エピソード

  • 友達からの誘い、脅迫、そして孤立――田中慎一朗校長が語る「子どもを闇バイトの加害者にさせない社会」
    2026/06/19
    ――ネット規制や恐怖の啓発だけでは救えない、少年たちのリアルな実態近年、ニュースで毎日のように耳にする「闇バイト」や強盗事件。その背景には、SNSを通じて緩やかに結びつき犯罪を繰り返す「匿名流動型犯罪グループ(通称:トクリュウ)」の存在があります。こうした犯罪に、中高生をはじめとする少年たちが「使い捨ての駒」として加担させられ、犯罪加害者になってしまうケースが後を絶ちません。しかし、彼らはある側面から見れば、巧妙な手口に絡み取られた「被害者」とも言えます。子どもたちを犯罪の道へ行かせないために、大人は、そして社会はどうあるべきなのか。熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長が、教え子から聞いた生々しい実態をもとに、子どもを守るためのアプローチを語りました。🔶 スマホ規制だけでは防げない「友人からの勧誘」という盲点闇バイトと聞くと、「スマートフォンで高額報酬の怪しい広告を自ら見つけて応募する」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、田中校長が教え子たちにリサーチした実態は、大きく異なっていました。「スマホの利用制限をかけることはもちろん大切ですが、実はそれ以上に多いのが『友人や知り合いからの直接の勧誘』です。子どもたちの日常の会話の中に、ごく自然に危険な誘いが入り込んでいます」田中校長の教え子が高校生の頃、実際に友人から受けた勧誘の手口は以下のようなものでした。「簡単な調査だけ」と言葉巧みに誘う: 「家の調査をしてメモを取るだけだから、すごく簡単で大変な仕事じゃないよ」と持ちかけられる。その実態は強盗の下調べ: 高齢者の一人暮らしの家には「△」、父親がいそうな家には「×」といった目星をつけ、情報をグループに送る役目(名簿作り)。この教え子は「これは空き巣などの下調べ(情報収集)で、犯罪だ」と気づき、きっぱりと断ることができましたが、一歩間違えれば誰もが足を踏み外しかねないほど、闇バイトは身近なところに潜んでいます。🔶 「一度やったら逃げられない」恐怖の啓発が招く弊害一度でも関わってしまうと、グループから「身分証明書」や「家族の情報」の提出を求められます。そして、やめようとすると「警察に言えば家族や大事な人を殺す」などと激しく脅迫されるのがトクリュウの手口です。こうした犯罪を抑止するため、一般的には以下の二つの対策(依存症対策などの文脈で使われるアプローチ)が取られます。サプライリダクション(供給削減): SNSの規制や広告制限により、子どもたちに有害な情報を届かないようにする。デマンドリダクション(需要削減): 「一度でも関わると一生抜け出せない」「家族まで脅される」といったリスクを周知する啓発活動。しかし、田中校長は「これらを徹底するだけでは、かえって子どもたちを追い詰める弊害もある」と警鐘を鳴らします。「『足を踏み入れたら終わりだ』『人生が詰む』という恐怖ばかりを強調しすぎると、万が一騙されて関わってしまった子が、『もう誰にも相談できない。最後まで言われるがままやるしかない』と絶望し、かえって引き返せなくなる恐れがあります」🔶 犯罪を未然に防ぐ鍵は「信頼できる大人の存在」全面的な禁止や恐怖による締め付けだけではなく、もう一つの重要な視点として注目されるのが「ハームリダクション(害削減)」というアプローチです。これは、現実に起こり得る問題や実害をどのように減らしていくかという現実的な対応策を指します。危険な勧誘を断ることができた前述の教え子に、田中校長が「なぜ踏みとどまれたのか」を尋ねたところ、返ってきたのは非常にシンプルな答えでした。「私には、困ったときに相談できる大人の人がいましたから」犯罪グループに絡み取られてしまう子どもたちの背景には、以下のような共通の課題があります。孤立と寂しさ: 周囲に頼れる人がいない。大人への不信感: 「先生や親に言っても怒られるだけ」「どうせ助けてくれない」と思い込んでいる。仲間内での解決: 大人を信用できないため、怪しい友人関係や「仲間」の...
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  • 渋滞を横目にスマホ見放題!「熊本電鉄応援大使」斉場俊之氏が語る、ローカル線の知られざるポテンシャル
