エピソード

  • 地政学リスクにもかかわらず株価が底堅く推移できるのはなぜか
    2025/06/23
    最近の中東情勢に接しても投資家がおおむね平静を保っているのはなぜなのか。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジスト、マイク・ウィルソンがご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジスト本日は、中東の緊張が米国株式に及ぼす影響の考え方について、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお話しします。このエピソードは6月23日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。この週末に米国はイランの核燃料濃縮施設に奇襲攻撃を行いました。損害の程度はまだ確認されていませんが、トランプ大統領は、イランによる核兵器開発の取り組みは、完全にとは言わないまでも大幅に縮小させられたと述べています。それが本当なら、このリスクについては変化率がピークに達したとみることができるでしょう。今年第1四半期に米国株式の頭を押さえていた数多くのリスクが最悪期を過ぎたようだと弊社ではみていますが、今回のリスクも多くの点でこの見方に沿うものになっています。不法移民の取り締まり、財政支出削減、関税、AI関連の設備投資減速といった材料はすべて、企業業績予想を引き下げる一因になっていました。 そこから今日までの展開を早送りで見ていくと、こうした材料は悪影響の面でいずれもピークを過ぎており、4月半ばからは業績予想も回復に転じています。実際、収益修正ブレスの回復は史上最大級であり、米国株式が4月7日の週に底を打ってから非常に好調に推移していることの根本的な理由の一つになっています。この週末の出来事を受けて株価急落を予想した方も多かったかもしれませんが、これまでの堅調な展開の理由を考えれば、今朝の株式市場でそうならなかったのもうなずけます。 また、弊社は1950年以降に起きた主な地政学的出来事23件について、株価への影響を調べてみました。すると、多くの方々には意外に思われるかもしれない一方で、ベテラン投資家の間ではよく認識されていることが浮かび上がってきました。実は、地政学的なショックの後には株価の下落ではなく株価の上昇が続くことが多く、ショック後、半年から12ヵ月の間は特にそうなのです。この23件のうち株価が下落したのは5件だけでした。しかも重要なことに、株価が下がったその5件のケースは原油価格の急騰を伴っており、その上昇率は前年同期比で少なくとも75%という非常に高いものでした。今朝の時点で、原油価格は前年同期より10%安い水準にあります。週末の軍事行動の後でもその水準なのです。つまり、株価は向こう6ヵ月から12ヵ月にかけて下落する状況にはないということになります。 とは言え、弊社としては、クオリティの低い小型株よりもクオリティの高い大型株を引き続きお勧めしたいと考えます。この判断はおおむね、長期金利が下げ渋っていることと、米国経済が景気循環の後期にあってFRBが政策金利を据え置いているという事実に基づくものです。仮にこの状況が変わってFRBが利下げを示唆し始めたら、弊社はもっとシクリカルな分野に関心を向けていくことになるでしょう。 弊社は引き続き、電力・インフラ整備関連の設備投資増加が見込まれる資本財・サービス株、今年秋に予定される規制緩和の恩恵を享受する金融株、そして関税の影響を受けず、経済全体へのAI普及に向けた次の投資がなされる分野に注力しているソフトウェア株を選好しています。また当面の原油価格上昇リスクのヘッジ手段として、一般消費財・サービス株よりもエネルギー株を選好しています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェア...
