エピソード

  • 山地の稜
    2026/11/01

    📖『山地の稜』朗読 – 白く光る朝のレールと、雲に浮かぶ群青の稜線🛤️⛰️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『山地の稜』。

    学校をあとにして、ひとりで、つめたい草を見に行く朝です。運動場でテニスをしている二人は、ついて来たいのか、こちらを見ています。けれども、大事なことなので、だれも連れていきません。

    線路に出ると、私は手帳をひらき、目に入るものを書きとめながら歩いていきます。やがて向こうから、見おぼえのある女の人がやって来ます。知らないふりで通りすぎようかと思ううちに、もう何か話しかけられそうです。

    ほんのしばらくのつもりで、線路づたいにひとりで歩く、春の朝です。雲はまぶしく光り、南の空はトルコ玉のいろに晴れています。白い雲を背にして、いままで知らなかった山の稜が、群青に浮かびあがります。

    このあいだの日曜日のさみしさが残っているので、お城のほうへは足が向きません。線路を行き来する人たちの目が気にかかって、手帳をひろげているのも、気どって見えはしないかと思います。それでも、書きとめないわけにはいかないのです。

    雲の光のなか、手帳を手にひとり歩く朝を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鉄道 #方言

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    14 分
  • 若い木霊
    2026/10/25

    📖『若い木霊』朗読 – 雪の消え残る枯草の丘と、胸の高鳴る春さきの一日🌾💓

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『若い木霊』。

    雪もほとんどとけた、枯草の丘です。若い木霊は、木を見かけると近よっていって、もう春だから起きろと、大きな声で呼びかけます。けれども、幹に耳をあててみても、なかはしずかで、木はまだ目をさましていません。

    丘を下りた窪地まで来たとき、一匹の蟇の言葉が聞こえてきて、木霊ははっと立ちどまります。鴾の火だ、もう空は青くない、と蟇はつぶやいているのです。

    若い木霊がひとりで丘をめぐる、春さきの一日です。空は澄みわたり、日の光をうけた枯草が、どこまでも明るく光っています。丘のあいだの窪地では、黒い土がぬくもり、早い花も咲きはじめています。

    木霊の胸は、空を見あげたときから、なぜだかどきどきと鳴っています。春のきざしに出あうたびに、その音は高くなり、息まで熱くなってきます。ふん、と言ってはみても、胸の鳴るのはおさまりません。

    雪の消え残る丘に、春の光のあふれる一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #冒険 #植物

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    17 分
  • 十月の末
    2026/10/18

    📖『十月の末』朗読 – 霜の朝の明るい豆畑と、青い月のかかる晩秋の夜🍂🌙

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『十月の末』。

    霜のおりた、つめたい朝です。お母さんとおばあさんは支度をして、山の畑へ出かけるところです。通いなれた路を、小さな嘉ッコはひとあし先に走っていきます。

    豆畑に着くと、むこうから、となりの善コがお母さんといっしょにやって来ます。並んで座った二人は、両手で耳をふさいではまたひらく遊びをはじめました。すると、水が流れているような、ふしぎな音が聞こえてくるのです。

    豆の取り入れでいそがしい家の人たちのそばで過ごす、嘉ッコの一日です。風はつめたく、お日さまは、ときどきうすい雲にかくれては、また明るく照ります。日が暮れてからは、赤く燃える火のまわりに、みんながいます。

    嘉ッコは、見るものにも聞くものにも、すぐに夢中になります。となりの善コとは、畑にいても家にいても、大きな声で呼びかわします。おとなたちも、よく笑います。

    霜の朝から月の夜まで、十月の末の一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #少年 #方言 #月 #柱

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    21 分
  • 十六日
    2026/10/11

    📖『十六日』朗読 – 谷川の音と日の光にみちた、夫婦の盆の休み☀️🏞️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『十六日』。

    盆の十六日は、鉱山ではたらく嘉吉と、おみちの夫婦にとって、年に二日だけの休みの日です。おみちは朝のうちに、ごちそうをすっかりこしらえてしまいます。

    嘉吉がそれを食べはじめたところへ、若い学生がひとり、ものをたずねにやって来ます。たずねられたことに答えるうちに、嘉吉は、おみちの見ている前で、もっと話をしてみせたくなります。そこで学生を引きとめて、いっしょに食べていくようにすすめます。

    この一日を、夫婦は、子どもにかえったようにして過ごします。小屋の外には日の光がしずかに降り、谷川の音までが、きょうはたのしく聞こえます。

    おみちは、嘉吉が親たちを説きふせてもらった娘で、いっしょになって三年になります。その顔は、ぱっと赤くなったり、ぼんやりしたりして、この日のうちに何べんも変わります。嘉吉は、その顔をじっと見ています。

    盆の十六日、小屋に過ぎていく夫婦の一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #衝動 #方言

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    19 分
  • 紫紺染について
    2026/10/04

    📖『紫紺染について』朗読 – 山男を待つ町の夕暮れと、酒のまわる九月の宴🌇🍶

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『紫紺染について』。

    工芸学校の先生が、紫紺染のつくり方をさがしています。草の根をつかうこの古い染めものは、いちどすたれてしまい、もう知っている人がいないのです。むかしの記録を調べるうちに、先生は、紫紺の根を町へ売りに来て、酒を買って帰った山男のことを見つけます。

    たずねられる相手は、もう山男のほかにいない。先生は町の人たちと相談して、山男に手紙を出し、食事の席に招くことにしました。九月の夕暮れ、みんなは、ほんとうに来てくれるのかどうかを案じながら待っています。

