エピソード

  • 貝の火
    2026/06/14

    📖『貝の火』朗読 – 光る野原と、火をやどすひとつの珠🌿🔥

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『貝の火』。

    草がきらきらと光り、樺の木が白い花をつける、よいにおいに満ちた野原。子兎のホモイは、うれしくてたまらず草の上を跳ねまわっています。そんなある日、ホモイは流れに落ちて押し流されてゆく小さな命を見つけ、こわさをこらえて水に飛び込み、岸へと助け上げます。

    それからしばらくして、助けられた小鳥の親子が、一つの贈り物を携えてホモイのもとを訪れます。「貝の火」と呼ばれる、まんまるの宝珠。中では赤い火がちらちらと燃え、目にあてて空へすかせば焔は消えて天の川がすきとおる、不思議な珠です。手入れしだいでこの珠はどこまでも立派になる——鳥の王からの言伝てとともに託されたそれを、ホモイは毎日息をふきかけ、みがいて大切にすると心に決めます。

    やがて、野原の生きものたちのホモイへの接し方が、少しずつ変わってゆきます。

    火を抱いた珠は、ホモイの日々とともに、その輝きをさまざまに変えていきます。野原には、朝を告げるつりがねそうの鐘の音が高く響き、鈴蘭は風に葉を鳴らし、草には露がきらめきます。その明るい風景の中を、ホモイはひばりや、りすや、馬や、むぐら、そして狐といった生きものたちと行き交います。

    「立派な人になった」と言われるようになったホモイ。そのまわりで、生きものたちの振る舞いも移ろってゆきます。ていねいに頭を下げる者、こわばってしまう者、調子よく近づいてくる者——さまざまな姿が、ホモイのかたわらに現れます。手のひらにおさまる小さな珠と、それを持つホモイのありようとが、物語の中でひそかに結ばれていきます。

    火と光、霧とその晴れ間、野原にわたる鐘の音。きらめく情景と、ちらちらと燃えるひとつの珠。詩的な言葉とやわらかな描写が、子兎の一日一日をつつんでいきます。

    宮沢賢治が描く、野原と生きものと、火をやどす珠の物語。ホモイと貝の火をめぐるこの不思議なものがたりを、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #狐 #動物が主人公 #いじめ #傲慢

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    1 時間 1 分
  • 黒ぶだう
    2026/06/07

    📖『黒ぶだう』朗読 – 赤狐に誘われて忍びこむ別荘と、陽の射す部屋の黒いぶどう🦊🍇

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『黒ぶだう』。

    退屈して頭をぶらぶら振っていた仔牛のもとへ、丘の上から赤狐が風のように駆けてきます。「散歩に出ようじゃないか」——柵を持ちあげてもらってその下をくぐり抜け、仔牛は林の方へと狐についていきます。やがて二人がたどり着いたのは、樺林の中にひっそりと建つ、ベチュラ公爵の別荘。煙突から煙も出ず、しいんと静まりかえって誰もいないようなその建物に、「ちょっとはいって見ようじゃないか」と、狐は身軽に足を踏み入れていきます。

    書物ばかりの部屋、きものばかりの部屋。真鍮のてすりのついたはしごをのぼった先に開けていたのは、日が一ぱいに射して、絨緞の花のもようが燃えるように見える部屋でした。てかてかした円卓の上のまっ白な皿には、立派な二房の黒ぶだうが、冷たそうな影法師まで添えて置かれています。「さあ、喰べよう」——狐の声が、静かな部屋に響きます。

    さっさと先を行く赤狐と、びくびくしながらあとを追う仔牛。「なあに僕は人の家の中なんぞ入りたくないんだ」と心の中でつぶやきながら、それでも足ががたがた鳴ってしまう仔牛。青ぞらを見上げてはタンと舌を鳴らす狐の身のこなしと、一歩ごとにためらいを抱える仔牛の足どりが、誰もいない別荘の中で並んでいきます。

    日の光、燃えるような絨緞の花もよう、まっ白な皿にのった黒いぶどうの房。みずみずしい色彩と、蜂蜜やそばの花の匂い。きらびやかで、それでいて静かな空気の中で、二人の別荘めぐりは進んでいきます。

