• 第41回は、慶應大学商学部教授の権丈善一さんに聞く(下)2つの国民会議で進めた医療・介護改革
    2026/08/20


     今回のゲストは、社会保障研究の第一人者である慶應義塾大学商学部教授の権丈善一(けんじょう・よしかず)さん。


    主な内容


    ・2008年・2013年の2つの社会保障国民会議の舞台裏と、権丈氏が報告書に書き込んだ「治す医療から治し支える医療へ」という理念

    ・日本医師会の歴史(武見太郎氏の「白歴史」から、家庭医制度をめぐる「暗黒時代」まで)と、総合診療医が地域医療の核と位置づけられるまでの経緯

    ・舞鶴市の病院再編に見る、地域医療統合の困難さと「金ヶ崎の撤退戦」という比喩

    ・QOD(死の質)という概念と、「競争から協調へ」を体現する地域医療連携推進法人の可能性

    ・地域包括ケアシステムの現在地と、介護現場が抱える財源・人材の課題

    ・介護保険料が「40歳以上」になった知られざる経緯と、「消費の平準化」という社会保険の本質論

    ・SNS時代の「ポストトゥルース政治」―Oxford英語辞典の"Word of the Year"、ル・ボン『群衆心理』、長篠の合戦の比喩を通じて読み解く現代政治

    ・国民負担率、財政健全化、そして「事実(ファクト)」を語り続けることの重要性

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    53 分
  • 第40回は、慶應大学商学部教授の権丈善一さんに聞く(上)誤解だらけの年金、子育ての社会化
    2026/08/20

     今回のゲストは、社会保障研究の第一人者である慶應義塾大学商学部教授の権丈善一(けんじょう・よしかず)さん。


    主な内容


    ・新著『ちょっと気になる社会保障 V4』と、今年2月開始のYouTubeチャンネル『移動中に聴く社会保障』誕生秘話

    ・「手取りを増やせ」論の広がりの背景と、現物給付を含めた本当の負担・給付のバランス(給付付き税額控除・翁カーブを巡る議論)

    ・財源と給付を切り離して論じることの危うさ、社会保障教育の課題

    ・「モデル年金」(専業主婦40年という架空の設定)が生んできた誤解と、2024年財政検証で示された将来世代の年金水準の実像

    ・第3号被保険者制度の歴史的経緯と、「年収の壁」という言葉が生んだ就業調整の弊害

    ・お神輿型・肩車型という図式の誤解と、就業者/非就業者比率で見る社会保障の実際の安定性

    ・積立方式のリスクと、ワークロンガー・プライベートペンション・パブリックペンションの「WPP」という考え方

    ・社会保険の本質は「消費の平準化」であり、損得勘定ではなく安心という便益で捉えるべきという視点

    ・少子化対策ではなく「子育ての社会化」という発想の転換、医療・介護・年金と少子化の意外な関係


    <プロフィール>権丈善一(けんじょう・よしかず) 慶應義塾大学商学部教授。 1962年福岡県生まれ。1985年慶應義塾大学商学部卒業1985年慶應義塾大学商学部卒業、2002年より現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議の委員や、社会保障の教育推進に関する検討会の座長などを務る。最近の著書に、『ちょっと気になる社会保障 V4』がある。

