、音声でお届けします。

    「おいしい記憶」は、食にまつわる体験を通じて積み重ねられます。
    楽しさやうれしさといった食卓での時間や雰囲気。
    こころもからだもすこやかになっていきます。
    地球上のより多くの人がしあわせな記憶を積み重ね、
    ゆたかな人生をおくれるようお手伝いをしていきたい、という想いをこめています。

    ■聴くおいしい記憶特設サイト
    https://www.kikkoman.com/jp/memory/voice/index.html

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エピソード
  • #14 「ゆげが ごちそう」 山本一力
    2023/03/27
    キッコーマンは、食にまつわる楽しさやうれしさをつづっていただく「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテストを応援しています。 今回は、第14回「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテスト」のために直木賞作家の山本一力さんが書き下ろしたエッセー「ゆげが ごちそう」をお届けします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ゆげが ごちそう」 山本一力 今年も新春早々から、豪雪被害が報じられてきた。地球規模で英知と行動を結集し、牧歌的な四季に戻さねばの願いを込めて。                   *                   1960年代。高知市内のアーケード繁華街では、方々の店先で湯気が噴き上がっていた。冬場の郷土料理「蒸し寿司」を仕上げる蒸気窯からの湯気だった。「こどもは風の子、外で遊んでこい!」親に言われた子は、商店街を目指した。蒸気の柱が林立したアーケードで、片っ端から蒸し寿司の窯に手をかざして回った。湯気の暖と、甘酸っぱい香り。「おとなになったら、これを食べに来たいにゃあ」と、こどもは生唾を呑み込んだ。                   *                   東京生まれのカミさんも、真冬の小学校登校時、店先に出ていた暖に触れたという。蒸し寿司ならぬ「肉まん」の蒸かし器だ。時代は1970年代初頭。当節ではコンビニ冬の定番品だろうが、70年代は店先に出して、立ち上る湯気の暖と香りで、誘っていたようだ。つい先日の厳寒日、たまらなく蒸し寿司を食べたくなった。が、いまでは郷里ですら大半の店では、品書きから失せてしまった。幸い、カミさんは冬季高知で、何度も蒸し寿司を賞味していた。「うちで作ってみようか?」異論あろうはずもない。調理道具屋に出向き、小型正方形の蒸籠をふたつ買い求め、調理に取りかかった。五目寿司を下敷きにし、しいたけ・かんぴょう・グリンピース・薄切りかまぼこ・タイそぼろを混ぜ合わせる。錦糸たまごを散らして形が調う。その蒸籠を蒸し器に納め、強い蒸気で蒸し上げる。「しいたけ・かんぴょうは甘がらき味にして、しっかり味を染み込ませるのがコツぞね」蒸し寿司店のおかみさんから教わった。「蒸し上げに、短気は損気やきに」これで仕上がりと思ったあと、さらに追加蒸しを加えなさいとも、教わっていた。蒸し上がるまでを使い、椀を仕立てる。タイそぼろには馴染みの鮮魚屋さんで求めた、新鮮なタイのあらを使う。骨の身を剥ぎ取り、甘がらく煮て、そぼろとする。骨はうしお汁のダシだ。冬の青物(小松菜、三つ葉など)に、薄切りかまぼこの残り、そうめんで、うしお汁を仕上げる。手間さえ厭わなければ、安上がりだ。「あつつッ」と言いつつ蒸し器のふたを取ったとき、内に溜まっていた湯気が、ぶわっと噴き上がってくるが。湯気は冬の魔法使い。恩恵を享受したければ、手間を惜しまぬのが秘訣だ。常温でも美味い五目寿司。蒸し上げられると酢飯も具も、格段に美味さを増してくれる。 蒸し寿司には箸より匙がいい。こんもりすくったほかほか酢飯が放つ「ゆげがごちそう」。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 四季折々の恵みを感じながら、食をたのしむこと。食卓での会話や和やかな雰囲気。そんな「おいしい記憶」を思い出し、あたたかい気持ちになれますように。 ■キッコーマン企業サイト ブランドページhttps://www.kikkoman.com/jp/memory/index.html ■コンテストの受賞作はこちらからご覧いただけますhttps://yab.yomiuri.co.jp/adv/oishiikioku/  See omnystudio.com/listener for privacy information.