    続きを読む 一部表示
    6 分
  • 中東の緊張が高まる中での石油価格の見通し
    2025/06/18
    中東地域における地政学的変化を踏まえ、今後の石油価格の見通しを3つのシナリオに分けて、弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツ今回はイスラエルとイランの緊張が高まる中での石油価格の見通しを弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが解説します。このエピソードは6月18日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ブレント原油の先物カーブに注目している業界観測筋は最近、カーブが滅多に見られないスマイル型であることに気づいたそうです。最初の2、3カ月は下向きのカーブで、その後は26年まで上向きのカーブだというのです。しかし、先週金曜日には一変しました。石油市場の先物カーブは需給バランスの見通しによって様々な形状とをなります。先物カーブが下向きのときは在庫を保有する魅力が実際に非常に乏しく、そのためオペレーターは通常、貯蔵している石油を放出します。市場がこのような構造となるのは、需給がひっ迫し、貯蔵されている石油の放出が実際に必要なときです。逆に、市場が供給過剰のときには石油を在庫として貯蔵する必要があり、先物カーブが上向きとなることでこれが可能になります。つまり、先物カーブはつい最近まで、目先の需給は幾分タイトだけれども、今年後半と26年は大幅な供給過剰となることを物語っていました。ところが先週、中東地域で緊張が高まると、石油業界は強く反応しました。ブレント原油先物の期近物、つまり来月受け渡しの製品が17%近く急騰しただけでなく、すべての受渡月で紛争の影響が生じました。現在では先物カーブ全体が下向きに傾斜しており、これは石油市場が来年の余剰を見込んでいないことを示しています。数日前とは大きく異なります。さて、金曜日の出来事により今後の石油価格の見通しの幅が広まったことは疑う余地がありません。しかし、この先の石油価格の弊社予想を大きく3つのシナリオで説明します。それと一緒に、今後数週間および数カ月間の石油市場を予想する枠組みも示します。まず、最も穏やかなシナリオを考えてみましょう。軍事衝突が起きても石油供給が混乱するとは限らず、主要な産油地域でもそれは同じです。これまでのところ、産油地域からの供給量は減少していません。もし石油・ガスのインフラが攻撃対象から外れたままであれば、石油供給の継続は完全に可能です。その場合、原油価格は現在の1バレル凡そ 約76ドルから、60ドル程度まで下落する可能性があるでしょう。2番目のシナリオは、物理的なインフラへの武力攻撃や制裁によってイランの石油輸出がリスクにさらされることを想定します。米国が2018年に行った「最大限の圧力作戦」で石油供給が減少したことの再現です。イランが輸出能力の大半を失った場合、現時点で弊社が予想している来年の石油市場の余剰をほぼ打ち消す形となるでしょう。その場合、市場は概ね需給が均衡します。需給が均衡した場合、原油価格は1バレル75-80ドルのレンジとなる確率が高いでしょう。3番目は幅広い地域での混乱を想定した最も深刻なシナリオで、原油価格は22年につけた1バレル凡そ約120ドルの高値まで上昇する可能性があります。世界の石油輸送 のかなりの部分が通過するホルムズ海峡など重要な航路を含めて、幅広い湾岸地域の石油インフラがイランの攻撃対象となった場合は、このシナリオが実現する可能性があります。状況はきわめて流動的で、今後の石油価格の見通しとしては大きな幅が考えられます。最も確率が高いと思われるのは最初のシナリオで、弊社はこれを基本ケースとして、最終的に供給の安定を予想しています。ただ、より深刻な混乱が生じる...