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    1 時間 19 分
  • 第39回は、ロボット学者の石黒浩さんに聞く 大阪・関西万博で伝えた「アバター、ロボットの未来」
    2025/10/05
     今回のゲストは、ロボット学者の石黒浩(いしぐろ・ひろし)さん.。 石黒さんは大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」のプロデューサーを務めた。万博で伝えたかったこと、今後50年間にアバターやロボットがどんな形で社会に根づいていくのかを聞く。 大阪・関西万博、2025年4月13日に開幕。10月13日に閉幕する。万博への来場者数はすでに2000万人を超えた。万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現する8つのシグネチャーパビリオンの中の一つ「いのちの未来」をプロデュースした石黒さんは「会期末になって、もうほとんど、万博会場に入れないぐらいに予約が入っていて、すごく盛り上がっています。大成功だったのではないでしょうか」と話す。「自分たちがいいものを作れれば、ちゃんと人が来てくれると信じて準備してきました」。 今、ChatGPTなどを相談相手としても使っている人が増えている。アバターやAIが、私たちの生活を相当変えるのではないかと予想される中、今後、どんなメタバース、アバターの組み合わせが私たちを楽しませてくれるのだろうか。 この質問に対し、石黒さんは、「私たちが作っているアバターは、実世界で使えるアバターなんです。一応CGのキャラクターがメインですけれども、そのCGのキャラクターをメタバースとか仮想空間で使うんじゃなくて、モニターに映し出して実際の店舗で使うとか、パソコンのECサイトに映し出して、実際パソコンで何かものを買うときのサポートに使う。実世界で働くために使うアバターというのが我々の目指しているところなんです」と、あくまでビジネスで使えるアバターの開発を目指していると語る。「ゲームの中のプレーヤーの人が仮想空間やメタバースでアバターを使って働く、お金を稼ぐっていうことはまだできていない。もう少し時間かかるかなと思います。メタバースは特に性能のいいコンピューターや没入感が得られるヘッドマウンテッドディスプレイとかがないとなかなか使いづらいわけです。それに加えて通信の問題があります。一度に何人が同じ空間に入れるかというと、まだまだ人数が限られているわけですね。もう少しインフラやPCの性能が向上しないと、自由にメタバースで遊ぶことはできないし、その先にビジネスが起こるというのはもっと先かなというふうに思います」とメタバースは技術的な制約がネックになっていることを明らかにする。 しかし、それ以上に「現在の社会を変革するためにアバターを使うとことが大事」と石黒さんは強調する。「特に日本ではこれから、どんどんと人口が減って、その人口が減っていくのをどういう技術で支えればいいかが課題になっている。そう考えた時に、決め手になるのはAIやロボットやアバターだと思うんですね。アバターを使えば通勤しなくても瞬時に働けるようになります。家の中で仕事や、やることがあって家を離れられない人も、ちょっと空いた時間ですぐに働けるようになりますし、そもそも東京とかだと、多分1日2時間から3時間通勤に費やしている人が多いと思うんですけれども、その時間全て働けるようになれば、すごく生産性が上がるわけですよね。さらには外国の人がアバターを使って日本で働いてくれるようになると、労働市場を国際化することができて、本当に世界を変えることができると思います」。 ブレインマシンインターフェイスのようなものが実用化すれば、コントローラーを使わなくても、自分の体で動けるようになる。そうすると、身障者や高齢者は実際にはあまり動けないのにメタバースでは自由に動き回れるようになる。こうした動きは、現実の世界で始まっている。  「例えば、私が経営しているAVITAというコンピューターグラフィックスのアバターを提供している会社があるんですけれども、そのAVITAの製品では、例えばローソンの自動化レジの横でアバターを表示して、お客さんに何か分からないことがあればアバターに聞けるというようなサービスを提供しているんですよね。そのアバターのオペレーターとして働いている人は、例えば...
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    43 分
  • 第38回は、社会学者の上野千鶴子さんに聞く(下)老いを受け入れる勇気をーーボーヴォワール「老い」を読み解く
    2025/08/16
     今回のゲストは、社会学者の上野千鶴子(うえの・ちづこ)さん.。 上野千鶴子さんが新著『アンチ・アンチエイジングの思想――ボーヴォワール「老い」を読む』で投げかけているのは、現代社会の根深い「老い」を嫌悪する価値観への根本的な問いかけだ。フリーアナウンサーの町亞聖とジャーナリストの相川浩之との対談で明らかになったのは、私たちが無意識のうちに内面化している「生産性のない人間には価値がない」という思想の危険性だった。 上野さんは長年にわたって女性問題を研究してきたが、現在は高齢者問題に軸足を移している。しかし、これは研究分野の転換ではなく、自然な延長線上にある取り組みだと語る。女性として当事者研究を行ってきた上野さんが、今度は老いた女性として当事者の立場から研究を続けているのだ。 超高齢社会においては、誰もが必ず老いを迎える。老いるのが嫌なら早死にするしかないという現実の中で、上野さんは超高齢社会を「恵み」と表現する。なぜなら、障害者差別や女性差別とは異なり、高齢者差別は最終的に自分自身に跳ね返ってくる差別だからだ。