エピソード

  • 市場の安定がFRBにとって重要な理由
    2025/12/15
    FRBが毎月400億ドルの米国債購入を再開することを決定しましたが、その意味について、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、先週のFRBの決定と、それが株式にとって何を意味するかについて、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストの マイク・ウィルソンがご説明します。このエピソードは12月15日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先週のFRBの会合は、弊社の前向きな2026年株式見通しをさらに後押しするものとなりました。FRBは予想通りタカ派的な利下げを実施しましたが、労働市場がさらに軟化すれば、追加の措置を取るとも示唆しました。利下げ以上に重要だったのは、FRBが資産購入の再開を決定したことです。具体的には、FRBは金融市場の円滑な運営を確保するため、毎月400億ドルのTビルの購入をすぐに開始する予定です。発表前に投資家と話をした限り、この購入額とタイミングは、コンセンサスや私自身の予想を上回るものでした。また、これは私が数ヶ月間議論し、来年の見通しでも強調してきた重要な洞察を裏付けるものです。まず、FRBは市場から独立しているわけではなく、市場の安定性が、完全雇用と物価安定という定められた二つの使命を超えて、FRBの政策において主要な役割を果たすことがよくあります。次に、債務と赤字の規模を考えると、FRBには財務省が政府資金調達を行うのを支援する追加責任があり、この関連で今後も財務省とより緊密に連携していく可能性が高いでしょう。最後に、予想よりも早く、より積極的に資金調達市場に介入するという決定は、FRBの定義する「量的緩和」ではないかもしれません。しかし、これは債務の貨幣化の一形態であり、特に財務省が長期国債よりも短期国債を多く発行する中で、依然として増加している米国債発行によるクラウディングアウトを直接的に緩和するものです。FRBの10月の会合では、流動性の引き締まりについて若干の懸念が示されましたが、私はこのポッドキャストで、これが株式の強気相場にとって最大のリスクであると述べてきました。流動性の引き締まりの証拠は、暗号資産や利益の出ていない成長株など、流動性に最も敏感な資産価格の動きに見られます。FRBはこれらの資産クラスのパフォーマンスにはあまり関心がないかもしれませんが、債券、信用、資金調達市場の金融安定性には関心があります。これが、FRBが大方の予想よりも早く、より大規模な形で資産購入を再開した理由でしょう。先ほど述べたように、短期国債の発行を今後増やすという財務省の目的を踏まえ、弊社はこれを債務の貨幣化の一形態と見ています。さらに重要なのは、これらの購入が市場に追加の流動性を提供し、利下げと組み合わせることで、FRBがインフレ目標の未達をそれほど心配していないことを示唆している点です。これは「経済を過熱させる」という2021年初頭から続く弊社のシナリオに極めて合致しています。念のため申し上げると、インフレ加速は、FRBが2022年のように「パンチボウル」を取り上げざるを得なくならない限り、資産価格にとってポジティブな要因です。皮肉なことに、短期的なリスクは、このように予想よりも大規模な資産購入プログラムであっても、市場が円滑に運営されるために必要な準備金の水準をFRBが大幅に過小評価していた場合、不十分になる可能性があるということです。これは2019年に起こったことであり、FRBがそもそもスタンディング・レポ・ファシリティ(常設レポファシリティ)を作った理由です。しかし、これはどちらかというと必要に応じて使われるツールです。FRBが円滑に機能する金融市場に必要な準備金の水準を過小評価していた場合、市場が求めたり、必要...
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    7 分
  • クレジット・サイクルは過熱しているのか?