    日の光、燃えるような絨緞の花もよう、まっ白な皿にのった黒いぶどうの房。みずみずしい色彩と、蜂蜜やそばの花の匂い。きらびやかで、それでいて静かな空気が、誰もいない別荘の中に満ちています。

    やんちゃで身軽な赤狐と、気は弱いけれど狐についていく仔牛。留守の別荘で交わされる二人のやりとりを、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #狐 #動物が主人公

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    10 分
  • 種山ヶ原
    2026/05/31

    📖『種山ヶ原』朗読 – 霧に沈む高原と、少年が迷い込んだ夏の終わりの一日🌫️🌾

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『種山ヶ原』。

    種山ヶ原は、北上山地のまん中にある高原。東と西からの風や湿気がぶつかり合い、雲や雨や霧がいつもすぐそこに控えています。夏休みもあと一日となったその日、達二は、上の野原で草を刈るおじいさんと兄のもとへ弁当を届け、牛を連れて草を食ませに行くことになりました。楊の枝で鞭を拵え、ダー、ダー、ダースコ、ダー、ダーと、夏に町で踊った剣舞の囃子を口ずさみながら、達二は原への路をのぼっていきます。

    ところが、原の入口で兄と落ち合ったのもつかのま、牛が不意に北の方へ駆け出します。達二は夢中で追いかけますが、せいの高い草を分けるうちに足はこわばり、深い草の中に倒れ込んでしまいます。気がつけば空は重く垂れこめ、冷たい霧が切れ切れに眼の前を通り過ぎていきます。牛の通った痕はかき消え、いくら呼んでも兄の返事は聞こえません。霧に閉ざされた高原で、達二はとうとう、どちらが帰り道かもわからなくなってしまいます。

    霧は刻々と濃さを変え、晴れたかと思えばまたあたりを閉ざします。黒板から降る白墨の粉のような霧の粒、いくつもの細い手を振るすすきの穂、馬の蹄の痕でできた頼りない黒い道。そんな霧をくぐって、剣舞の太鼓の響きや、ふと耳によみがえる誰かの言葉、霧の向こうに浮かぶ大きな影が、かわるがわる達二を訪れます。

    青黒い蛇紋岩や橄欖岩からできた種山ヶ原では、足もとを飲み込んでしまいそうな深い霧と、草の雫をきらめかせる陽の光とが、めまぐるしく入れかわります。光ったり陰ったりを繰り返すその懐で、達二はひとり、霧の中を歩いていきます。

    達二の迷い込んだ一日を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #少年 #夢 #方言 #山男

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    37 分
  • さるのこしかけ
    2026/05/24

    📖『さるのこしかけ』朗読 – 栗の木のきのこにあらわれた小さな小猿と、不思議な遠出🌰🍄🐒

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『さるのこしかけ』。

    夕方、楢夫は裏の大きな栗の木の下へ行きます。幹には白いきのこが三つ。まん中のは大きく、両がわの二つは小さく低い。「ははあ、これがさるのこしかけだ」——こいつへ腰をかけるならずいぶん小さな猿だ、まん中にかけるのは小猿の大将で、両わきは兵隊にちがいない、どんな顔をしているか一ぺん見てやりたいものだ。楢夫がそうひとりごとを言ったその時、きのこの上にひょっこり三疋の小猿があらわれて腰掛けました。まん中のは軍服に勲章を六つばかり提げた、小さな小さな大将なのです。

    握りこぶしほどの小猿の大将と、それを見おろす楢夫。手帳を取り出して尋ねてくる生意気な口のききようかと思えば、ふいに足をそろえてぺこりとおじぎ。「いい所へお連れしようと思って」と誘われた楢夫は、栗の木の根もとの四角な入口から、煙突のような幹の中へ入っていきます。電燈の列とはしご段が、ずっと上の方へ細い赤い線のようにのびて——その先で楢夫の目の前にぱっとひらける、ひるまの明るい草原。

    時折ちらりと見える、笑いをこらえているような小猿の顔。草のしげみのうしろからきょろきょろのぞく沢山の小猿たちの気配。号令とともにはじまる演習。小さな小さな猿たちにかこまれて、楢夫はいったいどこへ連れて行かれるのか。きのこに腰掛ける三疋の猿という、ふとした空想から立ち現れるこの物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #少年 #夢 #山男