    2026/06/12
    ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが、熊本電鉄のPRや利便性向上のための活動を行う「熊本電鉄応援大使」に就任しました 。任期は来年3月までとなっており、先週、社長室にて社長から直々に委嘱状を交付された斉場さん 。単なるおもてなしのPRに留まらず、利用者の声を届ける窓口として活動をスタートします 。今回は、斉場さんが大使として熱く語る、熊本電鉄(電車・バス)の秘められた魅力と可能性について、RKKの江上浩子氏と共にニュース解説風にお届けします。🔶 自転車レース完走の報告と、驚きの「応援大使」就任番組の冒頭、斉場さんから嬉しいプライベートの報告がありました。渋滞回避のために始めたという自転車ですが、今月7日には「ツール・ド・壱岐島2026」(50キロ)に出場。天候が心配される中、無事に怪我なく完走を果たし、昨年より順位を30番ほど上げるという素晴らしい成果を収めました。「行った先で景色や美味しいものを楽しむなど、自転車が人生を豊かにしてくれている」と、収穫の多さを語ります。そしてもう一点、斉場さんから驚きのビッグニュースが明かされました。なんと、熊本電鉄の社長室にて社長から直々に委嘱状を交付され、「熊本電鉄応援大使」に就任したというのです 。任期は来年3月まで 。単なるイベントでのPR活動に留まらず、利用者の利便性向上のために「私らしい大使活動をしたい」と意気込みを語る斉場さん 。一体どのようなポテンシャルが熊本電鉄には隠されているのでしょうか 。 🔶 多くの人が「一度も乗ったことがない」という現実熊本電鉄の路線は、藤崎宮前から御代志、上熊本から北熊本を結ぶ鉄道線と、熊本市から合志市を通って菊池まで向かうバス路線が中心です 。「北東部に行く用事がない」「菊池や農業公園には車で行く」といった声も多く、沿線住民であっても一度も乗ったことがないという人が多数存在するのが現状です 。しかし、いざ使ってみると、熊本電鉄には知られていない高いポテンシャルが備わっています 。 🔶 熊本電鉄が誇る「3つの知られざるポテンシャル」1回あたりの輸送力で貢献する「渋滞解消の救世主」のどかなローカル線のイメージとは裏腹に、熊本電鉄は通勤・通学の大量輸送を担う重要な戦力です 。▶ 道路の混雑を緩和: 電鉄電車の横に並行する国道3号線と国道387号線(浄行寺交差点や黒石神社付近など)は、朝晩は激しい大渋滞に見舞われます 。▶ 大量の乗客を一度に輸送: 朝の電鉄電車は、1便(1列車)で約300人もの人々を運んでいます 。▶ 見えない渋滞緩和効果: もしこの電車がなければ、周辺道路の渋滞はさらに悪化しているはずです 。車を運転している人も、電鉄電車を見かけたら「目の前の渋滞を緩和してくれている」と感じられるほどの大きな貢献を果たしています 。 時速50キロでも、渋滞の車より「速くて時間が読める」電鉄電車の最高時速は約50キロ(JRの80〜90キロ、市電の40キロの中間)で、決してスピードの出る電車ではありません。しかし、激しく渋滞する車に比べれば、ラッシュ時でも圧倒的にスムーズに移動できます 。▶ 定時性の強み: 渋滞に巻き込まれず「時間が読める」というのは、鉄道ならではの大きな強みです 。▶ 雨の日こそベストチョイス: 雨の日は道路を走る車が増えて渋滞が伸びますが、電車なら影響を受けません 。「雨の日こそ電車」という選択肢は非常に合理的です 。▶ 待たずに乗れる本数の多さ: 朝晩は15分から20分間隔で運行しており、JR線や市電のB系統と同じくらいの運行間隔が確保されています 。 残業や飲み会にも対応!23時台まで走る「夜の頑張り」深刻な運転手不足が社会問題化し、多くのバス路線が21時台から22時台で運行を終了する中、熊本電鉄の夜間の運行体制は非常に健闘しています 。▶ 電車の最終便: 22時55分まで運行しています。▶ バスの最終便: 熊本桜町バスターミナルからの各方面を含め、23時台(11時前)まで運行を続けています 。▶ 沿線住民にとっての価値: 採用努力などによって遅い時間まで足を確保してくれるこのサービスは、沿線住民にとって「使...
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  • 梅雨のジメジメを吹き飛ばす!上妻祥浩さんが選ぶ6月公開の厳選映画3作
    2026/06/05
