【心房細動と抗凝固薬】終末期の抗凝固薬、続ける・やめるをどう話す?|#342
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概要
在宅で看ている高齢者の薬袋を開けると、ほぼ必ずと言っていいほど入っているのが心房細動(しんぼうさいどう)に対する抗凝固薬(こうぎょうこやく)です。ワルファリン、あるいはDOAC(ドアック/直接経口抗凝固薬)と呼ばれるエドキサバン、アピキサバン、リバーロキサバン、ダビガトランといった薬です。これらは心臓の中にできた血のかたまりが脳に飛んで起こる心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)を防ぐために、何年も、人によっては十年以上、毎日欠かさず続けられてきました。
ところが終末期になると、この薬は突然、扱いにくい存在になります。錠剤が飲み込めない。歯肉出血(しにくしゅっけつ)が止まらない。褥瘡(じょくそう)の処置のたびに血がにじむ。食事がとれず脱水で腎機能(じんきのう)が落ち、薬が体に溜まっていく。それでも「この薬だけは絶対にやめてはいけないと言われてきた」という本人と家族の記憶は強く、現場のスタッフも「自分が中止を提案していいのか」と迷います。
この回で扱いたいのは、「終末期に予防の薬は要るのか」という抽象的な問いではありません。抗凝固薬は、コレステロールの薬のように効果が出るまで何年もかかる薬ではなく、やめた翌日から脳梗塞(のうこうそく)のリスクが元に戻るという、きわめて即効的な薬です。だからこそ「余命が短いから予防はいらない」という一般論では片づきません。やめどきを決める具体的な引き金は何か、やめた後に起こりうることをどう家族に説明するか、そして本人の言葉をどう残すか。この三点に絞って掘り下げます。
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