【心房細動と抗凝固薬】脳卒中の急変、最終正常時刻と服薬情報を届ける|#348
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概要
心房細動(しんぼうさいどう)は、心房がけいれんするように細かく震え、規則正しい収縮を失う不整脈です。高齢になるほど増え、在宅医療の現場では「珍しくない持病」です。心房の中で血液がよどむと血栓(けっせん)、つまり血のかたまりができ、それが脳の太い血管に飛んで詰まるのが心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)です。詰まる血管が太いため梗塞巣が大きくなりやすく、突然に重い麻痺や意識障害をきたすことから、現場では「ノックアウト型脳卒中」と呼ばれます。
この血栓を防ぐために処方されるのが抗凝固薬(こうぎょうこやく)です。ワルファリン、あるいはDOAC(ドアック、直接経口抗凝固薬)と呼ばれるダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなどが使われます。ここに在宅ならではのジレンマがあります。薬を飲んでいれば脳梗塞(のうこうそく)は減りますが、一方で血が止まりにくくなるため、脳出血(のうしゅっけつ)や消化管出血(しょうかかんしゅっけつ)のリスクは上がります。つまり、心房細動で抗凝固薬を飲んでいる利用者さんは、詰まる急変と出血する急変の両方を抱えているのです。
そして厄介なことに、脳梗塞と脳出血は、ベッドサイドの観察だけでは区別できません。どちらも片麻痺(かたまひ)で始まり、どちらも呂律(ろれつ)が回らなくなります。夕方の訪問で「いつもと様子が違う」と気づいたとき、私たちがすべきなのは鑑別することではなく、鑑別に必要な情報を、正確に、短時間で、搬送先に渡すことです。この回では、発症時刻の押さえ方と、抗凝固薬の内服情報の伝え方という、脳卒中固有の二つの論点に絞って掘り下げます。
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