エピソード

  • 花壇工作
    2026/08/09

    📖『花壇工作』朗読 – 病院の中庭に、花で音楽を描くつもりでした🌷📐

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『花壇工作』。

    おれは設計図を持たず、仕事着のまま病院の中庭へ出かけて行きます。二つの棟にはさまれた緑いろの庭にテープを持って立っていると、そこにいた人たちが面白がって手伝いに来て、まっ白な杭がたちまちできあがります。窓のむこうには見物の顔がならびました。おれには自分の創造力に充分な自信があります。音楽を図形に直すのは自由なのだから、この庭に花で Beethoven の Fantasy を描くこともできる。そう考えていたのです。

    建物の影の落ちる限界を屋根まで見上げて計り、庭に二本の対角線を引かせて、その中心に杭を一本立てたところで、窓に院長が立ちます。どんな花を植えるのですか。花の名をいくつか答えるうちに、院長はとうとうこらえ兼ねて、靴をはいて中庭へ下りて来るのでした。

    おれの胸のうちには、まだ地面に置かれていない模様があります。日がまわるたびに青く移る、練瓦のジグザグな影。けれども中庭をとりかこむ窓には、たくさんの顔がならんでいるのです。

    四月の光の落ちる、緑いろの中庭。ひとりの園芸家のたった数時間を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #芸術 #怒り

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    7 分
  • サガレンと八月
    2026/08/02

    📖『サガレンと八月』朗読 – 北の海の風と波が、しきりに何かを訊いてくる🌊🐚

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『サガレンと八月』。

    オホーツク海のなぎさに立つ「私」に、西の山地から吹いて来たまだ少しつめたい風が、「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの」と、上着をぱたぱたかすめながら何べんも通って行きます。標本を集めに来たんだいと威張って答えてみても、その風はもう海の青い暗い波の上に行っていて、こちらの返事は一語ずつ切れ切れに持って行かれてしまうのです。やがて波までが音を強くして、拾ったばかりの貝殻のことで「私」に食ってかかってきます。

    話はいつのまにか、前の草はらで鮭の皮を継ぎ合せて上着をこさえるおっかさんと、指をくわえてはだしで小屋を出るタネリのところへ移ります。浜に落ちている寒天みたいなすきとおったものを拾ってはいけない、それで物をすかして見てはいけない。おっかさんはそう言いふくめますが、渚に下りたタネリは、それをつまみ上げて、すかして見たくてたまらなくなってしまうのです。

    なぎさで聴いたことが、しっかりしたつかまえどこのあるものなのか、それとも風や波といっしょに次から次と移って消えて行くものなのか、「私」にはわかりません。ただ、そこにある風や草穂のいい性質が聴く人のこころにうつって見えたなら、どんなにうれしいかしれません。

    乾いて飛んで来る砂と、はまなすのいい匂い。孔雀石いろと暗い藍いろに縞になった海。北の島の八月のなぎさに吹く、風のきれぎれのものがたりを、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #冒険 #衝動 #少年

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    18 分
  • 林の底
    2026/07/26

    📖『林の底』朗読 – はじめ鳥はみな白かった、月夜に梟が語る色のはなし🌙🦉

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『林の底』。

    風もないしずかな晩、西のそらに古びた黄金の鎌がかかるころ、林の中の低い松の枝から、一羽のとしよりの梟が「私」に話しかけてきます。鳥の先祖が天から降って来たときは、どいつもこいつもみな白かったのだ、と。ところが「私」は、いつも頬をふくらせて尤もらしい顔をする梟を、あまり信用していません。この用のない晩に、大きな梟がどんなことを云い出すか、ぼろを出さずに辻褄をあわせて語れるものかどうか、なるべくまじめな顔でゆっくり聴いてみることにします。

    みな白かった鳥たちは、うしろから声をかけても振り向くのが別の鳥だったりして、ずいぶん間ちがいが多かったのだそうです。そこで手の長いとんびが、川岸の赤土の崖の下に染屋を出しました。鳥たちはよろこんで、大きいのも小さいのも、めいめい注文をつけては染めて貰いに出掛けて行きます。どうしてめじろは眼のまわりが、頬白は両方の頬が、白いまま残っているのか。「肺が小さくて息がつづかないからです」と大まじめに説く梟に、「私」は、両方おなじ形におなじ場所に残っているのは工合がよすぎるではないか、と口をはさみます。すると梟はしばらく眼をつむり、また別の理くつをひねり出すのです。

    とぼけた聞き手と、機嫌をよくしたり悪くしたりしながら語りつづける梟。話に調子を合わせたかと思えば、ふと心を別のことへ遊ばせる「私」。鉛のように重く青い月光に満ちた月夜の林で、二人のかわすふしぎな問答を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #人と動物 #月

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    24 分
  • 蜘蛛となめくじと狸
    2026/07/19

