
ひのきとひなげし
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📖『ひのきとひなげし』朗読 – 風に舞う花たちと夕暮れの庭で繰り広げられる不思議な物語🌺🌲
静謐な朗読の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『ひのきとひなげし』。
風の強い夕暮れ時、まっ赤に燃え上がったひなげしの花たちが、風にぐらぐらと揺れながら息もつけないような様子で立っています。その背後では、同じく風に髪も体も揉まれながら、若いひのきが立っていました。ひのきは風に揺れるひなげしたちを見て「おまえたちはみんなまっ赤な帆船でね、いまが嵐のところなんだ」と声をかけます。しかしひなげしたちは「いやあだ、あたしら、そんな帆船やなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき」と反発するのでした。
やがて銅づくりの太陽が瑠璃色の山に沈み、風がいっそう激しくなります。風が少し静まった頃、いちばん小さいひなげしがひとりでつぶやきます。「ああつまらないつまらない、もう一生合唱手だわ。いちど女王にしてくれたら、あしたは死んでもいいんだけど」。ひなげしたちは皆、美しい「テクラ」という名の花を羨ましがり、自分たちも「スター」になりたいと憧れを抱いているのでした。
そんな中、向こうの葵の花壇から悪魔が現れます。最初は美容術師として、次は医者として姿を変え、ひなげしたちに美しくなる薬を提供すると申し出るのです。その代償として求めるのは、ひなげしの頭にできる「亜片」でした。お金のないひなげしたちは皆、その取引に心を動かされることになります。
この物語は、「スター」になりたいと願うひなげしたちの心の動きを、繊細な心理描写で描いています。ひなげしたちの会話は生き生きとしており、それぞれの個性や想いが丁寧に表現されています。「スター」への憧れは、現代にも通じる普遍的な願望でありながら、花という存在を通して語られることで、美しさの本質を静かに浮かび上がらせます。
風の音、雲の流れ、夕暮れから夜への時間の移ろい——自然の営みと生命の営みが重なり合う中で、ひのきという存在は静かな知恵と愛情深い眼差しでひなげしたちを見守ります。悪魔の甘い誘惑と、それに対するひのきの警告は、欲望と理性、表面的な美しさと本当の価値について、聞き手にも静かな問いを投げかけます。
作品全体に流れる詩的なリズムと、方言を交えた親しみやすい会話のバランスも絶妙です。色彩豊かな情景描写は、まるで一枚の絵画を見ているような美しさで、朗読を通してその世界に深く入り込むことができます。夕暮れの庭という限られた空間の中で展開される小さな宇宙が、聞く人の心に静かな余韻を残すことでしょう。朗読でゆっくりとその世界をお楽しみください。
#毒 #衝動