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はじめての漢方

はじめての漢方

著者: 杜の都の漢方薬局 運龍堂 佐藤貴繁
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10月19日まで。※適用条件あり
漢方の専門薬局にて、漢方薬を処方している薬剤師が、漢方の魅力を伝えます。
実践的なお話も多いので、健康や美容などにぜひ、お役立てください。

杜の都の漢方薬局 運龍堂 佐藤貴繁
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エピソード
  • 207.秋は腸も乾く ― 便秘と水の摂り方、サウナ、肺を潤す食べもの
    2026/10/04

    秋になると便秘が悪化する方がいる、という話をご存知ですか・・・?
    乾燥するのは肌や目だけではありません。腸も乾くため、夏は軟便気味だった方が秋には逆に便秘へ傾く、ということが起こります。前回に続く秋の養生・実践編として、今回は「水の摂り方」「汗のかき方」、そして肺を潤す食べものまでを詳しく解説していきます。

    ▼今回お話ししていること
    ・秋に便秘が悪化するのはなぜか ― 季節で変わる漢方薬の量
    ・「水をたくさん飲めば潤う」が成り立たない理由
    ・日本は湿度の高い島国 ―「1日2リットル」をうのみにしない
    ・夏の熱中症対策の水分補給は、また別の話
    ・秋冬のサウナは要注意 ― 毛穴が閉じる季節の汗
    ・喉・鼻の粘膜と、肺を潤すいちじく・りんご・瓜

    まず水の話から。体を潤したいからと水をたくさん飲めばよい、とはいきません。余分な水を捨てて、きれいな水と入れ替える――その交換が進んで初めて、本当の潤いになると考えられているからです。巡りが整わないまま水だけを増やすと、かえって水が滞ってしまうこともあります。まして日本は海に囲まれた島国で、平均すれば湿度の高い土地。もともと余分な水が残りやすい環境ですから、「1日2リットル」といった目安をそのまま当てはめるのは考えものです。ただし、夏の熱中症対策は別の話。年齢を重ねると喉の渇きを感じるタイミングが遅れるため、こまめに摂るのは理にかなっています。多めに飲みたいときは、梅雨の回で登場した五苓散のように、水の巡りを助けるものを併せるとよいでしょう。

    汗のかき方も季節で変わります。夏までは発散の季節でしたが、実りの秋から冬へ向かうにつれて、無理をしない時期に入っていきます。毛穴が閉じていく時期に大量の汗をかくのは負担になるため、流行のサウナも、秋冬はご自身の体力と相談してほどほどに。そして乾燥は、肌や肺だけでなく喉や鼻の粘膜も傷つけやすくします。風邪にも気をつけたい季節です。食べものは、少し辛いものを意識しつつ、体を潤すものを。秋に採れるいちじくやりんご、かぼちゃやきゅうりといった瓜の仲間は、肺を潤すといわれています。

    2回で終わる予定が、3回目に続きます。次回は秋と心のお話など、さらに掘り下げていきます。ぜひ続けてお聴きください。


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  • 206.秋の養生・基本編 ― 乾燥に弱る「肺」と、辛味のちから
    2026/09/27

    秋に負担がかかる五臓はどこか、覚えていらっしゃいますか・・・?
    答えは「肺」です。急に湿度が下がる季節は、呼吸・皮膚・そして肺そのものに、まとめて負担がかかります。面白いのは梅雨どきとちょうど逆になること――湿気の多い時期に弱っていた胃腸は、乾燥してくると調子を取り戻します。「食欲の秋」には、ちゃんと理屈があったのです。今回は今年の秋の養生を、基本から詳しく解説していきます。

    ▼今回お話ししていること
    ・秋に「肺」が弱りやすい、三つの理由
    ・呼吸と自律神経のつながり ― なぜ深呼吸がよいのか
    ・毛穴が閉じると、皮膚呼吸の効率が落ちる
    ・梅雨と秋はちょうど逆 ―「食欲の秋」の理屈
    ・秋の味は「辛味」― 玉ねぎ・長ねぎ・大根で十分
    ・皮膚の表面から蒸気を逃がす、という東洋医学の考え方