    2025/12/12
    2026年にはクレジット・サイクルが燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるかもしれない――そう考えられる理由を、弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者の アンドリュー・シーツがご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者の アンドリュー・シーツが、2026年のグローバル・クレジット市場の見通しについてお話しします。、クレジット・サイクルが燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるかもしれないと弊社が考える理由をご説明します。このエピソードは12月12日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。まさかこんな状況が続くはずはない――2026年のプランを練っているグローバル・クレジット投資家の多くは、おそらくそうつぶやいているでしょう。米国とアジアでは、クレジット・スプレッドが25年以上前に見られた水準にまで縮小しています。社債の発行はますます活発になっており、企業の設備投資も急増しています。格付けが最も低い社債の市場では、プレッシャーの兆候がはっきりうかがえます。そして、クレジット投資家は心配するように教育されています。こうしたことはすべて、いやこれ以外の現象も、クレジット・サイクルが自らの重みに耐えられなくなりひび割れし始めている兆候なのではないか、というわけです。まだそこまでは達していない、というのが弊社モルガン・スタンレーの見方です。弊社はむしろ、2026年にはクレジット市場が燃え尽きる前にさらに熱く燃え上がるだろうと考えています。その理由の一部は、異例なほど景気刺激的な環境に求められます。まず、中央銀行が金利を引き下げています。政府は支出を増やしており、規制も緩和されつつあります。おまけに、人工知能(AI)関連の投資サイクルは一世代に一度あるかないかの巨大な投資サイクルかもしれません。こうしたことが相まって、リスクを取ることができる企業セクターはさらにリスクを取りにいく公算が大きいと思われるのです。そのため、来年のクレジット投資の方針は2005年や1997-1998年のそれによく似たものになるだろうと弊社ではみています。どちらの時期も設備投資、企業買収活動、金利、そして失業率という4種類の指標の水準が、弊社の来年の予想値にかなり近いのです。そして2026年を展望するにあたっては、これら2つの時期が相反する2つの見方を提示してくれます。2005 年は、低所得の消費者が本当に苦労し始めているものの、すなわち、当時は中国でしたが、今日ではAI投資がそれにあたるかもしれませんが、別の力が作用して市場全体は好調を維持しているという時期に近いのかもしれません。一方、1997年や1998年は、新しいテクノロジーは本当に世界を変えていくと投資家が確信を強めている時期に近いと言えるでしょう。当時の新しいテクノロジーはインターネットでしたが、今日のそれはAIです。この状況が変わっていくうえで重要になるのは社債の発行状況だろう、と弊社では考えています。これは各地域にとって大きなテーマであり、米国、欧州、そしてアジアのクレジット市場全体に対する弊社見解の重要なポイントのひとつでもあります。来年の米国市場における投資適格社債の純発行額は2025年に比べて60%以上多くなり、計1兆ドル前後に達すると弊社では予想しています。この発行額増加の原動力は、設備投資と企業買収が幅広いセクターで増えることに加えて、テクノロジー企業によるAIへの投資が増え続けることにあります。これらの社債がすべて市場で売りに出されれば、それに応じて米国のスプレッドは拡大せざるをえなくなるでしょう。高利回りのおかげで社債購入需要が非常に旺盛な場合でも、そして景気が最終的に持ちこたえる場合でも、スプレッドは拡大するのです。欧州やアジアの投資適格社債、そして...
