209.心を支える生薬・前編 ― 忘憂草と酸棗仁、エゾウコギ
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「憂いを忘れる草」と書く生薬があることをご存知ですか・・・?
秋は五臓でいう「悲・憂」の季節。落ち込みやすいこの時期に向けて、今回から2回に分けて、精神面を支える生薬をご紹介します。中華料理でおなじみのあの食材から、睡眠の漢方の定番、そしてロシアの宇宙飛行士が宇宙へ持っていったという生薬まで。それぞれの向き不向きも含めて詳しく解説していきます。
▼今回お話ししていること
・最も力が強いとされる動物性生薬「麝香」とシャネルの5番
・忘憂草(=金針菜)―「憂いを忘れる草」という名前の由来
・沖縄では「眠り草」― 深い睡眠が増えたというデータ
・酸棗仁 ― 不眠の漢方にほぼ必ず入っている生薬
・GABAの受容体を増やす、という現代の研究
・エゾウコギ ― ストレスに耐える力を底上げする
まずは「忘憂草(ぼうゆうそう)」。日本では忘れ草、中華料理では「金針菜(きんしんさい)」の名で親しまれている、あの食材です。古い書物には、胸のつかえを除き、五臓を落ち着かせ、楽しいことを好むようになって憂いのない状態にする、と記されています。気分を無理やり持ち上げるのではなく、楽しめる状態にしてくれる――そんなイメージでしょうか。気分が晴れない、胸がつかえてため息が出る、体に熱がこもって寝つきが悪い、といったときに用いられてきました。動物実験では無気力な時間が減り、セロトニンやドーパミンが増えたという報告も。沖縄では同じような植物を「眠り草」と呼び、脳波を調べると深い睡眠が増えたというデータもあるそうです。
ふたつめは「酸棗仁(さんそうにん)」。酸っぱいの酸に棗(なつめ)、そして仁と書く、不眠の漢方にはほぼ必ず入っている生薬です。疲れているのに頭が冴えてしまう、夜中に目が覚める、寝つきが悪い――そんな方に用いられます。研究では、リラックスに関わるGABAの受容体を増やし、寝つくまでの時間が短くなって睡眠時間も伸びることが分かってきているといいます。三つめが「エゾウコギ」。北海道やロシアなど寒い地域で採れる生薬で、長く飲むとストレスに強くなり、運動の持久力が上がるとされ、ロシアの宇宙飛行士が宇宙へ持っていったことでも知られています。高ぶりをしずめる酸棗仁に対し、エゾウコギは底上げして耐える力を高めるタイプ。方向性は違いますが、どちらもストレスや眠りの悩みに用いられてきました。
ちなみに、複数を組み合わせて使うのはごく普通のこと。あの葛根湯ですら7種類の生薬でできています。次回は残りの生薬をご紹介します。ぜひ続けてお聴きください。
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