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    6 分
  • #13 「知らんざったけんど、郷里の味!」 山本一力
    2023/03/27
    キッコーマンは、食にまつわる楽しさやうれしさをつづっていただく「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテストを応援しています。 今回は、第13回「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテスト」のために直木賞作家の山本一力さんが書き下ろしたエッセー「知らんざったけんど、郷里の味!」をお届けします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「知らんざったけんど、郷里の味!」 山本一力 2021年5月下旬。郷里のヒロシから、超弩級の宅配便が届いた。前日に電話を受けており、宅配便の中身は分かっていたのだが……。土佐の桂浜は、かつては五色の小石が浜を埋めていた景勝地。月の名所としても知られ、昭和初期建立の坂本龍馬立像が、眼前に広がる太平洋土佐湾を見詰めている。景勝地ながら桂浜に打ち寄せる波濤は、うかつな浜遊びを許してはくれない。波打ち際から一気に落ち込んでいる浜は、昔から遊泳禁止だ。「波打ち際に近寄ったらいかん!」遠足時、先生からこれをきつく言われた。ヒロシはそんな土佐湾に、自家用漁船で出漁。カツオとキハダマグロを一本ずつ。スチロールのトロ箱には収まらず、段ボール箱二つをつないだ、規格外れの荷姿で。丸ごとのカツオが届くと知らされるなり、カミさんはヒロシの奥方かよちゃんに、電話を代わってもらった。そして。「カツオのあら煮はしょうゆと砂糖、日本酒で間違っていませんよね?」と確かめたら。「うちではマダケを一緒に煮ているのよ」家の裏山で採れたマダケを茹でて、同梱してくれていた。細長いマダケは、もちろん見知っていた。が、マダケ入りカツオのあら煮など、あのときまで食べたことはなかった。                   *                   昭和30年代の高知では町の鮮魚屋の大半が、店先でカツオをさばいていた。真ん中の太い背骨何尾分もを、皿一杯5円~10円で売っていた。身も美味いが骨に残った身は安くてうまいことを、あの時代の客は知っていた。亡母が煮つけてくれたカツオのあら煮は、甘辛いご馳走だった。赤貧の母子家庭では、カツオ身のタタキは手が届かない。が、あらなら毎日でも買えた。両手で骨を持ち、背骨にへばりついた身を食べた。甘味の少なかったあのころ、甘辛い骨の身は飛び切りのおかずだった。皿に残った煮汁は、ごはんにかけた。食べ盛りのこどもは、煮汁だけで一膳のごはんを平らげたものだ。ヒロシが釣り上げたカツオをさばいたのは、プロならぬカミさんだ。嬉しいことに背骨には、たっぷり身がへばりついていた。マダケと合わせ煮したら、さぞかしカツオの旨味がまとわりつくに違いないと思うと、生唾が口に広がった。鍋から噴き出す蒸気には煮ガツオ特有の香りに、しょうゆ・砂糖・日本酒が絡まっていた。が、タケノコ臭は含まれていない。どんな味になるのやらと、不安も感じた。出来上がりに箸をつけるなり、カミさんと顔を見交わし、同時に「美味い!」が出た。初めての賞味だったが、これぞ土佐の味だと身体が騒いだ。海の鰹も山の筍も、あの土佐の空気と水とで育っていたから。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あなたにも、ふるさとやゆかりの土地での「特別な味」はありますか? 食材や料理、人とのつながりが紡ぎだす「おいしい記憶」が、明日への力になりますように。 ■キッコーマン企業サイト ブランドページhttps://www.kikkoman.com/jp/memory/index.html ■コンテストの受賞作はこちらからご覧いただけますhttps://yab.yomiuri.co.jp/adv/oishiikioku/See omnystudio.com/listener for privacy information.
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    6 分
  • #12 「だれもが初体験の正月」 山本一力
    2023/03/27