男性が女性になる可能性はほとんどないし、健常者が障害者になる可能性は相対的に低いとしても、老いは長生きすれば誰もが確実に迎えざるを得ない。この避けることのできない現実が、私たちに真の平等と共生について考える機会を与えているのである。  上野さんが今回取り上げたシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『老い』は、1970年に発表された古典的名著だが、その内容は現代においても驚くほど新鮮で痛烈だ。ボーヴォワールは博覧強記の人として知られ、古今東西の文献から老いに対する否定的な言説を容赦なく引用している。例えば、ツルゲーネフの「人生で最悪のこと。それは55歳以上であることだ」という言葉は、現代の多くの人々にとって身につまされる内容だろう。  この本を「いやな本」と上野さんが表現するのは、これでもかこれでもかと畳み掛けるように、過去から現在に至るまで老いがいかに軽蔑され、忌避されてきたかを明らかにするからだ。しかし、この徹底的な検証こそが、私たちが無意識のうちに抱いている老いへの偏見を浮き彫りにする。ボーヴォワールが「老いは文明のスキャンダルである」と述べたのは、人間の生き死にが生産性や効率で測られることの根本的な誤りを指摘したものだった。 現代社会では、アンチエイジング産業が巨大な市場を形成している。高額な化粧品やサプリメント、健康食品などが「若さの維持」を謳い文句に販売され、消費者は値段の高い商品から購入していく傾向があるという。しかし、上野さんはこうした現象を「はかない望みを託している」と批判的に捉える。年齢を隠したがったり、「若いですね」と言われて喜んだりする行為も、結局は老いることへの恐怖と拒絶の表れに他ならない。 上野千鶴子さんが「老い」を意識したのはいつか? 「私は早かったですよ。30代で自分の人生が時間もエネルギーも有限だと思いました。それまでドブに捨てるように無限だと思っていたんですが」。  「それで、私、今、後期高齢者ですので、ボディーのパーツが故障してきています。もう腰椎圧迫骨折もしましたし、変形性股関節症にもなりましたし、目ん玉も悪くなりましたし、乳がんにもなりました。だからパーツがいろいろ故障してきますね。でも抗えない過程なので、どんなに頑張っても。で、それでも生かしてもらえる。結構なことではありませんか」。 上野さんは「高齢になっていろんな老い、衰え方をした人たち、特に認知症になった人を、公衆の目からご家族が隠すことはやめてほしい」と言う。免疫学者の多田富雄さんは脳梗塞で後遺障害になった姿を公開の場に出てこられて見せたし、認知症の専門医の長谷川和夫さんご自身が認知症になって、やっぱりその姿を世間にさらして、ご家族もそれを認めたという。 高齢者問題を考える上で重要なのが、「自立」という概念の捉え方だ。上野さんは、高齢者と障害者では自立の定義が180度異なることを指摘する。...
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    54 分
  • 第37回は、社会学者の上野千鶴子さんに聞く(上)介護保険制度の危機を乗り越え「ケア社会」をつくる
    2025/08/16
     今回のゲストは、社会学者の上野千鶴子(うえの・ちづこ)さん.。 人生100年時代を迎えた日本社会において、介護保険制度の行方は全ての国民にとって切実な問題となっている。この制度の根幹を揺るがす改悪案に対し、市民レベルから声を上げたのが、社会学者の上野千鶴子さんと評論家の樋口恵子さん。2人が手を結ぶきっかけは、立ち話だった。2014年の介護保険改定で危険な改悪案が浮上した際、ふたりは「このまま放置すれば取り返しのつかないことになる」という危機感を共有。上野さんが理事長を務めるウィメンズアクションネットワークと樋口さん率いる高齢社会をよくする女性の会が核となり、介護関係者、利用者、家族を巻き込んだ介護保険改悪反対運動が始まった。 2020年1月14日、衆議院第一議員会館で開催された「介護保険の後退を絶対に許さない!1・14院内集会」には約300人の関係者が集結した。この集会を皮切りに、介護保険改悪阻止の運動は全国に広がりを見せ、2023年には「ケア社会をつくる会」として正式にネットワーク化された。 運動を進める過程で明らかになったのは、介護関係者間の横のつながりの希薄さだった。ケアマネジャー、リハビリ専門職、介護職員など、様々な専門職が分断されており、利用者の当事者団体も認知症の人と家族の会を除けば組織化が進んでいない現実があった。この状況を打破するため、職種を超えた緩やかな連携の構築が急務となった。 ケア社会をつくる会は、2024年の参議院選挙に向けて主要政党へのアンケート調査を実施した。その結果、立憲民主党、社民党、共産党、れいわ新選組などが介護保険制度に言及し、特に立憲民主党は「幸せな在宅ひとり死への支援」という上野氏の提唱する概念まで政策に盛り込んでいた。 しかし、これらの政党が選挙で得票を伸ばすことはできず、介護問題が有権者の投票行動に与える影響は限定的だった。一方で、国民民主党や参政党を支持する介護関係者もおり、介護現場の政治的志向の多様性も浮き彫りになった。 上野さんは、ジェンダー問題が近年の選挙で投票行動に影響を与え始めているように、介護問題も継続的な取り組みによって政治的な争点として認知される可能性があると分析している。アメリカには会員数3600万人を誇る全米退職者連盟という強力な高齢者利益団体が存在し、党派を超えて政治的影響力を行使している。日本でも同様の当事者組織の必要性が求められている。 記者会見や院内集会を重ねる中で、メディアの関心の低さも課題として浮上した。「読売新聞は一度も取材に来ず、産経新聞は最後に一度だけ参加した程度で、テレビ局の対応も消極的だった。記者の質問レベルからは、介護保険制度に対する理解不足も明らかになった」と上野さんは言う。 