マリヴロンと少女
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📖『マリヴロンと少女』朗読 – 秋の城あとにかかる虹と、才ある人へ捧げるおもい🌈🎼
静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『マリヴロンと少女』。
秋も深まった城あとに、銀のすすきの穂が一面に風で波立っています。まん中の小さな山の上には、めくらぶどうのやぶが実をつけ、そのそばで、ひとりの少女が楽譜をもってためいきをつきながら草にすわっています。かすかな日照り雨が降っては霽れ、草はきらきらと光り、もずが銀のすすきの穂に一度にとまります。やがて東の山脈の上を風が通り、大きな虹が、明るい夢の橋のようにやさしく空へあらわれます。
そこへ、今夜市庁のホールでうたうというマリヴロン女史が、ライラックいろのもすそをひいて、みんなをのがれてやって来ます。少女は化石のようにすわったまま、この天の才ある人へ、ただ一言でも自分のおもいを伝えたいと願います。やがて、透きとおる声もどこかへ行って、しわがれた声を風に半分とられながら、少女はマリヴロンに呼びかけます。
どうか私の尊敬を受けとってほしい、あなたがもっと立派におなりになる為なら私は百ぺんでも死にます——そう訴える少女に、マリヴロンは静かにことばを返します。正しく清くはたらくひとは、時間のうしろにひとつの世界をつくるのだと。青いそらをとんでゆく一羽の鵠が、うしろにそのあとをもつように。
秋の城あとの風景と、そこに立ちのぼる一すじの虹。楽譜をもった少女と、うたい手であるマリヴロンとが、みじかいひとときだけことばをかわします。銀のすすき、めくらぶどうの雫、東へ飛び立つもず、空にかかる虹。詩的な情景のなかで、ふたりの声が静かに響きあいます。
秋の光と虹に満ちた城あとのひととき。少女とマリヴロンのみじかい対話を通して立ち現れるこの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。
#鼠 #芸術 #衝動