エピソード

  • 私の父と母 著者:有島 武郎 読み手:宮崎 文子 時間:12分38秒
    2025/10/10

    私の父と母

    著者:有島 武郎 読み手:宮崎 文子 時間:12分38秒

     私の家は代々薩摩の国に住んでいたので、父は他の血を混えない純粋の薩摩人と言ってよい。私の眼から見ると、父の性格は非常に真正直な、また細心なある意味の執拗な性質をもっていた。そして外面的にはずいぶん冷淡に見える場合がないではなかったが、内部には恐ろしい熱情をもった男であった。この点は純粋の九州人に独得な所である。一時にある事に自分の注意を集中した場合に、ほとんど寝食を忘れてしまう。国事にでもあるいは自分の仕事にでも熱中すると、人と話をしていながら、相手の言うことが聞き取れないほど他を顧みないので、狂人のような状態に陥ったことは、私の知っているだけでも、少なくとも三度はあった・・・

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    13 分
  • ムジナモ発見物語り 著者:牧野 富太郎 読み手:福井 一恵 時間:9分26秒
    2025/10/09

    ムジナモ発見物語り

    著者:牧野 富太郎 読み手:福井 一恵 時間:9分26秒

     じつとしていて静かに往時を追懐してみると、次から次に、あの事この事と、いろいろ過去の事件が思い出される、何を言え九十余年の長い歳月のことであれば、そうあるべきである筈なのである。

     しかし、ふつうのありふれた事柄は、たとえ実践してきた自身のみには、多少の趣きはあるとしても、他人には別にさほどの興味も与えまいから、そこで私はその思い出すものが、広く中外の学界に対して、いささか反響のあつたことについて回顧し、少しくその思い出を書いて見ようと思う。それは、時々思い出しては忘れもしないムジナモなる世界的珍奇な水草を、わが日本で最初に私が発見した物語りである・・・

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    9 分
  • 「の」の字の世界 著者:佐藤 春夫 読み手:池戸 美香 時間:4分44秒
    2025/10/08

    「の」の字の世界

    著者:佐藤 春夫 読み手:池戸 美香 時間:4分44秒

     うたちゃんは、三人兄弟の末で、来年からは幼稚園へ行こうというのですが、早くから、自分ではお姉ちゃん気どりで「えいちゃん」「えいちゃん」と、自分をよんでいます。「えいちゃん」とは、ねえちゃんのかたことなのです。

     うたちゃんは、「えいちゃん」だけに、二つ上のなき虫の兄がなくと、すぐ手ぬぐいを持って行って、なみだをふいてやったり、頭をさすったり、まことによく気のつく、りこうな子なのです。それだのに、どうしても字をおぼえません。なき虫の兄さんの方は、うたちゃんの年ごろには、だれも少しも教えないのに、野球かるたで、平がなはすっかり読み書きをおぼえ、それからは、すもうの名まえといっしょに、その本字までたくさんおぼえていたものです。兄弟でも、これほどちがうものか・・・

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    5 分
  • ある男の死 著者:岡本 かの子 読み手:西村 文江 時間:4分28秒
    2025/10/07

    ある男の死

    著者:岡本 かの子 読み手:西村 文江 時間:4分28秒

     A! 女学校では、当時有名な話でありました。それは

    『二時間目事件。』

     といふのでした。

     新学期がはじまつてから二ヶ月程後のある日、朝から二時間目の歴史の時間に起つたこと。と書きたてるほど大げさなことでもないのに、それをそれほど有名にしたのは、まつたく、その男の――つまり、その歴史の時間での先生である溝口文学士の性格によるのでした。

     やんちや盛りの、何かことあれかしと、いつも何事かまちかまへて居るやうな女学生の――それがまして、四年生頃の十六七を揃へて何処かにヱロチシズムなおもくるしさを交へながらのやんちやは、どうもたまらなく或る、不快と快感をごつちやに、若い男の先生などに与へると見えまして、その溝口先生も四月の新学期に始めて、その教室に現はれた時から、何となくおびえてでも居るやうに常に度の強い眼鏡の奥の眼ぶちを赤くふるはして居るやうに見えて居ました・・・


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    4 分
  • 待つ 著者:太宰 治 読み手:三田 朱美 時間:7分25秒
    2025/10/06

    待つ

    著者:太宰 治 読み手:三田 朱美 時間:7分25秒

     省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。誰とも、わからぬ人を迎えに。

     市場で買い物をして、その帰りには、かならず駅に立ち寄って駅の冷いベンチに腰をおろし、買い物籠を膝に乗せ、ぼんやり改札口を見ているのです。上り下 りの電車がホームに到着するごとに、たくさんの人が電車の戸口から吐き出され、どやどや改札口にやって来て、一様に怒っているような顔をして、パスを出し たり、切符を手渡したり、それから、そそくさと脇目も振らず歩いて、私の坐っているベンチの前を通り駅前の広場に出て、そうして思い思いの方向に散って行 く・・・


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  • 金沢の思ひ出  著者:中原 中也 読み手:松岡 初子 時間:11分14秒
    2025/10/05

    金沢の思ひ出

    著者:中原 中也 読み手:松岡 初子 時間:11分14秒

     私が金沢にゐたのは大正元年の末から大正三年の春迄である。住んでゐたのは野田寺町の照月寺(字は違つてゐるかも知れない)の真ン前、犀川に臨む庭に、大きい松の樹のある家であつた。その松の樹には、今は亡き弟と或時叱られて吊り下げられたことがある。幹は太く、枝は大変よく拡がつてゐたが、丈は高くない松だつた。昭和七年の夏金沢を訪れた時、その松が見たかつたが、今は見知らぬ人が借りてゐる家の庭に這入つてゆくわけにも行かなかつたが、家は前面から見た限り、昔のまゝであつた。隣りはタカヂアスターゼの兄さんか弟の家で、子供が八人くらゐゐて、ひどく賑かだつた・・・




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    11 分
  • お時儀 著者:芥川 龍之介 読み手:水野 久美子 時間:17分40秒
    2025/10/04

    お時儀

    著者:芥川 龍之介 読み手:水野 久美子 時間:17分40秒

     保吉は三十になったばかりである。その上あらゆる売文業者のように、目まぐるしい生活を営んでいる。だから「明日」は考えても「昨日」は滅多に考えない。しかし往来を歩いていたり、原稿用紙に向っていたり、電車に乗っていたりする間にふと過去の一情景を鮮かに思い浮べることがある。それは従来の経験によると、たいてい嗅覚の刺戟から聯想を生ずる結果らしい。そのまた嗅覚の刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂ばかりである。たとえば汽車の煤煙の匂は何人も嗅ぎたいと思うはずはない。けれどもあるお嬢さんの記憶、・・・



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  • 小さき者へ 著者:有島 武郎 読み手:福井 慎二 時間:43分34秒
    2025/10/03

    小さき者へ

    著者:有島 武郎 読み手:福井 慎二 時間:43分34秒

     お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、――その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが――父の書き残したものを繰拡げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの眼の前に現われ出るだろう。時はどんどん移って行く。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映るか、それは想像も出来ない事だ。恐らく私が今ここで、過ぎ去ろうとする時代を嗤い憐れんでいるように、お前たちも私の古臭い心持を嗤い憐れむのかも知れない。私はお前たちの為めにそうあらんことを祈っている・・・



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    44 分