2024年の介護報酬改定では、運動体が想定していなかった訪問介護報酬の大幅削減が実施された。この改定により、全国で訪問介護事業所の倒産、休業、廃業が相次ぎ、介護現場は深刻な危機に直面している。 共産党系の「赤旗」の調査によると、全国の自治体で介護保険事業所が完全に消失した地域が100以上、事業所が1つしか残っていない地域が300程度に上るという衝撃的な実態が明らかになった。上野さんらはこの状況を「保険詐欺」と表現し、保険料を徴収しながらサービスを提供できない制度の矛盾を厳しく批判している。 現在の要介護高齢者の多くは昭和時代を生きてきた世代であり、特に女性は家族のためにケアを提供する役割を担ってきた。この世代は要介護状態になると自らの存在意義を見失い、家族に迷惑をかけないよう遠慮がちになる傾向がある。 しかし、戦後生まれの世代は権利意識が高く、自分のことは自分で決めたいという意識を持っている。また、独居高齢者の増加により、家族に依存しない生き方を選択する高齢者も増えている。年金制度の影響も大きく、厚生年金受給者の比率が高い世代は経済的自立度が高く、従来の高齢者像とは大きく異なる特徴を示している。 国民年金制度の設計時には、自営業者は死ぬまで働き続けるという前提...
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    39 分
  • 第36回は、東大名誉教授の樋口範雄さんに聞く(下)変化する社会と法制度のギャップ
    2025/07/26
     今回のゲストは、武蔵野大学法学部特任教授、東京大学名誉教授の樋口範雄(ひぐち・のりお)さん.。 2006年の富山県射水市民病院事件をきっかけに、終末期医療における人工呼吸器停止が全国的な問題となった。 同病院で数年間に7人の患者の人工呼吸器が外されたことが発覚し、医師が捜査対象となった。日本では終末期医療中止で医師が裁判になったのは2件のみで、最高裁は適法な要件を満たせば治療中止は可能と判断。厚生労働大臣が医師一人の判断を避けるためのガイドライン策定の必要性を表明。樋口さんも検討会に関与し、誰もが常識的に納得できるルール作りに参加した。 終末期医療のガイドラインは次の三本柱で構成される。① 医師一人では決めず、チームで終末期医療の判断を行うことを原則とした②本人の意思を最も重要視し、本人の意思が不明な場合は家族等の意思で推定することを認めた③最期まで苦しまないよう緩和ケアを充実させることを国の責務として明記。 2018年に内容を充実させ、終末期に至るまでの時期についてもガイドラインを拡張。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概念を導入し、事前の医療・介護計画の重要性を強調した。 ACPは医療・介護分野に限定されているが、人生にはより幅広い準備が必要であることを指摘。 東京大学高齢社会総合研究機構が中心となり、ALPアドバイザー制度の検討を開始。単身高齢者の増加に対応し、人生全般にわたる相談ができる仕組みの構築を目指している。 本人の意思を尊重する原則はあるものの、日本では家族の意見も無視できない文化的背景がある。 法律上は「家族等」となっているが、実際の運用では血縁関係のある家族が重視される傾向がある。  樋口さんの入院経験では、まずキーパーソンを指定することが求められた。 キーパーソンは実質的に医療代理人の役割を果たすが、家族でなくても問題ないはずである。成年後見人は医療代理人にはなれないという制度上の矛盾が存在。親友や同性パートナー、内縁関係者など、家族以外でも本人をよく知る人がいる。彼らにも本人の意思を聞くことは構わないと樋口さんは考える。 アメリカでは医療代理人制度があり、家族でなくても代理人になることが可能、  樋口さんは銀行口座整理の際に、本人でなければ手続きできない不便さを感じた。 高齢者にとって身体的負担が大きい各種手続きで本人の出頭が求められる現状は改善し、代理人を認めてほしいという。 民法には代理制度の規定があるが、実際には誰も信用しない状況。それならば、イギリスやアメリカにある持続的代理権法(元気な時も判断能力を失った時も継続して機能する代理制度)のような、簡単に代理人を選べる制度が必要と樋口さんは言う。 ケアマネジャーが本来業務以外のアンペイドワーク、シャドウワークを多数依頼される現状への対策についても聞いた。アンペイドワーク、シャドウワークとは、 マイナンバーカード手続き、公共料金振込、買い物、救急車同乗などで、特に単身高齢者から、多岐にわたる依頼がケアマネジャーにある。単身高齢者にとってケアマネジャーが唯一の頼りとなっている存在だからだ。ケアマネの業務拡大で対応するか代理制度への橋渡しかで議論が分かれている。樋口さんは、 記録の透明化と適切な有償化により、必要なサービスを提供できる仕組みづくりが重要と説く。  民間で行われている身元保証サービス(高齢者等終身サポートとも言う)についても聞いた。 入院や施設入所時の身元保証要求は本来必要ないが、慣行として続いている。身元保証法は入院・施設入所のために作られた法律ではないにも関わらず流用されている。高齢者等終身サポート事業者による高額なサービス(入会金100万円超のところが多い)が存在する。法律も所管官庁もない状態でガイドラインのみの規制となっている。家族がいれば無償でできる作業に高額な費用がかかる現状だが、どうすればいいのか。 樋口さんは、保険を活用した新しい仕組みができないかと提案する。事故が起きた時に担当者のサポートが得られる...
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    53 分
  • 第35回は、東大名誉教授の樋口範雄さんに聞く(上)成年後見制度の限界と新たな高齢者支援の可能性
    2025/07/26