    続きを読む 一部表示
    7 分
  • 米国大型株に強気な理由
    2025/06/16
    米国大型株に対する市場心理が慎重になっていますが、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、前向きな見方を保つ余地はまだあるとみています。今回はその理由をご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社が米国大型株について市場コンセンサスよりも前向きなのはなぜか、特にどのセクターについてそうなのかをお話しします。このエピソードは6月16日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社は米国株に対して、市場コンセンサスよりも前向きな見方を維持しています。今後12ヵ月間の収益環境が大方の見方より良好であることを、弊社が注目している主要指標が示しているのがその主な理由です。第1に、弊社の主要な業績予想モデルは、今後1年間のEPSが1ケタ台後半の成長を遂げると示しています。第2に、リビジョン・インデックスが4月中旬のマイナス25%から現在のマイナス9%へと急改善しています。第3に、弊社は企業のコスト面を考慮する派生的な業績先行指標も導入しているのですが、こちらのモデルは、EPSが2026年上半期までに10%台半ばの成長を遂げると予想しています。もう少し具体的に申し上げれば、コスト効率の向上による利益の増加を示唆しているのです。興味深いことに、先週開催されたモルガン・スタンレー金融カンファレンスではこのような話を何度も耳にしました。業務合理化の一助としてのAI導入に言及した企業が多かったのです。そして最後に、S&P500指数採用銘柄の利益にとって最も過小評価されている追い風は、米ドル安です。1月の高値から11%も下落しています。そして付け加えますが、弊社の為替ストラテジストは、今後12ヵ月間でドル安がさらに7%進むと予想しています。経済成長率予想が4月半ばに底を打ってからリビジョン・インデックスが改善していること、そしてその改善率も高いことは、多くの大型株にとって強力な追い風です。特に強い影響を受けるのは資本財とソフトウェアのセクターです。両セクターには強力な構造的成長ドライバーが備わっています。まず資本財セクターについては、世界のインフラ整備支出が改めて注目されています。設備稼働率の変化も2年半ぶりにプラスに転じており、商業・工業向けローンの総額も再び増加して2020年以来の高水準に達しています。テクノロジーの構造的な普及とグローバルなインフラへの注目が多くの国々で進んでおり、より資本集約的な環境につながっています。米国の特別償却(ボーナス減価償却)も追い風になる公算が大きいでしょう。設備投資の増加を促し、資本財メーカーに直接恩恵をもたらすためです。一方、ソフトウェア・セクターは生成AIのソリューションにより、収入と費用の両面からフリーキャッシュフローを増やせる有利な状況にあります。弊社は大型金融株も選好しています。このセクターでは今年下半期から、規制緩和による大きな利益が計上され始める可能性があります。弊社の比較的前向きな見方を脅かす主(しゅ)たるリスクは、やはり長期金利です。6月11日に発表された消費者物価指数はコンセンサスを下回り、債券利回りの抑制に寄与したものの、6月13日に地政学的な緊張が高まっても金利が低下しなかったのは興味深いことだと弊社では感じています。その結果、10年債利回りは弊社が重視する4.5%の水準に近いところにとどまっています。この4.5%を超えると、金利に対する株価の感応度が高まる公算が大きいのです。また金利のボラティリティが4月の高値に比べてかなり低く、数年ぶりの低水準に近いことも好材料です。弊社が一般消費財セクターを長らくアンダーウエイトにしている...
    続きを読む 一部表示
    8 分
  • 日本のAI普及からの教訓
    2025/06/13
    弊社の日本経済エコノミストで、シニア・アドバイザーのロバート・フェルドマンが、AIに対する日本の体系的アプローチと他国への教訓について解説します。トランスクリプト 「市場の風を読む」にようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券のシニアアドバイザー、ロバート・フェルドマンです。今日は、日本の、グローバルAI開発への重要な貢献についてお話しします。今日は東京時間で6月13日金曜日の午後2時です。日本は常に先進的な技術インフラとロボティクスの世界の的リーダーであり続けてきました。したがって、日本のデバイスと素材がグローバルAIサプライチェーンにおいて重要な役割を果たしていることは驚くべきことではありません。しかし、投資家にとって重要なのは、日本の独自の体系的なAIアプローチと、それが他国に提供する教訓を理解することであると思いますす。 日本では、AIは歴史的にハードウェア、ソフトウェア、データ、倫理の4つの要素の共生的な相互作用を通じて発展してきました。日本の技術の進歩は、進化するだけでなく、共進化します。つまり、ある要素の進歩が他の要素の進歩をより緊急にします。これらの後者の進歩が起こると、他の要素にボトルネックが生じます。