    📖『蜘蛛となめくじと狸』朗読 – 立派な選手だった三人の、それはそれは本気の競争🕷️🐌🦝

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『蜘蛛となめくじと狸』。

    蜘蛛と、銀色のなめくじと、それから顔を洗ったことのない狸。三人はみんな立派な選手で、それはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。けれども、一体何の競争だったのか、語り手の「私」はよく知りません。胸に「ナンペ」と書いた蜘蛛文字のマーク、銀いろのゴムの靴、少しこわれた運動シャッポ。そんな三人の伝記が、ひとりずつ順にひもとかれていきます。

    ある晩ふっと風に飛ばされて、森の入口の楢の木にひっかかった赤い手長の蜘蛛は、ひもじいのを我慢して「うんとこせうんとこせ」と、二銭銅貨位の小さな網をかけはじめます。銀色のなめくじは、林の中では一番親切だという評判で、立派なおうちを訪ねてくるものに「あなたと私とは云わば兄弟。ハッハハ」と、ふきのつゆやたべ物をふるまいます。そして顔をわざと洗わない狸は、きもののえりを掻き合せて、「なまねこ、なまねこ」と山猫大明神へのありがたい念猫をとなえています。

    かげろうが哀れな声で歌う遺言のうた、「もう一ぺんやりましょう。ハッハハ。」とくりかえされる相撲、ポンポコポンポンとひびくはらつづみ。訪ねてくる小さなものたちとのやりとりを重ねながら、三人はそれぞれのやり方で、だんだん大きく立派になっていきます。そして楢の木の上の蜘蛛のところへは、時おり下の方から、へらへらした声や太い声で、からかいの歌が聞えてくるのです。

    とぼけた語り手の口ぶりと、ふしぎな歌と、ハッハハという笑い声。にぎやかな声にみちた三人の選手の伝記を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #動物が主人公 #伝記 #蛙

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    38 分
  • 洞熊学校を卒業した三人
    2026/07/12

    📖『洞熊学校を卒業した三人』朗読 – いちばん大きく、いちばんえらく🕷️🐌🦝

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『洞熊学校を卒業した三人』。

    赤い手の長い蜘蛛と、銀いろのなめくぢと、顔を洗ったことのない狸。この三人がいっしょに洞熊学校にはいり、洞熊先生のもとで学びます。そこで教わったのは、大きいものがいちばん立派だということ。三人はみんな一番になろうと競い合い、やがて学校を卒業して、それぞれ自分のうちへ帰っていきます。

    表向きは仲よさそうに見えても、腹のなかで思うのは「これから誰がいちばん大きくえらくなるか」ということばかり。かたくりの花が咲き、眼の碧い蜂たちがぶんぶんと飛び交う春の入口に、三人それぞれの暮らしが始まります。森の入口に網をかける蜘蛛、林中で評判の高いなめくぢ、お寺でありがたいお経をとなえる狸。習ったことを「じぶんでほんたうにやる」ために、三人はそれぞれのやり方で、自分より小さなものたちと向き合っていきます。

    訪ねてくるかげろうやかたつむり、兎とのやりとり。そのひとつひとつを重ねながら、「いまに見ろ」と大きくなることを目指す三人。ハッハハと笑う声、なまねこととなえる声——それぞれの声色のなかに、一番になろうとするものたちの姿が立ちのぼります。

    春から夏、秋、そして冬へ。物語の折々には、眼の碧い蜂の群れがあらわれ、かたくり、つめくさ、蕎麦の花から蜜を集め、六角形の巣を築いています。競い合う三人のかたわらで、季節は静かにめぐっていきます。移りゆく野原の情景とともに紡がれるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #蛙 #動物が主人公

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    43 分
  • マリヴロンと少女
    2026/07/05

    📖『マリヴロンと少女』朗読 – 秋の城あとにかかる虹と、才ある人へ捧げるおもい🌈🎼

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『マリヴロンと少女』。

    秋も深まった城あとに、銀のすすきの穂が一面に風で波立っています。まん中の小さな山の上には、めくらぶどうのやぶが実をつけ、そのそばで、ひとりの少女が楽譜をもってためいきをつきながら草にすわっています。かすかな日照り雨が降っては霽れ、草はきらきらと光り、もずが銀のすすきの穂に一度にとまります。やがて東の山脈の上を風が通り、大きな虹が、明るい夢の橋のようにやさしく空へあらわれます。

    そこへ、今夜市庁のホールでうたうというマリヴロン女史が、ライラックいろのもすそをひいて、みんなをのがれてやって来ます。少女は化石のようにすわったまま、この天の才ある人へ、ただ一言でも自分のおもいを伝えたいと願います。やがて、透きとおる声もどこかへ行って、しわがれた声を風に半分とられながら、少女はマリヴロンに呼びかけます。

    どうか私の尊敬を受けとってほしい、あなたがもっと立派におなりになる為なら私は百ぺんでも死にます——そう訴える少女に、マリヴロンは静かにことばを返します。正しく清くはたらくひとは、時間のうしろにひとつの世界をつくるのだと。青いそらをとんでゆく一羽の鵠が、うしろにそのあとをもつように。

