『アメリカの「ICC所長制裁」と日本の揺れる立場――著書『戦争犯罪と戦う』から考える「法の支配」の危機』のカバーアート

アメリカの「ICC所長制裁」と日本の揺れる立場――著書『戦争犯罪と戦う』から考える「法の支配」の危機

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国際社会で「法の支配」の根幹を揺るがす重大な事態が続いています。トランプ政権下のアメリカが、オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に対し、資産凍結や入国禁止などの制裁措置を発表しました。ルビオ国務長官は「ICCを解体する」とまで言い切り、強硬姿勢を強めています。日本人初のICC所長である赤根智子氏の著書『戦争犯罪と戦う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)を紐解きながら、元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が、国際社会の激震と日本政府の対応が抱える問題点について解説します。聞き手はRKKの江上浩子氏です。🔶 アメリカによる「ICC制裁」とルビオ国務長官の解体表明今回の制裁は、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相やハマス幹部、さらにはロシアのプーチン大統領らに対し、戦争犯罪や人道に対する罪の疑いで逮捕状を出したことへの反発から端を発しています。強硬な制裁内容: 米国内の資産凍結、米国への入国禁止、米国企業や個人との取引禁止などが課され、所長本人だけでなく家族も対象とされています。「解体」に言及するアメリカ: ルビオ国務長官は「全ての手段を用いてICCを解体する」と表明し、主権を脅かすことが不可能になるまで構造的な措置をとる構えを示しています。ここで押さえておきたいのが、ICC(国際刑事裁判所)の性質です。国連の機関である「国際司法裁判所(ICJ)」とは異なり、2002年に設立された独立した常設組織です。加盟国・地域は125にのぼりますが、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルといった大国や当事国は非加盟です。一方、日本は2007年に加盟して以来、最大の資金拠出国であり、2025年時点でも約45億6,000万円(分担率14.6%)を拠出する極めて重要な立場にあります。🔶 欧州の即時支援と、批判を浴びた日本政府の初動アメリカの制裁発表に対し、国際社会は即座に反応しました。国際社会の迅速な反発: 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長や国連のグテーレス事務総長をはじめ、オランダ、ドイツ、イギリスなど各国政府が「ICCの独立性を強く支持し、全面的に支援する」と即日で表明しました。日本政府の遅れた軌道修正: 高市早苗首相は当初、「大変残念に思っている。関係国と意思の疎通を継続しながら対応していく」と述べるにとどまり、国内外から強い批判を浴びました。その後、「日本の立場と相いれない、大変深刻に受け止めている」と軌道修正を図りましたが、言うべきタイミングで毅然とした態度を示せなかった不信感は残りました。宮脇氏は、赤根氏がICC裁判官に立候補した背景には、日本政府(法務省・外務省)からの強い要請と後押しがあったことを著書から指摘します。法の支配を体現するために国家の意思として彼女を送り出したにもかかわらず、同盟国であるアメリカに対して「それはおかしい」と即座に言えない姿勢は、真の対等な日米関係とは言えません。🔶 著書が警告する「ニュルンベルク裁判以前」への退歩赤根所長は著書『戦争犯罪と戦う』の中で、アメリカによる圧力とICCの存在意義について、次のように切実な警鐘を鳴らしています。「もしICCがなくなってしまうとしたら、それはニュルンベルク裁判以前の状態に戻ることを意味します。戦争における市民への組織的な攻撃が犯罪とみなされない、あるいは不処罰のまま放置されるのが当たり前という世界へと逆戻りしてしまうかもしれないのです」冷戦終結後の1990年代という歴史的な「雪解け」の時期だったからこそ誕生できたICC。現在の国際情勢で同様の裁判所をゼロから作ることは不可能であり、だからこそ「歴史の狭間で幸運にも誕生したICCを守り抜かなければならない」と訴えています。🔶 まとめ:力の支配ではなく「法の支配」を守るために「力の支配」が横行する世界になれば、一番被害を受けるのは軍事力に頼らない国際秩序を望む国々や民間人です。日本が果たすべき役割は、単に拠出金を出すことだけでなく、国際法や「法の支配」を守るために同盟国に対しても是々非々で主張を貫くことです。赤根所長が孤独な戦いを強いられる中、日本...
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