    町の人たちと山男とが、ひと晩だけ、同じ食卓をかこみます。山男は、黄金いろの眼をした大きな男です。むかえる人たちがならんで頭を下げると、山男のほうでも、ていねいに礼を返します。

    思いがけないもてなしを、山男はたいそうよろこんで、いくらでもお酒を呑みます。席はにぎやかになり、夜の更けるまでつづきます。

    ひとつの染めものがよみがえるまでの、苦心のひとこま。山男をむかえた町の一夜を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #山男

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    21 分
  • 台川
    2026/09/27

    📖『台川』朗読 – 水にゆれる光の網と、青葉の谷をさかのぼる明るい半日🌿✨

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『台川』。

    生徒たちを引率して、釜淵まで行く朝です。さあ出かけましょうと声をかけても、まだ姿を見せない者がいます。もう二十分も待ったのだから仕方ない。来たい者だけを連れ、みちばたの草に腰をおろした校長を残して、おれは歩きだします。

    乾いた粘土のみちの両側は、小松と若い林ばかりです。向うの崖に黒い岩が突き出ているのを見つけると、おれはさっそくそれがどうしてそこに在るのかを説明します。言いおわってから、かえって混ぜかえしただけだと思いなおし、言葉をあらためてもう一度云う。けれども生徒たちは黙って歩いているばかりでした。

    坂がひどくなり、下の方で水の鳴る音がしはじめます。急な崖を木につかまって下りきっても、目あての瀑にはまだ届きません。おれは靴をぬぎ、水の中の石を動かして、みんなの渡れる足がかりをこさえてやることにしました。

    生徒たちに向かって云う言葉のうしろでは、おれの独りごとがひとときも止まりません。いまの説明はどうだったか、云わずにおけばよかったのではないか。この石は何というのかと方言で問いかけてくる声も、そこへまぎれこんできます。

    水の中を歩いていくと、足もとでは日の光が網になってゆれつづけています。それは歩きだしたときから、木の間にも生徒たちの足なみにも、おなじようにゆれていたものです。鉄槌を大きく振って川をあるくのは、もう何年ぶりかわかりません。

    青葉の谷を水づたいにさかのぼる、引率の教師の半日を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #少年 #方言

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    38 分
  • 車
    2026/09/20

    📖『車』朗読 – 松脂かおる松林の道と、木洩れ日ゆれる夏の一日🌲☀️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『車』。

    籠を頭にのせて町角に立っていたハーシュは、その日の午前中、仕事にありつけずにいました。弁当を食べはじめたところへ赤い髭の男がせかせかとやって来て、兵営の普請に使うテレピン油を工場まで取りに行ってくれと頼みます。渡された名刺と、よぼよぼの車を引いて、ハーシュは道を歩きだします。

    楊の並木を過ぎ、白い杭のところで道を折れると、松脂の匂いのする松林にさしかかります。そこで水色の服を着た小さな男の子に呼びとめられ、車に乗せてほしいとせがまれます。乗せてやると、車はがたがたと揺れ、狭くなっていく道をハーシュはゆっくりと引いていきます。

    そのうちに車輪のくさびが一本ぬけているのに気づき、ハーシュは近くの百姓家で縄を借りようとしますが、おかみさんにきつく断られてしまいます。腹を立てるのはもっともだと思い直したハーシュは、来た道を戻ってくさびを探しあて、車をなおして再び歩きだします。小さな川を渡ると、まもなく松林のはずれにテレピン油の工場が見えてきます。

    仕事のなかった朝のうめ合わせに、こんなにも愉快な道のりが待っていようとは、ハーシュ自身思いもよらないことでした。

    松の香りと木洩れ日に満ちた、ひとりの男とひとりの子どもの小さな旅を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #兵隊 #冒険

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    13 分
  • 氷と後光
    2026/09/13

    📖『氷と後光』朗読 – 雪と月あかりを走る夜汽車と、氷にきらめく朝の光🌙❄️

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『氷と後光』。

    雪と月に照らされた夜の中を、汽車が北へと進んでいきます。赤い頭巾をかぶった幼い子どもは毛布にくるまれ、窓ぎわでぐっすりと眠ったまま。網棚に積まれたりんごの香りが車室いっぱいに満ちるなか、若い父と母は、山の上に見える白いものが雲か凍った雪煙かと言葉を交わしながら、次々に流れていく電信柱を眺めています。夜中を過ぎるころ、車室を暖めていたスティームが急に止まって冷えこみ、窓は氷でくもります。父と母は風邪をひかせまいと子どもに毛布を着せなおし、汽車が峠の頂上を越えて下りにかかると、明かりも暖かさももとに戻って、二人はまどろみながらかわるがわる子どもの寝顔をのぞきこみます。

    夜が明けるころ盛岡に着くと、霜で真っ白になった毛皮や襟巻をまとった人たちが乗りこんできます。窓にはらんの葉のような形の氷の結晶がびっしりと広がり、そのすきまから東の空にほのかな琥珀色がのぞきはじめます。目を覚ました子どもに母が乳をふくませるころには、車室のまわりはしだいに明るさを増していきます。

    氷にとざされた車室の中を、汽車はゆっくりと夜から朝へ運ばれていきます。窓をおおう氷の色も車内の温度も、そのつど移り変わっていきます。

    そのあいだ、父と母はただ静かに子どものそばに寄り添いつづけます。眠っては目を覚ます子どもをはさんで過ごす、汽車の中だけの時間です。

    氷の結晶にいろどられた夜汽車の一夜を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #鉄道 #月 #柱

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    16 分