     今回のゲストは、武蔵野大学法学部特任教授、東京大学名誉教授の樋口範雄(ひぐち・のりお)さん.。

     日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えている。高齢化率が3割を超え、認知症患者数は2025年には700万人に達すると予測される中、現行の法制度が高齢者の実情に適合していない現実が浮き彫りになっている。東京大学名誉教授の樋口範雄さんは、高齢者の問題は本質的に法律問題でもあるにも関わらず、法も法律家もそれに対処できていないと指摘する。

     人生100年時代において、従来の「人生50年」という前提で設計された制度では対応しきれない課題が山積している。デジタル化、グローバル化が進む中で、高齢者は予想できない事態に直面することが増えており、不安と心配で暮らすのではなく、新しい事態に前向きに対処していく仕組みが求められている。

     樋口さんが武蔵野大学で企画した「古希式」は、こうした課題への一つの回答として注目される。70歳を迎えた高齢者と若い学生が一緒になって高齢者の問題を学び、話し合う場として設計されたこのイベントは、高齢者になる準備段階での学習機会の重要性を示している。樋口恵子さんが提唱する「第2の義務教育」の概念は、余生を悠々自適に過ごすという従来の発想から脱却し、リスキリングを含めた積極的な学び直しの必要性を訴えている。

     2000年に介護保険制度と同時に導入された成年後見制度は、25年が経過した現在でも深刻な課題を抱えている。制度の利用者は約25万人にとどまる一方で、認知症患者やMCI(軽度認知障害)の人を含めると、潜在的な対象者は1000万人に上るとの推計もある。この圧倒的な乖離は、制度設計そのものに根本的な問題があることを示している。

     政府は「利用促進」を掲げているが、仮に500万人が制度を必要としているとすれば、残り475万人に後見人をつけるという現実的でない目標を追いかけていることになる。これまで25年かけて25万人の利用者を獲得したペースを考えると、必要な人すべてに後見人をつけることは物理的に不可能に近い。

     さらに深刻なのは、世界的に成年後見制度への評価が厳しくなっていることである。多くの国で制度の廃止や根本的な見直しが議論される中、日本だけが利用促進という方向性を変えられずにいる。国連の障害者権利条約は、認知症の人を含む障害者の自己決定支援を重視し、後見人が代行して判断決定をする制度の廃止を勧告している。2022年の日本に対する審査報告でも、このような制度の廃止が明確に求められているにも関わらず、日本の対応は小手先の改善にとどまっている。

