エピソード

  • #19 大阪中之島美術館「シュルレアリスム宣言100年 拡大するシュルレアリスム」展の詳細レポート。シュルレアリスムが日常やカルチャーに与えた影響を紐解く
    2025/12/25

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第19回の旅先は、大阪中之島美術館で開催中の「シュルレアリスム宣言100年 拡大するシュルレアリスム」展です。

    「シュルレアリスム」と聞くと、ダリの溶けた時計のような難解な芸術をイメージするかもしれません。しかし、この展覧会が描くのは、そうした芸術運動がいつの間にか僕たちの「日常」に入り込み、当たり前の景色を変えてしまったという、ちょっとミステリアスな歴史の物語です。

    100年前にパリで生まれたシュルレアリスムが、いかにして「写真」になり、「広告」で拡散され、最後は「ファッション」や「インテリア」となって僕たちの部屋までやってきたのか。 黒い箱のような美術館の中で目撃した「拡大」のプロセスにDeep Diveします。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・プロローグの衝撃: デュシャンの「帽子掛け」が見せた、実体よりもリアルな影の世界。

    ・絵画の裏側: マグリットが描いた、「レディメイドの花束」と「王様の美術館」。平凡なトレンチコート男の背中にある美しい秘密。

    ・写真の実験: マン・レイの「ねじとりんご」と、バイヤーが作った「セルフ・ポートレイト」。

    ・広告のアート化: ダリはどうやって大衆の心を掴んだのか? 「フランス国有鉄道」と「王道十二宮」のビジネスセンス。

    ・ファッションへの影響: スキャパレッリの「マッチ棒のドレス」が隠し持っていた、危険な遊び心。

    ・インテリアにおけるシュルレアリスム: オッペンハイムの「鳥の足のテーブル」。家具が生き物に見えるとき。

    続きを読む 一部表示
    34 分
  • #18 ローマ・ボルゲーゼ美術館。ベルニーニ彫刻の凄さの理由と、カラヴァッジョが描いた自画像の意味
    2025/12/22

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第18回の旅先は、イタリア・ローマにある「ボルゲーゼ美術館(Galleria Borghese)」です。

    緑豊かなボルゲーゼ公園の中に佇む、完全予約制の美の殿堂。 そこは、17世紀の枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼが、権力と欲望の限りを尽くして築き上げた、世界で最も密度の濃い個人コレクションでした。

    大理石とは思えない柔らかさで太ももに食い込む指、樹木へと変身する瞬間の少女。 天才ベルニーニが起こした彫刻の革命を徹底解剖。

    そして今回は、天才画家カラヴァッジョのエピソードを特に深掘りします。 殺人を犯し、逃亡生活を送っていた彼が、なぜ自分の生首を描いたのか? 絵の中に隠された「謙虚さが傲慢さを滅ぼす」というメッセージと、パトロンへの命乞い。 初期の自画像から晩年の絶筆まで、光と闇の画家の壮絶な人生と、作品に込められた切実な祈りに迫ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・ベルニーニの魔法:「プロセルピナの略奪」に見る、石が人肌に変わる瞬間と「アポロンとダフネ」の映像的表現。

    ・カノーヴァとパオリーナ:ナポレオンの妹が見せたスキャンダラスな自己プロデュースの秘密。

    ・カラヴァッジョの深層:初期の「病めるバッカス」から、晩年の「ゴリアテの首」へ。栄光と転落、そして贖罪の物語。

    ・コレクションの背景:盗んででも手に入れる。シピオーネ・ボルゲーゼの強欲が生んだ遺産と、芸術保護の効用。

    続きを読む 一部表示
    25 分
  • #17 草間彌生×ルイ・ヴィトン「INFINITY」展のレポートと作品解説。水玉に隠された恐怖と愛を読み解く
    2025/12/19

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第17回の旅先は、大阪・心斎橋の「エスパス・ルイ・ヴィトン大阪」で開催中の草間彌生個展『INFINITY』です。

    入場無料で世界最高峰のコレクションが観られるこの展覧会は、単なる映えスポットではありませんでした。

    彼女の代名詞である水玉の真の意味や、60年代NYでの壮絶な闘い、そして日本初公開となる最新作シリーズまでを徹底解説。なぜ彼女は90歳を超えてもなお、無限の網を描き続けるのか?その生存戦略としての創作活動に迫ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・エスパス・ルイ・ヴィトン大阪での展覧会概要と背景

