『B01 科学が大切にしていること──哲学と科学について(前編)』のカバーアート

B01 科学が大切にしていること──哲学と科学について(前編)

B01 科学が大切にしていること──哲学と科学について(前編)

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概要
B. 取り扱い注意の言葉たちB.1. 科学が大切にしていること──哲学と科学について(前編)B.1.1. このカテゴリーでは、とても繊細な取り扱いが必要な言葉について、お話ししていきます。おおよそ、AとBという二つの言葉のかかわりや重なり、ちがいについて考えてみることで、その意味の深みをなるべく感じ取ることができるように、していきたいと思います。そのため、他のカテゴリーに比べて長い時間の、前後編にわたるお話になるかと思いますが、ご容赦ください。B.1.2. まず今回は、哲学と科学という言葉について、考えてみたいと思います。枕として聞いてもらいたいのですが、「真実」なんて言葉を使って研究しているのは哲学者くらいだと、いわれることがあります。つまり、科学者は「真実」という言葉を使った研究をもうしていない、ということです。B.1.3. 確かに、自然科学、社会科学、人間科学など、統計調査や臨床、フィールドワークを使って新たな知識を生み出している科学者が、自分の行なっている実験の正しさ、客観性を測るために用いられる言葉は、「真実」ではありません。客観性の基準として、信頼性や妥当性といった言葉が、よく用いられています。B.1.4. なお厳密には、科学のなかにも主に実験室などで行われる量的研究と言われる分野と、主に実験室の外でのインタビューやフィールドワークによる質的研究と言われる分野があり、その双方ともに異なる研究の基準を置いているのですが、今回は量的な研究に絞って、お話しできればと思っています。B.1.5. さて、量的な研究が基本となっている科学の分野では、その知識の正しさの基準を、既存の知識や実験手法、または単発の実験結果(エヴィデンス)にのみ置いているのではありません。多くの国と地域でなされたいくつもの実験結果(エヴィデンス)と比べてテストし続けるというプロセス、そしてそのプロセスで変化する、実験結果の正しさの確率においています。B.1.6. わかりやすくするために、1つ例え話を入れてみたいと思います。たとえば、美味しいと評判の料理のレシピ本があったとましょう。そのレシピがほんとうに美味しい料理のレシピであるかどうかを判断するとき、私たちはレシピ本そのものの美しさや、そのレシピを考案した料理人の調理の巧みさ、またその通りに作って確かに美味しい料理が出来上がったという記事が1件あっただけでは、まだ信頼するには足りないと感じることでしょう。B.1.7. つまり、レシピ通りに作って確かに美味しい料理が出来上がるかどうかは、その料理をレシピ通りに作ることができる料理人によって、レシピ通りの食材と調理器具が適切な順序で取り扱われるかという大前提ももちろん、この調理を他の料理人も同じように反復できる手順がきちんと掲載されているかどうかにかかっています。B.1.8. では、実際にそのレシピをさまざまな国の、さまざまな地域の人が試してみたとしましょう。ほとんどの人には美味しいと評判だったのに、一部の人々には不評だったとしましょう。原因はどこにありそうでしょうか。B.1.9. 実はこのレシピ本が、資格を持つ料理人が作ったところ、まだ8割の確率でしか美味しい料理にならないレシピだったことがわかったら。もし既存の手順を見直し、9割9分の確率で美味しい料理になるレシピを作れたとしたら。後者のレシピの方が美味しい料理を生み出すことへの信頼性は高まり、そのレシピに掲載されている調理の順序にも妥当性があると感じられることでしょう。B.1.10. この譬え話でのレシピ改訂のプロセスのように、科学者はつねにその実験結果だけでなく、そもそもの実験の条件をしっかりと記録して、保管し、いざとなれば他の科学者と検討してもらうことができるようにしておく必要があります。B.1.11. なぜならその実験結果は、単にその結果だけをみて「これが事実だ、真実だ」と判断することができないものだからです。どのように実験したのか、そのプロセスを示すだけでなく、毎回の実験でその条件がしっかりと同じ条件で行...
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