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    49 分
  • 第34回は、経営コンサルタント/投資家の岩崎日出俊さんに聞く(下)「日々の暮らしの中に投資のチャンスはある」
    2025/04/27
     今回のゲストも、経営コンサルタントで投資家の岩崎日出俊(いわさき・ひでとし)さん。 冒頭、町が「従来のモデル世帯(男性サラリーマン、専業主婦、子供2人)という想定が必ずしも今の社会には通用しなくなっており、家族単位ではなく個人単位で将来に備える時代になっているのではないか」と問題提起。 岩崎さんは「1人ひとりが考えていかなければならない問題」としつつ、その際には「世界の未来がどうなるか」に考えを巡らす必要があると重ねて強調する。  岩崎さんは投資の世界を詳しく説明。「ひとたび投資の世界に入ると、自分がどれだけ勉強したか、自分が世の中をどうやって見ようとしているかによって、結果が出る世界」と言う。 岩崎さんは、テスタさんという、今ネットの世界で話題になっている個人投資家を例示。「企業とかで働いてはいなくて、フリーで生計を立てていた方ですが、何とか投資の元になる300万円を貯めて、それをだんだん大きくして、あっという間に100億円以上の資産を持つまでに至った。そういう方が今、若い人には結構おられる」と話す。 「個人の方が、間違った金融知識で株式投資をすると損してしまう可能性が大きいですが、きちんと勉強すればそれなりの結果が出ます。投資の世界ってジャングルみたいなところなので武器がないとやられちゃうんですけれども、きちんとしたノウハウを勉強して身につければ、それなりにリターンが生まれる可能性が高い」と説明する。 アメリカでは、大学院で株式投資論を教えている。株式投資は学問になっている。アメリカは資本主義・市場主義の国。株価が適切に決まることで良い企業に投資が集まり、国全体が豊かになるという考え方がある。日本の従来の産業政策(政府主導で特定企業を支援)の延長ではアップルは生まれないと岩崎さんは指摘する。 投資の世界では、世の中や企業が将来どうなるのかをしっかり見据えて投資すれば、成功する可能性が高いと説明、岩崎さんが、日本でまだ半導体メーカーのエヌビディアが注目されていなかった時に同社の株を買った理由を明らかにした。   「将来を見る目を養う、感性を磨くのはそんなに難しいことではない」と岩崎さんは言い、ユニクロを例に挙げる。「ユニクロのフリースが流行った時、ユニクロは多くの人にそれほど知られているわけではなかった。でも、原宿の店で売り切れになった時にユニクロの株を買っていれば100倍どころじゃない」。 将来性を見極める目を養うことが重要で、世の中の変化(例:iPhoneの普及、Amazonの成長)に気づき、少額からでも投資することで大きなリターンを得るチャンスがある。自分の得意分野や関心のある領域(医療など)に投資することで、より良い判断ができる。 話が前向きになってきた時に、相川が水をさす。 株式売買のプロの人は並外れた情報収集力がある。素人が「詳しい分野で」と考えて個別株を買う場合、その「詳しい」というのはどのくらいのレベルを指すのか。今、「ChatGPTをやっているからAI株を買おう」といったレベルでは、駄目だと思う、と。  これに対し、岩崎さんは、「2〜3万円で買ってとりあえず様子を見るということであれば、そんなに勉強する必要はない」と言う。そして「経営者を見ることは投資判断において重要であり、現代ではネットを通じて経営者の情報を簡単に入手できる」とアドバイスする。  日本企業は株主のお金を託されているという意識が乏しく、ROE(株主資本利益率)が米国企業に比べて低いため、日本の株式指数のパフォーマンスは米国に比べて劣っている。しかし。若い個人投資家は既にこの状況を理解しており、新NISAではオールカントリー(全世界株)やS&P500などの海外指数に投資する傾向がある。 「退職金などまとまった資金を投資する場合は、住宅ローンの返済を優先し、残った資金は一度に投入せず時間分散して投資することでリスクを軽減すべき」と岩崎さんは語った。  岩崎さんは投資とトレーディングを区別し、FXや暗号資産はトレーディング(ゼロサム)であり、株式投資は長期的...
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    58 分