エピソード

  • #33 横尾忠則現代美術館「連画の河」を紐解く。過去の記憶と名画のサンプリング、終わらないクリエイティビティの源泉
    2026/08/29

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。

    第33回は、兵庫県神戸市・灘区にある「横尾忠則現代美術館」です。

    今回は、2026年6月に90歳を迎えた日本を代表する美術家、横尾忠則さんの展覧会「連画の河」について、その制作の裏側に隠されたプロセスや、作品から溢れ出す圧倒的なエネルギーについて詳しく紐解いていきます。


    事前の構想を一切持たず、一枚の絵から得たインスピレーションだけで次の絵を描き進めていく「連画」という試み。まるでしりとりのように連鎖していく全64点もの巨大なキャンバスたちは、どのようにして生まれたのか?

    すべての起点となったのは、1970年に写真家・篠山紀信が撮影した故郷での一枚の記念写真と、それをもとに24年後に描かれた『記憶の鎮魂歌』でした。

    過去の自分自身の作品のセルフカバー、ゴーギャンの名画からの引用、そして後半に突如として画面を支配する謎のモチーフの壺まで。

    年齢を重ねるごとにむしろ色彩は鮮やかさを増し、枠にとらわれない自由な表現へと向かっていく、その驚異的なクリエイティビティの秘密に迫ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・連画とは何か:連歌になぞらえた、構想なきしりとり形式の制作プロセス。

    ・一枚の写真からの始まり:篠山紀信の記念写真と、生と死が交錯する発句『記憶の鎮魂歌』。

    ・写真と絵画の違い:現実を切り取るカメラと、時間を超越するキャンバス。

    ・過去と他者からのサンプリング:1960年代の自分、そしてゴーギャン。時空を超えたモチーフのコラージュ。

    ・色彩の爆発:90歳を目前にしてさらに明るく、自由になる絵の具の魔法と謎の壺。

    ・永遠の河の流れ:一方向に流れぐるぐると巡る展示空間の仕掛け。

    続きを読む 一部表示
    17 分
  • #32 韓国ソウル・リウム美術館訪問。何も残さないティノ・セーガルと、美術史から消された女性作家たちの没入空間「Inside Other Spaces」
    2026/08/28

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。

    第32回は、韓国・ソウルにある最高峰の私立美術館「リウム美術館(Leeum Museum of Art)」です。

    今回は、2026年6月に現地で体験した2つの革新的な企画展について、その裏側に隠された重要な意味や歴史的背景を深く掘り下げます。


    一つ目は、一切の記録や物質を残さないアーティスト、ティノ・セーガルの個展。

    写真撮影も映像も一切NG。絵画も彫刻も存在しない空間で、彼が作り出す「構成された状況」とは一体何なのか? ロダンの古典的な彫刻作品や、フェリックス・ゴンザレス=トレスのビーズアートと交差しながら見えてくる、非物質的アートの真髄に迫ります。

    二つ目は、「Inside Other Spaces: 女性作家たちの共感覚的環境 1956-1976」。

    今でこそ「没入型(イマーシブ)アート」や「インスタレーション」という言葉は一般的ですが、その源流には「環境(environment)」と呼ばれる芸術形式がありました。しかし、それは男性中心の美術史の中で、記録にも残らず消え去ってしまった歴史があります。世界中から発掘された資料をもとに奇跡的に復元された、女性アーティストたちの急進的な空間作品を体験してきました。

    スマホの画面越しに消費される現代において、リアルな体験が持つ圧倒的な価値とは何なのか。展示を通じて考えたことを語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・物質を作らないアート:ティノ・セーガルの「構成された状況」とは何か。

    ・ロダンとの対話:古典的な彫刻と、身体を使った無形のアートが同じ空間に並ぶ意味。

    ・美術史から消された環境:インスタレーション以前に存在した、空間を丸ごと体験するアートの歴史。

    ・なぜ女性作家たちは歴史から消されたのか:男性中心の美術界における環境アートの解放と忘却。

    ・全身で感じるアート体験:視覚を超えた共感覚的アプローチの魅力。

    続きを読む 一部表示
    21 分
  • #31 東京都美術館「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」徹底レポート。スウェーデン絵画の真髄と学び、注目すべき作品についての考察。北欧の青い光が映し出すもの、パリへの憧憬と反逆、カール・ラーションの描く理想の日常、精神の深淵を見つめた現実のかなたへの旅。
    2026/02/23

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。第31回の旅先は、上野・東京都美術館で開催中の「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」です。

    スウェーデン国立美術館が誇る至宝が集結した今回の展覧会。かつて「描くべきもののない国」とまで言われたスウェーデンで、画家たちはどのようにして自国の美を発見したのか?