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    18 分
  • インドラの網
    2026/05/17

    📖『インドラの網』朗読 – ひとり渉る冷たい高原と、空いちめんに張られた光の網❄️🌌

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『インドラの網』。

    風と草穂の底に倒れていた「私」は、ただひとり、暗いこけももの敷物を踏んでツェラ高原を歩いていきます。白いそらが磁器よりも冷たく張りつめ、稀薄な空気がきんきんと鳴る高原には、一羽の鳥も、やさしい獣のけはいさえありません。「私は全体何をたずねてこんな気圏の上の方をあるいているのか」——自分にそう問いかけながら、「私」は薄明から黄昏へと移りゆく荒涼とした道を、ただ進んでいきます。

    やがて行く手に、まっ白な湖が見えてきます。水ではないかもしれない、欺かれて力を落としてはいけない——そう自分に言い聞かせながらも、足は急いでしまう。石英の砂と、音なく湛える水のほとりに立つころ、あたりはすっかり夜になり、研かれた鋼鉄のような天の野原に銀河の水が流れ、数えきれない宝石がちりばめられています。人の世界の高原と、天の空間。そのあわいを行きつ戻りつするうちに、「私」はやがて、霜を織ったような羅をまとい、太陽の昇るのを待つ三人の子供らと出会うのです。

    ひとり高原を渉る道のり、すぐ隣りに開ける天の空間。冷たく張りつめた白い荒野と、宝石をちりばめた銀河の野原。孤独な問いかけと、思いがけない出会い。薄明、黄昏、灼けるような光——さまざまな情景が、この物語のなかに現れます。

    石英、金剛石、青宝玉、黄水晶。硬く透きとおる鉱物の名が連なる手ざわりのなかに、由旬や寂静印、瓔珞といった言葉が静かに置かれ、「インドラの網」という言葉が浮かびあがります。于闐大寺の壁画から抜け出たような子供らの姿、針や束になってそそぐ光。詩的な言葉と幻想的な情景が織りなす、冷たく澄んで瞑想的な世界。

    宮沢賢治が描く、鉱物と光に満ちた不思議な風景。青木晃と名のる「私」の旅路を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #心象スケッチ

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    20 分
  • 雁の童子
    2026/05/10

    📖『雁の童子』朗読 – 砂漠の泉のほとりで聞く、空からおりてきた童子のはなし🌾🦢

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『雁の童子』。

    流沙の南、楊で囲まれた小さな泉のほとりで、私は昼の食事をしていました。そこへ一人の巡礼のおじいさんがやってきて、だまって軽く礼を交わします。やがて私は泉のうしろに、まだ新しく黄と赤のペンキを塗られた小さな祠を見つけ、おじいさんに尋ねました。「あのお堂はどなたをおまつりしたのですか」。老人は静かに語りはじめます——「雁の童子のです」と。

    語られるのは、沙車にしずかに暮らす須利耶さまをめぐる物語。ある明け方、従弟と歩いていた須利耶さまの前で、空を渡る雁の列に銃口が向けられます。一発、また一発と弾丸が昇り、撃たれた雁は赤い焔につつまれ、泣き叫びながら落ちてくる——その姿はいつしか、空を飛ぶ人の形に変わっていました。やがて須利耶さまに託されることになる、ただ一人傷つかなかった小さな雁。「雁の童子」と呼ばれるようになるその子は、須利耶さま夫妻のもとで日々を過ごしていきます。

    子供らに囲まれた夕方、寝つけない夜に父と聞いた水の流れる音、馬市で母馬から引き離されていく仔馬を見たときのまなざし。ささやかな日常のひとこまひとこまに、童子のやわらかな心と、かつて空にあったものの面影とが、そっと重なっていきます。

    流沙、沙車、天山——シルクロードを思わせる遠い風景の中で、いのちの悲しさ、罪とその報い、過去世のつながりといった主題が、静かに物語に織り込まれていきます。空を渡る雁の列と赤い焔、青い石の野原と白い杏の花、泉のほとりの巡礼と語られる遠い昔——内と外、いまと昔、地上と天とが、淡くつながりあって立ちあらわれます。

