『ボイスドラマ「糸」』のカバーアート

ボイスドラマ「糸」

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あの日から、私たちの「糸」は紡がれていた――。1980年、飛騨・六厩。千鳥格子御堂の前で出会った15歳の桜小花と柊壱。ピアノを夢見る少女。飛騨の匠を夢見る少年。15歳の夏、22歳の再会、そして30歳――。別々の人生を歩んだ二人をもう一度結んだのは、故郷の風景と、あの日贈った一台のウォークマン、そして次の世代へと受け継がれた「夢」でした。「思えば私たちの糸は、あの日から紡ぎはじめていたのだろう・・・」【ペルソナ】※2人とも1965年生まれ・桜小花(さやか/15歳/23歳/30歳/CV:岩波あこ)=故郷・荘川で実家はそば農家・柊壱(しゅういち/15歳/23歳/30歳/CV:岩波あこ)=清見で飛騨の匠を目指す【第一章/出会い(1980年8月/15歳)】◾️SE:自転車のブレーキの音「きゃあ〜!」「どいて!どいてぇ〜!」「あぶない!」◾️SE:自転車の転倒音「やっちゃったぁ・・・」「あ〜あ」「ってててて・・・」「おい、大丈夫か?」「う〜、ひざ痛ぁ・・・あ、ごめんなさい! 急な坂道でブレーキが効かなくなっちゃって・・怪我、なかった?」「オレは平気だけど・・・お前、血が出てるぞ。膝」「え? あ、ほんとだ。またばあちゃんに怒られちゃうな。へへへ・・・・・・ってごめん。うちは桜小花。あんたは?見ない顔やけど・・・」「オレ?」「あたりまえでしょ。あんた以外誰がいるの?」「オレは・・・柊壱」「ふうん。どこの人?六厩じゃないよね」「森茂(もりも)」「森茂、って清見村やん」「そんなこと知らん」「知らん、ってあんた、住んでんでしょ」「1週間前からな」「引っ越してきたってこと?」「ああ・・・よりによって、こんなど田舎に」「悪かったわね、ど田舎で。でも住んでみればいいところよ。冬はちょ〜っと寒いけど」「好きで引っ越してきたわけじゃねえし」「どこから引っ越してきたの?」「東京だよ、ひばりが丘の団地」「そんな場所言われてもわからんわ。ふ〜ん。東京っこかあ・・・」「ふん」「で、なんで千鳥格子御堂(ちどりごうし/おみどう)の前にいるの?」「ん?・・・知らん。これ、そういう名前なんだ」「すごいでしょ。千鳥格子のその扉、釘を1本も使ってないのよ」「ええっ?じゃ、どうやって作ったんだ」「それが匠の技ってもんよ」「すごいな・・・」ずうっと苦虫を噛み潰してた柊壱の顔が、はじめてほころぶ。これが私と柊壱との出会いだった。2人とも中学三年生。15歳。荘川に住む私は、村立の荘川中学校。清見の柊壱は、清見中学校の森茂分校に通っている。だから学校で顔を合わせることはなかったけど、夏休みの間、柊壱はいつもここ、千鳥格子御堂にいた。うちはそば農家だから、種まきが終わったこの時期は大忙し。間引きに除草、中耕(ちゅうこう)や培土(ばいど)、そして台風対策。毎日毎日、六厩の家から千鳥格子御堂の前を通って畑へ。そば畑は、三尾河(みおご)へ向かう新軽岡峠(しんかるおかとうげ)の傾斜地にある。行きは、上り坂で大変だけど、帰りは下り坂で楽ちん。この夏、私は理由をつけて、ひとりで帰るようにした。そうすれば毎日柊壱とお話できたから。「さやか、ってどう書くの?」「桜の小さい花、って書くんだ。私が生まれた年、荘川桜に初めて花が咲いたの」「荘川桜って?」「ダムに沈んだ集落で咲いてた、おっきな桜の木。移植されて初めて花を咲かせたのが1965年」「そうなんだ」「ねえ、もうすぐ夏休み終わっちゃうね」「ああ」「そしたらもう・・会えないな」「なんで?土日とかにここくればいいじゃん。家、こっから近いんだろ?」「荘川中学校って新淵(あらぶち)にあるんよ。遠くて通えないから寄宿舎に入ってるの」「そうなのか」「シュウは中学卒業したらどうするの?」「オレ・・・高山の工業高校へ行こうと思って」「工業?」「うん。こういうのを作ってみたいんだ」「千鳥格子御堂?」「だってオレ、桜小花に聞いてから調べたんだ。了宗寺(りょうしゅうじ)を建てたとき、余った木材で作られたらしいんだけど・・・これ、いまや誰も再現できないんだってさ」「よく調べたわね」「桜小花は?...
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