エピソード

  • 【青空朗読】王さまの感心された話 著者:小川 未明 読み手:池戸 美香 時間:12分58秒
    2026/10/30

    王さまの感心された話

    著者:小川 未明 読み手:池戸 美香 時間:12分58秒

     この世界が造られましたときに、三人の美しい天使がありました。いちばん上の姉さんは、やさしい、さびしい口数の少ない方で、そのつぎの妹は、まことに麗しい、目の大きいぱっちりとした方で、末の弟は快活な正直な少年でありました。

     みんなは、それぞれこの世界が造られるはじめてのことでありますので、なにかに姿を変えなければなりませんでした。

    「よく考えて、自分のなりたいと思うものになるがいい。けれど、一度姿を変えてしまったなら、永久に、ふたたびもとのような天使にはなれないのだから、よく考えてなるがいい。」と、神さまは申されました。

     三人の姉と妹と弟は、それぞれ、なにになったらいいだろうと考えました・・・


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    13 分
  • 【青空朗読】メリイクリスマス 著者:太宰 治 読み手:成 文佳 時間:27分42秒
    2026/10/29

    メリイクリスマス

    著者:太宰 治 読み手:成 文佳 時間:27分42秒

     東京は、哀しい活気を呈していた、とさいしょの書き出しの一行に書きしるすというような事になるのではあるまいか、と思って東京に舞い戻って来たのに、私の眼には、何の事も無い相変らずの「東京生活」のごとくに映った。

     私はそれまで一年三箇月間、津軽の生家で暮し、ことしの十一月の中旬に妻子を引き連れてまた東京に移住して来たのであるが、来て見ると、ほとんどまるで二三週間の小旅行から帰って来たみたいの気持がした。

    「久し振りの東京は、よくも無いし、悪くも無いし、この都会の性格は何も変って居りません。もちろん形而下の変化はありますけれども、形而上の気質に於いて、この都会は相変らずです・・・


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    28 分
  • 【青空朗読】王さまと靴屋 著者:新美 南吉 読み手:網野 嘉代子 時間:4分42秒
    2026/10/28

    王さまと靴屋

    著者:新美 南吉 読み手:網野 嘉代子 時間:4分42秒

     ある日、王さまはこじきのようなようすをして、ひとりで町へやってゆきました。

     町には小さな靴屋がいっけんあって、おじいさんがせっせと靴をつくっておりました。

     王さまは靴屋の店にはいって、

    「これこれ、じいや、そのほうはなんという名まえか。」

    とたずねました。

     靴屋のじいさんは、そのかたが王さまであるとは知りませんでしたので、

    「ひとにものをきくなら、もっとていねいにいうものだよ。」

    と、つっけんどんにいって、とんとんと仕事をしていました・・・


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    5 分
  • 【青空朗読】珍しい酒もり 著者:小川 未明 読み手:菅野 秀之 時間:18分29秒
    2026/10/27

    珍しい酒もり

    著者:小川 未明 読み手:菅野 秀之 時間:18分29秒

     北の国の王さまは、なにか目をたのしませ、心を喜ばせるような、おもしろいことはないものかと思っていられました。毎日、毎日、同じような、単調な景色を見ることに怠屈されたのであります。

     このとき、南の国へ使いにいった、家来が帰ってまいりました。なにかおもしろい話を持ってこないかと、さっそく、その家来にご面会になりました。

    「ご苦労だった。無事にいってこられて、なにより、けっこうのことだ。南の国王は、達者でいらせられたか……。」と、おたずねになりました。

     家来は、長い旅をしたので、顔の色は、日に焼けて、頭髪は、雨や、風に、たびたび遇うたことを思わせるように、伸びて乱れていました・・・


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    18 分
  • 【青空朗読】鴎外先生 著者:永井 荷風 読み手:小林 きく江 時間:6分22秒
    2026/10/26

    鴎外先生

    著者:永井 荷風 読み手:小林 きく江 時間:6分22秒

     凡てのいまはしい物の形をあからさまに照す日の光が、次第に薄らいで、色と響と匂のみ浮立つ黄昏の來るのを待つて、先生は「社會」と云ふ窮屈な室を出で、「科學」と云ふ鐵の門を後にして、決して躓いた事のない極めて規則正しい、寛濶な歩調で、獨り靜に藝術の庭を散歩する。藝術の庭は實に廣く、薄暗く、隅々までは能く見えない。いろ/\な花がさいて居るけれど、まだ誰も見た事のない花が、どれだけ暗い影の中に咲いて居るか分らない・・・


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    6 分
  • 【青空朗読】めくらぶどうと虹 著者:宮沢 賢治 読み手:齋藤 こまり 時間:9分51秒
    2026/10/25

    めくらぶどうと虹

    著者:宮沢 賢治 読み手:齋藤 こまり 時間:9分51秒

     城あとのおおばこの実は結び、赤つめ草の花は枯れて焦茶色になり、畑の粟は刈られました。

     「刈られたぞ」と言いながら一ぺんちょっと顔を出した野鼠がまた急いで穴へひっこみました。

     崖やほりには、まばゆい銀のすすきの穂が、いちめん風に波立っています。

     その城あとのまん中に、小さな四っ角山があって、上のやぶには、めくらぶどうの実が虹のように熟れていました。

     さて、かすかなかすかな日照り雨が降りましたので、草はきらきら光り、向こうの山は暗くなりました。

     そのかすかなかすかな日照り雨が霽れましたので、草はきらきら光り、向こうの山は明るくなって、たいへんまぶしそうに笑っています・・・


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    10 分
  • 【青空朗読】狼森と笊森、盗森 著者:宮沢 賢治 読み手:駒形 ゆう 時間:24分17秒
    2026/10/24

    狼森と笊森、盗森

    著者:宮沢 賢治 読み手:駒形 ゆう 時間:24分17秒

     小岩井農場の北に、黒い松の森が四つあります。いちばん南が狼森で、その次が笊森、次は黒坂森、北のはずれは盗森です。

     この森がいつごろどうしてできたのか、どうしてこんな奇体な名前がついたのか、それをいちばんはじめから、すっかり知っているものは、おれ一人だと黒坂森のまんなかの巨きな巌が、ある日、威張ってこのおはなしをわたくしに聞かせました。

     ずうっと昔、岩手山が、何べんも噴火しました。その灰でそこらはすっかり埋まりました。このまっ黒な巨きな巌も、やっぱり山からはね飛ばされて、今のところに落ちて来たのだそうです・・・


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    24 分
  • 【青空朗読】眼鏡 著者:織田 作之助 読み手:堀口 直子 時間:5分59秒
    2026/10/23

    眼鏡

    著者:織田 作之助 読み手:堀口 直子 時間:5分59秒

     三年生になった途端に、道子は近視になった。

    「明日から、眼鏡を掛けなさい。うっちゃって置くと、だんだんきつくなりますよ」

     体格検査の時間にそう言われた時、道子はぽうっと赧くなった。なんだか胸がどきどきして、急になよなよと友達の肩に寄りかかって、

    「うっちゃって置くと、ひどくなるんですって」

     胸を病んでいると宣告されたような不安な顔をわざとして見せたが、そのくせちっとも心配なぞしていなかった。むしろいそいそとした気持だった。

     その晩、道子は鏡台の傍をはなれなかった。掛けてははずし、はずしては掛け、しまいに耳の附根が痛くなった。

     ――風邪を引いて、首にガーゼを巻いた時めたいに[#「めたいに」はママ]、明日はしょんぼりうなだれて学校へ行こうかしら。そしたら、みんな寄って慰めてくれるわ・・・


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    6 分