• #126 「万人に理解されなくていい」ワイエスが貫いた画家人生【ワイエス編6】
    2026/09/06

    参考書籍:

    Richard Meryman , Andrew Wyeth: A Secret Life, Harper Perennial, 1998


    高橋 秀治「アンドリュー・ワイエス作品集」東京美術、2017年


    ジェイムズ H.タフ、桑原 住雄訳「アメリカン・ヴィジョン: ワイエス芸術の三代」リブロポート、1988年



    抽象表現主義がアメリカ美術の主流になっていく中でも、アンドリュー・ワイエスは最後まで自分の描き方を大きく変えませんでした。時代遅れと評されることがあっても、身近な人や風景、自分が心を動かされた瞬間を描き続け、その姿勢は晩年の《マリアージュ》《ドクター・シン》《アザー・ワールド》、そして《グッバイ》にも表れています。大統領に「我々の仕事は万人に理解されるということはないようですね」と語ったというエピソードからは、評価に迎合せず、自分の感覚を信じ続けたワイエスの生き方が見えてきます。6回にわたって追ってきたワイエス編の最後に、彼が何を見つめ、なぜそれを描き続けたのかを振り返ります。

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    35 分
  • #125 「彼が描きたかったのは、愛です」妻ベッツィの一言【ワイエス編5】
    2026/08/30

    死や喪失を描いてきたアンドリュー・ワイエスは、若いシリとの出会いをきっかけに、「成長」や「再生」へと新たな視線を向けていきます。やがて彼はヘルガを15年近く描き続け、素描を含む約240点もの作品を残しますが、その存在を妻ベッツィに隠していたことから、二人の関係は不倫だったのではないかと大きな話題になりました。そんな疑惑の渦中で、ベッツィがヘルガ・シリーズについて語った言葉が、「彼が描きたかったのは、愛です」。画家とモデル、夫と妻、創作と私生活の境界をめぐり、ワイエスの知られざる一面に迫ります。

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    24 分
  • #124 あったものが、なくなっていく。ワイエスが描いた死と記憶【ワイエス編4】
    2026/08/23

    アンドリュー・ワイエス自身が生死の境を経験した《踏みつけられた草》から、クリスティーナとアルヴァロの死、そして人のいなくなったオルソン・ハウスへ。今回の回では、ワイエスが一貫して描いてきた「失われていくもの」と「そこに残された痕跡」をたどります。人物がいなくなった後も、使い込まれた扉や壊れた煙突、屋根にとまる燕といった細部には、その人の存在や記憶が静かに残されています。死を直接描くのではなく、消えていく気配や残されたものを通して表現するワイエスの視点から、喪失を描くということの深さを考えます。

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    31 分
  • #123 下り坂の孤独、上り坂の命、ワイエスが残した対照的な2枚【ワイエス編3】
    2026/08/16

    父の突然の死をきっかけに、アンドリュー・ワイエスの作品には、それまで以上に喪失や孤独の気配が漂い始めます。父を亡くした翌年に描かれた《冬 1946》では、ひとりの男が斜面を下っていく一方、その約2年後の《クリスティーナの世界》では、下半身が不自由な女性が遠くの家へ向かって力強く進んでいきます。下へ向かう男と、上へ進む女、対照的な2枚を並べて見ることで、ワイエスが経験した喪失と、その先に見いだした生命の力が浮かび上がります。現実をそのまま写すのではなく、自らが感じた世界を絵に変えていったワイエスの表現にも迫ります。

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    32 分
  • #122 「これ、本当に水彩?」ワイエスを支えたドライブラッシュの執念【ワイエス編2】
    2026/08/09

    驚くほど緻密で、乾いた空気や木の質感まで伝わってくるアンドリュー・ワイエスの絵。その表現を支えたのが、水彩絵の具から水分を絞り、何度も何度も塗り重ねていく「ドライブラッシュ」という技法でした。芸術一家に生まれ、父やデューラーから影響を受けながら、自分の感動を残すための表現を追求していったワイエスは、20歳の個展で早くも完売を経験します。そして、のちの代表作につながるクリスティーナ・オルソンとの出会いまで、圧倒的な描写力の裏側にある技法と執念をたどります。

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    30 分
  • #121 何もない日常に心を奪われて、アンドリュー・ワイエスの世界【ワイエス編1】
    2026/08/02

    精緻な写実表現の中に、どこか幻想的で静かな空気を漂わせる画家、アンドリュー・ワイエス。窓から吹き込む風に人生が変わるほど心を揺さぶられた《海からの風》を手がかりに、身近な風景や人々を見つめ続けた彼の感性に迫ります。スマートフォンやSNSによって「何もない時間」が失われつつある現代に、ありふれた日常から驚きや美しさを受け取ることはできるのでしょうか。ワイエスが描いた静かな瞬間と、その奥に潜む老い、別れ、死の気配から、日常を丁寧に感じることの意味を考えます。

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    17 分
  • #120 雑談会_モネから“60億円の鼻”まで、上半期ベスト展覧会を語る
    2026/07/26

    2026年上半期に足を運んだ約40カ所の中から、特に印象に残った展覧会と作品を振り返ります。モネの集大成ともいえる展覧会をはじめ、水彩とは思えない写実表現、紙を焦がして描く「焼き絵」、長沢芦雪の愛らしい子犬と迫力ある龍、そして数十億円ともいわれるジャコメッティの《鼻》まで、ジャンルを超えた驚きの作品が登場します。さらに、職人技の極致である截金や、戦争体験から生まれた香月泰男《青の太陽》など、実物を前にして初めて分かる技法と背景にも迫ります。知識だけでは捉えきれない、「うまい」「かわいい」「なぜこんなものを?」という率直な感動から、美術館で本物を見る面白さを語る息抜き回です。

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  • #119 ポロックがすべてをやっちまった、現代アートに残された難題【ポロック編9】
    2026/07/19

    参考文献:

    ・時系列的に変遷が知れる良書(英語):

    Deborah Solomon, "Jackson Pollock", CSP-Cooper Square Press, 2001

    ・愛知、東京で開催された展覧会のカタログ:

    「ジャクソン・ポロック生誕100年」、2011年


    ・画質は良くないが重要作を評論と共に見られる書籍:

    エリザベス・フランク、石崎 浩一郎、谷川 薫 訳「ジャクスン・ポロック」美術出版社(モダン・マスターズ)1994年


    ・ポロックの初個展を開いたペギー・グッゲンハイムの生涯:

    ジャクリーン・ボグラド ウェルド、野中 邦子 訳「ペギー: 現代美術に恋した気まぐれ令嬢」文藝春秋、1991年


    ・ポロックを評価した重要人物。現代抽象の基礎的評論:

    クレメント・グリーンバーグ、 藤枝 晃雄 訳「グリーンバーグ批評選集」勁草書房、2005年


    ・ポロックとその周辺。ポロック後のアメリカ抽象表現界隈:

    大島徹也「抽象表現主義」水声社、2025年


    絵の具を垂らし、床に置いたキャンバスを舞台に変えたジャクソン・ポロックは、現代アートに新しい自由をもたらす一方で、後世の作家たちに巨大な壁も残しました。完全な抽象を切り開いた結果、以後の表現は「ポロックの模倣」に見えかねないという難題を抱えることになります。晩年、創作のプレッシャーと酒に追い詰められ、突然の事故死を迎えたポロックの人生を振り返りながら、アーティストが“評価された自分”を超え続けることの過酷さを見つめます。そして、彼の死後に作品と名声を守り続けたリー・クラズナーの存在にも光を当て、ポロックの裏側をたどります。

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    32 分