建築を教える先生が、唐辛子を育てています。舞台は、瀬戸内海に浮かぶ本島・笠島地区。 塩飽水軍の本拠地として栄えた本島の北東部に位置する笠島地区は、天然の良港を持ち、三方を丘陵に囲まれた立地を生かし、中世において城が築かれた城下町的な要素を持つ集落。中でも塩飽大工の技が随所に見られる美しい街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。(昨年、選定40周年を迎えました。) 四国職業能力開発大学校 住居環境科 准教授の村井花子先生は、4年前から学生たちと建物の調査で笠島地区に通うなか様々な行事にも関わるように。そこで出会ったのが、NPO本島町笠島まち並保存協力会会長の三宅邦夫さんです。笠島地区の活性化に奔走する三宅さんが数ある活動のひとつとして続けていたのが、香川県の在来種で主に塩飽諸島で栽培されてきた唐辛子・香川本鷹でした。 三宅さんは熱い想いを持って栽培をされていましたが、担い手不足などに直面し、ある地域のシンポジウムで「もうこれ以上は無理!」と声を上げます。それを聞いた村井先生のご友人が「じゃあ、私たちがその仕事を引き受けてやっていこう!」と言い出したことから、このプロジェクトがスタート!「花子と仲間たち」が誕生しました。 とんとん拍子に話は進み、昨年末には三宅さんから村井先生たちへ道具や技術を引き継ぐ「譲渡式(のようなもの)」が行われました。そこでは、譲渡した物リストだけでなく、「向こう3年は頑張って出荷してね」という約束が書かれた、三宅さんの本気度が詰まった契約書のようなものまで用意されていたそうです。さらに、三宅さんの「指南書(本鷹日記)」には、牛糞を混ぜるタイミングや土の育て方が細かく記録されていました。今まで野菜は食べる専門で全く育てたことがなかった村井先生にとって、この指南書が大きな心の支えに。 引き継いだ三宅さん手作りの温室を使い、今年2月に自宅のカーポートで種まきをしました。寒かったのでヒーターを入れて大事にしていたものの、2週間経ってもまったく芽が出ず。「もう腐っとんちゃう?」と言葉を浴びせかけた次の日から、「やばい!このままだと俺たち捨てられるのでは?!」と焦ったのか、ポコポコポコポコと芽が出始めたそう(笑)村井先生は「声かけ」の大切さを実感したと言います。香川本鷹栽培のお手伝いをされていた三宅さんの弟さんからも「1本1本に『お前大丈夫か』『水いるか』と愛を持って声をかけるんだ」と教わったそうで、毎日、声をかけながらスクスクと大切に育てています。 そして、村井先生にとって頼りになる存在がもうお一方。同じ丸亀市・塩飽諸島の手島で香川本鷹を栽培している「手島香辛庵」の高橋周平さんです。(2023年9月24日放送)実は、手島の高橋さんと三宅さんの本鷹づくりの師匠は同じ方、島で唯一の生産農家だった故・高田正明さんなのです。高橋さんは、もともと美術大学を卒業されたアーティスト。本鷹の育て方にも独特の視点があり、「目で見ること」や「形の美しさ」をとても大切にされていて「ちょっとでもバランスが悪い実や株があれば、そこには絶対に何か悪いことが起こっている」と仰っていたそう。これを聞いた村井先生は、「私からは絶対に出ない言葉、最高にかっこいい!私にとってはもう師匠みたいなもの」と語るほど、大きな学びを与えてくれる存在になっています。塩飽諸島の香川本鷹ネットワークの広がりに期待したいですね! 村井先生が本島・笠島地区に出入りするようになってから今年で4年目。最初は、重要伝統的建造物群保存地区である笠島地区の建物調査や、学生たちの課外活動として島に関わり始めました。「建物が残るだけではテーマパークのようになってしまう。やっぱりそこに住む人がいて、暮らしがあってこそ町並みが生きる」という思いから、学生たちと空き家活用やお正月のしめ飾りづくり、餅つきなどのイベントを企画してきました。 連れてこられた学生たちは最初、「コンビニがない!」「自販機がない!」と文句ばかり言っていたそうが、島の人々と触...
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