『渡部龍朗の宮沢賢治朗読集』のカバーアート

渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

著者: 渡部製作所
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このコンテンツについて

Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。 ▼ 朗読音声とテキストがリアルタイムで同期する新体験オーディオブックアプリ「渡部龍朗の宮沢賢治朗読集」iOS版 / Android版 公開中 ▼ 【iOS】https://apps.apple.com/ja/app/id6746703721 【Android】https://play.google.com/store/apps/details?id=info.watasei.tatsuonomiyazawakenjiroudokushu 幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。 物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。渡部製作所 アート 文学史・文学批評
エピソード
  • ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
    2025/09/14

    📖『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』朗読 – ばけもの世界を舞台にした奇想天外な成功譚🌟🎪

    不思議な響きを持つ名前の主人公が織りなす、幻想と現実が交錯する物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』。

    極度の困窮の中で家族を失い、一人残された少年が、奇想天外で滑稽なばけもの世界に放り込まれていく物語です。主人公は、空中で見えない網を投げる「昆布取り」という摩訶不思議な労働に従事することになり、現実感覚を失いそうになりながらも、やがて自らの力で新しい世界への扉を開いていきます。

    学問への憧れを抱いて主人公が向かった先は、あくびと一緒に筆記帳を呑み込んでしまう巨大な博士や、一銭のマッチを十円で売り歩く奇怪な商売、複雑怪奇な利息システムで絡み合った三十人もの監督たちが跋扈する、荒唐無稽なばけもの都市でした。化学の講義という名の支離滅裂な知識体系に翻弄されながらも、思いがけず司法の世界へと導かれ、二つの世界を股にかける珍妙な事件の数々に関わることになります。

    新たな地位を得たネネムは、勲章が壁一杯になるほどの大出世を遂げ、特別な「藁のオムレツ」まで食べられる身分となりました。しかし、その栄達の過程では、弱者を食い物にする馬鹿げた搾取構造や、真面目な顔をして不条理を繰り返す官僚制度の矛盾と向き合うことになります。威厳ある裁判長として振る舞いながらも、心のどこかで自分自身の滑稽さを感じずにはいられません。

    名声と権威に包まれ、火山の噴火さえも自分の意のままになるような錯覚に陥りながらも、ネネムの心を占め続けるのは、失われた大切なものへの想いでした。権力の絶頂で踊り狂っていた彼が、ある日の巡視で遭遇したのは、過去と現在、失ったものと得たもの、そして滑稽さと切なさが交錯する運命的な瞬間でした。

    この物語は、現実と幻想の境界を軽やかに行き来しながら、一人の青年の成長と家族への愛を描いています。この不思議な世界では、労働搾取や高利貸しの問題、官僚制度の矛盾といった出来事が次々と展開し、ユーモアと風刺が絶妙に調和しています。琥珀色のビールで満たされる東の空、ばけもの麦の収穫風景、クラレの花咲く丘でのサンムトリ火山の噴火——詩的な描写に満ちた幻想世界が、朗読によって鮮やかに立ち上がります。

    ペンネンネンネンネン・ネネムという滑稽な響きの名前に込められた、深い人間愛と社会への眼差し。ばけもの世界での奇想天外な冒険を通じて描かれる、失われたものを取り戻そうとする魂の軌跡を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #伝記

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    1 時間 45 分
  • ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ
    2025/09/13

    📖『ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ』朗読 – 創作の萌芽に宿る物語の種子🌱✨

    静かに語られる、ひとつの物語の誕生の瞬間。今回お届けするのは、宮沢賢治が半紙一枚に書き残した創作メモ『ペンネンノルデはいまはいないよ 太陽にできた黒い棘をとりに行ったよ』。

    「ペンネンノルデが七つの歳に太陽にたくさんの黒い棘ができた」——この印象的な一行から始まる十二の断章は、完成した物語ではなく、創作のための覚え書きとして残されたものです。短い言葉の連なりの中に、ひとりの人物の生涯が凝縮されています。赤い眼をした父、ばくち、森での昆布とり、モネラの町への旅立ち、恋人アルネとの出会い、フウケーボー大博士との奇妙な体験——簡潔でありながら、確かにひとつの人生の軌跡が描かれています。