    ――世界を救う壮絶アクションから、城郭ミステリー、女性たちの犯罪ドラマまで映画解説研究者の上妻祥浩さんをゲストに迎え、2026年6月公開の注目作3本を見どころたっぷりにご紹介します。梅雨の憂鬱な空気をスカッと晴らしてくれるような、エネルギーに満ちたラインナップが揃いました。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 日米のレジェンドが再集結!圧倒的格闘アクション『モータルコンバット/ネクストラウンド』2026年6月5日(金)公開 公式HP👉 https://mortalkombat-nextround.jp/世界的な人気対戦型格闘ゲームを実写化し、話題を呼んだ前作から5年。待望のシリーズ最新作が、ついに本日6月5日より公開となります。 🔷 世界の存亡をかけた戦い: 舞台は人間界と魔界の格闘大会。すでに9敗を喫し、あと1敗で世界の存亡に関わる危機に瀕した人間界の勇者たちが、壮絶な全面対決に挑みます。🔷 真田広之&浅野忠信が続投: 物語の起点となる江戸時代の忍者を演じる真田広之さんと、人間界の守護神を演じる浅野忠信さんという、日本が誇る国際派俳優の二人が前作に引き続き重要な役どころで出演しています。🔷 劇場ならではの爽快感: 多彩なキャラクターたちが繰り広げる、一切妥協のない格闘アクションは、ぜひ大スクリーンで体感してほしい仕上がりです。 🎁 番組から嬉しいお知らせ(ムビチケプレゼント)本作の公開を記念して、映画鑑賞券(ムビチケ)を抽選で2名様にプレゼントいたします。 ▶ 応募方法: メールにて受付。件名に「ムビチケ希望」、本文にお名前、電話番号、番組への感想をご記入ください。▶ 宛先: 515@rkk.jp▶ 締め切り: 2026年6月8日(月)午後6時 🔶孤立無援の城で起こる連続殺人『黒牢城(こくろうじょう)』2026年6月19日(金)公開 公式HP👉 https://movies.shochiku.co.jp/kokurojo-movie/直木賞を受賞した米澤穂信さんの大ヒット歴史ミステリー小説が、満を持して映画化されます。 🔷 世界のクロサワが描く初の時代劇: 監督を務めるのは、『スパイの妻』などで海外の映画祭でも高く評価されている世界の黒沢清監督。巨匠がキャリア初となる時代劇に挑んだことでも大きな注目を集めています。🔷 戦国時代の「クローズド・サークル」: 織田信長に謀反を起こし、有岡城に立てこもった荒木村重の史実がベース。敵に包囲され、行き来が断たれた極限状態の城内で、奇妙な連続殺人事件が巻き起こります。🔷 「安楽椅子探偵」としての黒田官兵衛: 謀反を起こした荒木村重を本木雅弘さん、地下の土牢に幽閉された軍師・黒田官兵衛を菅田将暉さんが演じます。自由を奪われた官兵衛が、牢の中から事件の真相を推理していく構図は、さながら名作『羊たちの沈黙』のレクター博士を彷彿とさせます。 実力派の脇役陣が固める重厚な演技合戦も含め、時代劇でありながら極上のミステリーとしても楽しめる傑作です。 🔶どん底の女性たちが仕掛ける一発逆転劇『マジカル・シークレット・ツアー』2026年6月19日(金)公開 公式HP👉 https://magicalsecrettour.asmik-ace.co.jp実際に起こった事件から着想を得て制作された、スリリングで爽快な日本映画です。 🔷 「闇バイト」から始まったビジネス: 莫大な借金を抱え、金策に奔走する主婦を舞台に物語は動きます。有村架純さん演じる主人公が、手っ取り早く金を稼ぐために引き受けたのは「シンガポールからの金の密輸」という危険な闇の仕事でした。🔷 実力派女優陣による共演: 現地で出会う仲間に黒木華さん、南沢奈央さんという素晴らしい女優たちが集結。最初の密輸が成功したことをきっかけに、彼女たちは男たちの支配から脱却し、自分たちの力で密輸ビジネスを拡大しようと画策します。🔷 痛快なシスターフッド映画: 単なる犯罪サスペンスに留まらず、理不尽な環境やダメな男たちから自立し、女性としての生き方と友情を取り戻していく姿が力強く描かれています。 🔶 まとめ:初夏の映画館は多彩なエンターテインメントの宝庫「今月ご紹介した3作品は、圧倒的なアクション、緻密な頭脳戦、そして人間ドラマと、それぞれ全く異なる魅力を持っています。快適な...
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  • 徳田靖之弁護士が告発する『菊池事件』と再審制度の闇
    2026/05/29
