『打ち手としてのデジタル . パブリッシング/出版DX』のカバーアート

打ち手としてのデジタル . パブリッシング/出版DX

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第1部では、出版市場の縮小は「読まないから」ではなく「買わないから」発生していることを示した。子どもを除けば「読書推進」をやっても本の購買量は直接的に増えない可能性が高い。第2部では、出版社と書店に共通する課題――「売上を伸ばす」ために何ができるか、何をやるべきかを扱う。産業として取り組むべきは、購買促進施策である。日本で本が売れない理由は、本屋に人が行かなくなったことである。来店頻度の減少が購買頻度を下げ、売上を落としている。売上が落ちると書店が減り、ますます店に行かなくなる。かつて人を本屋に送り込んでいたのは定期刊行物である雑誌だった。人々を再び本屋に向かわせる、ないしはコンテンツに触れさせる施策、しかけを用意することが、課題解決の打ち手である。具体的には第2部を通して、いくつかの事例や研究を示しながら述べていく。まずは出版社やプラットフォーマー側の視点から国内のデジタルコミックとウェブ小説の事例、欧米の新聞や書籍出版社の事例を扱う。さらにそれに続いて、欧米のリアル書店(小売店)側の事例を紹介する。そのあと抽象度を上げ、プロモーションがいかに重要なのかを学術的なマーケティング研究から確認する。読者によってどの立場に近いか、あるいは感情移入しやすいかは異なるだろう。最後に、全体のまとめを記しつつ、現場レベルの個人でもできること、考えられることについて検討した。読む順番、読む場所はご自身の仕事や興味に合わせて自由に変えてもらえればと思う。*くりかえしになるが、第1部の結論を確認しておこう。「読書」(読む)と「購買」(買う)は傾向が違う。「雑誌」と「書籍」も傾向が違う。「子ども」(小中学生まで)と「大人」(高校生以上)も傾向が違う。この基本認識を無視して雑に「本離れ」と呼んでも、実効的な打ち手にはつながらない。こからは、これらを前提に議論を進めていきたい。雑誌は読書量・購買量ともに書籍より変動幅が大きい。のぼり坂の時期にはどうだったか。1975年に書籍は6億3222万部、雑誌は19億8620万部だったが、1989年には書籍9億4127万部、雑誌34億8402万部。書籍の伸びは15年で3億部強、雑誌は約15億部も伸びた。これが減少に転じてからは? 雑誌市場は最盛期の1996年と比べると2024年の推定販売部数は約85%減、もはや2割以下の規模だが、書籍市場は約52%減とまだマシと言える。やってはいけない、やっても意味がない施策として、雑誌の機能や売上の代替を書籍に担わせようとすることがある。2000年代以降は雑誌の落ち込みを書籍で補おうとして刊行点数が増えた。だが雑誌弱体化で書店への来店回数が減ったのに点数だけ増やしても逆効果だった。1990年代後半以降、2000年代を通じて書籍の返品率は過去最悪の40%前後で推移する。2010年代に入って取次が返品率改善のために送品抑制を始めたあとも、書籍の刊行点数が減るペースはゆるやかだ。2023年の書籍の出回り(新刊・重版・注文品の流通総量)は7億2449万部。これは1973、74年と同程度だが、出版点数は64905で、1973年には20138と3分の1以下だった。算数で考えるなら、刊行点数をおさえて定価を上げ、一点一点の宣伝に力を入れる方向に舵を切るべきだ。そのほうが出版社・書店いずれにとっても返品率、利幅、送品コストが改善され、経営効率は上がる。筆者は『「若者の読書離れ」というウソ』という本で「雑誌の読書冊数の変動幅のほうが大きいから、雑誌的な読書は高校生以上であっても書籍より伸ばせる可能性がある」と書いた。すると「紙の雑誌はオワコン(終わったコンテンツ。時代遅れで再起不能なもの)で、今から伸ばすのはムリだろう」という反応を何人かの方からいただいた。筆者が伝えたかったのは、紙の雑誌そのものの復活に可能性があるという話ではない。もっと広義の「雑誌的な読書・購買」のリプレイス(置き換え)の可能性だ。また、かつての雑誌の機能をデジタルメディアも活用して代替...
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