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杯
- ナレーター: 金田 賢一
- 再生時間: 12 分
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木精
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「フランツはいつもここへ来てハルロオと呼ぶ。暫くすると、大きい鈍いコントルバスのような声でハルロオと答える。これが木精である。」 いつも谷川にいって当たり前のように木精を楽しんでいた少年が、大きくなってしばらく振りで谷川を訪れて呼びかけるが、答えがありません。しかし、同じ日の夕方再び出かけてみると、小さい子供たちの呼びかけに木精は答えているのです。 成長とともに失われるもののあることを知る少年の戸惑いと哀しみ。そしてそれを受け入れる少年の純粋さ。金田賢一の素直な朗読が少年の心の移ろいを見事に表現しています。
著者: 森 鴎外
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お富の貞操
- 著者: 芥川 龍之介
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「いけないよ。打っちゃいけない。」新公はお富へ眼を移した。しかしまだ短銃の先は、三毛猫に狙いを定めていた。 官軍の彰義隊攻撃のため住人が避難したときのことです。置き去りにしてしまった猫を引き取りに来たお富と留守に上がり込んでいた新公が鉢合わせ、猫を巡る争いから男の欲望へと発展します。この作品では事細かに描写される猫が重要な役割を担っています。「開花物」と呼ばれる、明治初期の西洋文明が次々と入ってくる時期に題材をとった作品ですが、この物語のなかにも拳銃や内国博覧会、二頭立て馬車などが登場します。 溝口舜亮の、一幕芝居をみるような淀みない語りが楽しみです。
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トロッコ
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良平は毎日飽かせずトロッコをみるうち、自分でも押して乗ってみたくなります。ある日、土工の許しを得て乗り込みますが、遠くまで来すぎ、心細くなったとき、「われはもう帰んな」、と突き放されてしまいます。暮れかかる山道を一人帰る寂しさと不安、良平は無我夢中で走り続け、やっとのことで家に帰り着き、泣きじゃくります。辛い少年時代の不安感を、大人になって、ふと思い出すことがあります。主人公は仕事に疲れ、将来のことを悲観した時にこの想い出が甦ってきたようです。 風を切って進むトロッコのように、軽快で力強い溝口舜亮の朗読は、ハイテンポで結末まで一気に語り進みます。
著者: 芥川 龍之介
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一枚板は破傷風のこと。
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路上
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「傾斜についている路はもう一層柔かであった。しかし自分は引き返そうとも、立留って考えようともしなかった。危ぶみながら下りてゆく。」 作者は雨上がりのぬかるんだ斜面を危険を冒しながら下っていく自分の心情を冷静に分析しようと試みます。何故好きこのんで泥んこになり意地を張って下りて行くのか、崖の下では危険が待ち受けているかもしれないのに。しかも誰もみていないのがもの足りない。作家の歩む道とはこんな茨の道なのだ、あるいは作家なんてこんなものなのだ、といっているような気がします。 気まぐれな作家の独白を語る横内正の朗読はベテランならではの味わいが感じられます。
著者: 梶井 基次郎
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