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    8 分
  • AIが電力経済に革新を起こす
    2025/12/02
    弊社の南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、AIによる前例のない電力需要が今後数年間で電力業界をどのように変革するかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社の南アジア・エネルギー担当アナリストのマヤンク・マヘーシュワーリーが、AIと電化が世界の電力のルールをどのように書き換えているかについてお話しします。このエピソードは12月2日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。もし最近、電気料金が上昇していると感じたり、AIに関する話題がニュースで頻繁に取り上げられていると感じている方がいらっしゃれば、それはあなただけではありません。私たちの電力の使い方、そして必要性は急速に変化しており、一般家庭から大手テック企業まで、すべての人に影響を及ぼしています。世界の電力消費は、過去10年余りで最も速いペースで急増しています。年間需要は2030年まで毎年1兆キロワット時以上増加する見込みであり、その成長の5分の1近くはAI主導のデータセンターによるものです。弊社では、2028年までにデータセンターへの投資額が およそ約3兆ドル、2028年までの3年間で電力消費の伸びがおよそ約126ギガワットに達すると推計しています。これはカナダの年間電力消費量にほぼ匹敵します。このような状況下で、電力価格はさらに上昇する見通しです。2024年の最新データによると、世界の電力セクターへの投資は過去最高の1兆5,000億ドルに達し、消費者の電力価格はおよそ約15%上昇しました。2030年までには、米国の電力市場が世界のデータセンター電力消費の半分を占めるようになるでしょう。また、アジアでも米国のハイパースケーラー需要のおよそ約15%が波及し、アジアの一部の電力市場がさらに逼迫する要因となります。電力消費が増加する中、電力の販売価格と発電コストの差、いわゆる「パワースプレッド」は15%近く拡大すると予想されます。この利益率の拡大は、発電会社の業績予想を押し上げ、電力サプライチェーン全体で3,500億ドルの価値創出につながる可能性があります。一方で、長年にわたる電力網への投資不足がボトルネックを生み、新たな投資の波を引き起こしています。業界は、天然ガスやエネルギー貯蔵、その他の新技術への依存を強めるとともに、再生可能エネルギーの選択肢も支援しています。2024年にはガスへの投資が過去最高を記録し、2026年以降はガスが新たな世界的な発電源となる見込みです。今後、天然ガスは中国を除く世界の新たな電力需要のおよそ約5分の1を担うと予想されます。また、原子力も投資拡大の好機を迎えており、(エネルギー貯蔵である)バッテリーもデータセンターや中国などの市場で新たな投資が進んでいます。今後、電力業界は予想外の変化と機会に満ちた数十年にわたる変革期を迎えます。化石燃料と非化石燃料の協業増加、段階的な価格設定の導入拡大、スポット市場やビハインド・ザ・メーター(BTM)市場における販売急増などにより、長期的かつ高水準のパワースプレッドが続くでしょう。ガス、原子力、エネルギー貯蔵、燃料電池のサプライチェーンは、特にアジアと米国で価格決定力が強まり、新たな成長機会を得る見通しである一方、電力網運営者は投資増加と収益改善の恩恵を受けます。逆に、純粋な太陽光・風力発電事業者は、アジアでコスト上昇が続く可能性がありますが、これは米国や欧州でも既に見られる傾向です。世界の電力網がバッテリーや安定した化石燃料供給への依存を強め、AIや製造業の国内利用など、電力サプライチェーン全体の需要増加に対応していくためです。結局のところ、AIと電化が電力需要を加速させる中で、本当の課題は再生可能エネルギーを増やすことだけではありません。強靭で柔軟な電力網を構築し、新しい...
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    6 分
  • 2026年の米国成長を牽引するもの
    2025/11/25
    弊社米国チーフエコノミストのマイケル・ゲイペンが、2026年に成長・インフレ・AI革命がどのように展開するかを解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社米国チーフエコノミストのマイケル・ゲイペンが、2026年の米国経済見通しについて、成長・インフレ・雇用・米連邦準備制度理事会にどのような影響があるのかを解説します。このエピソードは11月25日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2025年が急速かつ大胆な政策変更の年だったとすれば、2026年はその余波が落ち着く年です。去年 昨年、主に厳しい貿易・移民政策の影響で、成長が低迷し、インフレ率がなかなか下がらないと弊社は予測しましたが、これは的中しました。しかし今年は状況が変わりつつあります。米国経済はようやく高い不確実性の段階を脱しつつあり、2026年には1.8%、2027年には2%の緩やかな成長に戻ると見込んでいます。インフレ率は落ち着くものの、FRBの目標である2%には届かない見通しです。