エピソード

  • あのころ -幼ものがたり- 著者:上村 松園 読み手:松岡 初子 時間:18分17秒
    2025/08/03

    あのころ -幼ものがたり-著者:上村 松園 読み手:松岡 初子 時間:18分17秒

       父

     私が生まれたのは明治八年四月二十三日ですが、そのときには、もう父はこの世にいられなかった。
     私は母の胎内にあって、父を見送っていたのであります。
    「写真を撮ると寿命がない」
     と言われていた時代であったので、父の面影を伝えるものは何ひとつとてない。しかし私は父にとても似ていたそうで、母はよく父のことを語るとき、
    「あんたとそっくりの顔やった」
     と言われたものです。それでとき折り父のことを憶うとき、私は自分の顔を鏡に映してみるのであります。
    「父はこのような顔をしていなさったのであろうか」
     そう呟くために・・・

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    18 分
  • 瓜子姫子 著者:楠山 正雄 読み手:福井 一恵 時間:10分31秒
    2025/08/02

    瓜子姫子著者:楠山 正雄 読み手:福井 一恵 時間:10分31秒

       一

     むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがありました。ある日おじいさんは山へしば刈りに行きました。おばあさんは川へ 洗濯に行きました。おばあさんが川でぼちゃぼちゃ洗濯をしていますと、向こうから大きな瓜が一つ、ぽっかり、ぽっかり、流れて来ました。おばあさんはそれ を見て、
    「おやおや、まあ。めずらしい大きな瓜だこと、さぞおいしいでしょう。うちへ持って帰って、おじいさんと二人で食べましょう。」
     といいいい、つえの先で瓜をかき寄せて、拾い上げて、うちへ持って帰りました。
     夕方になると、おじいさんはいつものとおり、しばをしょって山から帰って来ました・・・

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    11 分
  • 初往診 著者:小酒井 不木 読み手:二宮 正博 時間:7分6秒
    2025/08/01

    初往診

    著者:小酒井 不木 

    読み手:二宮 正博 時間:7分6秒

     先刻から彼は仕事が手につかなかった。一時間ばかり前に、往診から戻って来た彼は、人力車を降りるなり、逃げ込むように、玄関の隣りにある診察室へ入ると、その儘室内をあちこち歩いて深い物思いに沈むのであった。
     彼の胸はいま、立っても居ても居られないような遣瀬ない気持で一ぱいであった。いつもは彼を慰さめてくれる庭先の花までが、彼を嘲って居るかのように思われた。眼に見ゆるもの、耳に聞くものが彼を苛立たせた。生憎、細君が留守であったので、憂を別つべき相手はなく、時々門の方をおずおず眺めては、今にも誰かが、息せき切って馳せ込んで来はしないかと心配するのであった・・・

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    7 分
  • おもちゃの蝙蝠 著者:佐藤 春夫 読み手:西村 文江 時間:5分36秒
    2025/07/31

    おもちゃの蝙蝠

    著者:佐藤 春夫 

    読み手:西村 文江 時間:5分36秒

     あるところに一匹のコーモリがいた。それはオモチャで、ボール紙を切り抜いてその上に紫いろのアートペーパーがはりつけてあった。そして小さなゼンマイ仕掛でバタバタと飛ぶように出来ていた。
     ところがある日、このコーモリがどうしたのか、それをこしらえた職人の店へ帰って来た。それは街に青い瓦斯燈がまたたき出した頃で、職人がその一日の仕事を終えてその木の馬や鳥や、それからそのコーモリの弟である沢山のコーモリなどをかたづけてから、煙草に火をつけて一ぷく吸っている時であった。その時、職人はむこうの角の方から地面とすれすれに鳥のようなものがヒラヒラとこちらへ飛んで来るのを見た。
     しかし職人はすぐそれが自分のこしらえたコーモリであるということに気がついた・・・

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    6 分
  • 「春」 著者:山村 暮鳥 読み手:藤原 淳子 時間:38秒
    2025/07/30

    「春」

    著者:山村 暮鳥 

    読み手:藤原 淳子 

    時間:38秒


    のろいな
    のろいな
    なのはなの
    はたけのなかをゆく汽車は
    ひら
    ひら
    ひいら
    あとからその汽車
    追つかける蝶々

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