エピソード

  • 四又の百合
    2026/02/08


    📖『四又の百合』朗読 – すきとおる秋の風と、白い貝細工のような花🍂🌸

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『四又の百合』。

    「正遍知はあしたの朝の七時ごろヒームキャの河をおわたりになってこの町にいらっしゃるそうだ」——すきとおった風といっしょに、この言葉がハームキャの城の家々にしみわたります。永い間待ち望んでいた方がやって来る。町の人々はまるで子供のようにいそいそとして、通りを掃き清め、白い石英の砂を撒きます。王さまもまた、一晩眠れぬまま夜明けを迎え、ヒームキャの川岸へと向かいます。

    九月の朝、すきとおったするどい秋の粉が風に乗って吹きわたる中、王さまは正遍知に百合の花をささげようと思い立ちます。林の陰で、大蔵大臣が出会ったのは、まっ白な貝細工のような百合の花を手にした、はだしの子供でした。

    すきとおる風、白い砂、貝細工のような百合の花。物語の中で、透明なもの、白いもの、清らかなものたちが静かに連なっていきます。紺いろの蓮華のはなびらのような瞳、赤銅いろに光る指の爪——人々が思い描く正遍知の姿。ハームキャの城、ヒームキャの河、阿耨達湖、修彌山。異国の響きを持つ地名が、物語を遠く遥かな場所へと運んでいきます。

    紅宝玉の首かざりと白い百合、待ちわびる王さまとはだしの子供。静かな朝の光の中で、それぞれの思いが一つの花へと向かう短く澄んだ物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #植物

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    13 分
  • ひかりの素足
    2026/02/01

    📖『ひかりの素足』朗読 – 雪山の兄弟と、光に満ちた世界への旅路❄️✨

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ひかりの素足』。

    山小屋の朝、兄の一郎と弟の楢夫は、炭焼きの仕事をする父とともに目を覚まします。青い日光の棒が差し込む小屋の中、榾が赤く燃え、向こうの山の雪が白く輝く——穏やかな冬の山の情景。けれども楢夫は突然、訳もわからず泣き出します。「風の又三郎」が夢の中で何かを告げたのだと。新しい着物を着せる、湯に入れて洗う、みんなで送っていく——その言葉に、父も一郎も、言いようのない予感を胸に抱きます。

    やがて二人は家へ帰る道すがら、吹雪に見舞われます。白い雪、狂う風、道を見失い、弟をしっかりと抱きしめる兄。そして気がつくと、一郎はどこともしれない薄暗い世界にいました。鼠色の布一枚をまとい、素足は傷つき、血が流れ——楢夫を探し求めて、一郎は歩き続けます。

    傷ついた足、険しい道、恐ろしいものたちが支配する世界。その中で一郎が弟のためにとった行動が、やがて光をもたらします。貝殻のように白く輝く大きな素足——鋭い棘の地面を踏んでも傷つかないその足を持つ存在が、子どもたちの前に現れるとき、世界は一変します。

    雪山の現実と、光に満ちた世界。兄が弟を守ろうとする姿、風の又三郎の予言めいた言葉、そして「にょらいじゅりゃうぼん」という響き。物語の中で、東北の方言で語られる家族の日常と、幻想的な光景とが、地続きのように重なり合います。

    宮沢賢治が描く、雪と光と素足の物語。一郎と楢夫の旅路を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #冒険 #少年 #夢 #方言

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    1 時間 17 分
  • クねずみ
    2026/01/25

    📖『クねずみ』朗読 – エヘン、エヘンと響く咳払いと、高慢なねずみの行く末🐭静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『クねずみ』。クという名前のねずみは、たいへん高慢でそねみ深く、自分をねずみ仲間の一番の学者と思っていました。ほかのねずみが何か知識のあることを言うと、「エヘン、エヘン」と大きな咳払いをして威圧するのが癖でした。友だちのタねずみが経済の話や地震の話、天気予報の話をしようとするたび、クねずみは「エヘン、エヘン」とやって、タねずみを怖がらせます。ある日、クねずみは散歩の途中で、二匹のむかでが親孝行な蜘蛛の話をしているのを聞きます。そこでもまた「エヘン、エヘン」。天井裏街では、ねずみ会議員のテねずみが立派な議論をしているのを立ち聞きし、やはり「エヘン、エヘン」とやってしまい——やがてクねずみは思いもよらぬ事態に巻き込まれていきます。「エヘン、エヘン」という咳払いが、物語の中で繰り返し響きます。他者の知識や賢さに対するそねみ。自分が一番だという高慢さ。クねずみの咳払いは、友だちとの会話を、むかでの会話を、テねずみの演説を、次々と遮っていきます。「ねずみ競争新聞」、「共同一致団結和睦のセイシン」、「分裂者」。物語には社会的な言葉が織り込まれ、ねずみたちの世界が具体的に描かれていきます。そして咳払いという小さな癖が、やがて大きな波紋を呼んでいく——クねずみの高慢さとそねみ深さが導く展開を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鼠 #猫 #動物が主人公

