『渡部龍朗の宮沢賢治朗読集』のカバーアート

渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

著者: 渡部製作所
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このコンテンツについて

Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。 幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。 物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。渡部製作所 アート 文学史・文学批評
エピソード
  • 月夜のでんしんばしら
    2025/06/15

    📖『月夜のでんしんばしら』朗読 – 電信柱たちの不思議な夜間行軍🌙⚡

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『月夜のでんしんばしら』。

    ある晩、恭一は草履を履いて鉄道線路の横をすたすたと歩いていました。本来なら罰金ものの危険な行為でしたが、その夜は線路見回りの工夫も来ず、窓から棒の出た汽車にも遭いませんでした。九日の月がうろこ雲に照らされ、冷たい星がぴっかりぴっかりと顔を出す美しい夜、停車場の明かりが見える頃、突然とんでもないことが起こります。

    線路沿いに立ち並んでいた電信柱の列が「ぐゎあん、ぐゎあん」と唸りながら、大威張りで一斉に歩き出したのです。みんな瀬戸もののエボレット(絶縁具)を飾り、てっぺんには針金の槍をつけた亜鉛の帽子をかぶって、片脚でひょいひょいと行進していきます。そして恭一をばかにしたように、じろじろ横目で見ながら通り過ぎていくのでした。

    電信柱たちの唸り声はやがて立派な軍歌に変わります。「ドッテテドッテテ、ドッテテド、でんしんばしらのぐんたいは はやさせかいにたぐいなし」と歌いながら、工兵隊や竜騎兵として堂々と行進していきます。中には疲れ果てた古い柱もいれば、元気に号令をかける柱もいて、それぞれに個性豊かな電信柱たちの大軍団が織りなす光景は圧巻です。

    そんな中、恭一の前に現れたのは背の低い顔の黄色な老人でした。ぼろぼろの鼠色の外套を着て「お一二、お一二」と号令をかけながらやって来るこの不思議な人物は、自分を「電気総長」と名乗り、握手をした途端に青い火花を散らせて恭一を驚かせます。電気総長は得意気に電気にまつわる昔話を語り、自分の軍隊の規律正しさを自慢します。月夜に繰り広げられるこの幻想的な光景の中で、恭一は一体何を体験することになるのでしょうか。

    この物語は、宮沢賢治独特の科学的な想像力と詩的な表現が見事に融合した作品です。電信柱という無機物に生命を与え、電気という当時まだ新しい技術への驚きと親しみを、ユーモラスで幻想的な物語に仕立て上げています。軍隊に見立てた電信柱たちの行進は、規律正しくも滑稽で、電気総長の豊富な体験談からは当時の人々の電気に対する素朴な驚きが伝わってきます。

    九日の月とうろこ雲が織りなす美しい夜景の中で繰り広げられる、電信柱たちの壮大な行軍劇。現代の私たちには当たり前の電気も、この物語の中では魔法のような不思議な力として生き生きと息づいています。科学と幻想、現実と夢の境界を軽やかに超えた魅力的な世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #月 #柱 #歌曲

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    19 分
  • かしわばやしの夜
    2025/06/08

    📖『かしわばやしの夜』朗読 – 月光に踊る木々たちとの不思議な一夜🌙🌳

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『かしわばやしの夜』。

    夕暮れ時の野原で、ひえの根もとに土をかけていた清作の耳に、かしわばやしから響く奇妙な声——「欝金しゃっぽのカンカラカンのカアン」。

    銅づくりのお日様が南の山裾に落ち、野原がへんにさびしくなった頃、その声に導かれるように林へ向かった清作が出会ったのは、赤いトルコ帽をかぶり、鼠色のだぶだぶした服を着た背の高い画かきでした。最初は険悪な雰囲気でしたが、清作が「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン」と叫び返すと、画かきは急に機嫌を直し、二人は一緒に林の奥へと向かいます。