    ――ハンセン病差別が生んだ死刑冤罪。私たちはなぜ、この事件を「知る義務」があるのか刑事裁判のやり直しを定める「再審制度」の見直しをめぐる刑事訴訟法改正案が国会で審議される中、日本の司法の歴史において決して忘れてはならない一つの事件があります。元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が、ハンセン病をめぐる凄惨な冤罪事件を告発した徳田靖之弁護士の著書『菊池事件』(かもがわ出版)を紐解き、司法の「過ちを認めない体質」と、私たちが背負うべき加害責任について、江上浩子氏と共に解説します。🔶 『菊池事件』とは何か――差別と偏見がもたらした死刑執行1952年(昭和27年)7月、現在の熊本県菊池市の山中で役場の元職員が刺殺される事件が発生しました。犯人とされたのは、ハンセン病患者とされた男性(元被告人)でした。当時、国や県を挙げてハンセン病患者を通報し、強制隔離する「無らい県運動」が激しく行われており、男性が「自分を通報した役場職員を恨んで殺害した」と強引に決めつけられたのです。男性は一貫して無実を訴え、再審請求を重ねましたが、3回目の請求が棄却された翌日の1962年9月、死刑が執行されました。菊池事件再審弁護団の共同代表であり、福岡県の『飯塚事件』の弁護も務める徳田靖之弁護士は、国立療養所菊池恵楓園の入所者自治会機関誌『菊池野』に寄せた文章をまとめた本書の中で、長年の調査に基づき「この事件は完全なる冤罪である」と強く告発しています。🔶 「防毒衣」と「箸」で扱われた被告――憲法違反の特別法廷男性の取り調べと裁判のプロセスは、偏見と差別に満ちた、拷問に近いものでした。拷問に等しい取り調べ: 男性は逮捕時、警察の拳銃で右腕を撃たれて複雑骨折し、大量出血していました。しかし、まともな治療はされず、簡単な消毒と鎮痛剤を与えられただけで、長時間にわたる過酷な取り調べにより自白調書が作成されました。隔離された「特別法廷」: 裁判は通常の裁判所ではなく、菊池恵楓園内に設けられた仮設の「特別法廷」で行われました。そこでは裁判官、検察官、さらには弁護人までもが「防毒衣(白衣)」を身にまとい、証拠物を「箸」で扱うという、非人道的な差別の中で審理が進められました。機能しなかった弁護権: 1審の国選弁護人は、無実を訴える男性を完全に無視し、公訴事実を一切争わずに検察側の主張をすべて認めました。事実上、弁護人がいないも同然の状況で死刑判決が下されたのです。さらに、この男性は事前に九州大学医学部を訪ねた際、医師から「あなたはハンセン病ではない」と診断されており、お祝いの席まで設けていたという事実も残されています。🔶 「憲法違反」を認めながら再審を拒む裁判所の論理弁護団は、この特別法廷が憲法第13条(個人の尊重)、第14条1項(法の下の平等)、第37条(刑事被告人の権利)、第82条(裁判の公開原則)にことごとく違反していると主張しました。これに対し、熊本地裁(中田幹人裁判長)が下した決定は、司法の驚くべき「後ろ向きな姿勢」を露呈するものでした。熊本地裁は、男性を裁いた過去の裁判に「憲法違反があった」と明確に認めながらも、「それが再審を開始する(裁判をやり直す)理由にはならない」として再審請求を棄却したのです。刑事訴訟法の中に「憲法違反で行われた裁判は再審しなければならない」という直接の規定がないことを盾に、国家による重大な人権侵害を事実上容認する決定でした。さらに、この決定文には「憲法37条3項」と記載すべきところを、存在しない「39条3項」と誤記するなど、いくつものずさんな間違いが含まれており、世論の大きな批判を浴びました。現在、弁護側は福岡高裁に即時抗告し、審理が続けられています。🔶 裁判官が恐れる「死刑執行後の再審無罪」という厚い壁日本司法において、死刑判決が確定した後に再審で無罪となった例(免田事件や袴田巌さんの事件など)は存在します。しかし、死刑が執行された後に再審が開始された例は、日本の裁判史上、過去に一つもありません。徳田靖之弁護士はその理由を、同書の中で...
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  • 国旗をめぐる「表現の自由」と「強制」の境界線――自民党が推進する「国旗損壊罪」がもたらす社会の変容
    2026/05/22
