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はじめての漢方

はじめての漢方

著者: 杜の都の漢方薬局 運龍堂 佐藤貴繁
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漢方の専門薬局にて、漢方薬を処方している薬剤師が、漢方の魅力を伝えます。
実践的なお話も多いので、健康や美容などにぜひ、お役立てください。

杜の都の漢方薬局 運龍堂 佐藤貴繁
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エピソード
  • 202.クマザサの底力 ― 腸の壁・ニオイ・免疫を支える身近な葉
    2026/08/30

    冬眠に入る前のクマが、大量に食べていく葉があることをご存知ですか・・・?
    その正体は「クマザサ」。番組で何度もご紹介してきた「クマザサ・松葉・朝鮮人参」の組み合わせは、胃腸をいたわりながら手足や脳の血流にも働きかけるとされる、日本人が考案したお茶です。今回はそのうちクマザサだけを取り出して、雪に閉ざされた真冬の山でも青々と緑を保つ、その生命力の中身を詳しく解説していきます。

    ▼今回お話ししていること
    ・クマザサ・松葉・朝鮮人参 ― 血流を意識した日本生まれの組み合わせ
    ・なぜクマは、冬眠の前と後に真っ先にクマザサを食べるのか
    ・笹寿司やおにぎりを笹で包んできた、昔の人の知恵
    ・腸の壁の“ファスナー”=タイトジャンクションと、腸漏れ(リーキーガット)
    ・葉緑素がニオイ分子をつかまえる ― 口臭・体臭のケア
    ・免疫の約7割は腸のまわりに ― マクロファージと炎症の話

    まず驚かされるのが、クマとの関係です。クマは冬眠の前にクマザサを大量に食べ、腸内環境を整えてから眠りにつくといわれます。腸内環境が乱れたまま冬眠に入ると命に関わるためで、目覚めたあとも真っ先に口にするのだそうです。人の暮らしにも、クマザサは深く根づいてきました。笹寿司やおにぎりを笹で包むのは、冷蔵庫のなかった時代に、葉のもつ殺菌・防腐の働きで食べものを守るための工夫だったのです。あの青々とした香りには、ちゃんと意味がありました。

    はたらきの中心にあるのが「腸」。クマザサは食物繊維が豊富なうえ、腸の細胞どうしをファスナーのようにつなぐ“タイトジャンクション”を強くし、乳酸菌などの善玉菌を増やすことが分かってきているといいます。この隙間が開くと、いわゆる腸漏れ(リーキーガット)につながってしまいます。ニオイのケアに用いられるのは、豊富な葉緑素がアンモニアや硫黄といったニオイ分子と結びついて捕まえるうえ、ニオイのもとをつくる菌の増えすぎも抑えると考えられているから。さらに、葉から採れる成分にはインフルエンザやヘルペスなどのウイルスを減らすという研究もあり、免疫の見張り役であるマクロファージに働きかけたり、免疫が張り切りすぎたときの炎症をしずめたりする面もあるとされています。

    生命力、腸、ニオイ、ウイルス、免疫――ひとつの葉がこれだけの顔を持っているとは驚きです。次回は、同じ組み合わせのもう一つの主役「松葉」を取り上げます。ぜひ続けてお聴きください。


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  • 201.腸内環境を整える漢方薬と生薬 ― 大建中湯・半夏瀉心湯・陳皮・生姜
    2026/08/23

    うなぎに山椒をかけるのは、実は理にかなっていることをご存知ですか・・・?
    前回お届けした「腸内環境」の話の続編です。今回はいよいよ具体的に、腸内環境にプラスに働く漢方薬と生薬をご紹介します。食卓の身近な薬味にも、実はちゃんと理由があった――そんな発見のある回です。

    ▼今回お話ししていること
    ・大建中湯 ―「中心(胃腸)を立て直す」という名前の処方
    ・山椒が腸の血流を増やす? うなぎに山椒の、理にかなった理由
    ・半夏瀉心湯 ― お腹がゴロゴロするときに使われる処方
    ・黄連・黄柏の苦味成分「ベルベリン」と腸内環境の関係
    ・腸の細胞をつなぐ“ファスナー”=タイトジャンクションの話
    ・陳皮(みかんの皮)と生姜 ― 身近な生薬のちから