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    23 分
  • ツェねずみ
    2026/01/18

    📖『ツェねずみ』朗読 – 弱さを盾に繰り返される声と、薄暗い天井裏の世界🐭✨

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ツェねずみ』。

    まっくらな天井裏に暮らすツェという名のねずみ。ある日、いたちから金米糖の情報を得て駆けつけますが、そこにはすでに蟻の兵隊が非常線を張っていました。「弱いものをだますなんて」「償ってください」——ツェねずみは、いたちに何度もその言葉を繰り返します。そうして手に入れた金米糖を抱えて、天井裏の巣へと戻っていくのです。

    やがてツェねずみは、柱やちりとり、バケツやほうきといった道具たちと交際を始めます。柱が親切心から冬支度を勧めたとき、ちりとりが最中をくれたとき、バケツが洗顔用のソーダをくれたとき——どんなときも、少しでも痛い目にあったり不都合があったりすると、ツェねずみは決まって償いを求めるのです。

    道具たちは次々とこりて、ツェねずみを避けるようになります。けれども、ただ一つだけ、まだツェねずみと付き合ったことのない存在がありました。それは針金で編まれたねずみ捕り。人間からは冷たく扱われ、ねずみたちからは警戒されているそのねずみ捕りが、ツェねずみに優しく声をかけます。

    繰り返される要求。弱さを盾にする姿。道具たちとの交際。そして最後に待ち受けるねずみ捕りとの出会い。物語は、ツェねずみの行動と、それを取り巻く存在たちの反応を、淡々と、しかし確かに描いていきます。

    宮沢賢治が描く、薄暗い天井裏と床下の世界。ツェねずみという一匹のねずみを通して立ち現れるこの物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鼠 #兵隊 #動物が主人公

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    19 分
  • 鳥箱先生とフウねずみ
    2026/01/11

    📖『鳥箱先生とフウねずみ』朗読 – ある先生と生徒たちの、ちぐはぐな教育譚🪶🐭

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『鳥箱先生とフウねずみ』。

    ある家に一つの鳥かごがありました。厚い板でできた箱のような鳥かごは、ある日ひよどりの子供を預かったことをきっかけに、自分が「先生」であることに気づきます。小さなガラス窓が顔で、正面の網戸が立派なチョッキ——そう気づいた鳥箱は、「鳥箱先生」を名乗り、生徒たちを教育しようとします。

    けれども、次々とやってくるひよどりの子供たちは、それぞれの理由で不幸な終わりを迎えます。やがて物置の棚に追いやられた鳥箱先生は、今度は鼠の子供、フウねずみを教育することになります。「なぜちょろちょろ歩くのか」「なぜきょろきょろするのか」「なぜ首をちぢめてせなかを円くするのか」——先生の説教に対して、フウねずみはいつもこう答えます。「だって僕の友達は、みんなそうです」と。しらみ、くも、だに、けしつぶ、ひえつぶ……。

    鳥箱という閉じた空間と、そこに閉じ込められる者たち。「教える者」と「教えられる者」。立派なものと比べるべきだという主張と、小さな友達の中で生きるフウねずみ。物語の中で、教育をめぐる言葉が交わされ、さまざまな小さな命が現れては消えていきます。

    「先生」を名乗る鳥箱の滑稽さと、その中で起こる出来事。諧謔と哀しみが入り混じった、どこか不思議な味わいの物語。フウねずみと鳥箱先生のやりとりには、それぞれの言い分があります。

    宮沢賢治が描く、小さな世界で繰り広げられる教育譚。ユーモラスでありながら、どこか切ない物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鼠 #猫 #動物が主人公

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    15 分
  • 鳥をとるやなぎ
    2026/01/04

    📖『鳥をとるやなぎ』朗読 – 煙山の野原と、謎めいた楊の木🌳🕊️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『鳥をとるやなぎ』。