    自民党の作業チームが、自国の国旗(日の丸)を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の新設へ向けて方針案を大筋で了承しました。一見、愛国心やマナーの問題のようにも思えるこの法案ですが、元RKKアナウンサーの宮脇利充さんは、「法制化によって社会の空気がどう変わるのか」という点に強い懸念を示します。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 「国旗損壊罪」の骨子と、松野座長が語る立法趣旨現在、自民党内で検討が進められている「日本国国旗損壊罪」の主な内容は以下の通りです。処罰の対象: 実物の国旗を公然と損壊、除去、汚損する行為に加え、その動画をSNSで拡散する行為なども含む。罰則: 2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金。作業チームの座長を務める松野博一元官房長官は、「国旗に対する損壊行為が現実として発生している中、こうした行為を将来にわたって抑止し、国旗を大切に思う国民が不快に感じないようにするのが基本的な考え方だ」と述べています。しかし、宮脇さんは「そもそも今、国会でわざわざ時間を割いて法案化しなければならないほど、国旗の損壊事件が頻発しているのだろうか」と、前提となる現状認識に疑問を投げかけます。🔶 既存の法律で処罰は可能? 過去の事例から見る実態国旗を傷つける行為に対しては、わざわざ新しい法律を作らなくても、現行の法制度で対応できるという事実があります。宮脇さんは、1987年10月の沖縄国体において、平和運動家である知花 昌一氏が日の丸を引き下ろして焼き捨てた「沖縄国体日の丸焼却事件」を例に挙げます。当時の法的な位置づけ: 1987年当時は「国旗国歌法(1999年成立)」ができる前であり、日の丸は法的な国旗ではありませんでした。現行法での判決: 新たな罪名がなくとも、知花氏は建造物侵入罪、器物損壊罪、威力業務妨害罪により、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が確定しています。つまり、他人の所有物である国旗を傷つければ、現在でも「器物損壊罪」等で十分に逮捕・処罰が可能です。問題は、「自分が所有する国旗」を損壊した場合にまで罪に問うべきか、という点にあります。🔶 「一般的な国民の感情」という言葉の危うさ自民党の骨子案では、立法の目的を「国旗を大切に思う一般的な国民の感情を保護するため」としています。しかし、ここには憲法に関わる重大な懸念が潜んでいます。主観的な適用のリスク: 「著しく不快な感情を抱かせる方法」かどうかを、一体誰がどのように判断するのかという基準が曖昧です。憲法との抵触: 強い国家抗議の意志として国旗を扱う行為は、憲法第19条の「思想および良心の自由」や、第21条の「表現の自由」に守られた領域ではないかという見方があります。同調圧力の懸念: 法律で「一般的な国民の感情」を定義してしまうと、そこから外れる少数派を「一般的ではない」として排除・批判する社会の空気を作りかねません。🔶 「強制はしない」という約束の行方歴史を振り返ると、かつて政治が交わした「約束」が、時を経て形骸化していくプロセスが見えてきます。1999年に「国旗国歌法」が成立した際、当時の小渕恵三総理大臣は「処罰をもって強制することは適当ではない」との方針を示し、野中広務官房長官も「敬愛や斉唱を強制するものではない」と答弁していました。しかし、その後の現実は異なります。2004年秋の園遊会: 東京都教育委員(当時)の米長邦雄氏が、明仁天皇(現・上皇さま)に対し「日本中の学校において国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と発言。これに対し天皇は「強制になるということではないことが望ましいですね」と、懸念を込めて笑顔で返されました。2011年の大阪府の条例: 橋下徹知事(当時)のもと、大阪維新の会が提出した教職員への君が代起立斉唱義務化条例が成立。以降、起立して歌わない教員を再雇用しないなどの処分が繰り返されるようになりました。「強制はしない」として始まった法制化が、段階的に義務化へ、そして今回の「処罰化」へと向かっている流れは、過去の歴史が証明しています。🔶 まとめ:言葉...
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  • 「会話」と「対話」は決定的に違う。中学生が自ら欲した“一生モノのスキル”を育む「出南タイム」の試み
    2026/05/15