しかし、自然界の共進化とは異なり、偶然の突然変異が互いに強化し合うのではなく、AIの共進化は人間の意図によって駆動されます。つまり、人間はボトルネックを見つけ、それをイノベーションで解決します。開発のボトルネックは、このモデルにとって重要です。各ボトルネックを特定することで、企業や産業がイノベーションを起こすことができるんですます。投資家もこれらのボトルネックに特に注意を払うべきです。なぜなら、そこに投資の機会があるからです。 例えば、最近のイベントですけれども、中規模の日本の小売食品製造会社の社長に聞きました。、彼の会社にとって最大のAIボトルネックは何ですかかと聞いたんです尋ねました。彼は明確に「データ」と答えました。彼の会社にはもちろんいくつかのデータがあります。、競合他社も同様です。しかし、データを記録し、共通のデータベースに情報を提供し、匿名性を維持する共通のプラットフォーム及び共通するプロトコルはありません。したがって、データに関するボトルネックは、この会社が他の3つの重要な要素の、ハードウェア、ソフトウェア、倫理を活用するために革新的なデータソリューションを必要とすることを示唆しているんですます。 最後の要素である倫理ですけれどもに関しては、日本のAI倫理は的の取り組みがは柔軟なんです。個人情報保護法やその後の法改正など、国の法的枠組みは、AIのが安全で倫理的な範囲内で進歩することはを保証されていますします。これらの法律およびルールは単なる紙の上のものではありません。無許可のAI使用に対してデータプライバシーを守る画期的な裁判所の判決がに見られるように、積極的に施行されています。しかし、柔軟性もあります。LLMの柔軟な開発を可能にするために、ルール、が調整されています。 もう一つの日本の倫理の特徴は、AIリテラシーに対する積極的な強調です。大企業から中小企業まで、AI技術だけでなくその倫理的な応用についても人材を訓練するための協調的な努力が行われております。、AI能力の全体的な進歩を確保しすることがその結果ですています。この労働者の訓練へのアプローチは単なる利他主義ではありません。日本は深刻な労働力不足に直面しています。AIはその解決策の重要な部分と広く見なされておりいます。良い倫理はAIの普及を速めます。 最終的に、グローバルなマクロ経済レベルでは、AIから利益を得る企業や国は次の3つのことを行う必要があります。 (1) 技術のを迅速に導入すること、(2) AIを使用した新製品のやプロセスを迅速にイノベーション 革新することです。、(3) 新しい革新的な製品を生産するために労働力を再訓練し、資本のを再配分ですすること。このマクロ的な環境を背景に、日本のハードウェア、ソフトウェア、データ、倫理の共生を意図的に利用することは...
    続きを読む 一部表示
    7 分
  • AI領域の風景を描き変える中国
    2025/06/10
    弊社アジア・テクノロジー・リサーチ責任者のショーン・キムが、AI開発における中国の顕著に異なるアプローチと、その投資へのインプリケーションについてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、アジア・テクノロジー・リサーチ責任者のショーン・キムが、水面下で中国が世界のAIの様相をどのように変えつつあるのかについて検討します。このエピソードは6月10日 に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2017年以降、中国は自国のAIの能力を確立すべくトップダウンの戦略を粛々と、系統的に進めてきました。米国の半導体輸出規制が目先の課題にはなったものの、そのために中国は少ないハードウェアで大きく前進することを余儀なくされました。このため、中国が最も重視したのは、最も強力なAIの構築ではなく、AIを最も効率的に商業化することでした。最近サービスの提供を開始したDeepSeek R1にもそれが表われています。また、こうしたAIの領域では文字通り数百のAIスタートアップ企業が、ニッチを開拓し、防御するためにオープンソースの大規模言語モデルを利用しています。最大の疑問は、今後の道筋がどうなるのかです。中国はこの勢いを維持し、優れた研究能力によって世界のAIのリーダーになれるのでしょうか?その答えは中国のエネルギー、データ、人材そして演算能力の4つにかかっています。10億人を超えるモバイルインターネット・ユーザーを擁する、中国の中央集権化された政府は、膨大な量のデータを持っています。中国には利用可能なエネルギーも豊富にあります。中国は去年 昨年だけで10基の原子力発電所を建設しており、今年はさらに10基を建設する予定です。現時点では米国の半導体の方がはるかに優れていますが、中国も急速に前進しており、最高の半導体なしで、多くのことを成し遂げています。そして、中国には豊富な人材があります。世界経済フォーラムによれば、世界のAI分野のトップ研究者の47%は現在中国にいます。加えて、既にAIに対する包括的なガバナンスの枠組みが実施されており、AIの開発が安全、倫理的で戦略的に管理されることを確実にするための250を超える規制基準があります。