2026年末までには、ヘッドラインPCEインフレ率が2.5%、コアインフレ率が2.6%となり、いずれも2027年を通して2%を上回る水準が続くと予想しています。つまり、インフレとの戦いは終わっていませんが、最悪期は過ぎたと言えるでしょう。 従って、2025年が「成長低迷と粘着するインフレ」だったとすれば、2026年と2027年は「緩やかな成長とディスインフレ」と表現できます。貿易・移民政策の影響は薄れ、経済環境は改善する見通しです。現在、いくつかのリスクも残っています。関税が消費者価格を一時的に押し上げる可能性があり、企業が関税分を価格に転嫁できなければ追加のレイオフが懸念されます。しかし、2026年後半以降は、これらのリスクが好転し、成長にプラスのサプライズが期待できる状況になると考えています。結局のところ、AI関連の設備投資は引き続き堅調で、富裕層の消費も好調です。楽観的な見方ができる理由がある一方で、最も可能性が高いシナリオは「緩やかな成長への回帰」です。米国の消費者は立ち直り始めますが、そのペースはゆっくりです。関税の影響で2026年前半は物価が高止まりし、低・中所得層の購買力が圧迫されます。これらの層は主に労働市場からの収入で消費を行うため、インフレが落ち着き始めるまでは購買力が制約されるでしょう。実質消費は2026年に1.6%、2027年に1.8%増加する見込みですが、急成長とは言えません。主な要因は、移民制限や関税の影響で雇用が抑えられ、雇用市場が依然として「低採用・低解雇」モードにあることです。失業率は2026年第2四半期に4.7%でピークを打ち、年末までには4.5%へと低下すると予想しています。雇用は存在しますが、労働市場は活況とは言えません。関税の影響が吸収されるまでは、雇用が上向くのは難しいでしょう。雇用が冷え込むと、FRBが動きます。FRBは利下げを進めていますが、これはコストを伴います。9月と10月にそれぞれ0.25%の利下げを行った後、2026年半ばまでにさらに0.75%の利下げを実施し、目標レンジは3.0~3.25%になるとみています。これは労働市場の弱さに備えるための措置ですが、その分インフレ率が目標を上回る期間が長くなります。つまり、FRBは綱渡りのような状況で、雇用重視に傾きすぎればインフレが長引き、インフレを重視しすぎれば成長が鈍化します。今のところ、FRBは雇用重視の姿勢を選択しています。AIによるマクロ経済への影響はどうでしょうか。AIは確実に主要な成長ドライバーです。AI関連のハードウェア、ソフトウェア、データセンターへの支出は、2026年・2027年ともに成長率を0.4ポイントほど押し上げます。これは全体の成長のおよそ20%に相当します。ところが、輸入によってその効果は希薄化します。輸入技術を考慮すると、AIの正味の寄与は大きく減少します。それでも、2027年...
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  • 強気相場はFRBを注視している
    2025/11/24
    モルガン・スタンレーの最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ポートフォリオの見直しを提案する理由について、マーケットの動きと金融政策のギャップに留意しながら解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日のエピソードでは、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、短期的にも、中期的にもFRBが今後の株式市場のパフォーマンスの鍵を握る可能性がある理由について解説します。このエピソードは11月24日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。9月末に弊社は、政策金利と流動性の両面で、FRBと市場の間の緊張が高まっており、これが短期的な調整につながる可能性があると説明しました。実際にそのシナリオが進行しています。9月には高モメンタムの低クオリティ株が、流動性の引き締まりにより大きく反応した一方で、S&P500やナスダック100といった高クオリティ株は、10月29日のFOMC会合で示された利下げに対するタカ派的見方の強まりにより大きく反応する形で、このシナリオが実現しています。S&P500の下落幅は5%にとどまっていますが、水面下ではより大きな痛手を受けており、上位1000銘柄のうち3分の2が10%以上、4分の1が20%以上下落しています。同様に、ビットコインは30%近く下落し、モメンタム株よりも早くピークを迎えました。金もやはりS&P500よりも早く流動性の引き締まりから影響を受けています。私たちは金融政策に関連したこの動向を引き続き注視しており、短期的には株価指数がさらに下落する可能性も否定できません。特に市場の広がりが弱い状態が続く場合は注意が必要です。ただし、水面下の弱さは、市場の一角で低迷が始まったのではなく、今回の調整が終わりに近づいているサインと考えています。過去の例を見ても、調整の終盤には主力銘柄が最も大きく下落する傾向があります。9月のポッドキャストでも述べたように、このような調整や期待値のリセットは、コンセンサス予想と依然、異なる弊社の「ローリング・リカバリー」シナリオに基づく投資を強化する好機と考えています。民間部門の労働市場データには、FRBのより積極的な利下げを示唆する、低迷の兆しが見られます。