    「会話」を「対話」へアップデートし、問題を乗りこなす力を育む

    熊本市立出水南中学校では、生徒たちが主体的に他者と関わり、新しい価値を創造する力を養う「出南(いずなん)タイム」という独自の取り組みを推進しています。この活動の核心は、単なる情報のやり取りである「会話」を超え、互いの考えが混ざり合うことで新しい発見が生まれる「対話」の実践にあります。


    田中慎一朗校長が語る、教育現場における「対話」の真意とその可能性について、RKKの江上浩子が詳しく話を伺いました。


    🔶 会話と対話は違う――「化学変化」が生み出す新しい価値

    出水南中学校が「総合的な学習の時間」を活用して取り組んでいる「出南タイム」は、自分の意見を広げ、深め、相手の考えに反応するスキルの育成を目指しています。田中校長は、本取り組みにおける「対話」を化学反応に例えて説明します。


    対話の定義: 対応することによって、新しい価値や化学変化が生まれるプロセスである。


    化学変化の例え: 一方が「水素」という意見を持ち、もう一方が「酸素」という意見を出した際、それらが混ざり合って「水」という全く異なる物質が生まれるような状態を目指す。


    相互作用: 生まれた「水」にまた別の意見を掛け合わせることで、お互いに初期の価値観を超えた新しい価値を生み出し続ける。


    🔶 問題をゼロにするのではなく「乗りこなす」

    学校生活における人間関係の悩みや対立に対し、田中校長は問題を無理に排除するのではなく、その捉え方を変えていくことが重要だと説きます。


    問題の不可避性: 人と人が関わる限り問題は生じるものであり、ゼロにすることを目指すのではない。

    価値への変換: 対話を通じて問題の見え方を変え、そこから新しい価値を見出すことができれば、誰も不幸にしない解決が可能になる。


    生徒のニーズ: 実際に生徒たちから「友達との仲直りの仕方を知りたい」「傷つけずに自分の気持ちを伝える力を身につけたい」といった要望が上がっている。


    🔶 「行動」の裏にある「感情」と「ニーズ」へのアプローチ

    「出南タイム」では、熊本大学とも連携し、「紛争解決学」の知見を取り入れた模索が続いています。

    その中で大切にされているのが、生徒の表面的な「行動」だけでなく、その奥底にある「ニーズ」にたどり着く視点です。


    三層の構造: 人のコミュニケーションには「行動」「感情」「ニーズ」の三層がある。


    感情の正体: 行動(相手を傷つける、学校に行かない等)の裏には、寂しさや不安といった「感情」がある。


    ニーズの探求: 感情のさらに奥には「認められたい」「自分を知ってほしい」といった、満たされていない本質的な「ニーズ」が隠れている。


    対話の役割: 相手の話をまず聞くことでその「ニーズ」に触れ、そこからようやく自分自身の行動を見つめ直す「内省」が可能になる。


    🔶 まとめ: 対話が培う「自ら成長する力」

    出水南中学校が進める「出南タイム」は、単なるスキルの習得ではなく、生徒一人ひとりが問題に主体的に関わり、自分と他者を見つめ直す「場」を提供しています。

    田中校長は、「問題について全員がそれぞれの立場で向き合う基礎体力がつけば、それは子どもたちが将来社会で活躍するための大きな力になる」と、その成長に強い期待を寄せています。