    沙漠のへりの泉で巡礼の老人から聞くようにして語られる、雁の童子の物語。詩的な言葉と異国的な情景が織りなす、しずかで不思議な世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #童子 #夢 #いじめ

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    42 分
  • 風野又三郎
    2026/05/03

    📖『風野又三郎』朗読 – 山あいの学校にあらわれた風の少年🌬️🍃

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『風野又三郎』。

    谷川の岸に建つ、小さな四角な学校。九月一日のさわやかな朝、登校してきた一年生の二人が教室をのぞいてはっと棒立ちになります。誰もいないはずの教室、自分の机に、見たこともない赤い髪の子どもがちゃんと座っていたのです。鼠いろのマントに、水晶かガラスかと思われるすきとおる沓。熟した苹果のような赤い顔と、まん円でまっくろな眼──。 やがて山の上の栗の木の下で、子どもたちはその不思議な子と再会します。「風野又三郎」と名乗るその子は、岩手山から来たといい、支那へも行ったという。世界中を飛んで歩く話を、一郎や嘉助たちに次々と語り聞かせるのでした。「どっどど どどうど どどうど どどう、ああまいざくろも吹きとばせ、すっぱいざくろもふきとばせ」──冒頭から響くこの歌のリズムに乗って、九月のはじめのいくつもの日々、又三郎と子どもたちの交流が続いていきます。

    岩手山の谷底や、雲のずっと上で起きていること。又三郎が語りはじめると、見たこともない場所の景色や出来事が、栗の木の下にいる子どもたちの耳元まで運ばれてきます。ときに自慢げに、ときに少しふざけて、ときにふいに怒ったりしながら、風の少年は語り続けるのでした。 赤い髪、鼠いろのマント、まっくろな眼、ぎらりと光るガラスの沓。風がただ風として吹くこと、そして風が一人の子どもの姿で語りかけること──そのあわいに広がる、九月の山と空のはなし。

    宮沢賢治が描く、風と歌と光に満ちた不思議な世界。子どもたちと又三郎の出会いを通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。

    ※本作の九月一日の場面には、原稿が失われている箇所が二か所あり、底本でも〔以下原稿数枚なし〕と記されています。朗読でも該当箇所はそのまま、欠落として扱っております。物語の途中で場面が少し飛ぶように感じられる部分がありますが、そのままお聴きください。


    #冒険 #少年 #方言

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    2 時間 4 分
  • あけがた
    2026/04/26

    📖『あけがた』朗読 – ツンツンと光る空の下、ごうごうと鳴る川を溯る🌅🌊

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『あけがた』。

    青黒く淀んだ室の中で、おれはそわそわと立ったり座ったりしている。獣医の有本と、さまざまのやつらがもやもやと混ざり合った区分キメラ。そこへ白くぴかぴかする金襴の羽織を着た霧積が入って来て、嬉しそうに笑う。今日は支那版画展覧会へ行くのだという。やがて三人ともなぜかおれの着物を笑い出して——。

    ぷいと外へ出たおれは、川ばたの白い四角な家を抜けて、烈しく鳴る川のほとりに立っている。一月十五日、向岸から強くひびいて来る踊りの太鼓。ひどい洪水のあとらしい川は澄みながらも、波と波とが激しく拍って青くぎらぎらしている。空はツンツンと光り、水はごうごうと鳴る。北から落ちる支流に沿って溯ってゆくおれの目に、やがて大きな島が見える。

    青黒く淀んだ室の気配と、外に出てから出会う白く冷たい空の光。着物をめぐる嘲笑と、川岸でのひとり。烈しく鳴る水の音と、向岸から響く太鼓。場面から場面への移り変わりは、夢の中の出来事のように繋がってゆきます。「いつかもう島の上に立ってゐた。どうして川を渡ったらう」——気がつけば次の風景の中に立っている語り手の感覚のままに、物語は進みます。

    孔雀石の馬蹄形の淵、雑木の幹のまっしろなさるのこしかけ、青光りのさるとりいばら。室から川へ、岸から島へと移り変わる景色の中で、ひとつひとつの像が鮮やかに、けれどどこか不確かに浮かび上がります。

    詩的な言葉と幻想的な情景が織りなす独白の世界。一人称で語られる景色の移ろいを、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #心象スケッチ #夢

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    10 分