これは、今年4月に株価の底打ちとともに労働市場データの変化率が底を付けたと見る私の中核的見解とかなり一致しています。FRBが待っている政府の公式な労働データの発表は遅れており、弊社や市場がすでに知っていることを後から確認するだけです。10月の公式の雇用統計は政府閉鎖のため発表されず、11月分も12月16日まで発表されません。そのため、株式市場はFRBの重い足取りと利下げの遅延を相手に引き続き格闘する可能性があります。良いニュースとしては、政府再開に伴い、今後数週間で財務省一般口座(TGA)残高が大幅に減少する見込みです。これは、FRBによる量的引き締めの終了と同じタイミングで、待望の流動性拡大を助ける見込みです。問題は、これらの変化が流動性環境を持続的に改善するのに十分かどうかです。私の見解では、最も明確なサインとなるのは、今後2週間で、こうした動向に最も敏感な株式や資産クラスに改善が見られるかどうかです。つまり、株式市場では低クオリティで利益の出ていない成長株が最も大きく上昇するはずです。結論として、私は今後12カ月のS&P500および株式全体に対する弊社の強気見通しに引き続き確信を持っています。最近発表した2026年の見通しに対する投資家からの初期反応を見ると、弊社の中核的見解のいくつかは依然としてコンセンサスとは異なります。具体的には、弊社は「初期サイクル」局面にあると考えており、コンセンサスが「後期サイクル」と見ているのとは異なります。利益成長率も弊社は17%と見ており、コンセンサス予想の14%を上回っています...
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  • AI設備投資ブームで試されるクレジット市場
    2025/11/21
    市場でAIバブルの可能性が取りざたされています。今回は弊社コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、債務証券需要の増加がもたらすインパクトについて、ひとつの見方をご紹介します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、クレジット市場が直面するかなり異例な困難についてお話しします。このエピソードは11月21日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。クレジット市場を芯まで揺さぶった世界金融危機から15年を優に超える歳月が流れました。あれがどれほど極端な時期であったか、言い表すのは容易ではありません。普通に見られた関係やバリュエーション・アプローチが数多く崩れました。クレジット損失は80年ぶりの規模に膨らみました。私は、この記録は次の80年間も破られずに残ると思いますし、そうであることを希望しています。ただこのショックは、クレジット市場の光明を伴ったものでした。銀行のバランスシートが膨張しすぎ、かつ複雑になりすぎたことで生じた危機が過ぎると、バランスシートは縮小し、簡素化されました。資本市場が突然閉鎖される事態を目の当たりにした企業は、手元の現金を積み増しました。保守的な資金運用に自ら乗り出すケースも少なくありませんでした。米国における債務の残高を長期にわたって増やし続ける原動力だった住宅市場は、貸出基準が著しく厳格になったことで、借入額が全体に減少することとなりました。これらのトレンドには共通するテーマがひとつありました。それは債券の供給減少です。クレジット市場はその後、ボラティリティの急上昇に何度も見舞われました。しかし、それらは総じて言えば、ユーロ圏危機とか新型コロナウィルスのパンデミックなど、マクロ経済に関する懸念により引き起こされたものでした。また、2010年代半ばにおける石油関連セクターの不振や、2023年のシリコン・バレー銀行の破綻など個別企業の問題によって起こされる場合もありました。需要の水準に比べて借入額が多すぎる、だからクレジット市場が下落するという考え方自体が、問題になることはありませんでした。たしかに、今まではそうでした。このプログラムでも以前お話し申し上げたように、足元ではテクノロジー企業による設備投資額のとてつもない増加が進行中です。クラウドや人工知能(AI)の分野における各社の目標を支えるインフラを整備しようとしているのです。モルガン・スタンレー・株式リサーチの推計によれば、最大級の投資を行う企業は合計およそ4700億ドルの支出を年内に決定し、来年にはその額が6200億ドルに増えるそうです。合計1兆ドルを超える投資がたった2年のうちに行われる計算です。おまけに、その額はまだ伸びています。この支出には非常に強い勢いがあります。投資主体の企業は莫大な金融資源を有しており、この投資を会社の将来にとって非常に重要なものとみなしているからです。しかし、こうした投資の原資は、どこかから調達しなければなりません。投資主体は多額の利益を計上している企業であることが多いため、弊社では、投資額のおよそ半分は各社のキャッシュフローから捻出されるとみています。残りの半分については、債務市場が大きな役割を担うでしょう。これらの企業は高い格付けを得ていることが多く、その分借り入れ余力も大きいとなれば、特にそうです。そしてここ数週間で、債務市場の蛇口は開かれました。ハイパースケーラーと称される巨大テクノロジー企業数社が一度に数百億ドルの資金を、それも続けざまに借り入れています。ここでよい知らせがあります。この新規借り入れはディスカウントで発行されており、発行体は既存の債務の場合よりも少し多い金額を投資家に返済...