    まずご紹介するのが「大建中湯(だいけんちゅうとう)」。“建中”とは中心=胃腸を立て直すという意味で、人参や山椒に加えて、水飴のような甘い生薬が入っています。甘味は胃腸に栄養を残すと考えられており、胃腸を動かしながら栄養も届けてくれる処方です。注目したいのは山椒。あのピリッとする成分が腸を刺激し、腸へ向かう血流を増やすことが健康な方の実験でも確かめられていて、動物実験では善玉菌が増えたという報告もあるのだそうです。土用のうなぎは栄養満点な一方で消化には負担がかかりますが、そこに山椒をかけるのは、胃腸を動かし腸内環境まで整えるという意味で、実によくできた組み合わせだったわけです。

    もうひとつが、お腹がゴロゴロするときに使われてきた「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」。胃腸にこもった熱を分散させて動きを戻す処方で、ここにも黄芩・黄連という黄色い生薬が入っています。以前ご紹介した黄連解毒湯とも共通する、この苦味の正体が「ベルベリン」。悪玉になりやすい菌や炎症を起こす菌を抑え、体に良い働きをする菌を増やすこと、さらに腸の細胞同士をファスナーのようにつなぐ“タイトジャンクション”をしっかり保つ働きが分かってきているといいます。最後に身近な生薬をふたつ。七味唐辛子に入っているオレンジ色の粒「陳皮(みかんの皮)」はビフィズス菌などの善玉菌を増やすといわれ、生姜は腸内細菌のバランスを整えるとされています。生の生姜は発汗、蒸した生姜は内臓を温める――夏はどちらも上手に使い分けてみてください。

    腸内環境は、全身のあらゆるところに影響します。普段はなかなか意識しないところですが、こうした身近なものを少しずつ取り入れて、健康に過ごしてまいりましょう。


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  • 200.腸内環境で漢方の効きが変わる ― 体にも心にも関わる腸の話
    2026/08/16

    「腸内環境が悪いと、漢方薬も効きにくくなる」と聞いたら驚かれるでしょうか・・・?
    同じ病気で入院している患者さんに同じ漢方薬を使っても、よく効く人とあまり効かない人がいます。調べてみると、悪玉菌が多い方は効きが悪く、善玉菌が多い方は効きが良い――薬の構造上、西洋薬よりも漢方薬のほうが腸内環境の影響を受けやすいのです。今回は夏の養生の締めくくりとあわせて、体にも心にも関わる「腸内環境」の話を詳しく解説していきます。

    ▼今回お話ししていること
    ・言い残していた夏の処方「人参湯」― 冷えたお腹を内側から温める
    ・季節の変わり目にケアしたい五臓は「脾」
    ・なぜ漢方薬は、西洋薬よりも腸内環境の影響を受けやすいのか
    ・肥満・糖尿病・脂肪肝との関わり(太ったマウスの腸内細菌を移植すると…)
    ・腸は免疫が集中する場所。アレルギーや慢性の炎症との関係
    ・セロトニン・GABAは腸でつくられる ― メンタルとの深いつながり

    まずは、前回お伝えしきれなかった処方「人参湯(にんじんとう)」から。冷たいものを摂りすぎてお腹が冷え、軟便になってしまったときに用いられてきた処方で、含まれる蒸した生姜が、体の深いところ=内臓を温めてくれると考えられています。夏に水分を摂りすぎて胃腸が冷えてしまった、というときにも使いやすい処方です。そして夏が終われば、次は秋。梅雨時や季節の変わり目に働きが鈍りやすい五臓は「脾」ですから、この時期は胃腸を整え、いわばデトックスをして次の季節に備えたいところ。だからこそ、いま腸内環境の話をしておきたいのです。

    腸内細菌は100兆個ともいわれ、人の細胞よりも多い数。種類も多いため研究が難しかったのですが、腸内環境全体の構成を解析できるようになってから、体との関係が一気に分かってきました。体の面では、肥満・生活習慣病・糖尿病・脂肪肝との関わり。太ったマウスの腸内細菌を痩せたマウスに移植すると、その痩せたマウスが太るという実験結果もあるほどです。腸は免疫が集中する場所でもあるため、乱れればアレルギーの起こりやすさや感染のしやすさにも関わりますし、慢性的な炎症は動脈硬化のリスクにもつながるといわれます。さらに心の面。“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンや、神経の安定に関わるGABAは腸でつくられるため、腸内環境の乱れは落ち込みや不安、集中力の低下、睡眠の質にまで関わってくると考えられています。

    運龍堂で野草や野菜を発酵させたオリジナルの酵素ドリンクをお使いいただいているのも、こうした理由からです。次回は「腸内環境を整えるための漢方薬・生薬」を具体的にご紹介します。ぜひ続けてお聴きください。


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