    出演:熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さん/聞き手:江上浩子(RKK)


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  • 1000億円超の市庁舎建設と「市民の不信」――いま求められる行政の透明性とは
    2026/05/08

    2026年5月現在、熊本市や八代市で大きな議論を呼んでいる「市庁舎問題」。巨額の建設費や不透明なプロセス、さらには汚職事件まで、市民の行政に対する信頼が揺らいでいます。


    ライブ配信ディレクターの斉場俊之氏は、この問題の本質は「市民に向き合わない行政の姿勢」にあると指摘。AI技術の活用による情報の民主化こそが、解決への鍵であると語ります。聞き手はRKKの江上浩子です。


    🔶 膨らむ建設費と相次ぐ不祥事が招く不信感

    熊本市では桜町への新庁舎建設が進められていますが、事業費が発表のたびに上昇し、ついに1000億円の大台を超えました。一方で、八代市では市庁舎建設を巡るあっせん収賄容疑で市議らが逮捕されるという、あってはならない事態が発生しています。

    経緯は異なりますが、市民が受ける印象は同じです。


    🔷 「話がどんどん変わっていく」ことへの戸惑い: 熊本市の事例では、耐震性の議論や元庁舎の活用といった市民の声に対し、十分な納得が得られないまま「特例債の期限」というタイムリミットを優先して議論が締め切られた印象があります。

    🔷 特定の利益への疑念: 八代市の不祥事は、特定の企業や個人が利益を得るために行政が歪められたのではないかという強い猜疑心を生んでいます。


    🔶 巨額プロジェクトの陰で蝕まれる生活インフラ

    斉場氏は、華やかなビッグプロジェクトが進む一方で、私たちの日常生活を支えるインフラがおざなりになっている現状に警鐘を鳴らします。


    🔷 熊本市電のトラブル: かつての財政改革でコストを抑えた結果、インシデント(事故一歩手前の事態)や追突事故が多発し、運転手不足による減便も常態化しています。


    🔷 地域の公共施設廃止: 八代市では、九千坊温泉センターや旧厚生年金会館などの廃止方針に対し、市民から猛反対が起き、小野市長がゼロベースでの見直しを表明する事態となりました。

    「私たちの税金が、自分たちの生活を豊かにするためではなく、別の思惑で動いているのではないか」――そんな不信感が、市民の間に広がっています。


    🔶 AIとデータの力で「お上と下々」の関係を脱却する

    このような状況を打破するために必要なのは、行政による圧倒的な情報の透明化です。斉場氏は、AIを活用した情報開示の迅速化を提案しています。


    ▶ 議事録の即時公開: 従来の議事録作成には時間がかかりましたが、現在はAIによる文字起こしを活用すれば、会議の内容をその日のうちに公開することが可能です。


    ▶ 建設的な議論の土台作り: 資料や議論の過程がすべて可視化されていれば、市民も感情的な反対ではなく、根拠に基づいた提案を行うことができます。


    ▶ 市民自身の情報のキャッチ力: 行政に情報を求めるだけでなく、市民自身もホームページのパブリックコメントや最新のPDF資料を積極的に取りに行く姿勢が求められます。


    🔶 まとめ:将来への「投資」と納得感

    「浪費を投資と思わせるまやかしがあってはならない」と斉場氏は語ります。

    何でも反対するのではなく、何が必要で何が不要なのかを見極めるためには、丁寧なプロセスと正確な情報が欠かせません。行政が最新の情報を出し続け、市民がそれを注視し、議会が機能する。この当たり前の循環を取り戻すことこそが、未来の世代にツケを回さないための唯一の道と言えるでしょう。


    出演:ライブ配信ディレクター・斉場俊之さん/聞き手:江上浩子(RKK)