こうして、結局のところ、中国は2030年までにAI分野で世界のリーダーになるという野心的な目標を実現する軌道を順調に進んでいます。それまでに、規制環境も手伝ってAIは中国経済の全てのセクターに深く根付いていると見られます。AI革命は、高齢化や生産性の伸び減速といった経済の主な構造的逆風に対処する形で、中国の長期的な潜在GDP成長率を高めると弊社は考えています。生成AIは7兆人民元近くに相当する労働力と生産性を創出すると弊社は試算しています。これは、去年 昨年の中国のGDP成長の5%弱に当たります。さらに、中国のAIに対するアプローチは、投資にも計り知れない影響を及ぼすと予想されます。中国がAIに関して既に盤石な基礎を確立していることは明らかです。今後、大企業だけでなく、中小の大衆市場向け企業にとっても大きな商機が現れようとしています。そして、AIハードウェアからAIアプリケーションへと価値がシフトすると、中国はAIアプリケーションを商業化し、産業を極めて実用的な意味で変容させることにも成功すると弊社は予想しています。歴史が示すように、新しい技術を最も迅速に採用し、普及させた者が勝利するのであり、これを排除することは困難なのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
    続きを読む 一部表示
    6 分
  • 株式市場の上振れがあり得る理由
    2025/06/02
    弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、企業の業績やバリュエーションに関する見通しを踏まえ、今後12ヵ月の米国株に前向きな見方をする理由について解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社が発行したミッド・イヤー・アウトルックに対するプッシュバックと、今後12ヵ月の米国株に総じて前向きな見方を維持する理由についてお話します。このエピソードは6月2日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社の見通しを簡単に要約しますと、株式市場はニュースフローと価格変動の両方の点で非常にボラティリティーの高い年初からの5ヵ月間でしたが、今年末のS&P500の目標水準は6,500に維持しています。予想を変えなかったのは、米国株にとって上期は厳しいものの、下期はより好ましい状況に転じると考えていたことが一因です。新政権は政策アジェンダのうち、まず経済成長にネガティブな部分を推し進めるとみていたからです。予想通り、新政権は移民政策の実施、歳出削減、関税に重点を置きました。これらの政策変更に加え、去年 昨年急増したAI関連の設備投資が上期に減速するとも予想していました。これらの全ての要因が重なり、経済成長と業績修正の重荷となりました。次に、「解放の日」と銘打っての関税発表は、弊社も含めほとんどの市場参加者にショックを与え、多くの機関投資家が投げ売りとしか言いようがない大量売却に動くのに申し分のない材料となりました。このパニック売りによって、政策、業績修正、金融状況、ドル安という追い風も相まって株価が自律反発する素地が整いました。弊社予想の最大のポイントは、今年と来年の成長率をいずれも1桁台後半とする前向きな業績見通しと、バリュエーションが弊社予想利益の21.5倍の水準に高止まりするとの見方です。利益については、暦年の弊社予想はすでにコンセンサス予想よりも0.5%前後引き下げています。2つ目としては、今後12ヵ月間の1株利益の伸び率を予想する弊社の先行利益指標(Leading Earnings Indicator)は、伸び率が今後1年にわたり1桁台後半のレンジで横ばいとなることを示唆しています。3つ目ですが、ドル安、税制法案の各要素、AI主導の生産性が、弊社のモデルに盛り込まれていないさらなる収益の追い風になるでしょう。4つ目としては、過去3年間にわたり民間経済の多くのセクターでローリング・リセッションが起きているため、成長の比較が容易になっています。最後に、これが最も重要な点ですが、1年間低下して非常に低い水準となっていた業績修正率が上向いていることです。バリュエーションに関しては、増益率が長期的な中央値の7%を上回り、しかもフェデラルファンド金利が1年前よりも低ければ、マルチプルの圧縮は非常にまれであることが弊社の調査で明らかになっています。実際、こうした条件の下で株価収益率のマルチプルは全期間のうち90%で拡大し、12ヵ月ベースで9%前後となっています。従って、S&P 500の株価収益率が今後1年間にわたり現在の水準と変わらずに推移するとみる弊社の予想はある意味、保守的です。弊社が選好するバリュエーション手法である株式リスクプレミアムについてですが、興味深いことに、「解放の日」からの1週間で株式リスクプレミアムは、2001年の9-11ショックの直後に目の当たりにしたのと同じ水準に達し、1998年のLong-Term Capital Management危機の間に到達したリスクプレミアムを超えました。9-11(ナインイレブン)ショックの時もLTCM危機の時もS&P 500は今年のように20%下落しましたが、その後1年間の株式市場は非常に好調でした。要するに、今年と来年でいずれも1...
