『Ep.651 NTT「tsuzumi 2」正式提供──“30Bを1GPUで”が国産AIの現実解に(2025年10月23日配信)』のカバーアート

Ep.651 NTT「tsuzumi 2」正式提供──“30Bを1GPUで”が国産AIの現実解に(2025年10月23日配信)

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発表は10月20日、NTTが「tsuzumi 2」の提供開始を正式に告げるニュースリリースを公開しました。軽量ながら日本語の理解・指示遂行・安全性で“同サイズ帯トップクラス”をうたい、企業のAI導入で課題となる電力・コスト・セキュリティを同時に抑える“国産の現実解”を掲げます。なお、このリリース文自体もtsuzumi 2で生成した、と明記されています。


特徴は三つ。第一に日本語性能の底上げです。公開資料では、知識・解析・指示遂行・安全性の各指標で、同サイズ帯のモデル(例:Gemma-3 27Bなど)に匹敵し、より大きなフラッグシップ群と比べてもコストパフォーマンスに優れると整理。社内のニュース稿の推敲や契約書チェックなど、実務寄りの例で“効きどころ”を示しました。


第二に特化開発の効率化です。個社特化にはRAG、業界特化にはFine Tuningを軸に、財務ヘルプデスクのRAG評価や金融タスクのFT評価で高いスコアを確認。少ないチューニングデータでも性能が伸びやすい、と読み取れるグラフが並びます。


第三が“低コスト・高セキュア・国産”の維持です。モデル規模は30B。設計意図として「Only 1 GPU → On-premise」を掲げ、A100 40GB×1台(約500万円想定)で推論可能と説明。対照として、400B級や700B級の推論に必要なH100構成の概算を並べ、10〜20分の1程度のハードウェアコストで回せる目安を可視化しています。機微情報を手元で扱いたい日本企業の“オンプレ志向”と相性がよい訴求です。


導入の動きも同時に示されました。東京通信大学は学内データを学内に留める要件のもと、授業Q&Aや教材・試験作成支援、履修・進路相談のパーソナライズなどでtsuzumi 2を採用。さらにNTTドコモビジネスは富士フイルムビジネスイノベーションと連携し、契約書・提案書・画像などの“非構造化データ”を構造化してtsuzumi 2で活用する企業向けソリューション検討を開始するとしました。


安全性への配慮も強調されています。日本語の安全性比較では、バイアス・悪用・情報漏洩・誤情報・擬人化依存といった観点で主要モデルと比肩以上のスコアを示したとし、運用現場での“安心の作法”を押さえていることを示しました。


今後については、NTTグループ各社からのソリューション実装を順次推進し、サイバーセキュリティ応用や“AIコンステレーション(複数AIの連携)”の開発も進める方針。11月19日開幕の「NTT R&Dフォーラム2025(IOWN Quantum Leap)」では、tsuzumi 2を使った最新ソリューションを体験展示するとしています。


総じて、tsuzumi 2は“過度な巨大化に寄らず、現場の要件に合わせて強くする”という日本企業向けの実装哲学を明快にしたアップデートです。RAGとFTで現場文脈を素早く取り込み、30B×1GPUの運用前提でオンプレにも素直に置ける。国産かつ高セキュアという“調達要件”にも応えつつ、コストの目盛りが読みやすい。日本のDXで“まず動かすAI”の有力な選択肢が、また一つ整ってきました。

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