    「煙山にエレッキのやなぎの木があるよ。」ある日、藤原慶次郎が「私」に告げます。鳥を吸い込む楊の木があるというのです。二人の少年は、その不思議な木を探しに煙山の野原へと向かいます。毒ヶ森や南晶山が暗くそびえ、雲がぎらぎら光る空の下、ひっそりとした草原を抜け、白い石原の川を渡り、楊の木立が並ぶ場所へ。そこで二人が目にしたのは、百舌の群れが、まるで磁石に引かれるように楊の木の中へ落ち込んでいく光景でした。石を投げれば鳥たちは飛び立つ。けれども何度見ても、あの落ち込みようは——。

    噂と実際の光景。磁石という言葉と、目の前で起こる現象。確信と疑念。「鳥を吸い込む楊の木」という不思議な噂をめぐって、少年たちの心は揺れ動きます。本当なのか、そうでないのか。灰色の雲が流れる野原で、白い石原を渡りながら、二人は何度も木を見上げ、鳥の動きを追います。

    煙山の野原の広がり、川原の白い砂利、青い楊の木立、そして群れで飛ぶ百舌。自然の風景の中に現れる、説明のつかない出来事。少年たちの好奇心と戸惑い、期待と失望が、物語の中で交錯します。

    確かめたいのに確かめられない、わかったようでわからない——そんな不思議な感覚が、野原の風景とともに静かに広がっていきます。少年時代の探検と発見、そして残り続ける謎。宮沢賢治が描く、煙山の野原の物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #冒険 #少年

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    19 分
  • 蛙のゴム靴
    2025/12/28

    📖『蛙のゴム靴』朗読 – 雲の峯を見上げる三匹の蛙と、一足のゴム靴🐸☁️静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『蛙のゴム靴』。林の下を流れる深い堰のほとり。カン蛙、ブン蛙、ベン蛙という三匹の蛙たちは、夏の雲の峯を見上げることが何よりも好きでした。まっしろでプクプクした、玉髄のような、玉あられのような雲の峯。そんな三匹のある日の願いは、人間たちがはいているゴム靴でした。野鼠への頼みごと、命がけの手数と心配。そうして手に入れた一足のゴム靴。カン蛙がすっすっと歩く姿は、まるで芝居のよう。その靴が、蛙の娘ルラの心を動かします。選ばれたカン蛙と、選ばれなかった二匹の蛙たち。雨上がりの散歩、萱の刈跡、そして杭の穴——やがて物語は、予期せぬ方向へと動いてゆきます。雲見という蛙たちの楽しみ。ペネタ形になってゆく雲の峯。静かに流れる堰の水と、雨に増した濁流。ゴム靴をはいて歩く音と、穴の底からのパチャパチャという音。いくつもの対照的な場面が、この物語の中で響き合います。カン蛙の得意げな様子、ブン蛙とベン蛙の嫉妬、ルラ蛙の献身、そして穴の底での長い時間。三匹の蛙たちそれぞれの思いが交錯する中で、物語はある変化を迎えます。雲の峯を見上げる蛙たちの日常に起こった、小さな、けれども大きな出来事。宮沢賢治が描く、雲と水と蛙たちの世界。諧謔と真摯さが入り混じったこの物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #蛙 #いじめ #動物が主人公

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    33 分
  • 双子の星
    2025/12/21

    ⭐『双子の星』朗読 – 天の川の岸辺、小さな二つの星の物語🌌🎶

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『双子の星』。

    天の川の西の岸に、すぎなの胞子ほどの小さな二つの青い星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住む、水晶でできた小さなお宮。二つのお宮はまっすぐに向い合い、夜になると二人はきちんと座って、空の星めぐりの歌に合せて一晩銀笛を吹きます。それがこの双子のお星さまの役目でした。

    ある朝、泉のほとりで大烏と蠍が争い、互いに深い傷を負います。二人は両者を手当てし、蠍を家まで送り届けようとします。その重さに肩の骨が砕けそうになりながら、時間に遅れようとも、一歩ずつ進む双子の星。またある晩、彗星に誘われて旅に出た二人を待っていたのは——。

    天上の銀の芝原と海の底の泥。透きとおる水晶のお宮と、暗い波の咆える海。銀笛の音と星めぐりの歌。小さな双子の星の前に現れるのは、光と闇、善意と裏切り、役目と災難。けれども二人はどこまでも一緒に、その小さなからだで、ひたむきに進んでいきます。

    空の泉、りんごの匂い、銀色のお月様、大烏、蠍、彗星、竜巻——幻想的な存在たちが次々と現れ、双子の星とかかわります。星の世界の情景が、透明な言葉で丁寧に描かれていきます。

    宮沢賢治が紡ぐ、天上と海底を巡る幻想の物語。双子のお星さまの旅路を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #星座 #童子 #歌曲

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    49 分