• # 77 謎多きデュシャン。芸術家を辞めて、チェス・ギャンブル・債券発行・発明家に【デュシャン編3】
    2025/09/28

    アートとは何かを問い続けた末に「アートをやめる」と告げ、デュシャンはチェスへ、さらにルーレットなどのギャンブルへと越境します(理論上勝てるという“デュシャン流必勝法”は、無限資金が前提という皮肉付き)。資金調達のため自作の「モンテカルロ債券」を発行し実際に売れますが、投資家への利回りを支払えず頓挫、企ては焦げ付きます。次は発明家として回転視覚装置「ロトレリーフ」を科学見本市に出展—500部作って売れたのはわずか2部、在庫と赤字だけが残りました。それでも彼はペギー・グッゲンハイムらに助言するディーラーとして価格形成の裏側を熟知し、作品の価値と市場価格のねじれに嫌気を募らせていきます。本エピソードは、アートの外側で続いた一連の実験が、デュシャンとって何を意味していたのかを考察していきます。

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  • #76 アートって何!?美術館にあるのは"思考"か"物"か"創作"か、「大ガラス」が提示した問い【デュシャン編2】
    2025/09/21

    《大ガラス》を入り口に、「美術館にあるのは“思考”か“物”か、それとも“創作(プロセス)”か?」という核心に迫ります──設計図とメモの束〈グリーンボックス〉が“デュシャンの思考そのもの”を作品化し、アイデアは物と同等にアートたり得るのかを突きつけます。MoMAにあるオリジナルは輸送事故で入ったヒビを“完成”として受け入れた経緯があり、物質の状態さえ概念の一部となり得ることを示します。さらに、この“説明書つきアート”はハミルトンや東大チームらによる再制作を生み、レプリカでも“作者の思考”に準拠すれば作品と認め得るのかをめぐる価値判断を揺さぶりました。 番組では、ブランクーシ裁判に触れつつ「タイトルや見た目と“アート性”は必ずしも一致しない」という現代の前提を踏まえ、創作における“何に価値を置くか”というデュシャンの考えに触れます。

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    27 分
  • #75 便器がアートを変えた!?R.Muttさん?これぞデュシャンの哲学!【デュシャン編1】
    2025/09/14

    1917年、デュシャンは市販の男性用小便器に“R. Mutt 1917”と署名し、6ドル払えば誰でも出せるアンデパンダント展へフィラデルフィアから届いた体で送りつけ、「これはアートか?」という根源的な問いを投げかけました。会場では拒否されスキャンダル化、のちに『The Blind Man』誌で理論戦を仕掛け、「選ぶこと」自体を作品化するレディメイドの思想が広がり、20世紀の美術観をひっくり返します。さらに“R.Mutt”の正体や発送地をめぐって、バロネス関与を示唆する「デュシャン何もしてない説」まで浮上し、作者性と価値の源泉そのものが揺さぶられました。本編では、この事件の“仕掛け”と余波を手がかりに、ルールを逆手に取る発想、ネーミングと物語の力、そして「価値はどこで生まれるのか」というビジネスにも通じる視点を読み解きます。

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  • #74 日本画の王道を築いた狩野派、異彩を放つ蓮池蟹図【雑談会】
    2025/09/07

    日本画の「王道」を築いたエリート絵師集団・狩野派。幕府や武将に仕え、巨大な組織として日本美術の基盤を形づくった一方で、「型にはまりすぎてつまらない」と評されることもあります。そんな中、狩野派の祖・狩野正信が描いた《蓮池蟹図》は、枯葉や水の質感、蟹の重みまでも表現した異彩の一枚。室町時代にこれほどのリアリティが生まれていたことに驚かされます。本エピソードでは、狩野派の歴史と《蓮池蟹図》が放つ独自の輝きに迫ります。

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  • #73 遺書なき巨匠、法律すら変えたピカソ【ピカソ編9】
    2025/09/01

    ピカソは遺書を残さずにこの世を去り、3万点以上の作品や不動産が遺族の間で大混乱を巻き起こしました。相続額は1兆円規模に膨れ上がり、フランスはついに「美術品を相続税として物納できる」という特例、いわゆる“ピカソ法”を制定。こうしてピカソ美術館が誕生し、死後も社会を動かし続ける存在となりました。芸術を超えて法律までも変えた巨匠、その圧倒的な影響力の物語を掘り下げます。

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  • #72 「だから私はピカソになった」最終形態の到達点【ピカソ編8】
    2025/08/24

    ピカソ最晩年の傑作《アルジェの女たち》は、80歳を迎えた巨匠が描き上げた“完成形”とも言える作品です。ドラクロワやベラスケスといった過去の巨匠たちを咀嚼し、自らの解釈で塗り替えていく姿勢は、まさに「だから私はピカソになった」という言葉に重なります。絵画だけでなく陶芸や彫刻にまで挑み、あらゆる表現を飲み込んで「ピカソ」という唯一無二の存在となった彼の到達点。その最終形態に込められた意味を探ります。

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    29 分
  • #71 あのピカソを振った女!?フランソワーズ・ジローとの物語【ピカソ編7】
    2025/08/17

    世界的巨匠ピカソの数多い恋愛遍歴の中で、唯一彼を振った女性――フランソワーズ・ジロー。画家としての才能を持ちながら、ピカソの影と束縛に翻弄され、自らの道を切り開いた彼女の人生は波乱に満ちていました。本エピソードでは、ジローとの関係がピカソの作品にもたらした変化や、「花の女」と呼ばれる謎めいた作品の誕生、さらにはマティスとの色彩勝負までを紐解きます。天才と共に生き、最後には自立を選んだジローの物語から、アートと人生の深い交差点を探ります。

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    23 分
  • #70 爪を預けた女とナイフを握った女【ピカソ編6】
    2025/08/10

    マリー=テレーズとドラ・マール――二人の女性がピカソの絵に与えた影響は、愛の形そのものだった。安らぎと柔らかな線をもたらしたマリー=テレーズは、ピカソから切った爪や髪まで託されるほど信頼された存在。一方、激情と鋭い色彩を引き出したドラ・マールは、初対面でナイフの曲芸を披露し、ゲルニカ制作時の唯一の同伴者となった。画布に刻まれた微笑みと涙は、二人の愛の軌跡であり、ピカソの筆を大きく変えていった。

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    28 分