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B02 哲学が大切にしていること──哲学と科学について(後編)

B02 哲学が大切にしていること──哲学と科学について(後編)

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概要
B. 取り扱い注意の言葉たちB.2. 哲学が大切にしていること──哲学と科学について(後編)B.2.1. さて、「真実」について研究している哲学者は、どんな研究をしているのでしょう。驚かれるかもしれませんが、古代から現代に至るまで、じつにたくさんの「真実とは何か」についての議論があり、これについて研究をする分野は「真理論」(theories of truth)という名前で、成立しています。スタンフォード大学の哲学辞典をみるだけでも、真理論には対応説、整合説、実在説、また反実在説など、さまざまな理論があることがわかります。B.2.2. こうした真実についての哲学理論が何をデータに研究しているのかというと、とってもありふれた、日常的な経験での真実について議論しています。たとえば、「この部屋に机がある」という言葉は、確かに「この部屋に机がある」ときにのみ「真実」だが、そうでない時には「真実」ではない、というような。B.2.3. あっけに取られてしまったかもしれませんが、よくイメージされるような、未来永劫変わらない絶対唯一の「真実」、あるいは教科書に載っていない、メディアが流さない「隠された真実」のような、その正しさを案に示すことで誰かに対して権力を持つような「事実」や「知識」について、研究しているのではありません。B.2.4. そうではなくて、普段、「真実」という言葉や経験が、私たちにとってどんな意味を持っているのかについて、研究しているのです。たとえば、「〇〇事件の真実」、「〇〇時代の真実」というような使われ方は、普段、メディアや書籍などでもよく使われていると思いますし、「あの頃、私にとっては〇〇が真実だった」というような、文学的な表現としても使われることはあると思います。B.2.5. 哲学はこうした、何らかの社会的・心理的な状況や個人的な経験に対して使われている「真実」といった言葉が、一体どのような意味を持つものなのか、またどのような経験でありうるのかを明らかにする理論づくりをしているといって、まず間違いはないのではないかな、と思われます。B.2.6. その際に、哲学者の検討している哲学理論は遥かな古代のものから、現代のものに至るまで実に幅が広いと言えます。同様に、哲学がその研究に用いる事例として採用しているものも、普段の日常的な出来事に限らず、歴史的な史実から、フィクションのなかの出来事に至るまで、一層多様であるのが、科学との違いと言えそうです。B.2.7. なぜ古代のものから現代のものまで、さらに日常や史実、フィクションに至るまで幅広く研究しているのかといえば、哲学は自分たちの社会を見えないところで支えている地盤のようなものを掘り下げようとしているところがあるからだと言えます。実際、現在当たり前に受け取られている価値観や考え方も、時を遡ると過去の哲学者の議論や、当時の多くの人々が信じていた価値観に行き当たることが多いのです。B.2.8. だからこそ、私たちは現代を生きるにあたって、当たり前のことだとされてもとても納得がいかなかったり、腑に落ちなかったりするとき、哲学の助けを必要とするときがあるように思います。なぜならこれまで哲学は、そうした人々の価値観や考え方のパターンを言語化すること、つまり理論にすることに注力してきたからです。B.2.9. ゆえにとても広い意味で、哲学を研究するということは、過去の時代の人々、特に哲学者たちがかたちづくってきたさまざまな理論について、さまざまな観点から考え直すというプロセスそのものと言えます。よって、その理論に誤解があれば注釈を入れたり、言葉の不足があるなら付けたしたりしますし、その理論が示している価値の基準が曖昧なら、よりはっきりしたものに整えたりもします。B.2.10. その意味で、哲学もまたとっても地道な営みです。理論のどこに不備があるのかは、一見しただけではわかりません。何百年もわからずじまいだったことすらあります。さらには、哲学には本当にさまざまな方法があります。詩のように哲学をしている哲学者もいれば、数式と記号を...
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