幕末から維新、明治と激動の時代の外交を料理で支えた男がいた――長崎生まれの料理人・草野丈吉で、店の名は「自由亭」。

花仍は吉原にある西田屋の女将。主の甚右衛門に拾われた花仍は、店の娘分として育ったのち、甚右衛門の妻になった。

ただひたすら植物を愛し、その採集と研究、分類に無我夢中。莫大な借金、学界との軋轢も、なんのその。すべては「なんとかなるろう! 」――日本植物学の父、牧野富太郎。愛すべき天才の情熱と波乱の生涯！

深川芸者だったおりんは、今は大店のお内儀として幸せに暮らしていた。が、跡取り息子が惚れた相手は、吉原の振袖新造・小扇だった。しかも小扇は身請けされたあとで嫁にはならないという･･･（時代小説）

大工の女房お新は、何よりも絵を描くのが好きな女だった。赤ん坊や幼児の愛らしさ、あどけなさを捉え大評判になった。そのうち画集を出さないかという話まで持ち上がった･･･（時代小説）

男髷を結い、男装し、剣士として生きることを夢見て修行に励む、知佐。当然ながら縁遠く、心配した両親が用意した縁談の相手には子供がいた･･･（時代小説）

深川の太物屋「伊豆屋」の長女おけいは、明るく活発な娘だった。べべやかんざしよりも下駄がすきなおけいは、いつもはす向いの「下駄清」の彦爺いの仕事ぶりをながめていた。（時代小説）

信次は好き合っていたおてるの心変わりを知り、懐に匕首をしのばせて裏店を訪ねる。が、留守だった。帰りを待つうちに雪になった。近所のかざり職の夫婦にさそわれるまま仕事場をのぞき、暖かいもてなしに、冷えきっていた心が次第にとけていく･･･（時代小説）

江戸は深川の凧師の末松の家は、今日も凧作りに夢中な子供たちで賑やかだった。「凧は見掛けより拵えるのが面倒だから辛抱もいるし、工夫もいる・・・」おゆいは、大好きなスイカの絵を描いた凧を大空に揚げたかった。（吉川英治文学新人賞受賞作）（時代小説）

芝露月町にある評判の鰻屋「十三川」の入り婿･爽太は、事件を事件にせずにすませてしまう一風変わった岡っ引であった。金に目のくらんだ男たちを手玉にとる醜女おしかが、結婚詐欺を繰り返す男に出会い･･･　心の機微をしみじみと描き出した、江戸情趣あふれる一作。（時代小説）

第164回直木賞受賞作〈誰の心にも淀みはある。でも、それが、人ってもんでね。〉江戸、千駄木町の一角は心町（うらまち）と呼ばれ、そこには「心淋し川（うらさびしがわ）」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた

川五太夫は父の代から寺社内奉行を務め、将来は年寄城代にもなると噂される切れ者だった。だが1人息子の荘太郎はうつけ者という風評があり縁談はなかなか纏まらなかった。奉公人のおみつは、静かに書を読む荘太郎の一面を知っていた･･･（時代小説）

なんて、きれいでおいしいんだろう。江戸の菓子に魅せられた小萩は、遠戚の日本橋の菓子屋で働き始める。二十一屋――通称「牡丹堂」は家族と職人二人で営む小さな見世だが、菓子の味は折り紙付きだ。

岡場所で賑わう根津権現門前町にある裏店、通称「ごんげん長屋」に住まうお勝は、女手一つで三人の子を育て、女だてらに質屋の番頭を勤める大年増。

注目の時代小説作家によるニューヒーロー、登場『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』の著者による、清冽なる時代小説

品川宿の老舗宿屋「紅屋」を営む吉次郎は、二年ぶりの長旅から、見知らぬ女童を連れ帰ってきた。吉次郎は、女童・おやすの類まれな嗅覚の才に気づき、「紅屋」のお勝手女中見習いとして引き取ることに──。

財布や煙草入れなど、身につける小物に刺繡と金銀の箔をあわせて模様を入れる、縫箔師の咲。両親を亡くし、弟妹の親代わりとなって一生懸命に腕を磨いてきた。

齢73歳にして、北海道開拓を志した医師・関寛斎。藩医師を経て、戊辰戦争における野戦病院での功績など、これまでの地位や名誉を捨ててまでも寛斎は北の大地を目指した。その彼を傍らで支え続けた妻のあい。

芝露月町にある評判の鰻屋「十三川」の入り婿･爽太は、事件を事件にせずにすませる一風変わった岡っ引であった。佐平次は、十五年前に大喧嘩して別れた女房にこれから会おうと江戸に戻ってきたのだが･･･　心の機微をしみじみと描き出した、江戸情趣あふれる一作。（時代小説）

咎なくして同心を辞め刀を捨てて、庶民を相手に小金を貸す損料屋になった喜八郎。