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  • 5月の映画は「再会」と「情熱」が鍵。上妻祥浩さんが選ぶ、GWから初夏を彩る注目3作
    2026/05/01
    ――「プラダ」20年後の続編から、光浦靖子が英語で魅せる格闘ドラマまで映画解説研究者の上妻祥浩さんが、5月公開の強力なラインナップを厳選しました。今月のキーワードは「時を経て磨かれた輝き」。20年前の伝説の再集結や、90年代の熱狂を呼び覚ます実話など、世代を超えて楽しめる作品が揃いました 。聞き手は、RKKの江上浩子です。 🔶 働く女性のバイブルが20年ぶりに帰還! 『プラダを着た悪魔2』(5月1日公開)公式サイトはこちら👉 https://www.20thcenturystudios.jp/movies/devil-wears-prada2 2006年の公開以来、世界中の女性を熱狂させた前作から20年 。待望の続編がついに幕を開けます。 オリジナルキャストが奇跡の集結: カリスマ編集長ミランダ役のメリル・ストリープ、かつてのアシスタントで現在はジャーナリストとして活躍するアンディ役のアン・ハサウェイらが、20年の時を経て再び相まみえます 。 ファッション誌の危機を救え: ジャーナリストとなったアンディが、かつての古巣であるファッション誌『ランウェイ』の存亡をかけた窮地に立ち向かう物語です 。 20年という「熟成」の味わい: 俳優陣が実際に年齢を重ねたことで、キャラクターの成長と変わらぬ個性が絶妙な味わいを生んでいます 。「1作目を見てファンになった世代はもちろん、その後に生まれた若い世代にとっても、働くことの意味やファッションの魔法を感じられる最高の続編です」(上妻さん) 🔶 伝説の格闘家、マーク・ケアーの魂に迫る 『スマッシング・マシーン』(5月15日公開)公式サイトはこちら👉 https://happinet-phantom.com/a24/smashingmachine/index.html 90年代の日本で熱狂を巻き起こした総合格闘技「PRIDE(プライド)」。その中心にいた「霊長類最強の男」こと、マーク・ケアーの実話に基づく物語です 。 肉体と心の限界に挑む: 主演のドウェイン・ジョンソン(V・ジョンソン)が自ら製作も務め、最強を追い求める一方で心を蝕まれていく格闘家の苦悩を真正面から演じます 。 豪華な「日本」の布陣: 大沢たかおさんが出演するほか、布袋寅泰さんが本人役で国歌演奏を披露するなど、日本でのシーンも見どころです 。 光浦靖子さんの驚異の英語劇: 通訳役として出演する光浦靖子さんは、東京外国語大学卒業の語学力を活かし、ほぼ全編英語のセリフを流暢にこなし、一人の役者として真剣な演技を披露しています 。「強さの裏側にある孤独や葛藤を描いた、胸に迫る人間ドラマです。アメ横を歩くエミリー・ブラントの姿など、意外なシーンにも驚かされます」(上妻さん) 🔶 二重の謎が交錯する、堤幸彦ワールド全開 『ミストリー・アリーナ』(5月22日公開)公式サイトはこちら👉 https://movies.shochiku.co.jp/mysteryarena-movie/ 推理小説を題材にしたクイズ番組を舞台に、虚構と真実が入り乱れる緻密なミステリーです。異色の司会者と天才少女: アフロヘアでハイテンションな司会者を演じる唐沢寿明さんと、回答者として参加する天才少女役の芦田愛菜さんによる、スリリングな謎解きバトルが展開します 。 堤幸彦監督の真骨頂: 『トリック』などのヒットメーカー、堤幸彦監督が手がける本作は、番組内の謎解きと、その裏側に隠された真実という「二重の謎」が仕掛けられています 。 超豪華な回答者陣: 玉山鉄二さん、そしてミステリーの女王と呼ばれる作家役で浅野ゆう子さんが出演。一癖も二癖もある登場人物たちが、予測不能な結末へと導きます 。「心地よいひねりが効いた、堤監督ならではのエンターテインメント。最後まで先が読めないワクワク感を、ぜひ劇場で体験してください」(上妻さん) 🔶 まとめ:5月は映画館が「最高の社交場」になる「GWから初夏にかけて、これほど特色豊かな作品が揃うのは珍しい。家族で、カップルで、快適な映画館の環境で楽しんでほしいですね」(上妻さん) 。 新緑の季節、日常を離れてスクリーンの向こう側の情熱に触れてみてはいかがでしょうか。出演:映画解説研究者・上妻祥浩さん/聞き手:江上浩子(RKK)
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