Ep.1360 AppleがOpenAIを営業秘密侵害で提訴──AI端末開発を巡る情報流出とIPOへの波紋(2026年7月16日配信)
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AppleがOpenAIを営業秘密侵害で提訴──AI端末開発を巡る情報流出とIPOへの波紋
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Apple: iPhoneやMacなどを展開する米国の巨大テック企業。近年はAI領域への適応を急いでおり、機密保持に極めて厳格な姿勢で知られる。
OpenAI: ChatGPTなどを開発する米国のAI企業。ソフトウェアにとどまらず、自社製のAIハードウェア開発を推進している。
Tang Tan(タン・タン): Appleに20年以上在籍し、iPhoneなどのデザイン・開発に携わった元副社長。現在はOpenAIの最高ハードウェア責任者を務める。
io Products: タン・タン氏らがApple退職後に共同創業したハードウェア開発スタートアップ。2025年にOpenAIによって買収された。
それでは解説に入ります。
2026年7月10日、Appleはカリフォルニア州北部地区連邦地裁において、OpenAIと同社のハードウェア部門であるio Products、および元Apple従業員2名を営業秘密侵害の疑いで提訴しました。訴状によると、Appleは元幹部らが機密情報を不正に持ち出し、OpenAIが進める人工知能搭載のハードウェア端末開発に流用したと主張しており、損害賠償と端末開発の差し止めを求めています。
Appleが不正行為の中心人物として名指ししているのが、現在OpenAIで最高ハードウェア責任者を務めるTang Tan氏です。Tan氏はApple退職後、元Appleデザインチーフのジョニー・アイブ氏らと共にio Productsを立ち上げ、2025年にOpenAIへ合流しました。訴状によれば、Tan氏はOpenAIの採用面接に訪れる現役のApple従業員に対し、未発表製品の実際の部品を持ち込んで披露するよう指示していたとされています。また、内定者に対してAppleのセキュリティ手順の抜け穴を指南する文書を配布したほか、特殊な金属加工技術を持つAppleの取引先に「Appleからの許可を得ている」と虚偽の説明を行い、OpenAI製品に同じ加工を施させていたとも指摘されています。
さらに、もう一人の被告である元Appleの電気エンジニアChang Liu氏については、退職後も返却しなかった業務用端末と未知の認証バグを悪用してAppleの社内ネットワークに侵入し、数十件に及ぶハードウェア関連の機密ファイルや設計図を不正にダウンロードしたと主張されています。これらの疑惑に対し、OpenAIの広報担当者は「他社の営業機密には一切関心がない」という声明を発表し、不正行為を全面的に否定しています。
この訴訟は、両社の関係性ならびにAI業界全体の動向に大きな影響を及ぼす可能性があります。AppleとOpenAIは2024年6月に、SiriとChatGPTを連携させるソフトウェア連携のパートナーシップを発表したばかりでしたが、今回の提訴により両者の関係に深刻な亀裂が生じたことは避けられません。また、OpenAIはAI利用に最適化された革新的なハードウェアの開発に巨額の投資を行ってきましたが、開発の差し止めが認められれば、当初2026年内とされていた新製品の公開が大幅に遅れる懸念があります。
さらに市場が注視しているのは、資本政策への影響です。OpenAIは2026年6月に新規株式公開(IPO)を申請したばかりですが、主要メディアとの著作権侵害訴訟やイーロン・マスク氏との法廷闘争に加え、今回のAppleとの大型訴訟が加わったことで、投資家からのコンプライアンスやガバナンスに対する懸念が強まるのは確実です。独自のAIハードウェアで新たなエコシステムを構築しようとするOpenAIと、自社のハードウェア技術と人材の流出を徹底して防ごうとするAppleの対立は、次世代デバイス市場における覇権争いの激しさを浮き彫りにしています。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。