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『白菊』のカバーアート

白菊

著者: 夢野 久作
ナレーター: テルヤン
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あらすじ・解説

     <内容紹介>
網走の監獄を破った5人組のひとりだった虎蔵。強盗時代にはさまざまなアダ名を付けられ世間から評判になっていた。
虎蔵は不要な殺しはせずに、酒と女にも近づかなかった。それが彼のプライドのひとつだった。
 

      そんな、虎蔵が北海道の当局に脱獄で追われているという状況は全国的に話題となった。虎蔵は、食べ物を得るために残虐な人殺しを繰り返していた。虎蔵自身も自覚していないほどに。
 

    そうして、脱獄囚の虎蔵は深夜の街道に立ち竦んだ。身動きひとつせず、遥か向こうの赤い光を見つめながら。虎蔵は生まれて初めてみる美しい光に見惚れていた。
赤い光に吸い込まれるように向かっていくと、目の前に大邸宅が現れる。その光は、屋根のとんがった奇妙な格好の2階から溢れていた。
大邸宅に人がいないことを察すると2階へ侵入するために、身を潜めながら進んで行く。大きな扉を開き、部屋の内部に侵入した。
天井の高い幽雅な近代風のゴシック様式。天井近くまで積み上げられた棚にはさまざまな子供の人形が重なり合う。他にも、巨大なテーブルの上に数多くの雑貨が置いてあった。
中央の高い丸天井から薄紅色の絹切れに包まれた海月型のシャンデリア。その赤い光の正体に虎蔵は棒立ちになってしまう。
 

    彼が夢にも良きしなかった光景がそこに広がっていた。ふとベッドに目を向けると人形のように愛らしい少女が寝ていた。枕元にはクマのぬいぐるみ。
いつものように少女を殺そうとするが思いとどまった虎蔵。
その瞬間、窓の外に広がる満天の星空。虎蔵は殺しをやめ洋館を後にする。洋館に置かれていた白菊の鉢を少女のもとに運んだ。
 

    そして、枕元にそっと白菊の花を置いた。翌朝、洋館の婦人と幼い少女が帰ってきた。
 

    <夢野久作(ゆめの・きゅうさく)>
日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。
1889年(明治22年)1月4日 - 1936年(昭和11年)3月11日。
他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。    

©2018 Pan Rolling

白菊に寄せられたリスナーの声

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