    氷羊歯の汽車、化物丁場、岩頸問答、サンムトリの噴火、セントエルモの火——これらの幻想的な言葉たちは、『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』や後の『グスコーブドリの伝記』と共通する物語世界を示しています。特に火山や噴火といったモチーフ、主人公が人々のために奮闘する姿は、グスコーブドリの物語に色濃く受け継がれていくことになります。茶色なトランプのカードを作り、みんなの仕事を楽にしようと考えるノルデの姿からは、後の作品に登場する自己犠牲的な主人公たちとの関連を見て取ることができます。

    「噴火を海へ向けるのはなかなか容易なことでない」「太陽がまたぐらぐらおどりだしたなあ。困るなあ」といった言葉からは、自然災害と向き合う人間の姿が浮かび上がります。これらの覚え書きには、災害や飢饉と闘う物語へとつながる要素が込められています。記された言葉の中にも、人間と自然の関係、個人の犠牲と社会への貢献という、賢治文学の重要なテーマが既に胚胎しています。

    この創作メモは、物語の完成形を楽しむものというよりも、作家の創作過程を垣間見る貴重な資料です。記された言葉から、他の作品との関連や創作の一端を知ることができます。完成された作品とは異なる、生々しい創作の息づかいを感じられる、稀有な体験となることでしょう。

    一枚の紙に記された創作の種子が、どのような豊かな物語世界と響き合っているのか。その貴重な一端を、朗読の調べとともに味わってみてください。


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    5 分
  • グスコーブドリの伝記
    2025/09/07

    📖『グスコーブドリの伝記』朗読 – グスコーブドリが働き続けた日々の物語🌋🌾

    静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』。

    イーハトーヴの大きな森で、木こりの父と優しい母、妹のネリと共に幸せな幼年時代を過ごしたグスコーブドリ。しかし突然の気候変動による大飢饉が、この家族の運命を一変させてしまいます。両親を失い、妹とも離ればなれになったブドリは、一人厳しい世界に投げ出されることになります。

    てぐす工場での労働、沼ばたけでの農作業——様々な職業を通じて社会の現実を知ったブドリは、やがて科学への深い憧れを抱くようになります。クーボー大博士との出会いを経て、イーハトーヴ火山局で火山の観測と制御技術を学び始めるブドリ。そこは三百を超える火山を監視し、自然災害から人々を守る最前線でした。

    火山局での日々は、ブドリにとって真の学びの場となります。噴火の危険を事前に察知し、人工的に安全な方向へと導く技術。空気中に肥料を散布し、雨を降らせて農作物の収穫を助ける画期的な方法。科学の力によって自然災害を制御し、人々の暮らしを豊かにしていく可能性を、ブドリは身をもって体験していきます。

    技師として成長を遂げたブドリは、火山の観測と制御に情熱を注ぎ、人々の幸福のために働き続けます。そんな充実した日々の中で、ブドリは自分の人生に真の意味を見出していきます。しかし、平穏な時が過ぎゆく中で、再び人々を脅かす大きな試練が迫ってくることになります——。

    自然災害によって家族を失った一人の青年が、科学技術の世界に身を投じ、やがて大きな使命に直面していく物語。幼い頃の幸福な記憶から始まり、過酷な現実を経験し、学び続け、成長していくブドリの人生が、ここに静かに描かれています。

    農業、火山学、気象学といった科学的知識が物語に自然に織り込まれ、現実的でありながら理想的な世界が構築されています。個人の幸福と社会全体の福祉、科学技術の可能性とその責任といったテーマが、イーハトーヴという理想郷を舞台に、詩的な言葉と豊かな想像力によって展開されていきます。この物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。


    #伝記 #少年

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    1 時間 36 分
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