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  • 2026年グローバル債券市場見通し:ミクロなテーマに集まる注目
    2025/11/20
    来年にはマクロのショックよりもミクロのトレンドに注目が集まりそうなのはなぜなのか、弊社のアジア太平洋サミットの会場からチーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、グローバル債券市場の2026年の見通しと主要テーマについて、弊社チーフ債券ストラテジストのヴィシー・ティルパターが、シンガポールで開かれているモルガン・スタンレー・アジア太平洋サミットの会場からお話しします。このエピソードは11月20日 にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。昨年は政策の予測が難しく、私たちの仕事も本当に複雑になりました。今年は今年でまた困難が巡ってくるわけですが、弊社では、今年はミクロのトレンドが市場を動かす、それもリスクに対する全般に前向きなスタンスに適応する形でそうなるとみております。弊社エコノミストによる予測のベースケースでは、ディスインフレが続き、経済成長率は2027年までに潜在成長率に収斂していく、そしてその潜在成長率自体も改善する可能性があるとされています。特筆されるのは、需要の増大と生産性の向上を検討した上振れシナリオをあわせて示す一方で、下振れシナリオが比較的穏やかなものにとどまっていることです。米国は2026年も世界の中心であり続け、米国主導のショック、良いショックと悪いショック両方がグローバルな経済・市場の成り行きを左右することになりそうです。 2025年の米国経済は、健全なバランスシートと富の増加に支えられた堅調な消費と人工知能(AI)への活発な設備投資という2つの要因が経済成長を下支えし、通商政策の向かい風にもかかわらずリセッション(景気後退)の危機を回避することに寄与しました。2026年については、平坦な道のりにはなりそうにないものの、上記と同じ構図がべースケースの見通しを支え続ける公算が大きいと思われます。FRBは、労働市場の軟化と堅調な消費支出が併存するおなじみの難問に直面しています。弊社の基本シナリオでは、失業率の上昇につれて景気を中立にするような利下げが行われ、下半期に回復がみられると想定しています。米国外では、ほとんどの国で経済成長率が潜在成長率に、政策金利が景気に影響を及ぼさない中立金利に、それぞれ2026年末までに向かうと思われますが、そのタイミングと軌道は異なるでしょう。また近年みられるように、グローバル経済の様子は米国主導の行動の効果と副次的影響に左右されることになりそうです。弊社のマクロ・ストラテジストは、国債利回りは一定のレンジ内で推移するが2つの局面に分かれるだろうと予想しています。具体的には、FRBによる計50ベーシスポイントの利下げを受けて債券価格が上昇し、10年物米国債利回りが年央までに押し下げられる局面と、その後第4四半期にかけてじりじり上昇する局面を見込んでいます。イールドカーブがスティープ化するとの見通しには引き続き強い確信があり、特に、2年10年カーブにその傾向が現れるとみています。米ドル相場も同様な展開になり、年央に下落してから年末にかけて反発するとみています。AI投資の資金調達が重視されるようになり、クレジット市場に関心が集まっています。私がシンガポールでこれまでに参加したいずれの会議でも話題になっていたほどです。したがって、次のAI関連投資の波を可能にするにあたって、クレジットは中心的な役目を担うことになりそうです。無担保のクレジットから証券化されたストラクチャード・クレジットに至るまで、そして公開市場と非公開市場(プライベート市場)の両方でそうなるでしょう。弊社のクレジット・ストラテジストと証券化クレジット・ストラテジストは、2026年に行われるデータセンター建設資金の調達はIG債の発行が中心になると見込んでいます。...