    キッコーマンは、食にまつわる楽しさやうれしさをつづっていただく「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテストを応援しています。 今回は、第12回「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」エッセー、作文コンテスト」のために直木賞作家の山本一力さんが書き下ろしたエッセー「だれもが初体験の正月」をお届けします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「だれもが初体験の正月」 山本一力 昭和20年代後期、こども時代を過ごした町は木造平屋と二階建てばかりで、鉄筋建物はなかった。大晦日には、朝から町はしょうゆとみりんが主役の「おせち作り」の香りに包まれた。当時の木造家屋は気密性からは遠く、隙間だらけと言えた。大半の家には冷蔵庫もなかった。そんな暮らしでも、一夜明ければ元日だ。どこの家も朝から、おせち料理を作り始めた。冷蔵庫はなくても真冬なら、ひと晩を越しても傷みはしない。 しかも濃い味付けだ。八畳ひと間で、天井板も張られていない市営住宅の大晦日。料理の熱源は炭火の七輪と練炭火鉢、焚き口ひとつのかまどだ。それらを総動員し、母は次々と調理を進めた。とはいえ鍋釜の数は限られている。煮物から始めた献立が出来上がると深皿に移し、鍋を洗って次の料理に取りかかった。上がり框に並べられたどんぶりや深皿には、新聞紙がかぶせられた。日常の暮らしにはなかった美味しげな香りは、こどもを激しく刺激した。我慢できず覆いを持ち上げたら。「外で遊んできなさい」の声が飛んできた。どの家の隙間からも漂い出ていた、大晦日のあかし。こどもたちは鼻をひくつかせながら、寒空の下、原っぱで遊んでいた。                   *                   60年余りが過ぎた、今年の大晦日。我が家は、おせち作りが朝から始まる。が、例年とは大きく様子が異なるだろう。長男も次男も巣立った。高齢者の親父に感染させられぬと、元日も顔を出さぬという。正月はカミさんとふたりで祝う段取りだ。そんななかでも、大晦日の台所周りは、ホウロウのボウルで埋まるはずだ。煮物、焼き物、和え物、酢の物、甘味物。献立に応じて千切りにしたり、塩出しをしたり、角の面取りをしたりと、手前の支度が必要だ。それらの食材がボウルの内で、出番に備えているのだ。高知の大晦日、おせち作りにこどもの出番はなかった。カミさんは巧みにこどもの手を借りてきた。昆布やスルメを鋏で切るのも、出来上がりを重箱に形よく詰めるのも、こどもに委ねた。わたしは遠い昔同様、邪魔せぬように原っぱならぬ、床屋に出かけてきた。丑年を迎えるための、今年の大晦日。故郷には帰らず、実家から離れて新年を迎える方も多々おられよう。我が家とて同様だ。同じ都内にいながらも、親とは別に暮らしている長男も次男も、次の元日には顔を出さぬと伝えてきた。元日を共にできぬと、親父は落胆。「来ないと決めた気持ちを察しなさいよ」きつい一発を女房から食らい、老いては子に従えの箴言が、耳の内でぐわんと響いた。おいしい記憶は時空など、やすやすと越えてしまう。積み重ねてきた正月の記憶は、帰らぬと決めたあなたの脇で息づいている。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― どんな時にも、毎日おとずれる食の機会。2020年は、新しい生活様式が求められ、食をとりまく環境も変化しましたが、あらためて「食」の価値に気づくきっかけにもなりました。あなたの「おいしい記憶」が、明日への力になりますように。 ■キッコーマン企業サイト ブランドページhttps://www.kikkoman.com/jp/memory/index.html ■コンテストの受賞作はこちらからご覧いただけますhttps://yab.yomiuri.co.jp/adv/oishiikioku/See omnystudio.com/listener for privacy information.
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    7 分

あらすじ・解説

「聴くおいしい記憶」は、キッコーマンがお届けする番組です。
キッコーマングループのコーポレートスローガン「おいしい記憶をつくりたい。」にこめ
た想いを、音声でお届けします。

「おいしい記憶」は、食にまつわる体験を通じて積み重ねられます。
楽しさやうれしさといった食卓での時間や雰囲気。
こころもからだもすこやかになっていきます。
地球上のより多くの人がしあわせな記憶を積み重ね、
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