エピソード

  • 家霊  著者:岡本 かの子 読み手:松岡 初子 時間:37分9秒
    2025/12/16

    家霊

    著者:岡本 かの子 読み手:松岡 初子 時間:37分9秒

     山の手の高台で電車の交叉点になっている十字路がある。十字路の間からまた一筋細く岐れ出て下町への谷に向く坂道がある。坂道の途中に八幡宮の境内と向い合って名物のどじょう店がある。拭き磨いた千本格子の真中に入口を開けて古い暖簾が懸けてある。暖簾にはお家流の文字で白く「いのち」と染め出してある。

     どじょう、鯰、鼈、河豚、夏はさらし鯨――この種の食品は身体の精分になるということから、昔この店の創始者が素晴らしい思い付きの積りで店名を「いのち」とつけた。その当時はそれも目新らしかったのだろうが、中程の数十年間は極めて凡庸な文字になって誰も興味をひくものはない・・・

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    37 分
  • 美味い豆腐の話  著者:北大路 魯山人 読み手:吉江 美也子 時間:7分32秒
    2025/12/15

    美味い豆腐の話

    著者:北大路 魯山人 読み手:吉江 美也子 時間:7分32秒

     美味い湯豆腐を食べようとするには、なんといっても豆腐のいいのを選ぶことが一番大切である。いかに薬味、醤油を吟味してかかっても、豆腐が不味ければ問題にならない。

     そんなら、美味い豆腐はどこで求めたらいいか? ズバリ、京都である。

     京都は古来水明で名高いところだけに、良水が豊富なため、いい豆腐ができる。また、京都人は精進料理など、金のかからぬ美食を求めることにおいて第一流である。そういうせいで、京都の豆腐は美味い。

     一方、東京では、昔、笹乃雪などという名物の豆腐があった。これもよい井戸水のために、いい豆腐ができたのだが、今は場所も変わって、わずかに盛時の面影を偲ぶばかりだ・・・

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    8 分
  • ツイテ イッタ テフテフ  著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:4分4秒
    2025/12/14

    ツイテ イッタ テフテフ

    著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:4分4秒

     マチカドデ フウセンウリノ ヂイサンガ フウセンヲ ウツテ ヰマシタ。アカヤ アヲヤ キイロヤ ムラサキヤ、イロイロナ フウセンダマハ ホホヲ スリヨセナガラ カゼノ フク ハウヘ ナビイテ ヰマシタ。

     イツピキノ シロイ テフテフガ フウセンダマノ トコロヘ マイニチ トンデ キテ、イチンチヂユウ アソンデ イクノデシタ。

     テフテフハ タクサンノ フウセンノ ウチ、イチバン チヒサイ アカイ フウセンダマト、タイヘン ナカヨシデシタ。

     アル ヒ、アカンボヲ セヲツタ コモリガ ヤツテ キテ、イツセンデ ソノ チヒサイ アカイ フウセンダマヲ カヒマシタ。

     カハレテ イク トキ アカイ フウセンダマハ イヒマシタ。

    「テフテフサン、サヨナラ」

     ケレド シロイ テフテフハ イヒマシタ・・・

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    4 分
  • 藤の実  著者:寺田 寅彦 読み手:水野 久美子 時間:11分4秒
    2025/12/13

    藤の実

    著者:寺田 寅彦 読み手:水野 久美子 時間:11分4秒

     昭和七年十二月十三日の夕方帰宅して、居間の机の前へすわると同時に、ぴしりという音がして何か座右の障子にぶつかったものがある。子供がいたずらに小石でも投げたかと思ったが、そうではなくて、それは庭の藤棚の藤豆がはねてその実の一つが飛んで来たのであった。宅のものの話によると、きょうの午後一時過ぎから四時過ぎごろまでの間に頻繁にはじけ、それが庭の藤も台所の前のも両方申し合わせたように盛んにはじけたということであった。台所のほうのは、一間ぐらいを隔てた障子のガラスに衝突する音がなかなかはげしくて、今にもガラスが割れるかと思ったそうである。自分の帰宅早々経験したものは、その日の爆発の最後のものであったらしい・・・

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    11 分
  • 火の玉を見たこと  著者:牧野 富太郎 読み手:福井 一恵 時間:5分16秒
    2025/12/12

    火の玉を見たこと

    著者:牧野 富太郎 読み手:福井 一恵 時間:5分16秒

     時は、明治十五、六年頃、私はまだ二十一、二才頃のときであったろうと思っているが、その時分にときどき、高知(土佐)から七里ほどの夜道を踏んで西方の郷里、佐川町へ帰ったことがあった。

     かく夜中に歩いて帰ることは当時すこぶる興味を覚えていたので、ときどきこれを実行した。すなわちある時はひとり、またある時は二人、三人といっしょであった。

     ある夏に、例のとおりひとりで高知から佐川に向かった。郷里からさほど遠くない加茂村のうちの字、長竹という在所に国道があって、そこが南向けに通じていた・・・

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    5 分
  • 鼻  著者:芥川 龍之介 読み手:西村 文江 時間:22分55秒
    2025/12/11

    著者:芥川 龍之介 読み手:西村 文江 時間:22分55秒

     禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。

     五十歳を越えた内供は、沙弥の昔から、内道場供奉の職に陞った今日まで、内心では始終この鼻を苦に病んで来た。勿論表面では、今でもさほど気にならないような顔をしてすましている。これは専念に当来の浄土を渇仰すべき僧侶の身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。それよりむしろ、自分で鼻を気にしていると云う事を、人に知られるのが嫌だったからである。内供は日常の談話の中に、鼻と云う語が出て来るのを何よりも惧れていた・・・

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    23 分
  • どんぐり  著者:寺田 寅彦 読み手:齊藤 雅美 時間:19分36秒
    2025/12/10

    どんぐり

    著者:寺田 寅彦 読み手:齊藤 雅美 時間:19分36秒

     もう何年前になるか思い出せぬが日は覚えている。暮れもおし詰まった二十六日の晩、妻は下女を連れて下谷摩利支天の縁日へ出かけた。十時過ぎに帰って来て、袂からおみやげの金鍔と焼き栗を出して余のノートを読んでいる机のすみへそっとのせて、便所へはいったがやがて出て来て青い顔をして机のそばへすわると同時に急に咳をして血を吐いた。驚いたのは当人ばかりではない、その時余の顔に全く血のけがなくなったのを見て、いっそう気を落としたとこれはあとで話した。

     あくる日下女が薬取りから帰ると急に暇をくれと言い出した。このへんは物騒で、お使いに出るときっといやないたずらをされますので、どうも恐ろしくて不気味で勤まりませぬと妙な事を言う・・・

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    20 分
  • 食通  著者:太宰 治 読み手:緒方 朋恵 時間:2分9秒
    2025/12/09

    食通

    著者:太宰 治 読み手:緒方 朋恵 時間:2分9秒

     食通というのは、大食いの事をいうのだと聞いている。私は、いまはそうでも無いけれども、かつて、非常な大食いであった。その時期には、私は自分を非常な食通だとばかり思っていた。友人の檀一雄などに、食通というのは、大食いの事をいうのだと真面目な顔をして教えて、おでんや等で、豆腐、がんもどき、大根、また豆腐というような順序で際限も無く食べて見せると、檀君は眼を丸くして、君は余程の食通だねえ、と言って感服したものであった。伊馬鵜平君にも、私はその食通の定義を教えたのであるが、伊馬君は、みるみる喜色を満面に湛え、ことによると、僕も食通かも知れぬ、と言った・・・

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