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淵沢小十郎は熊捕り名人であったがなめとこ山の熊たちからは好かれていた。小十郎が好んで自分たちを殺しているのではないことを熊たちは知っているのだ―

フィンセント・ファン・ゴッホ（1853 - 1890）の生涯を鋭く描いた 三好十郎の代表作戯曲『炎の人―ヴァン・ゴッホ小伝』。この名作戯曲を生んだ、作者のゴッホに対する思いが語られている。かつては画家を志していたという作者の絵画に対する思想『絵画について』同時収録。

大正11年(1922年) 初出。 アルセーヌ・ルパンは富豪・スパルミエント大佐の所有する綴れ錦を一枚だけ盗み出したが、警察の力により窃盗は失敗に終わった。ルパンは大佐に手紙を送る。『今度はきっと十二枚全部頂戴いたします。』―

昭和8年(1933年) 初出。北海道の炭坑王と呼ばれていた谷山家の養嗣子・秀麿は仮死状態だったところを新聞記者に助けられるも、記憶を失っており入院中の身であった。秀麿はある日、院長に退院を願い出る。

昭和46年(1971年)初出。津田君の下宿を訪ねた「余」は、恋人がインフルエンザを患っていることを何気なく話すと、同じ病で亡くなった親戚の奇妙な話を聞かされ、脅かされる。 夜遅く下宿を後にし帰路についた「余」に待っていたのは―

昭和3年(1928年) 初出。相良十吉は栗戸探偵に依頼をする。二十年前、無着陸世界一周飛行の途にのぼったまま行方不明となった松風号の最後を識りたいのだという。というのも、松風号に乗って死んだはずの―

安政五年九月。幕府の捕吏からご上人様を守るため、西郷吉之助（のちの隆盛）らと京都を脱出する道中。立ち寄った茶屋で、美しい女がご上人様の駕籠に近づいてくる。駕籠から出されたご上人様の手は、とても美しい手であった―

昭和7年(1932年) 初出。睦田老巡査は五十を過ぎているが、これぞという功績も無くまだ部長になり得ないでいた。だがある日、倉川男爵家で強盗事件が起き、老巡査の巡回時刻と犯行の推定時刻が一致してしまう―

1934年(昭和9年)初出。みにくい容姿のために嫌われ者となっていた鳥・よだか。生きることがつらくなったよだかは鷹に殺される前に遠い空の向こうへ旅立つ決意をする―

昭和21年(1946年) 初出。小説家・新吉は原稿を送るために大阪の中央郵便局に向かっていた。夜の清荒神駅で電車を待っていると、逆方面の電車からみすぼらしい姿の女が降りてきて、新吉に声をかける。「ここは荒神口でしょうか―」