    19世紀後半、彼らが求めて止まなかったフランス近代絵画の光。そして、そこから離れて見つけ出した、北欧特有の「黄昏の光(ブルー・アワー)」の物語を紐解きます。

    草原で踊る妖精の神秘、パリの裏路地の銀灰色、そして日本でも大人気のカール・ラーションが描いた温かな家族の風景。また、カール=フレードリック・ヒルが精神の葛藤の中で辿り着いた『最後の人類』の深淵や、文豪ストリンドバリが即興的に描き出した『ワンダーランド』など、内面世界を探求した作品群も深掘りします。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・スウェーデン国立美術館の歴史:王室のコレクションから始まった、ヨーロッパ最古級の美の殿堂。

    ・「オポネンテナ(反逆者たち)」:古いアカデミーに背を向け、スウェーデン近代絵画を切り拓いた若き才能たち。

    ・北欧の光の正体:なぜ彼らは太陽の輝きではなく、夕暮れ時の「青い光」を重視したのか。

    ・理想の暮らしの誕生:カール・ラーションの家「リッラ・ヒットネース」が、世界中に与えた影響。

    ・見えない世界への探険:ヒルやストリンドバリが描いた、現実を越えた先にある「精神の風景」。


    【写真は下記noteに掲載】

    https://note.com/taichiaugust/n/n5c302ead4866

    続きを読む 一部表示
    34 分
  • #30 ローマ・ジョルジュ・デ・キリコ邸宅美術館で思考する形而上絵画の真髄。アトリエ兼自宅で、画家キリコの人生を追体験する
    2026/02/16

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。

    第30回は、イタリア・ローマの「ジョルジュ・デ・キリコ邸宅美術館」です。

    誰もが知る観光名所、スペイン広場の喧騒からわずか数メートルの場所に、20世紀最大の異端児ジョルジュ・デ・キリコが30年間過ごした時間の止まったアパートがあります。

    今回は、通常の美術館巡りでは決して味わえない、キリコの生活と哲学が混ざり合った空間を語ります。

    なぜ彼はあえて17世紀の騎士を演じるような自画像を描き続けたのか? 2階のプライベートな寝室とアトリエの実態とは?

    特に今回は、リビングルームに並ぶ数々の傑作を見て、「形而上絵画」の意味を考えました。キリコが目指したものとは何だったのか、その思考のプロセスに迫ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・ジョルジュ・デ・キリコの生い立ち: ギリシャに生まれ、シュルレアリスムに衝撃を与えながらも独自の道を歩んだ孤高の画家の生涯。

    ・エントランスの巨像: 黒いブロンズ『へクトルとアンドロマケ』が突きつける、顔のない愛の形。

    ・オデュッセウスの帰還: 室内に現れた大海原。日常と神話が溶け合う空間。

    ・黄金のサロン: 『17世紀の衣装をまとった公園での自画像』。なぜ彼はあえて騎士を演じたのか。

    ・リビングルーム:形而上的思考の深淵: 邸宅そのものが「世界を異化する装置」であることへの考察。

    ・2階のプライベート空間: 妻イザと過ごした寝室。

    ・アトリエの聖域: 1978年から時間が止まった場所。積み上げられた額縁の意味。

    ・本棚にある日本: 『日本の凧』とキリコ。虚空を舞う造形に、彼は何を見たのか。

    続きを読む 一部表示
    26 分
  • #29 西洋の教会では、なぜ無料のアート鑑賞ができるのか?ヨーロッパの教会と日本のお寺の違いに関する考察
    2026/02/09

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。第29回のテーマは、ヨーロッパを旅する際に誰もが抱く素朴な疑問、「なぜ教科書にのるほどの重要な芸術作品が教会で無料で見られるのか?」という問いについてです。