    ・草間彌生さんの生い立ち

    ・感情を排した機械的な反復『無限の網(Infinity Nets)』の意味

    ・宇宙とつながる「自己消滅」の哲学を表現した『ドッツ』

    ・60年代の熱狂の背景にある『無題(足)』

    ・新作『毎日愛について祈っている』に見る草間彌生の詩の世界

    ・性への恐怖を克服すべく制作された『無限の鏡の間ーファルスの原野』

    続きを読む 一部表示
    22 分
  • #16 ナポリ国立考古学博物館。ファルネーゼコレクションの彫刻と、秘密の小部屋で観るエロチシズム
    2025/12/17

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第16回の旅先は、イタリア・ナポリにある「ナポリ国立考古学博物館(MANN)」です。

    ポンペイ遺跡から発掘された至宝が集まるこの場所は、想像以上に巨大で、最初はどこから見ればいいのか途方に暮れてしまうほどの迷宮でした。

    ミケランジェロも憧れた巨大彫刻「ファルネーゼのヘラクレス」が見せる意外な弱さと、背中で語る物語。 そして、あるべき場所にいないことを知りながら会いに行った「ファルネーゼのアトラス」。彼が大阪万博へ出張中である今、もし彼がそこにいたら何を見るべきか? その鑑賞ポイントを解説します。 さらに、床を彩った超高解像度の「モザイク画」や、ポンペイの娼館(ルパナーレ)とも深くリンクする「秘密の小部屋」の真実まで。

    遺跡と博物館、そしてイタリアと日本。時空を超えて繋がるアートの旅を、たっぷりと深掘りして語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・巨大迷宮MANN:あまりに広い館内と、膨大なコレクションとどう向き合うか。

    ・ファルネーゼのヘラクレス:最強の英雄はなぜうつむいているのか? 背中に隠された秘密と、筋肉が語る疲労。

    ・ファルネーゼ家とは:なぜローマの至宝がナポリに? 歴史的な背景を解説。

    ・不在のアトラス:ナポリにあるはずの巨像がいない。もしあったら見るべき「天球の星図」。

    ・モザイク・コレクション:2000年前のピクセルアート。石だからこそ残った鮮やかな色彩と、床にアートを敷く贅沢。

    ・秘密の小部屋とルパナーレ:ポンペイ遺跡とナポリ考古学博物館を繋ぐ視点。なぜ性的なアートが好まれたのか?

    続きを読む 一部表示
    22 分
  • #15 ポンペイ遺跡。古代のSNS、欲望を満たすためのシステム、美しくも恐ろしいポンペイレッドの秘密
    2025/12/15

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第15回の旅先は、イタリア・ナポリ近郊の「ポンペイ遺跡(Parco Archeologico di Pompei)」です。

    紀元79年、ヴェスヴィオ火山の噴火によって一瞬にして埋没した古代ローマの都市。 そこで待っていたのは、悲劇の爪痕だけではありませんでした。

    2000年前の人々が立ち寄った「ファストフード屋」、壁に残された「古代のSNS(落書き)」、そして欲望をシステム化した「ルパナーレ(娼館)」を、現代のアート視点で紐解きます。 さらに、亡くなった人々の「空白」を型取った「石膏のキャスト」が突きつける、圧倒的なリアリティとは。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・都市のUXデザイン:歩行者を守る「飛び石」と、馬車の轍が語る交通事情。

    ・壁の落書きはツイッター?:笑えてしまうぐらい正直な、壁に刻まれた古代の口コミと本音。

    ・ルパナーレの衝撃:石のベッドと壁画のメニュー。言葉が通じない客のためのサインシステム。

    ・秘儀荘の「赤」:2000年経っても色褪せない「ポンペイ・レッド」の美しさと、描かれた秘密の儀式。

    ・空白の彫刻:石膏のキャストはなぜ胸を打つのか? 空白を可視化する考古学のパラドックス。

    続きを読む 一部表示
    22 分
  • #14 神戸・大ゴッホ展レポート。名画「夜のカフェテラス」はなぜ生まれたか? オランダ屈指のコレクションで紐解くゴッホの人生と、展覧会の楽しみ方
    2025/12/12

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第14回の旅先は、神戸市立博物館で開催中の「大ゴッホ展」です。

    オランダの「クレラー・ミュラー美術館」から、ゴッホ作品50点以上が来日する貴重な機会。今回の展覧会の面白さは、有名な傑作だけでなく、そこに至るまでの実験や失敗も含めた成長プロセスが見られることです。

    なぜ初期の絵はあんなに暗いのか?パリで受けた衝撃とは?そして、どうやって「夜のカフェテラス」の鮮やかな色彩に辿り着いたのか?

