『ボイスドラマ「まちのあかり〜80年前に街灯の下で出会ったアメリカ兵と戦災孤児の奇妙な友情物語」」』のカバーアート

ボイスドラマ「まちのあかり〜80年前に街灯の下で出会ったアメリカ兵と戦災孤児の奇妙な友情物語」」

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「大切なものは目に見えない」1945年12月。戦争で家族を失った5歳の少年ユウジと、GHQの通訳・アメリカ兵トム。ふたりをつないだのは、1冊の絵本『星の王子さま』。点灯夫の挿絵が、少年の心に希望の“灯り”をともします・・・【story】<シーン1/1945年12月:終戦後の吉浜>■SE〜海辺の音/街灯がジリジリと音を立てる「とうちゃん、かあちゃん・・」1945年12月。終戦から4か月。灯火管制が解除された夕暮れの高浜。5歳のオレは、粗末な釣竿と釣り糸を垂らす。ハゼでもタコでもいいからなんかかからんかなあ。今日も釣れんとどもならん。もう2日、お腹になんも入れていないし。締め付けられるような空腹感。街灯の小さな灯りの中で幸せだった日々を思い浮かべていた。とうちゃんは戦争にいき、戦死。かあちゃんは名古屋の工場で空襲にあい、命を落とした。ぼっちのオレをみんなは戦災孤児と呼ぶ。かろうじて立っているような街灯。海辺の砂利道を照らす裸電球。ジリジリと音を立てて点いたり消えたりを繰り返す。淡い灯りの中でとうちゃんとかあちゃんの笑顔が、浮かんでは消える。そのとき、誰かが、肩を叩いた。『ハロー』(ボイスNo.911797)天を突くような、のっぽのアメリカ兵がオレを見下ろしている。驚いて釣竿を放り投げ、立ち上がる。こいつらが、とうちゃん、かあちゃんを・・・アメリカ兵は、睨みつけるオレを見て、両手をひろげ、歯を見せた。たどたどしい日本語で話しかけてくる。こいつは豊橋の駐屯地からきたGHQの兵士。名前は、トム。自分は日本語ができるから、通訳として日本(にっぽん)にきた。なんで日本にきたのかというと、日本の非武装化、民主化、治安維持だという。そんな難しいこと言われても、よくわかんない。オレは横を向いて無視してたけど、トムは前に回り込んできてしゃべる。根負けして座りなおすと、今度はオレの横に座った。うわ、座ってもでっかいじゃん。お相撲さんよりおっきいんじゃんか。トムはGHQのジープに乗って、高浜の瓦工場を見に来たらしい。そのあと、町の中をぶらぶらしてたら、オレを見つけたんだって。街頭の裸電球に2人の姿がぼんやりと浮かぶ。人が見たらなんと言うだろうな。オレまた村八分かなあ。ま、いいや。どうせ、誰も食べもんくれるわけじゃないんだし。なんて考えてたら、お腹がぐう、と鳴った。トムはまた、両手をひろげて、オレに何かを差し出した。お?くんくん(擬音)。これが噂の「ギ・ミ・チョコレイト」か。食べてみん、と言われて、恐る恐る口に入れる。ん?なんだこの味?はじめて食べる味・・うまい。知らんかったけど「甘い」というのは、こういうのをいうんだろうな、きっと。うすあかりの中で、オレはトムの上着に目がいく。でっかいポケットが不自然に膨らんでいた。オレの視線を見て、トムはポッケからなにかをとりだす。それは・・・一冊の本。表紙の中で、黄色い髪の少年が空を見上げている。「え、なんだん?」「リル・プリン」?なんのこっちゃ。っていう顔をしてたら、トムがまた話し出す。これは小さな王子さまが出てくるお話。フランスという国の作家が書いた童話だ。息子への贈り物にするんだと。日本に配属される前、ニューヨークという町に住む友達に頼んで、買ってきてもらったらしい。トムに言われるまま、ペラペラと本をめくる。ああ、英語だし、なんて書いてあるかさっぱりわからん。でもたまに絵が描いてあるな。挿絵?ふうん、そう言うんだ。文字なんてどうでもいいから、挿絵だけを見ていくと、変わった男の絵が現れた。長い棒を持って高いところの行燈に火を点してるのか?なんだ?これ?点灯夫?毎晩街灯に灯りをともしていく男だげな?はあ?ヒマなんだな。とは言いつつ、オレは点灯夫の挿絵にひどく興味を引かれた。オレとトムの頭の上には、挿絵のようにハイカラじゃない裸電球の街灯がチラチラしている。このぼろっちい灯りも点灯夫が点していったんだろうか・・・<シーン2/1946年1月:吉浜>オレとトムは、それからちょこちょこ会うようになった。点灯夫の挿絵から入った本だったけど...
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