    続きを読む 一部表示
    7 分
  • なぜ金利が再び問題なのか
    2025/05/30
    コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、米国の関税を巡る法的混乱と議会で審議中の予算法案により、なぜ投資家が再び金利に注目することになるかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ本日はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、1月に市場で取りざたされ、今再び話題となっているテーマを再度取り上げます。金利上昇はどれほど問題なのでしょうか?このエピソードは5月30日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。それほど深刻ではなかったとしても、少し奇妙かもしれません。今年、米国政府が関税措置を導入すると、市場はすぐに下落しました。そして、これらの関税の多くが一時停止されたり取り下げられたりすると、市場はすぐに上昇しました。では、次はどうなるのでしょうか?多くの関税は形の上で一時停止されているだけなので、再開される予定です。全体的な関税率は、中国に対する関税率がこのほど引き下げられたとはいえ、依然として歴史的に高い水準です。最近の出来事の影響を実際に反映するような経済データはまだ全く発表されていません。つまり、米国経済成長の当面の道筋については、まだ大きな不確実性があるということです。しかし、お聴きいただいている皆さんは関税にうんざりしていらっしゃると思いますが、少しの間、関税は今や二の次であるというふりをしてみましょう。もしそうなら、金利が再び注目されることになります。第一に、他の全ての条件が同じなら、関税率が下がると経済成長が加速し、それに伴い金利が上昇するでしょう。しかし、同時に重要なのは、米国の議会で協議されている現在の予算案は政府の借り入れを大幅に増やすものであり、金利を押し上げる可能性もあるということです。現在の予算案が恒久的なものになるとすれば、何が起きるでしょうか。例えば、国家債務が今後30年間で15兆ドル増える可能性があります。これは、イエール大学の分析によって予想されていた水準を上回る金額です。関税が課される前、つまり1月に市場の関心を一手に集めていたのは金利と政府の借り入れの問題だったことを思い出してください。そして現時点で市場が最も注視しているのは、この30年間で債務がどれほど増えるかという問題です。米国債の30年物利回りは1月14日に一時5%をつけましたが、最近またこの水準まで上昇しました。これは米国の超長期債利回りとしては過去20年間でも特に高い水準です。利回りが上昇すれば、最終的に米国政府が負わなければならないコストも上昇しますが、こうした高い利回りは、他の全ての投資商品の比較基準にもなります。安全な米国債に投資して長期にわたり年間5%のリターンを得られるとすれば、株式からオフィスビルに至るまで、米国債よりもリスクの高い商品に長期投資する際に投資家が求めるリターンにどう影響するでしょうか。ここで幾つかの数字を挙げるのも参考になると思います。今日5%で1万ドル投資すると、30年後にはおよそ4万3,000ドルになるでしょう。従って、これは全ての長期投資をいま判断する際のハードル・レートとなります。もちろん、他にも多くの要因がこうした他の資産のパフォーマンスに影響を与える可能性があります。公平を期して言えば、米国株の長期投資のリターンはこれまで5%を優に超えています。しかし、この先の勝ち組の一つは中長期の投資適格債券でしょう。高い利回りゆえにこれらの債券には高い需要が生まれるとみています。同時に、こうした高い利回りは企業の長期借り入れコストが上昇することを意味するため、供給が減る可能性もあるでしょう。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場...
