
月夜のでんしんばしら
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📖『月夜のでんしんばしら』朗読 – 電信柱たちの不思議な夜間行軍🌙⚡
静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『月夜のでんしんばしら』。
ある晩、恭一は草履を履いて鉄道線路の横をすたすたと歩いていました。本来なら罰金ものの危険な行為でしたが、その夜は線路見回りの工夫も来ず、窓から棒の出た汽車にも遭いませんでした。九日の月がうろこ雲に照らされ、冷たい星がぴっかりぴっかりと顔を出す美しい夜、停車場の明かりが見える頃、突然とんでもないことが起こります。
線路沿いに立ち並んでいた電信柱の列が「ぐゎあん、ぐゎあん」と唸りながら、大威張りで一斉に歩き出したのです。みんな瀬戸もののエボレット(絶縁具)を飾り、てっぺんには針金の槍をつけた亜鉛の帽子をかぶって、片脚でひょいひょいと行進していきます。そして恭一をばかにしたように、じろじろ横目で見ながら通り過ぎていくのでした。
電信柱たちの唸り声はやがて立派な軍歌に変わります。「ドッテテドッテテ、ドッテテド、でんしんばしらのぐんたいは はやさせかいにたぐいなし」と歌いながら、工兵隊や竜騎兵として堂々と行進していきます。中には疲れ果てた古い柱もいれば、元気に号令をかける柱もいて、それぞれに個性豊かな電信柱たちの大軍団が織りなす光景は圧巻です。
そんな中、恭一の前に現れたのは背の低い顔の黄色な老人でした。ぼろぼろの鼠色の外套を着て「お一二、お一二」と号令をかけながらやって来るこの不思議な人物は、自分を「電気総長」と名乗り、握手をした途端に青い火花を散らせて恭一を驚かせます。電気総長は得意気に電気にまつわる昔話を語り、自分の軍隊の規律正しさを自慢します。月夜に繰り広げられるこの幻想的な光景の中で、恭一は一体何を体験することになるのでしょうか。
この物語は、宮沢賢治独特の科学的な想像力と詩的な表現が見事に融合した作品です。電信柱という無機物に生命を与え、電気という当時まだ新しい技術への驚きと親しみを、ユーモラスで幻想的な物語に仕立て上げています。軍隊に見立てた電信柱たちの行進は、規律正しくも滑稽で、電気総長の豊富な体験談からは当時の人々の電気に対する素朴な驚きが伝わってきます。
九日の月とうろこ雲が織りなす美しい夜景の中で繰り広げられる、電信柱たちの壮大な行軍劇。現代の私たちには当たり前の電気も、この物語の中では魔法のような不思議な力として生き生きと息づいています。科学と幻想、現実と夢の境界を軽やかに超えた魅力的な世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。
#月 #柱 #歌曲