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『日本怪談全集 八』のカバーアート

日本怪談全集 八

著者: 田中 貢太郎
ナレーター: パンローリング
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あらすじ・解説

怪談文学の第一人者ともいえる田中貢太郎が、二十年に渡って書き上げてきた作品を蒐集した、著者のライフワークともいえる「日本怪談全集」。第八巻です。古今東西から集められた怪談の数々を、心ゆくまでお楽しみください。



「四谷怪談」

元禄年間のこと。四谷左門殿町に御先手組の同心を勤めている田宮又左衛門と云う者が住んでいた。その又左衛門は眼が悪くて勤めに不自由をするので、娘のお岩に婿養子をして隠居したいと思っていたが、そのお岩は疱瘡に罹って顔は皮が剥けて渋紙を張ったようになり、右の眼に星が出来て、髪も縮れて醜い顔になってしまった。

お岩が二十一の時、又座衛門は亡くなった。そこで又左衛門の友人たちが相談して、お岩に婿養子をして又左衛門の跡目を相続させようとしたが、なにしろお岩の姿を気にして養子になろうと云う者がない。

ようやく伊右衛門と云う摂州の浪人が候補に見つかった。彼は三十俵二人扶持の地位欲しさに婿入りを了承するのだが、お岩の二目と見られぬ容貌に驚き、次第に嫌悪するようになっていったのだった……



「山の怪」

土佐長岡郡の奥に本山と云う処がある。その本山に吉延と云う谷があって、其処には猪や鹿などの大きな獣がいるので、猟師をやっている者で其処へ眼をつけない者はなかったが、その谷には時々不思議なことがあるので、気の弱い者は避けて行かなかった。

冬の初めであった。半兵衛と云う猟師は鉄砲を持って吉延の谷へ行った。彼は多年の経験から獣の通って行きそうな場所に罠を仕掛け、傍の岩の陰へ腰をおろして肩にしていた鉄砲を立て掛け、静かに煙草を喫いながら獣の来るのを待っていた。

しばらくすると大きな山ミミズが罠に触れたが、動かなくなった山ミミズを通りかかった蛙が呑み込み、更に通りかかった蛇が蛙をひと呑みにした。これを見て半兵衛は気味が悪くなったが、そこに猪が現れ、蛇をひと呑みにした。ようやく待ち望んだ獲物を前に、半兵衛は鉄砲を構えるのだが……



田中貢太郎

田中貢太郎は日本の作家。高知県出身。号は桃葉。『田岡嶺雲・幸徳秋水・奥宮健之追懐録』が出世作となる。「中央公論」の「説苑(ぜいえん)」欄に実録、情話、怪異譚を書き、井伏鱒二・尾崎士郎らと随筆誌『博浪抄』を創刊。著作は伝記物、紀行文、随想集、情話物、怪談・奇談など多岐に渡る。代表作『旋風時代』では明治維新の顕官の情痴の生活を奔放に描いて独自の境地を開いた。1940年菊池寛賞受賞。『怪談青灯集』など怪談物も書き、『聊斎志異 (りょうさいしい) 』の翻訳もある。
(c)2017 Pan Rolling

日本怪談全集 八に寄せられたリスナーの声

総合評価
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