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白菊
- ナレーター: テルヤン
- 再生時間: 49 分
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それは見るからにここいらの貧乏百姓の児と感じの違った、インテリじみた色の白い鼻筋のスッキリとした美しい青年であった。慌てて走って来たものと見えて、手拭浴衣の寝巻に帯も締めない素跣足が、灰色の土埃にまみれている。……と……駐在所の入口になっている硝子戸が内側からガタガタと開いて、色の黒い、人相の悪い顔に、無精鬚をぼうぼうと生した、越中ふんどし一つの逞ましい小男が半身を現わした。
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この音は今日迄の間に私が知っているだけで六、七人の生命を呪った。しかもその中の四人は大正の時代にいた人間であった。皆この鼓の音を聞いたために死を早めたのである。
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私はお願いする。私が死んだ後にどなたでもよろしいからこの遺書を世間に発表していただきたい。当世の学問をした人は或は笑われるかも知れぬが、しかし……
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――だから本当の悪魔というものは誰の眼にも止まらないで存在しているのだ――
――そのような悪魔の現実社会に於ける生活とか、仕事とかいうものが如何に戦慄すべきものがあるかという事なぞも、滅多に考えられた事がないのだ――
...
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・《Ravenous Rats》主宰
・《乱痴気STARTER》所属
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朗読 Mafty
企画/制作 アイデアフラッド合同会社
編集 古川典裕
デザイン toki
イケメン耳元名文学シリーズ-谷崎潤一郎「少年」/田山花袋「少女病」/梶井基次郎「桜の樹の下には」/太宰治「満願」
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<内容紹介>
網走の監獄を破った5人組のひとりだった虎蔵。強盗時代にはさまざまなアダ名を付けられ世間から評判になっていた。
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そんな、虎蔵が北海道の当局に脱獄で追われているという状況は全国的に話題となった。虎蔵は、食べ物を得るために残虐な人殺しを繰り返していた。虎蔵自身も自覚していないほどに。
そうして、脱獄囚の虎蔵は深夜の街道に立ち竦んだ。身動きひとつせず、遥か向こうの赤い光を見つめながら。虎蔵は生まれて初めてみる美しい光に見惚れていた。
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大邸宅に人がいないことを察すると2階へ侵入するために、身を潜めながら進んで行く。大きな扉を開き、部屋の内部に侵入した。
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いつものように少女を殺そうとするが思いとどまった虎蔵。
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そして、枕元にそっと白菊の花を置いた。翌朝、洋館の婦人と幼い少女が帰ってきた。
<夢野久作(ゆめの・きゅうさく)>
日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。
1889年(明治22年)1月4日 - 1936年(昭和11年)3月11日。
他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。