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ボイスドラマ「里山の声」

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幼い頃、埼玉の里山で一匹のゴマダラチョウを助けた少女・伽耶。時は流れ60年。夫を亡くし、子どもたちも巣立った彼女は、ふと「里山」という言葉に導かれるように埼玉県環境科学国際センター生態園を訪れます。そこで待っていたのは、幼い日の記憶と、生き物たちが紡ぐ命のつながりでした。自然は、私たち人間を含め、すべての命が支え合って成り立っています。この物語が、生物多様性や里山の豊かな世界に目を向けるきっかけになれば幸いです。【ペルソナ】・伽耶(かや/5歳〜65歳)=埼玉で幼少期を過ごし結婚で東京へ。現在は一人暮らし・伽耶の母(28歳)=早くに夫を亡くし、農家と養蚕をしながら女手ひとつで一人娘・伽耶を育てた・伽耶の娘(32歳)=都心の伽耶の家から嫁ぎ、現在は2人の子どもの子育て中【プロローグ:天敵】※モノローグは大人の声で◾️SE:ヒバリの声「伽耶、あんまり遠くまで行っちゃだめよ」「は〜い」「夕飯までには帰ってきてね」母の声を背中で聞きながら、私はもう、外へ飛び出した。高窓の屋根の家並みが続く里山。開けはなした障子を通して漏れてくるのは、雨音のようなざわめき。それは、蚕が桑の葉を食(は)む音。母は家業の農業とともに、養蚕をおこなっていた。私は、桑畑を抜けて、小さな森の入口へ。一気に歩いたせいか、たどりつく前に、息が切れる。よっこらしょ、とエノキの木の根元へ。へたり込むようにしてしゃがみ込んだ。昭和39年6月。埼玉県児玉郡児玉町(こだまぐんこだまちょう)。私の名は伽耶。来年から小学校へ上がる年。私は生まれつき体が弱かった。だけど、心配症の母を安心させたくて、家を出るときだけはいつも元気なフリ。結局、少し歩くとすぐに胸が苦しくなる。まあ、こんなのはいつものこと。しばらく根元に座り込んで直射日光を避け、木陰でゆっくりと呼吸を整える。視線の先には、なにかがひらひら揺れている。漂ってくるのは、リンゴのような甘酸っぱい芳り。エノキの幹から流れ出た樹液だ。その下には・・・あ・・・ゴマダラチョウ。白と黒。鹿の子絞り(かのこしぼり)のような斑(まだら)模様の翅(はね)。実は私、近所から”昆虫博士”って呼ばれてる。3歳のときに母が買ってくれた昆虫図鑑。それを何度も何度も、擦り切れるまで読み返した。だから、蝶でも蛾でも甲虫でも、たいていの虫のことはわかる。ゴマダラチョウは、私の目の前。ゆったりと翅を広げて蜜を吸っている。なんか、私に似てる・・・アゲハのように華麗な姿ではなく、自分が生まれたエノキのそばで、一生を過ごす。ひっそりと・・・どのくらいの時間だったのだろう。私はただ、蝶をぼう〜っと見つめていた。と、そのとき・・・◾️SE:モズの羽音(No.22424 bird/鳥が飛ぶ音)大きな羽音が耳に飛び込んできた。隣の木にとまっていた、モズだ。小さな体の猛禽類。ゴマダラチョウを見つけ、一気に獲物に向かってくる。「危ない!」頭で考えるより先に体が動いた。落ちていた枯れ枝をひっつかみ、急降下してくるモズに向かって、振り下ろす。「だめ〜ッ!!」◾️SE:モズの羽音と鳴き声(No.1577237 野鳥の鳴き声:モズ/No.1663153 羽を広げる)乾いた音が雑木林に響く。驚いたモズは鋭い悲鳴を上げて踵を返し、逃げていった。 r風圧に驚いたゴマダラチョウが一閃。初夏の光の中へと高く舞い上がる。はためく翅のマダラ模様。モノトーンの美しい紋様が、木漏れ日に美しいシルエットを描いていた。「あ・・・」枝を握ったまま、私はその場ですくみ上がる。無理に体を動かしたせいで、また胸の痛みが襲ってきた。私は耐えきれず、その場に倒れ込む。地面についた手のひらから、土と草の匂いが漂ってくる。遠のいていく意識。かすれそうな記憶の中で、頭の中に声が響いてくる。『大丈夫。心配しないで。体はもうすぐよくなるから』え・・・?だれ・・・鈴の音のように透き通った、幻のような声。私はその声に安心して、深い眠りに落ちていった。【シーン1:60年後】◾️SE:セミの鳴き声「待って!」「いかないで!」「お願い!」え・・・夢・・・?どうして、...
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