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  • 2026年 米国アウトルック:強気相場の過小評価されたシナリオ
    2025/11/19
    弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、短期的なリスクがあるにもかかわらず、2026年の成長についてコンセンサスから外れる前向きな見方を持ち続ける理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、今週初めに発表した2026年の見通しについて解説します。このエピソードは11月19日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2026年も、弊社がこの1年間語ってきたストーリーが続きます。1年前を振り返ると、弊社の米国株式見通しは、上期は厳しく、下期は力強い展開になるというものでした。当時、この見方はコンセンサスから外れていました。多くの方は、トランプ大統領が2期目に就任したことで上期は好調となり、その後インフレ再燃で下期は厳しくなると予想していました。コンセンサスとは違う弊社の見解は、新しいトランプ政権下における政策の順序は、まず成長へのマイナス要因となる政策から意図的に着手するという考えに基づいていました。これは、新任のCEOが「キッチンシンク」戦略をとり、最初に悪材料を出し切ってから新たな成長戦略に移行するのに似ています。その転換点は年央頃になると考えていました。2期目のトランプ大統領就任時、米国経済のスラックは1期目の時よりもはるかに小さい状態でした。これが、政策の順序が異なる可能性が高いと考えた主な理由です。2024年末時点では、業績予想修正の幅や他の景気循環指標も減速局面にありました。対照的に、2017年初頭(当時弊社は強気の見方でコンセンサスから外れていました)は、2015~2016年の製造業・コモディティ不況から回復し、業績予想修正の幅や多くの循環指標が再加速し始めていました。今年を振り返ると、この政策の順序は概ね実現しましたが、予想よりも速く、劇的に進行しました。政策面での弊社の見解は、今もコンセンサスから外れているようです。今年実施された政策が今後、最終的に成長加速、特に平均的な銘柄の押し上げにつながるのか、多くの業界関係者が疑問視していますが、弊社はこの政策選択が2026年に向けて成長へのプラス要因になると考えており、「経済を過熱させる」というテーマとも概ね一致しています。さらに、弊社がより前向きな見方をするもう一つの要因があります。4月には、3年前から続いていたローリング・リセッションが終わりました。最終段階は、政府効率化省(DOGEドージ)がもたらした政府部門のリセッション、AI設備投資の伸びや貿易政策に対する期待の変化率の底打ち、そして現在も続いている消費者サービス分野のリセッションでした。要するに、4月に新たな強気相場とローリング回復が始まったと弊社は考えており、これはまだ初期段階で、特に経済の中でも遅れている多くの分野や市場では明確に認識されていません。ここにチャンスがあるのです。新たな景気循環で株価パフォーマンスが広がる際に通常必要となる「利下げ」が、今回は欠けています。通常であれば、このように労働市場が弱まる中でFRBはもっと早く利下げを実施していたはずですが、コロナ禍による不均衡や歪みのため、FRBの政策緩和は通常より遅れています。そしてこれが、初期サイクルの勝者への本格的な資金シフトを妨げてきました。皮肉なことに、政府機関の閉鎖は経済をさらに弱めましたが、雇用統計の発表が見送られたことでFRBの行動も遅れています。もしこのデータ遅延が続いたり、遅れて発表される雇用統計が非政府部門の雇用データに見られる最近の弱さを裏付けない場合、弊社の強気な12か月予想には短期的なリスクとなります。このような労働市場の弱さと「経済を過熱させる」という政府の方針が組み合わさることで、最終的には、FRBは現在の市場予想...
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    9 分