    これまでのエピソードでは、カラヴァッジョやベリーニといった具体的なアート作品が眠る教会を紹介してきましたが、今回は一歩踏み込んで、その背後にある「文化的・宗教的な背景の違い」を深掘りします。

    なぜヨーロッパの教会は街の広場のように開かれているのか? 一方で、なぜ日本のお寺では拝観料が必要なのか? 視覚的な聖書としてのアートの歴史、そして美術館というホワイトキューブが奪い去ってしまったサイト・スペシフィックの意義。

    日本と西洋、二つの異なる美意識を比較しながら、教会の扉を押し開けるという行為が、僕たちの感性をいかにアップデートしてくれるのか、考察します。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・公共性の違い:ヨーロッパの広場の延長としての教会vs 日本の結界としてのお寺。

    ・アートの役割:伝えるためのメディアとしての西洋美術、守り隠す霊性としての日本美術。

    ・経済モデルの裏側:税金や寄付で支えられる共有財産と、檀家制度が生んだ受益者負担。

    ・サイト・スペシフィックの意義:美術館がアートから剥ぎ取ってしまうコンテキストの重要性。

    ・コイン投入式の鑑賞方法の意義:暗闇の中で光を灯す行為が、なぜ鑑賞を自分事に変えるのか。

    続きを読む 一部表示
    14 分
  • #28 NAKED meets ガウディ展。バルセロナの記憶が呼応する、建築家ガウディの魅力の本質。自然の幾何学と建築技術の秘密、サグラダ・ファミリアの過去と未来
    2026/02/02

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。第28回の目的地は、東京・天王洲アイルの寺田倉庫で開催されている「ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展」です。

    一昨年の夏にバルセロナに訪れ、ガウディ建築を巡ったのですが、今回の展示は単なる復習ではなく、自分の中にあった「ガウディ建築の魅力の本質とは何か?」という問いへの答え合わせのような体験になりました。

    今回のエピソードでは、最新のデジタル技術と100年前の天才の思考が融合した、この没入型展覧会の全貌を徹底解説します。 「NAKED, INC.」が手がけるプロジェクションマッピングやインタラクティブな仕掛けが、いかにしてガウディの複雑な頭の中を可視化しているのか。 銅細工師の息子として生まれたガウディの人間臭い歴史から、彼が「発明ではなく発見だ」と言い切った自然界の物理法則、そして2026年の完成を目前に控えたサグラダ・ファミリアの今までを、実際に展示に訪れて学んだことをシェアします。

    ガウディ展に行かれた方は復習のための、これから行く方は予習のための参考としてお聞きください。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・NAKED meets ガウディ展とは?:五感で体験する、全く新しい建築展のカタチ。

    ・人間ガウディの光と影:輝かしい成功の裏で、孤独と戦い続けた晩年の真実。

    ・自然という名の教科書:なぜ彼は「工房の隣の樹こそが私の先生だ」と語ったのか。

    ・物理学としての建築:双曲面、パラボロイデ、コノイドなど、難しい用語を体感で理解する。

    ・逆さ吊り模型の衝撃:重力が生み出す、物理的に必然な美の正体。

    ・サグラダ・ファミリアの2026年:建設加速への期待と、素材の変化に対する個人的な考察。

    ・日本とガウディの共鳴:外尾悦郎さんが指摘する、自然への謙虚な視点という共通点。


    【写真は下記noteに掲載】

    https://note.com/taichiaugust/n/n1b3048eeeeee

    続きを読む 一部表示
    33 分
  • #27 サンタ・マリア・デル・ポポロ教会にて、ローマの光と闇を歩く。カラヴァッジョとカラッチ、正反対の天才はなぜ同じ礼拝堂に選ばれたのか?
    2026/01/26

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。第27回の舞台は、ローマの北の玄関口、ポポロ広場に佇む「サンタ・マリア・デル・ポポロ教会(Santa Maria del Popolo)」です。

    バチカンの巨大なスケール感に圧倒された後にここを訪れると、その密度に驚かされるはずです。一見、控えめな外観の教会ですが、そこはラファエロ、ベルニーニ、カラヴァッジョ、カラッチといった芸術家たちの執念が地層のように重なり合う、ローマ屈指の濃密スポットです。

