エピソード

  • 【青空朗読】老境 著者:河井 酔茗 読み手:加納 恵美子 時間:1分31秒
    2026/09/06

    老境

    著者:河井 酔茗 読み手:加納 恵美子 時間:1分31秒

    吾老いぬれど

    仙家に入らず

    茶烟軽く

    紅塵の裡に住む


    柴門を守るは

    吾家の月

    竹窓に吹くは

    隣家の風


    人来れば

    迎へて会ふ

    人去れば

    吾座にもどる


    眠り足りて

    夢なく

    起きて

    倦むことなし


    昼には

    昼に書くことあり

    夜には

    夜に語ることあり


    世にあづけたる

    わが寿は

    時来らば

    世に返さむ・・・

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    青空朗読はインターネット上の図書館「青空文庫」の作品を朗読するプロのアナウンサーによる社会貢献活動としてスタートしました。近年は、朗読を学ぶ一般の方々からも作品を提供していただいています。2016年5月に一般社団法人となりました。

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    2 分
  • 【青空朗読】雪に埋れた話 著者:土田 耕平 読み手:池戸 美香 時間:6分4秒
    2026/09/05

    雪に埋れた話

    著者:土田 耕平 読み手:池戸 美香 時間:6分4秒

     お秋さんは、山へ柴刈に行つたかへりに、雪に降りこめられました。こん/\と止めどなく降つてくる雪は、膝を埋め、腰を埋め、胸を埋める深さにまで積つてきました。お秋さんは、大きな柴の束を背負つたまゝ、立ちすくんでしまひました。

    「もう助かりやうはない。」

    と思つて、目をつぶつて静かにしてゐますと、だん/\気が遠くなりました・・・

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    6 分
  • 【青空朗読】檸檬 著者:梶井 基次郎 読み手:藤田 利和 時間:19分39秒
    2026/09/04

    檸檬

    著者:梶井 基次郎 読み手:藤田 利和 時間:19分39秒

     えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。焦躁と言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔があるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。これはちょっといけなかった。結果した肺尖カタルや神経衰弱がいけないのではない。また背を焼くような借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱がならなくなった。蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、最初の二三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。何かが私を居堪らずさせるのだ。それで始終私は街から街を浮浪し続けていた・・・

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    20 分
  • 【青空朗読】友人 著者:上村 松園 読み手:水野 礼子 時間:3分4秒
    2026/09/03

    友人

    著者:上村 松園 読み手:水野 礼子 時間:3分4秒

     私にはこれという友人がなく、つきあいらしい交際もしたことがない。

     昔から独りぼっちといった感じである。

     女の人で当時絵を進んでやるという人もほとんどと申してよいくらい少なく、たまたまあったところで自分よりも歳下の女性と話し合う気もおこらず、また男の方だと、画学校や絵画の集会などではとにかくとして、親しく交際するということは思いも寄らなかったものである。だから絵の方でもまあ、独りぼっちの独り研究といった形であった・・・

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    3 分
  • 【青空朗読】烈婦 著者:高田 保 読み手:宮澤 賢吉 時間:5分2秒
    2026/09/02

    烈婦

    著者:高田 保 読み手:宮澤 賢吉 時間:5分2秒

     「世界情勢吟」と題して川柳一句をお取次ぎする。


      国境を知らぬ草の実こぼれ合い


     なんと立派なものではないか。ピリッとしたものが十七字の中に結晶している。ところでこれがなんと、八十三歳のお婆さんのお作なのだ、驚いていただきたい。

     井上信子、とだけではわかるまい。が井上剣花坊の未亡人だといったら、なるほどと合点なさるだろう。「婦人朝日」誌上で紹介されていたのだが、こぼれ合う草の実こそは真実の人間である。真実の人間同士の間には国境などというあざといものはありゃしない・・・

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    5 分
  • 【青空朗読】雪だるま 著者:小川 未明 読み手:中田 真由美 時間:8分12秒
    2026/09/01

    雪だるま

    著者:小川 未明 読み手:中田 真由美 時間:8分12秒

     いいお天気でありました。もはや、野にも山にも、雪が一面に真っ白くつもってかがやいています。ちょうど、その日は学校が休みでありましたから、次郎は、家の外に出て、となりの勇吉といっしょになって、遊んでいました。

    「大きな、雪だるまを一つつくろうね。」

     二人は、こういって、いっしょうけんめいに雪を一処にあつめて、雪だるまをつくりはじめました。

     そこは、人通りのない、家の前の圃の中でありました。梅の木も、かきの木も、すでに二、三尺も根もとのほうは雪にうずもれていました。そして、わらぐつをはきさえすれば、子供たちは圃の上を自由に、どこへでもゆくことができたのであります。

     頭の上の空は、青々として、ちょうどガラスをふいたようにさえていました・・・

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    8 分
  • 【青空朗読】列車 著者:太宰 治 読み手:凧野 頓太 時間:13分14秒
    2026/08/31

    列車

    著者:太宰 治 読み手:凧野 頓太 時間:13分14秒

     一九二五年に梅鉢工場という所でこしらえられたC五一型のその機関車は、同じ工場で同じころ製作された三等客車三輛と、食堂車、二等客車、二等寝台車、各々一輛ずつと、ほかに郵便やら荷物やらの貨車三輛と、都合九つの箱に、ざっと二百名からの旅客と十万を越える通信とそれにまつわる幾多の胸痛む物語とを載せ、雨の日も風の日も午後の二時半になれば、ピストンをはためかせて上野から青森へ向けて走った。時に依って万歳の叫喚で送られたり、手巾で名残を惜まれたり、または嗚咽でもって不吉な餞を受けるのである。列車番号は一〇三・・・

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    14 分
  • 【青空朗読】雪 著者:三好 達治 読み手:詩真 時間:52秒
    2026/08/30

    著者:三好 達治 読み手:詩真 時間:52秒

    十一月の夜をこめて 雪はふる 雪はふる

    黄色なランプの灯の洩れる 私の窗にたづね寄る 雪の子供ら

    小さな手が玻璃戸を敲く 玻璃戸を敲く 敲く さうしてそこに

    息絶える 私は聽く 彼らの歌の 靜謐 靜謐 靜謐

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