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ボイスドラマ「サトリ」

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このコンテンツについて

耳が聴こえない少女・凪心を読める妖怪・サトリ──音のない世界でたった一人の声が届いた。冬の高山で再会した二人。けれど、別れの時は近づいていて——静かであたたかな再生のファンタジー・・・【ペルソナ】・凪(ナギ)(14歳/CV:山﨑るい)=生まれつき耳が聞こえない少女・覚(サトル)(14歳/CV:山﨑るい)=人の心が読める妖怪サトリ・歴史教師(24歳/CV:岩波あこ)=妖怪や民話・伝承が大好きな歴史教師【資料/妖怪・覚(サトリ)】https://yokai.jp/yokai/satori【資料/妖怪・山童(岡本綺堂/飛騨の怪談)】https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/49682_51215.html[プロローグ:記憶の中の声】■SE/虫の声〜フェードアウトしていく「・・・い。お〜・・・い。お〜〜い」それは、私が初めて聴く・・”音”だった。「お〜〜い」山の向こうから響いてくるような・・”声”。あたりをキョロキョロ見渡してもどこにも声の主は見当たらない。声を探して、私は山へ山へと入っていった。10年前。私は4歳のときに”神隠し”にあった。いや。神隠しなんて迷信を信じているわけではない。だが確かに私は、3日間父や母の前から消えてしまったのだ。3日後に発見されたのはなんと日和田高原の石仏群。馬頭観音の前にちょこんと座っていたという。その3日間のことは、なにひとつ覚えていない。ただ、すごく幸せなひとときだった・・・そんな記憶がぼんやりと残っている。初めてできたおともだちと仲良く過ごしたような・・・いつまでもずうっと楽しく語り合って。でも、それは絶対にありえない。だって私は・・・耳が聞こえないのだから。[シーン2:中学校】■SE/学校のチャイムの音〜フェードアウトしていく神隠しから10年。私は高根町から朝日町の中学校までスクールバスで通っている。私の住む町にはもう小学校も中学校もないから。先生が黒板の文字を消しながら話している。後ろを向いて話してると何言ってるかわかんない。最近、無理に唇を読むのをやめた。疲れるし。筆談もみんなの手をとめちゃうからやんない。手話?・・実は私、手話も上手じゃないんだ。どうしてかっていうとね・・・■※ここから回想高山には”ろう学校”ってないの。うちはお父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも健常者なんだ。普通は幼い頃からろう学校で手話を習うか、家族が手話を習ってコミュニケーションをとるんだって。うちの場合は・・・お父さんが家具職人。清見の工房で夜遅くまで働いてる。お母さんは市街地の総合病院で働く看護師。おじいちゃんとおばあちゃんはゴルフ場で住み込みの管理人。結局、私はいつもひとりぼっち。朝から夕方遅くまで過ごすのは町内の託児所。小さいうちに人工内耳を入れることもなく、手話も習わなかった。家族も手話ができるわけじゃなく、近くにボランティアもいない。こういうのなんて言うかわかる?言語剥奪っていうんだよ。幼ない頃から手話のような”言語”に触れる機会がないと、コトバってものが理解できなくなっちゃうんだ。で、私に残された方法は”読話(どくわ)”。唇や口の動きを見てなにを言っているのかききとること。いや、いきなり、それはハードル高過ぎでしょ。そんなときに神隠し・・でも神隠しのあと、私は少しだけ唇を読めるようになってたんだ。両親も祖父母もびっくり。おばあちゃんなんて、「やっぱり神様が連れてってくださったんだ」って。小学校のときはみんなマスクしてたから最悪。誰がなに言ってんのか、まったくわかんなかった。その頃たまに、手話ボランティアの人がきて少しずつ手話を教えてくれるようになったけど。中学へ入学したあとも、学校で私、手話はほとんど使わない。だって、誰も手話なんてわかんないんだよ。私一人のためにみんながわざわざ手話覚えるとかって、ないし。気を遣って話しかけてくれたりする友だちもいたけれど。先生のお話も、早口で読み取りにくい。やがて中学2年になった・・ある晴れた冬の日・・・[シーン3:転校生】■SE/学校のチャイムの音〜フェードアウトしていく「はじめまして。御嵩(みたけ)から引っ越...
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