『ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/前編」』のカバーアート

ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/前編」

ボイスドラマ「最後の鉄道員(ぽっぽや)/前編」

無料で聴く

ポッドキャストの詳細を見る

このコンテンツについて

雪舞う飛騨一ノ宮駅に、ただひとり駅を守り続ける女性がいた。彼女の名はミオリ。1970年冬、愛する夫と娘を事故で失い、深い悲しみを抱えながらも、駅長として生きる道を選んだ。時は流れ1982年春。無人のホームで不安げに立ち尽くす一人の少女、ルナと出会う。高校の合格発表を前に水無神社へ向かうというルナと、そっと寄り添うミオリ。それは、まるで生き写しの娘との再会を思わせる、温かい交流の始まりだった。東京での声優という夢を追いかけるルナと、飛騨一ノ宮駅の無人化、そして自身の早期退職を目前に控えるミオリ。残された時間はあとわずか。それぞれが抱える想いを胸に、やがて来る別れの日を、二人はどのように迎えるのだろうか。ミオリとルナ、二人の視点から描かれる前編・後編。失われたもの、そして与えられたもの。飛騨一ノ宮駅と臥龍桜に見守られた、時代を超えた心温まる絆の物語を、どうぞお聴きください。【ペルソナ】・ミオリ(39歳-51歳-54歳)=飛驒一ノ宮駅の駅長(CV=小椋美織)・ルナ(15歳-18歳)=(CV=坂田月菜)・マサヒロ(59歳)=久々野駅の駅長(CV=日比野正裕)<シーン1:1970年/それでも駅に立つ>◾️SE:吹雪の音/走り込んでくる友人の足音「ミオリさん!ご主人と娘さんが!」「えっ」「事故で病院に!早く!急いで!」「そんな・・・」「なにやってんだ!」「もう・・すぐ・・・最終列車が・・・」「なに言ってんだよ!」1970年冬。夫と娘がこの世を去った。2人の最後にも立ち会わず、私は駅のホームに立つ。吹雪が舞い踊る臥龍桜。大木は、まるで私を責めるように大きな枝を揺らしていた。私の名前はミオリ。10年前からここ飛驒一ノ宮駅の駅長を務めている。国鉄高山本線。「本線」とは言ってもローカル駅の飛騨一ノ宮。たった1人の鉄道員(ぽっぽや)が駅長の私だ。1人だけでも駅長の仕事は多岐に渡る。駅務の統括。出札・改札業務。取扱貨物の管理。ホームや線路の点検・清掃。除雪作業。地域との交流。1日の列車の停車本数が30本にも満たないローカル駅とはいえ、不器用な私は毎日走り回っていた。公共交通機関というインフラの根幹。鉄道員は決して鉄道の運行を止めることは許されない。それが、飛騨一ノ宮駅駅長である私の使命。と思っていた。◾️SE:高山線ローカル列車の警笛<シーン2:1982年3月/少女との出会い>◾️SE:飛騨一之宮水無神駅から発車する音/小鳥のさえずり「異常なし!発車!」1982年春。いつものように高山方面へ向かう普通列車を見送る。春とは名ばかりの肌寒い3月。臥龍桜の蕾はまだまだ硬く、静かに眠っている。誰もいないと思ってホームへ目を向けると、1人の少女が不安気な表情で立っている。あれは・・久々野の中学校の制服。娘も生きてたらあのくらいね。どうしたのかしら?なにか思い詰めてるみたいな顔をして・・・まさかね。一応、声をかけてみよう。「お嬢さん」「え」「突然ごめんなさい。飛騨一ノ宮駅 駅長のミオリです」「あ・・はい」「なにか困りごと?」「えっと・・・」「よかったら、話してみて。急行のりくらの通過までまだ30分あるから」「はい・・あの・・」「うん」「高山までの切符なんですけど・・・一ノ宮で降りても・・大丈夫でしょうか・・?」「降りることは問題ないわよ。でも、もう一回乗る時は・・」「大丈夫です。もう一度切符を買うから」「ああ、そう・・・ごめんね。でも、本当にいいの?飛騨一ノ宮で降りて」「はい・・・」「どこか行きたいとこがあるの?」「飛騨一之宮水無神社」「水無神社?」「・・今日高校の合格発表なんです」「まあ」「試験終わっちゃってるのに、合格祈願っておかしいですよね?」「おかしくないわ。シュレディンガーの猫っていう考え方だってあるし」「シュレ・・ディンガー・・?」「あ、失礼。物理の実験よ。夫が大学で物理の講師だったから」「すごい。そんなすごい人がいるんですね」「うん、もういないけど。この世には」「あ・・・ごめんなさい!」「ううん、こっちこそ。話の腰を折っちゃって・・で、水無神社に参拝してから合格発表を見...
まだレビューはありません