    秋の城あとの風景と、そこに立ちのぼる一すじの虹。楽譜をもった少女と、うたい手であるマリヴロンとが、みじかいひとときだけことばをかわします。銀のすすき、めくらぶどうの雫、東へ飛び立つもず、空にかかる虹。詩的な情景のなかで、ふたりの声が静かに響きあいます。

    秋の光と虹に満ちた城あとのひととき。少女とマリヴロンのみじかい対話を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鼠 #芸術 #衝動

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    11 分
  • めくらぶどうと虹
    2026/06/28

    📖『めくらぶどうと虹』朗読 – 銀のすすきがゆれる秋の丘と、空にかかる一すじの虹🌾🌈

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『めくらぶどうと虹』。

    城あとの草はらに、秋が深まっています。赤つめ草の花は枯れ、畑の粟は刈られ、崖には銀のすすきの穂が、いちめんに風に波立っています。その草はらのまん中の小さな丘の上、やぶには、めくらぶどうの実が虹のように熟れていました。

    かすかな日照り雨が降ってはまた霽れ、東の灰色の山脈の上をつめたい風がふっと通ると、大きな虹が、明るい夢の橋のようにやさしく空にあらわれます。その姿を見上げて、丘の上の小さなめくらぶどうの木の青じろい樹液は、はげしく波うちました。今日こそ、ただ一言でもあの虹とことばをかわしたい——しわがれた声を風に半分とられながら、めくらぶどうは空に呼びかけます。やさしい虹は、西のそらをながめていた大きな碧い瞳を、丘の小さな木へ向けました。こうして、めくらぶどうと虹のあいだに、ことばが交わされはじめます。

    銀色に光る秋の野原、虹のように熟れたぶどうの実、空にかかる一すじの虹。きらきらと光る草、音譜をばらまいたように飛びかうもず、刻々と色を変えていくそら。光と色に満ちた秋の野で、丘の上の小さな木が、はるかな空の虹を見上げています。

    ひたむきに虹をうやまい、自分のいのちなど惜しくないと言うめくらぶどうに、虹はしずかにこたえます。虹の口から語られることばには、「かぎりないいのち」「まことのひかり」、そして野の百合といった、仏教やキリスト教を思わせるひびきがあります。詩のようなことばと幻想的な情景が織りなす、静かで瞑想的な世界。

    宮沢賢治が描く、銀のすすきと虹に満ちた秋の風景。丘の上の小さな木を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鼠 #植物

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    12 分
  • みじかい木ぺん
    2026/06/21

    📖『みじかい木ぺん』朗読 – 雨あがりの樺の林と、灰いろの不思議な鉛筆🌳✏️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『みじかい木ぺん』。

    キッコの村の学校では、雨がふると子供たちが教室の中で胆取りと巡査にわかれてあばれます。そのなか、いちばん前のすみの席で、霜やけで赤くふくれた手に一寸ばかりの鉛筆をにぎりしめ、キッコはひとりにかにか笑いながら、しきりに何かを書いています。それは、新学期からずっと使ってきた、おじいさんと町で買った大切な木ペンでした。けれどもその日、そのみじかい木ペンは、いつのまにかどこかへ消えてしまいます。

    課業がすんで外へ出ると、雨はすっかり晴れていました。あちこちの木がみな光り、山は群青にまぶしく見えます。けれども心もちをふさいだまま樺の林を歩くキッコの前に、灰いろのぼろぼろの着物を着たおじいさんが、大へん考え込んでやって来ます。「今日学校で泣いたな」と声をかけ、頭の上で鳥がピーと鳴くなか、おじいさんがキッコの手にそっと持たせたのは、心の色も黒くない、いかにも変な灰いろの鉛筆でした。

    子供たちのがやがやした声や雨だれの音が響く古めかしい教室から、雨上がりの匂いがいっぱいの樺の林へ。群青にまぶしい山、おひさまにすけて金いろにかがやく木の葉、霜やけで赤くふくれた手、灰いろの鉛筆。色と光と音にあふれた風景のなかを、ひとりの小さな子供が歩いていきます。土地の言葉でかわされる子供たちのやりとりや、短くなってもまだまだ使える一本の鉛筆に寄せられた気持ちが、村の学校での何でもない日々を、いきいきと立ちあがらせます。

    そして、見知らぬおじいさんから手わたされた一本の鉛筆。それを手にしたときから、キッコの毎日は思いがけない方へと進みはじめます。詩的な言葉と幻想的な情景が織りなす、宮沢賢治の不思議な物語の世界が、ここから静かに広がっていきます。

    宮沢賢治が描く、雨と光と樺の林に満ちた、ある村の風景。キッコと灰いろの鉛筆をめぐって立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください


    #いじめ #傲慢 #少年 #方言

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    20 分