    注目の作品をピックアップしながら解説します。神戸だけでなく、今後は東京でも開催されるので、これから行く際の予習や鑑賞後の振り返りとしてお楽しみください。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・ゴッホの名作が日本に集結:なぜ今、これだけの傑作が見られるのか? ヘレーネ・クレラー=ミュラーの情熱とコレクション。

    ・オランダ時代の苦労:暗い作風の理由と、孤独と愛への渇望。

    ・パリでの色彩革命:「レストランの室内」の荒い点描と、「石膏像のある静物」による色彩実験。

    ・「夜のカフェテラス」の背景:黒を使わない夜、青と黄色の対比。耳切り事件の3ヶ月前に描かれたアルルの街。

    続きを読む 一部表示
    32 分
  • #13 大阪万博・壊れゆく大屋根リングの背景と意味、訪問時の思い出
    2025/12/11

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 第13回のテーマは、閉幕後に解体が始まった大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」です。

    ニュースで流れる解体映像を見て、皆さんは何を感じましたか? 開催前は無駄遣いとも言われた巨大な木造建築。 しかし、実際に夢洲に降り立ち、強烈な木の香りに包まれながらあのリングの下を歩いた体験を考察しました。

    なぜ、デジタル全盛の時代に「木」だったのか? なぜ、バラバラなパビリオンを「円」で囲む必要があったのか?

    今回は、足が棒になるほど会場を歩き回った一人の来場者としての実体験をベースに、リングの建築美、ヨーロッパや中東など各国のパビリオン、そして大人気のミャクミャクたちが作り出していた熱狂について語ります。


    【今回のハイライト:こんなことがわかります】

    ・原始の森の匂い:ハイテクの祭典を包んでいた、木の香りと伝統工法「貫(ぬき)」。

    ・円環の中のパビリオン:異彩を放つオランダ館、砂漠の風を感じる中東館、アート性の高いフランス館。リングが肯定した多様性。

    ・ミャクミャクとこみゃく:幾何学的なリングへの対比として増殖した、有機的な生命。

    ・解体は終わりではない:一部保存と再利用。循環する建築「大屋根リング」が完成する瞬間。

    続きを読む 一部表示
    26 分
  • #12 ヴェネチアの裏側へ。フォンダシオン・プラダ「Diagrams」で見た、沈む街の記録と日本の耐震図
    2025/12/10

    旅先の美術館・アートの楽しみ方をお送りするArTrip Studio。 今回の旅先は、イタリア・ヴェネチアの「フォンダシオン・プラダ(Fondazione Prada / Ca' Corner della Regina)」です。

    すでに会期は終了してしまいましたが、記憶に残しておきたい企画展『Diagrams(ダイアグラム)』について語ります。

    複雑な路地を歩いて辿り着いた、18世紀の宮殿。 そこで展示されていたのは、世界を理解しようとする「図」や「グラフ」たちでした。

    窓の外に海が見える場所だからこそ刺さる気候変動データのリアリティ。 そして、異国の地でまさかの再会を果たした日本の耐震設計図。 水と戦う街で見る、地震と戦う国の図面。 マクロな建築からミクロな人体まで、見えない構造を可視化しようとする人間の知的な営みについて。

    古びたバロック宮殿での思考の旅をお届けします。


    【今回のハイライト】

    ・カ・コルネル・デッラ・レジーナ:徒歩で向かう迷宮の旅。歴史ある宮殿と現代アートの対比。

    ・切実なダイアグラム:窓の外はすぐ海。沈みゆく街で見る気候変動データが突きつける未来。

    ・日本との意外な接点:イタリアの宮殿になぜ耐震設計図が? 自然に抗う人間の生存戦略としての共通点。

    ・情報の迷宮:すべてを理解できなくてもいい。思考のプロセスを追体験する贅沢さ。

    続きを読む 一部表示
    13 分