    今回のメインは、奥に位置する「チェラージ礼拝堂」。 なぜ、美術史上最もスキャンダラスな天才カラヴァッジョと、伝統的な美の守護神的存在のアニバレー・カラッチという水と油のような二人が、同じ狭い礼拝堂を飾ることになったのか? その裏には、当時の教皇庁の金庫番だった依頼主ティベリオ・チェラージによる、極めて高度で戦略的なキュレーションがありました。

    暗闇から馬の尻を突き出すカラヴァッジョの破壊的リアリズムと、中央で極彩色の光を放ち舞い上がるカラッチの『聖母被昇天』。天国と地上の泥臭さが1メートルという至近距離でぶつかり合う、この空間だけの熱量をお伝えします。

    さらに、映画『天使と悪魔』でも鍵となったベルニーニのキージ礼拝堂、そして教会の地下に眠る皇帝ネロの悪霊伝説まで、じっくり語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・チェラージ礼拝堂の戦略:依頼主が「正反対の二人」を選んだキュレーションの極意。

    ・カラヴァッジョ vs カラッチ:革新的な「闇」と伝統的な「光」、二つの美学の衝突。

    ・カラッチの『聖母被昇天』:カラヴァッジョの闇を中和し、礼拝堂を救う圧倒的色彩。

    ・カラヴァッジョの衝撃:馬の尻、汚れた足の裏。聖なる場面に「泥臭い現実」を持ち込んだ真意。

    ・ベルニーニの演劇性:ラファエロの宇宙を引き継ぎ、空間全体を劇場に変えたバロックの魔法。

    ・皇帝ネロの呪い:ポポロ(市民)の教会という名前に隠された、1000年前の悪霊退治の真相。

    ・マルティン・ルターの滞在:宗教改革の火種を育んだ、この教会での不信感。

    続きを読む 一部表示
    18 分
  • #26 バチカンのサン・ピエトロ大聖堂。地下に眠る漁師の記憶、ミケランジェロの『ピエタ』に宿る魂、そして551段の階段を越えて辿り着くローマの頂へ
    2026/01/19

    Augustがパーソナリティを務める、アート・カルチャーを探求するPodcast。第26回は、バチカン市国の中心にして、人類至高の美が詰まった「サン・ピエトロ大聖堂(St. Peter's Basilica)」を徹底解説します。

    まずは大聖堂の真下、歴代教皇が眠る「グロッテ」へ。 実は、この大聖堂の名前になっている聖ペトロは、もともとはごく普通の漁師でした。そんな一人の男性の墓が、なぜ世界最大の教会の基軸となったのか?2000年前の質素な記憶と、現在の豪華な建物の意外な繋がりを紐解きます。

    地上に上がり見上げる天井の文字が実は2メートル以上の巨大なモザイクであるという、計算され尽くしたスケール感の秘密。24歳のミケランジェロが刻んだ唯一の署名入り傑作『ピエタ』。そして、ベルニーニが古代遺跡パンテオンの青銅を剥ぎ取ってまで作り上げた、高さ29メートルの巨大天蓋「バルダッキーノ」。

    旅のクライマックスは、自らの足で登るクーポラ(大ドーム)。 二重構造の壁の間を、体が斜めになりながら登る過酷な320段の階段。その先に待っていたのは、ベルニーニが設計した「天国の鍵」を象徴する広場と、360度パノラマで広がるローマの街並みでした。 美、歴史、信仰、そして肉体的な体験。これらがどう結びついて一つの感動になるのか。サン・ピエトロ大聖堂の真の姿に迫ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・地下墓所「グロッテ」:なぜサン・ピエトロ大聖堂はこの場所でなければならなかったのか。

    ・聖ペトロの素顔:ガリラヤ湖の漁師が、いかにして教会の礎となったのか。

    ・大聖堂のスケール感:見上げる文字は人の背丈より大きい? 遠近感を狂わせる建築のデザイン技術。

    ・ミケランジェロの『ピエタ』:若き天才が忍び込んで署名を刻んだ、情熱のエピソード。

    ・ベルニーニのバルダッキーノ:ねじれた柱に込められた意味と、パンテオンから剥ぎ取られた青銅の行方。

    ・クーポラ登頂体験:ドームの二重構造の隙間を歩く。斜めの壁がもたらす不思議な身体感覚。

    続きを読む 一部表示
    24 分