    肺が弱りやすい理由は三つあります。ひとつは呼吸。肺の大きな役割である呼吸は自律神経と深く結びついていて、リラックスしているときはゆっくり、興奮しているときは浅く速くなります。体と心は表裏一体ですから、意識してゆっくり呼吸すれば心も落ち着く――健康法に呼吸法があるのは、このためです。ふたつめは皮膚。「皮膚呼吸」というとおり皮膚も呼吸を助けていますが、急に湿度が落ちると毛穴が閉じ、慣れるまでその効率が落ちてしまいます。そして三つめが、肺そのものが乾燥に弱いこと。乾いた咳が出やすくなるのは、この時期ならではです。

    では何を摂ればよいのでしょう。五臓と味の対応でいうと、秋は「辛味」。辛いものは皮膚の表面へ体液を運ぶのを助けるとされ、乾いた肌にとっても心強い味です。ただし極端に辛いものは必要ありません。閉じている毛穴を一気にこじ開けることになり、かえって負担になるからです。玉ねぎ、長ねぎ、大根、にんにく――このくらいで十分。ちなみにお酒も辛味に分類されるそうですが、もちろん量はほどほどに。東洋医学では、余分な熱と水を皮膚の表面から蒸気として逃がすと考えます。湿度が高ければ逃がしづらくてむくみ、乾きすぎれば表面まで潤いが届かずカラカラになる。だからこそ、季節ごとに味を変えて肌を整えるのです。

    次回は、それぞれの時期に使いたい漢方薬と食べものを、具体的にご紹介します。ぜひ続けてお聴きください。


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    12 分
  • 205.真珠散の中身 ― 鯉の肝・菊の花・八つ目うなぎのはたらき
    2026/09/20

    「八つ目うなぎ」は、目が8つあるわけでも、うなぎでもないことをご存知ですか・・・?
    前回に続いて「真珠散」のお話です。今回は主役の真珠以外に入っている生薬――鯉の肝、菊の花、そして八つ目うなぎを取り上げます。苦味で熱を除くもの、高ぶりをしずめるもの、栄養を補うもの。役割の違う素材がどう組み合わさって一つの処方になっているのかを、詳しく解説していきます。

    ▼今回お話ししていること
    ・鯉の肝 ― 苦味で目の熱・赤み・痛みをしずめる
    ・鯉の肝を買い付けに行くツアーがあった時代の話
    ・菊の花 ― 目の充血と、高ぶった「肝」をしずめる
    ・花粉症の時期に菊の花が売れる、その理由
    ・クコの実との組み合わせと、角膜の酸化ストレスの実験
    ・八つ目うなぎ ― 名前の由来と、うなぎの5倍以上というビタミンA

    まずは鯉の肝。目と関わりの深い五臓の「肝」に入る素材で、とにかく苦いのが特徴です。夏の回でお話ししたとおり、苦味には熱を外に出す働きがあるとされ、目の熱や赤み、痛みをしずめるのが得意。見た目に異常はないのに見えにくい、暗いところで見えづらい(鳥目)といった状態にも用いられ、長く飲めば体も心も強くなるといわれてきました。昔はお酒をよく飲む方や目が疲れやすい方に良いとされ、鯉の養殖場まで肝を買い付けに行くツアーまであったのだそうです。いまならスマホやパソコンで疲れた目に、というところでしょうか。

    菊の花も同じく「肝」に入り、目の充血をしずめるほか、高ぶった肝を抑えることでイライラやのぼせ、こめかみの痛みにも用いられてきました。花粉症の時期に求める方が増えるのは、そのためです。動物実験では角膜の傷や炎症、活性酸素に関する報告があり、クコの実と組み合わせると角膜の酸化ストレスが減ったという実験も。そして八つ目うなぎ。目は左右にひとつずつで、その後ろにエラのような穴が七つ並ぶため「八つ目」と呼ばれるだけで、実はうなぎでも魚の仲間でもありません。ただし栄養は圧巻で、暗いところの視界に関わるビタミンAが本家のうなぎの5倍以上。血液をつくるビタミンB12や、粘膜を守るビタミンB2も豊富です。

    真珠が濁りを澄ませ、鯉の肝と菊の花が熱をしずめ、八つ目うなぎが栄養を補う――役割の違う素材を組み合わせて、真珠散という処方は設計されています。目を酷使する毎日だからこそ、知っておきたい一剤です。


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