『耕耘部の時計』のカバーアート

耕耘部の時計

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📖『耕耘部の時計』朗読 – 雪あかりの白い農夫室と、暮れて雪になる冬の一日❄️✨

静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『耕耘部の時計』。

雪の照りかえしで白びかりのいっぱいな、冬の農場の農夫室。まん中の大きな釜からは湯気が盛んにたち、農夫たちは脚絆を巻いたり藁沓をはいたり、はたらきに出る支度をしています。そこへ俄かに戸があいて、赤い毛布でこさえたシャツを着た若い男が、きょうからこちらで働くようにと云われて参りましたと告げてはいって来ました。みんなの仕度ができるのを待つあいだ、男はふと、室の正面にかかった円い柱時計を見あげます。青じろくてつるつる光る、どこでも見たことのないような盤面です。

自分の腕時計とくらべて、あいつは十五分進んでいるな、と男が竜頭を引いて針を直そうとしたとき、そばで見ていた子供の百姓がくすりと笑いました。するとどう云うわけかみんなも一斉に、その青じろい美しい盤面を見あげながら、どっと笑ったのです。玉蜀黍の脱穀がひとくぎりついた昼どきにも、午の食事がすんだあとにも、男はこっそり自分の腕時計に目を落とします。時計はそのたびにちがう顔をしていて、そのたびに、農夫室には気のよさそうな笑い声が起こるのでした。

窓ガラスの向うでは、うるんだ白い雲が、額もかっと痛いようなまっ青なそらをあてなく流れていきます。炉を囲んで、郷里はどこだ、いつまでこっちに居るつもりだい、と低いやりとりがつづき、今夜は一尺は積るな、帝釈の湯でまた熊が捕れたそうだ、と話は移っていきます。雪を渡ってカランカランと鐘の音がとどけば、そりを牽いて来た馬が、きれいに歩調を踏んで厩の方へ歩き出すのです。

日暮れからはすっかり雪になりました。農夫室には電燈が明るく点き、火はまっ赤に熾って、外ではちらちらと雪が降っています。停車場まで酒を呑みに出掛けた人たちも、もう行くのはやめたろうと思われるような降りかたです。

湯気と炭火と、降りつむ雪。冬の農場に過ぎていく一日を、朗読でじっくりとお楽しみください。


#柱

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