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「TENRI」文化を世界へ

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「TENRI」文化を世界へ                   フランス在住  長谷川 善久 最近、私が住むフランスでも日本の移民政策について良く耳にする機会が増えました。これから日本社会が、話す言葉が必ずしも同じではない人々をどのように受け入れていくのか、興味深く見守っているところです。 私が日本人からよく受ける質問に、「フランス語は難しいですか?」というのがあります。私はいつも決まって一言だけ「難しいです」と答えるのですが、すると大概の人が「そうだろうな」と残念そうな表情をします。 そこで私はひと呼吸おいて、「けど、フランス人とコミュニケーションを取るのは楽なものですよ」と続けます。そして「日本人以外の人でも、嬉しい時には笑い、悲しい時には泣きますから」と、分かり切ったことを、あえて深い真理かのように伝えます。 ある研究によると、他者とのコミュニケーションで伝わることを全部で100%とすると、そのうち口から出る言葉自体が伝達できるのは、約10%だといいます。つまり、言葉の内容以外の表情、身振りや手振り、話し方や口調などが九割を占めるということになります。 実際私自身も、その割合はともかく、言語コミュニケーションの有効性に限りがあるという説には、経験からしても確かに一理あると思っています。 かくも人間関係とは、コミュニケーションに依存する度合いが高いのですが、その関係が良好であれば、人は他者に対する恐怖心が薄くなり、安心感、幸福感が高まります。その上で、海外生活において言語能力以上に大切だと思う点をあえて二つ挙げるなら、それは相手との違いに興味を持つこと。そして先入観を捨ててオープンに相手を理解しようとする姿勢です。 そこに教祖から教えて頂いている「誠真実」の実行があれば、たとえ外国人との間で、少々言葉による障壁や誤解などがあっても、全く恐れるには足りません。 天理教の『信者の栞』には、このようにあります。 「誠真実というは、たゞ、正直にさえして、自分だけ慎んでいれば、それでよい、というわけのものじゃありません。誠の理を、日々に働かしていくという、働きがなくては、真実とは申せません。そこで、たすけ一条とも、聞かせられます。互い立て合い、扶け合いが、第一でございますによって、少しでも、人のよいよう、喜ぶよう、救かるように、心を働かしていかねばなりません」。 積極性をもった対人関係、人と自分を区別しない心。自己の利害や保身を捨て去った行動は、間違いなく言葉のやり取りを超えた万国共通の心のつながりをもたらしてくれます。  フランス・パリの中心地に、天理教本部によって設立された「天理日仏文化協会」があります。現地では利用者から「TENRI」と呼ばれ、親しまれている文化センターです。  現在は、活動の中心である日本語教育以外にも、日本の伝統文化や美術、音楽などの紹介もしており、年間の会員数は1000名を超え、民間の日本文化関連団体としては、フランスで最も知られている団体です。  この「TENRI」センターの運営は、現地の布教所長3名が中心となっており、20名を超える未信者の職員を抱えています。それに加えて現場実務の上で重要な役割を担う存在として、天理教本部の青年会、婦人会が実施する「海外日本語教師派遣プログラム」で、日本語教師として二年間派遣されてくる若者たちがいます。 授業は全て日本語で行われるものの、フランス語が決して上手ではない派遣生らは、授業外での学生との意志の疎通に苦心しているのが現状です。それでも不思議なことに、出張所で信仰生活をしながら文化協会で教師として勤める彼らのクラスでの評判は、いつの時代の派遣生もトップクラスなのです。 フランス語が上手く話せないことへの不安に対して、私がいつも彼らに話すことがあります。 「君たちはフランス語が上手く話せるわけではない。上手い人をうらやましいと思うかも知れない。しかし、言葉がよく出来ることが悪く作用することだってある。それは、言語能力が高ければ高いほど、自分の本心を隠して、相手...
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