    林の中は浅黄色に染まり、肉桂のような甘い香りに満ちています。そこで出会う柏の木たちは不思議な生き物たちでした。片脚を上げて踊りの真似をしていた若い柏の木は、二人を見てひどく恥ずかしがり、清作をちょっとあざ笑います。清作をつまずかせようとするごつごつした古木、風に乗って「せらせらせら清作」と囃し立てる木々——しかし清作は負けずに「へらへらへら清作、ばばあ」と言い返し、木々を驚かせてしまいます。

    やがて二人がたどり着いたのは、十九本の手と一本の太い脚を持つ柏の木大王の元でした。大王は清作を「前科九十八犯」と呼び、山の木を切った罪を問い詰めます。清作は山主の藤助に酒を買ってちゃんと許可を得ていると反論しますが、「なぜ俺には酒を買わないのか」という大王との問答は平行線をたどります。

    そんな中、東の山脈に桃色の月が昇り、あたりの空気が一変します。若い柏の木たちは両手を月に向かって伸ばし、「おつきさん、おつきさん、おっつきさん」と歌い始めます。柏の木大王もまた、月の装いの変化と夏のおどりの第三夜を歌い上げ、画かきの提案で不思議な夜の祭典が幕を開けます。やがて「のろづきおほん、おほん、おほん」と奇妙な囃子言葉とともに現れるふくろうの一団も加わり、月光の下で繰り広げられる幻想的な音楽会は思いがけない展開を見せていきます——。

    この物語は、宮沢賢治独特の豊かな想像力と詩的な言葉遣いに満ちています。現実と幻想の境界があいまいになる夕暮れ時から夜にかけて、木々が人間のように振る舞う不思議な世界が展開されます。気の荒い清作と気まぐれな画かき、意固地な柏の木大王と清作をからかいたがる若木たち、そして夜の森に住むふくろうたちが織りなす交響楽は、月光の下でどのような展開を見せるのでしょうか。

    宮沢賢治の筆が描く、月光に包まれた幻想の森の一夜。ユーモアと詩情、そして人間と自然の微妙な関係を描いたこの不思議な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #芸術 #傲慢 #月

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    32 分
  • 山男の四月
    2025/06/01

    🎧 宮沢賢治「山男の四月」朗読 – 春の陽だまりで始まる、不思議な変身譚。現実と幻想が溶け合う、静謐な午後の物語。

    春の日、金色の目をした山男が檜林で狩りをしていました。兎を狙っていたのに捕まえたのは山鳥。獲物を手に日当たりの良い枯れ芝の上で横になると、紫色のかたくりの花がゆれ、青い空には白い雲がふわふわと流れていきます。「飴というものはうまいものだ。天道は飴をうんとこさえているが、なかなかおれにはくれない」――そんなことをぼんやり考えながら空を眺める山男の心は、なんだかむやみに軽やかになっていきます。

    やがて山男は町へと向かい、入口の魚屋で軒に吊るされた茹で蛸に見とれています。「あのいぼのある赤い脚のまがりぐあいは、ほんとうにりっぱだ」と感心していると、大きな荷物を背負った中国人の行商人が現れます。「あなた、支那反物よろしいか。六神丸たいさんやすい」と声をかけてきて、「長生きの薬」を勧めるのですが……。

    この作品には、宮沢賢治特有の精緻な自然描写と、どこかとぼけた味わいの会話が織り交ぜられています。山男の素朴で率直な物の見方、中国人行商人の片言の日本語、そして静かに流れる春の時間――それらが重なり合って、読む者を不思議な世界へと誘います。

    「雲というものは、風のぐあいで、行ったり来たりぽかっと無くなってみたり、俄かにまたでてきたりするもんだ」という山男の呟きのように、この物語もまた、現実と非現実の境界をゆらゆらと行き来しながら展開していきます。

    春の陽だまりの心地よさと、どこか不安な予感とが入り混じる、独特の雰囲気を、心に響く朗読でゆっくりとお聞きください。


    #毒 #夢

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    25 分

渡部龍朗の宮沢賢治朗読集に寄せられたリスナーの声

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