    続きを読む 一部表示
    6 分
  • 関税シグナルをどう解読するか
    2025/05/28
    グローバル債券・公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、モルガン・スタンレーのジャパン・インベスター・サミットでお客様から最も多く寄せられた米国の政策に関する質問にお答えします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。グローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザス 本日はグローバル債券および公共政策戦略担当責任者のマイケル・ゼザスが、モルガン・スタンレーのジャパン・インベスター・サミットから得られた主な要点について解説します。このエピソードは5月28日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週、私は東京で開催されたジャパン・インベスター・サミットに出席しました。主な投資テーマに関するパネルディスカッションや、モルガン・スタンレーのあらゆる拠点のお客様との一対一ミーティングが二日間にわたって行われました。サミットの間にモルガン・スタンレー・リサーチは経済および市場戦略の年央見通しを公表しました。言うまでもありませんが、この48時間で投資戦略を巡って活発な意見交換が行われました。どのような質問が最も多く寄せられたかをお伝えし、そしてもちろん、これらの質問への答えについてもお話ししたいと思います。もうお分かりだと思いますが、米国の関税政策が主な注目点でした。関税は再び引き上げられるのでしょうか?それとも最悪の時期は過ぎたのでしょうか。もし過ぎたのであれば、投資家は米国経済についての懸念をいったん忘れてもよいのでしょうか?これは込み入った問題なので、われわれの答えには微妙なニュアンスが入ります。一方、現在の関税政策は、われわれが考えていた年末時点の状況とほぼ一致しています。関税率の引き上げが予想よりもずっと早い時期に行われただけです。米国の関税が全面的に引き上げられ、中でも中国に対する関税率が相対的に高くなっています。他の国々と比べて中国とは妥協点が少ないため、中国との貿易交渉で迅速に合意を形成するのはより困難です。つまり、現状が終点ということかもしれません。しかし、投資家にとってこのような考え方は単純すぎるでしょう。第一に、現在行われている交渉の一環として関税率が今の水準からさらに引き上げられる可能性は十分あります。また、それがたとえ一時的だったとしても、市場に影響が及ぶでしょう。第二に、恐らくもっと重要なポイントとして、米国政府がこのほど中国に対する関税率を非常に高い水準から引き下げ、実効関税率は下がったとはいえ、依然として年初の水準を大幅に上回っています。このため、投資家は市場の見通しを立てる上で関税の圧力を考慮しなければならないでしょう。弊社のエコノミストは関税の影響で今年は経済成長が鈍化し、リセッションリスクが上昇するとみています。もう一つの主な懸念材料は米国の財政政策です。選挙公約通りに赤字縮小への道を歩み始めるのでしょうか、それとも税制・歳出法案が議会を通過し、赤字縮小は実現しないのでしょうか。投資家にとってこれは来年の最も重要な注目点であると思います。来年以降どうなるかは憶測の域を出ないからです。われわれは来年度に財政赤字が減少するとは予想していません。減税期限を延長し、新たな減税措置をいくつか導入すれば、歳出削減で一部相殺されたとしても、来年に赤字は多少拡大するでしょう。また、利払いの増加など、予算に織り込まれたその他の要因によって赤字はいっそう膨らむとみています。これらの2つの質問が寄せられたのは無理もありません。その答えが市場の見通しに極めて重要だと思うからです。特に、われわれが市場見通しの中で強調した見解を理解する手がかりとなります。例えば、米国の経済成長が他国よりも減速し、それに伴い外国人投資家が自国通貨建て資産の比率を増...
    続きを読む 一部表示
    7 分